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逢瀬は三日おきに

殺りんラブラブ
無性に何か書きたい気分がムクムク。
軽~~く小話を捻ることにしました。


巨大な西国城から双頭の騎竜、阿吽が飛び立つ。
勿論、騎乗しているのは殺生丸とお供の邪見である。
先頃、長の放浪から帰還したばかりの国主、殺生丸は三日おきに何処かへ出かける。
だが、何処へ出かけるのかは、極々、少数の側近と重臣、それに近親者以外、誰も知らない。
だから、殺生丸が三日おきに人里を訪れていると知ったら驚愕する者が続出するだろう。
『大の人間嫌い』という評判を持つ当代国主である。
確かに、それは、ごく最近までは真実だった。
『元』人間嫌いの殺生丸が訪れる人里は半妖の異母弟、犬夜叉が住み着いている村である。
父親である先代国主が逝去する直接の原因となった犬夜叉の母は人間であった。
その為、長年、殺生丸は犬夜叉を疎(うと)んじてきた。
しかし、そうした関係が、近年、多少、変化した。
奈落という共通の敵を倒すに際して、やむをえぬ事情からとはいえ、この化け犬兄弟は共闘したのである。
そうした経過もあって、殺生丸と犬夜叉の間には、あからさまではないが緩やかな信頼関係が保たれている。
だからこそ、殺生丸は、溺愛する人間の童女、りんを、犬夜叉が住む村の巫女、老女、楓に預けたのであった。
尤も、そうした経緯(いきさつ)を知る者は非常に少ない。
その為、未だ、当代国主は半妖の異母弟と仲が悪いと思い込んでいる者ばかりである。
当然、殺生丸が不仲の異母弟が住む人里に出かけているとは誰も思わないのであった。

「大殿、失礼致します」

カラリと襖(ふすま)を開ける音がする。
栗色の髪に水色の瞳の若者が国主の執務室に居ずまいを正(ただ)して入ってきた。
殺生丸の側近の一人、藍生(あいおい)である。
西国の重臣、尾洲の嫡男でもある。
大量の書類を腕に抱えている。
しかし、部屋の中は蛻(もぬけ)の殻(から)であった。

「大殿!?」

主の失踪に慌て始めた藍生。
そこへ同輩の木賊(とくさ)がやってきて一言。
木賊も藍生と同じく殺生丸の側近である。
灰色の髪に緑の瞳、落ち着きのある物腰。
これまた重臣の万丈が父親である。

「落ち着け、藍生。今日は例の日だ」

「例の日・・・ああっ、そうか」

「大殿は何があろうと、この日はお出かけになる。これからズッとな」

「フゥッ、あの大殿が、ここまで誰かに惚れこむとは。それも、ワザワザ、三日おきに人界にまで出かけていくなど・・・。信じられんっ!そうではないか、木賊?」

「お主が信じようと信じまいと、それが厳然たる事実だ。ともかく少しでも大殿の責務を減らすべく仕事に励もう。それが側近たる我らの務めぞ」

「ムッ、そうだな」

主の不在中に山積した書類を少しでも減らすべく、側近の両名は文机(ふづくえ)に向かいセッセと仕事に勤(いそ)しむのであった。




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『想春(そうしゅん)=七宝=』

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昨日※上記の画像は『ぱたぱたアニメ館』よりお借りしました。
URL=http://www.pata2.jp/


オラの名は七宝。
犬夜叉達と一緒に奈落と戦った正義の子狐妖怪じゃ。
今日も骨喰いの井戸を覗(のぞ)き込む。
もうオラの習慣になってしまった。
奈落が滅したのは、丁度、今頃じゃったな。
桜がチラホラ咲き始めておった。
早いもので、そろそろ一年が経とうとしておる。
あの時、背後に出現した冥道に呑み込まれ、かごめは消えてしまった。
夢幻の白夜に斬られたせいじゃ。
オラは見たんじゃ。
白夜が冥道残月破の妖力を盗むところを。
だから、冥道が、かごめを吸い込んでしまったんじゃ。
それだけではない。
奈落が四魂の玉にかけた願のせいで骨喰いの井戸まで消えてしまったんじゃ。
確かに奈落は滅された。
弥勒の風穴が消えたのが証拠じゃ。
じゃが、かごめは何処へ?
それに四魂の玉は?
あの時、犬夜叉は何か勘付いたんじゃろうな。
すぐさま鉄砕牙を抜き冥道残月破を撃って冥道を出した。
そのまま犬夜叉は大きな刃型の冥道に入り込み、かごめを追いかけていったんじゃ。
考えてみれば、かごめは冥道に吸い込まれたんじゃから、犬夜叉が冥道に入って追いかけるのは道理じゃな。
それから、オラは待った、待ち続けた。
骨喰いの井戸の跡でズッと。
かごめと犬夜叉が戻ってくるのを・・・。
骨喰いの井戸が消えてから三日後、井戸があった場所から光の柱が立った。
光の柱が天に届いた瞬間、光は消えた。
後には元通りの骨喰いの井戸が現われた。
そして、井戸を潜(くぐ)って犬夜叉は戻ってきた。
でも・・・かごめは戻ってこんかった。
何故じゃ?
どうしてかごめは戻ってこんのじゃ!?
弥勒も珊瑚も楓も、勿論、オラだって、かごめの安否を何度も犬夜叉に訊ねた。
でも、犬夜叉は「かごめは無事だ」としか答えてくれなかったんじゃ。
その後は、誰が、どう尋(たず)ねても頑(がん)として口を割ろうとせんかった。
犬夜叉は頑固じゃからな。
こうと決めたら誰が何を言おうが梃子(てこ)でも動かん。
そのせいで、いつも、かごめに「お座り!」を喰らわされておったもんじゃ。
アアッ、また思い出してしまったではないか。
グスッ、かごめ~~
ズズ~~ッ・・・スンッ!(涙と鼻水をすする音)。
すまん、すまん、話を続けるぞ。
あの後、弥勒と珊瑚は夫婦(めおと)になって村に住み着いた。
弥勒は犬夜叉と組んで妖怪退治で生計を立てておる。
妖怪を追い立てるのは弥勒、退治するのは犬夜叉の役目じゃ。
弥勒自身が法力(ほうりき)で妖怪を滅するのも可能なんじゃが、犬夜叉が鉄砕牙で妖怪を斬り伏せて倒す方が派手で宣伝効果も高いからな。
「百聞は一見に如(し)かず」って奴じゃな。
お陰で評判は上々で、武蔵の国は疎(おろ)か周辺諸国にまで犬夜叉達の名は知れ渡っておる。
『半妖と法師の妖怪退治』とな。
それもあってか、退治料は、破格の値段じゃ。
何せ、お札一枚が米一俵じゃからのう。
弥勒の奴、相変わらず阿漕(あこぎ)じゃのう、完全にボッタクリじゃ。
とはいえ、そんな真似をするのはガッポリ貯めこんどる金持ちにだけじゃがな。
貧乏人からは、一切、報酬を受け取らん。
年が明けて弥勒と珊瑚の間に子供が生まれた。
助兵衛な弥勒に相応しく女子(おなご)じゃった。
それも双子じゃぞ。
弥勒め、いきなり二人の子持ち親父になりよった。
アッ、それと、もう一つ、りんが楓に預けられたんじゃ。
驚いたことに、殺生丸が、直(じか)に楓に頼み込んだんじゃ。
流石に、あのまま、りんを連れ歩くのは不味(まず)いと思ったんじゃろうな。
りんは村で暮らすことになった。
それで、オラ、殺生丸は、もう姿を見せないだろうと思っとったんじゃ。
アイツは大(だい)の人間嫌いだからな。
トンデモナイ!
殺生丸の奴、三日おきに、りんに会いに村を訪ねてくるんじゃ。
それも何やかんや品物を携えて。
勿論、土産(みやげ)を持つのは従者の邪見だけどな。
やれ食い物だ、櫛(くし)だ、飾り紐(ひも)だ、帯だ、着物だのと。
貢(みつ)いどる!
アレって・・・雄が雌に食い物を贈ったりする・・・アレだよな?
世にいう・・・“求愛行動”・・・とか呼ばれる。
あっ、あの殺生丸が・・・。
最初はオラも信じられんかったが、余りにも頻繁に目にするものだから、もう慣れっこになってしまって。
今では、みんな、それが当たり前になってしまったんじゃ。
完全に感覚が麻痺(まひ)しとるな。
かごめが居なくなってから、多かれ少なかれ変化はあったが、一番、変わったのは殺生丸じゃなかろうか?とオラは思うぞ。
チョイと脱線したな、話を元にもどすぞ。
オラ、かごめが居なくなった当初、悲しくて寂しくて・・・。
皆に隠れて泣いとった。
大好きなかごめ、抱っこされると何時もフワッと良い匂いがして。
綺麗で優しくて強いかごめ。
おっ母(かあ)みたいなかごめ。
何時も乱暴な犬夜叉からオラを庇(かば)ってくれた。
ワザワザ、アッチの世界から、いつもオラの為に美味しいアメを持ってきてくれたかごめ。
オラ、かごめに会いたくて会いたくて。
どうしても諦められなかったんじゃ。
だから、折りにふれては骨喰いの井戸を覗いとった。
毎日、毎日、自分でも呆れるくらいに。
そしたら、ある日、気付いたんじゃ。
犬夜叉が、夜、コッソリ骨喰いの井戸に入っとるのに。
それからは、毎晩、井戸から少し離れた風下になる場所から隠れて見張っとった。
匂いでバレンように。
犬夜叉は鼻が利くからな。
二日目は来んかった。
三日目、来た!
犬夜叉はキョロキョロと周りを見回して誰も居ないのを確認しとった。
それから、井戸の底をジッと見詰めて、思いつめた顔で井戸に入っていったんじゃ。
オラも息を詰めて見とった。
ドキドキしたぞ。
もしかしたら?と思ってな。
じゃが、以前のように光は射(さ)さず井戸は何も変わらんかった。
あれから一年が経つが、今も、犬夜叉は三日に一度は骨喰いの井戸に入っとる。
かごめと会えることを信じて。
だから、オラも諦めない。
犬夜叉が諦めない限り、オラも信じてるんじゃ。
いつか、きっと、かごめに会えると!

       了

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闇とともに(奈落)

狒々の奈落

来たな、珊瑚。
フッ、防毒面をりんに譲るとは。
罪滅ぼしのつもりか。
法師を救うためとはいえ、おまえはりんを殺そうとしたのだからな。
ククッ、何とも罪深い女だ。
もし飛来骨が当たっていれば、間違いなくりんは死んでいた。
惨(むご)たらしく身体を引き裂かれ妖毒に溶かされてな。
そして、りんが死んでいれば、珊瑚、お前も殺生丸に殺されていたはずだった。
そう、かごめが破魔の矢を射るのが、ほんの一瞬でも遅れていたらな。
だが、刹那の違いで、わしの体は砕かれ白夜がお前に見せていた幻も消えてしまった。
結果、りんは投げ出され、双頭竜に乗った琥珀に助けられた。
お前が逢いたがっていた法師は犬夜叉に助けられてココにいるぞ。
安心したか、珊瑚。
さあ、飛来骨を投げるがいい。
わしの思惑どおりに珊瑚が飛来骨を投げてきた。
邪気を巻き込み砕く飛来骨。
わしの邪気を巻き込んだまま珊瑚の手元に戻った。
防毒面を被っていない珊瑚は瘴気をタップリと吸い込む。
勿論、珊瑚を乗せた猫又もな。
瘴気に毒され落下していく珊瑚と猫又。
珊瑚を受け止めようとする法師が飛び出してきた。
奴らの足元の肉塊を塞(ふさ)ぎ法師と珊瑚を閉じ込めた。
クククッ、せめて最後の時くらいは二人きりにしてやろうと思ってな。
珊瑚と法師の絶望が四魂の玉に伝わってくる。
玉の中の光が押し潰される。
闇が拡がる。
砕かれた体が修復され鎧甲が全身を覆う。
懲りもせず犬夜叉が、わしに向かって冥道残月破を撃ってきた。
犬夜叉、見せてやろう。
これが四魂の玉の力だ。
闇の色に染まった四魂の玉を取り込み己と同化させた。
ドン、瞬時にわしの周囲に張り巡らされた蜘蛛の巣状の鎧甲。
冥道にさえ呑み込まれない。
元々、四魂の玉は桔梗の死とともに消えるはずだった。
だが、桔梗の犬夜叉への未練と生まれ変わりのかごめの体を利用して、再び、この世にもどってきたのだ。
かごめの破魔の矢に砕かれながらも、災いをふりまきつつ結集し、時空すら超える。
そして、今、闇色に染まり、この奈落とともにある。
四魂の玉は絶対になくならない。
そう、この奈落が滅びても・・・な。
りんを救出した以上、何時、殺生丸が爆砕牙を使ってもおかしくない。
爆砕牙を使われれば、この奈落が、どれほど膨大な数の妖怪を取り込んでいようと悉(ことごと)く破壊され尽くすだろう。
そうなる前に出来るだけの手を打っておかねばな。
かごめを、お前から奪ってやる。
ククッ、たとえ、この奈落が滅びようと、犬夜叉、決して、きさまを四魂の玉の悪(あ)しき因縁から逃(のが)しはしない。



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『ムカつく』(夏×ほのか)「史上最強の弟子ケンイチ」より

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★★上記の絵は『海の月』様の好意により頂きました。
★★まりん様、有難うございました。(●^o^●)


ムカムカする。
畜生、何だって、こんなにムカつくんだ。
単に、あの能天気娘が兄貴に従っただけじゃねえか。
ほのかめ、人の足に噛(かじ)り付きやがって。
お陰で俺はアイツを足にへばりつかせたままアジトに行く羽目になっちまった。
アア、何のアジトだって?
決まってるだろう。
宇宙人、新島が主催する新白連合のだ。
前は今にも崩れそうなボロッボロのビルだったんだが・・・・。
新島の奴、どんな汚い手を使ったんだか、ピッカピカの新築ビルに建て替えやがった。
フン、どうせジークの奴が一枚噛(か)んでるんだろうぜ。
アイツは宇宙人に心酔してるからな。
どうしてアジトに出向いたのかだって?
新白連合の幹部会があったんだよ。
闇の殺人拳の弟子集団、ヨミのメンバーが大胆にも白昼堂々と俺達の学校に乗り込んできたからな。
その対策を練る為、宇宙人、新島が、急遽(きゅうきょ)、俺達、幹部に召集をかけたって訳だ。
チッ、どういう訳か、俺も幹部の中に名を連ねているんでな。
一応、義理にでも顔を出さなきゃならん。
それで、前々からの予定をドタキャンする羽目になったんだが・・・・。
(例によってオセロで負けてアイツを遊園地に連れて行く約束だったんだ)
当の相手がチッとも聞き分けてくれない。
どんなに宥(なだ)めすかそうが脅そうが聞く耳もたないって感じでな。
裏切り者だ、嘘つきだのと好き勝手云われてホトホト参った。
挙句の果て、俺の右足にスッポンみたいに喰らいついて離れようとしないんだ。
こんなみっともない状態で奴らの前に出れるか。
目立たないように部屋の隅(すみ)に隠れてたのに。
こういう時に限って、あの野郎はホイホイ寄ってきやがる。
白浜兼一、ほのかの兄貴だ。
俺を倒した唯一の男、俺の生涯のライバル。
何時の日か、奴をブッ倒す。
アアッ、くそっ、寄って来るんじゃねえ!
風林寺まで一緒だ。
何が『なっつん』だ。
気安く呼ぶんじゃねえ。
俺には『谷本夏』っていう歴(れっき)とした名前が有るんだ。
クソッ、見つかっちまった。
ほのかの奴、離されまいと俺のジーンズにガッチリ歯まで立ててやがる。
こうなったら、白浜、貴様に何とかしてもらおうじゃねえか。
俺の言うことを、まるで聞こうとしないほのかだ。
どうせ、お前の言うことだって聞くはずが・・・・。

「離れろ、ほのか」

「ラジャ」

なっ、何ぃ~~~~~~!!!
ほのかの奴、スンナリ兄貴の命令に従いやがった。
あんなにウンザリする程、俺の家に来ては付きまとってた癖に。

「妹にとって兄の命は絶対です」

俺を見て白浜がフッと余裕の笑みを浮かべてやがる。
ムカつく。
何でか知らんが、すっげームカつく。
本当にムカつく兄妹だぜ。
クソ~~~ッ、見てろよ、白浜。
いつか、必ず吠え面(ほえづら)かかせてやる。
絶対に、ほのかが、お前より俺のいうことを聞くようにしてみせるからな!!! 了


※ウププッ・・・(●^o^●)斯くして夏君は、益々、『打倒、白浜兼一!』の思いを強くしたのでありました。
★★★『海の月』のサイトマスター、まりん様のみ、この作品をお持ち帰り下さいませ。


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小話『蠢(うごめ)く』

狒々の奈落
モゾッ・・・ズッ・・ズズッ・・・体内で蠢(うごめ)く有象無象の気配。
身の内に取り込んだ何十、何百とも知れぬ妖怪どもが表面に出ようともがいているのだ。
ピシッ、バリッ・・・人払いした薄暗い部屋の中、端整な容貌の青年の右腕が変化した。
浮かび出てきたのは異形の腕だった。
鋭い爪が覗く赤黒い皮膚のおぞましい鬼のような腕。
それを青年は驚きもせずに眺めグッと握りこみ封じ込める。
フッ・・・鬼の腕が引っ込んだ。
青年の意思のままに。
男にしては色の白い、だがスンナリと筋肉のついた綺麗な腕が見える。
(アレを出して以来、頻繁に出て来ようとする)
(フン・・・まだ鬼蜘蛛とは縁が切れんようだな)


周囲の者達には城主の人見蔭刀(ひとみかげわき)として認識されている人物、奈落は、内心、自嘲するように呟いた。
つい先日、奈落は、ある肉塊を生み出した、イヤ、切り離した。
奈落に取って最も忌まわしい鬼蜘蛛の意識を持つ肉塊を。
鬼蜘蛛、五十年前、巫女である桔梗に浅ましい想いを抱いた野盗。
四魂の玉を餌にして男の魂を繋ぎに使い数多(あまた)の妖怪が合体して生まれたのが半妖の奈落だ。
誕生したばかりの奈落は鬼蜘蛛の執着を利用した。
嫉妬に狂う男が桔梗を殺すように仕向けたのだ。
事は思惑通りに進んだ。
桔梗は深手を負って死に、恋仇の犬夜叉も封印された。
だが、誤算が生じた。
肝心の四魂の玉が桔梗とともに消え失せてしまったのだ。
それ以後、鬼蜘蛛の意識は眠りについた。
魂までも引き換えにして望んだ桔梗の死に絶望したのか。
不意に今まで眠り込んでいた鬼蜘蛛の意識が目覚めた。
死んだ筈の桔梗が甦ったことに気付いたのか。
何度、桔梗を殺そうとしても出来ないのだ。
体が、否、心が、それを受け入れようとしない。
あの薄汚い野盗の意識が己の意思に頑強に抵抗する。
だから、切り離した。
この奈落から。
その結果が、こうだ。


体内に巣喰う妖怪どもが、ザワザワと蠢(うごめ)き這い出てこようとする。
気を許せば今にも体外に飛び出しかねない。
鬼蜘蛛の桔梗への執着、妖怪には有るまじき人間の凄まじい情念こそが妖怪どもを押さえ付けてきたのだ。
(まだ早かったか。もう一度、奴をこの身に取り込まねばならんな)
鬼蜘蛛の肉塊を体外に排出してからズッと監視は続けてきた。
旅の修行僧の顔を奪い無双と名乗っているらしい。
(ククッ・・・期せずして見栄えの良い顔を選んだようだな)
予測違(たが)わず無双は犬夜叉達と接触した。
どう足掻こうが宿怨(しゅくえん)が互いを引き寄せあうのだ。
最猛勝(さいみょうしょう)を供に奈落は鬼蜘蛛改め無双の許へと急いだ。
浅ましくも薄汚い欲に塗(まみ)れた人間の魂を、再度、体内に取り込む為に。
                 了


【宿怨(しゅくえん)】:前々からの怨み。

 

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桔梗の思い

『降り積もる思い(27)=神無=』の後の部分に桔梗が出てきます。
鬼女、裏陶(うらすえ)の鬼術によって、無理矢理、あの世から魂を引き戻された桔梗の魂。
当初は犬夜叉に対する怨みの念に凝り固まっていた桔梗ですが、次第に本来の巫女の使命に目覚めていきます。
犬夜叉達と行動を共にこそしませんが、同じ目的(『打倒奈落 四魂の玉消滅』)に向かい尽力します。
そんな桔梗の心情を管理人なりに推測して描写してみました。



【生と死の間(あわい)に漂いて】

濃い藍色の闇の中、朧(おぼろ)に光る死魂虫(しにだまちゅう)。
ユラユラと宙を浮遊するアレらが運んでくるのは哀れな女の死魂(しにだま)。
ポオッと仄かな輝きを宿しつつ死魂は静かに私の中に吸い込まれていく。
済まない 死せる女達の魂よ。 
今暫(しば)し私とともに在ってくれ。
骨と土で作られた仮初めの体に納められた我が魂は体同様に不完全な物。
死魂を取り入れねば、この身を動かすことさえ叶わぬ。
生者ではないが完全な亡者とも云えぬこの身。
何故、 このような形で現世(げんせ)に留(とど)まるのか。
無理矢理、この世に引き戻された当初は、それすら定かではなかった。
唯々、愛憎に心引き裂かれた記憶だけが回帰して憎くて愛しい男を殺したいと思った。
亡者と生者、どう足掻こうと結ばれぬ運命(さだめ)。
ならば地獄へまでも共に連れゆこうと願った。
されど、天は、それを許さなかった。
愛しい男の、犬夜叉の傍らには私の生まれ変わり、かごめが寄り添っていたのだ。
輪廻の輪は既に回り始めていた。
私は桔梗、過ぎ去りし昔の亡霊。
だからといって、このまま消えることなど出来ようか。
もう一度、この世に連れ戻されたのには何か意味があるのではなかろうか。
そして思い悩んだ末に到達した結論は“四魂の玉を今度こそ消滅させる”こと。
私と犬夜叉が引き裂かれたのも元を糺(ただ)せば四魂の玉が紡ぎ出す悪しき因果の糸に絡め取られた結果。
鬼蜘蛛とて四魂の玉の力に惹かれ妖怪達に利用されたに過ぎない。
奈落という半妖を生み出す為に。
諸悪の根源である四魂の玉を今度こそ完全にこの世から消す。
そう思い定めた時、もはや迷いは消え去っていた。
不思議なほど心は静かで凪(な)いでいた。
浄化の巫女として奈落を倒し四魂の玉を消滅させよう。
それこそが、再び、この世に連れ戻された私の使命なのだろう。
 

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小話のネタ



※上記の画像は『ぱたぱたアニメ館』よりお借りしました。
URL=http://www.pata2.jp/

夕方(と云っても冬は暮れるのが早いから外はもう暗い)、買い物に行こうとマンションの共有部分の廊下の窓から、ふと外を見たら・・・・。
オオッ 何て見事な満月
思わずパチパチと拍手しちゃいました。
一般には秋の月が一年で、一番、美しいと云われます。
しかし、管理人は冬の月こそが最も美しいと感じます。
凍て付くような寒さの中、冴え冴えとした輝きを発する冬の月。
そう、冬の月って兄上を思い起こさせるんです。

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そんな月を見て、どうして想像せずにいられましょうか
管理人はアマチュアとは云え小説書きでございます。
あの見事な月をモチーフに何とか小話を捻ってみます。


『寒月』

ヒュウ~~~時折、吹き付ける風が凍るように冷たい。
二十四節気によれば今は小寒の頃、これから、大寒に向けて寒さが、益々、弥増(いやま)す時期だ。
家の中で、りんは囲炉裏の前に座り温かい夕餉の椀をすすっていた。
今夜は昨夜の猪鍋の残りだった。
大根や茸と一緒に煮込まれた滋養タップリな汁物。
ホカホカと身体が温まるのが判る。
猪は、昨日、訪ねてきた殺生丸が届けてくれた。
一緒に付いてきた邪見の話によると村へ来る途中、急に猪が襲い掛ってきたそうだ。
殺生丸は驚くこともなく無造作に爪で猪を屠(ほふ)り、土産に、丁度、良いと持ってきてくれたのであった。
今迄に見たこともないような大きな猪で、村の者、全員に振舞っても、まだ余る程であった。
残った肉は陽に干して干し肉として冬の蓄えに廻すことになった。
明り取りの窓から漏れてきた月の光に、りんが気が付いた。
窓の外に目を遣れば、空に掛かるのは見事な真円の月。
今宵は雲が少ない。
殆ど風に吹き飛ばされたせいだろう。
遮る物のない透徹した夜気の中、真冬の月は皓々と輝いていた。

「楓さま、ホラ、見て。大きな月が!」

「オオッ、これは見事な。そう云えば、今夜は十五夜、満月だったな」

「ねえ、楓さま、冬の月って怖いくらい冴えた感じがするね」

「そうだな、秋の十五夜が一年で最も美しいと云われるが、わしは、寧ろ、こうした寒の入りに入ってからの寒月こそが最も月らしいと思うておる。凍(い)て付くような寒気の中、その輝きは何処までも研ぎ澄まされて。そうさな、まるで・・・・」

楓が、敢えて口にしなかった御方の事を、りんも考えていた。
額にある月の徴、頬に走る二筋の朱の妖線、月のような金の瞳、月光のような銀の髪、冴えた美貌が月の化身を思わせる彼の大妖を。
月を見る度にりんは殺生丸の事を思い出していた。
りんに取って殺生丸は地上の月その物だった。
誰よりも美しく強い妖(あやかし)を慕い憧れ一緒に旅をした。
殺生丸が、りんを楓に預けてから三年近くなる。
りんが父のように兄のように慕ってきた大妖。
だが、近頃、そうした幼い感情が微妙に変化し始めていた。
殺生丸のことを思うと、りんの小さな胸の奥が微かに疼くのだ。

「殺生丸さま・・・・」

同じ頃、西国で月を眺めながら、殺生丸も、りんのことを思っていた。

「・・・・りん」

寒の月は冴え冴えと地上を照らしながら天上を滑るように渡っていく。
殺生丸とりん、互いの想いを橋渡しするかのように。     了


お詫び
済みません、今日は此処までです。
拍手の御礼は明日にします。
小話を捻り出したせいでパワーを使い果たしました。
バタッ




拍手[4回]

小話Ⅱ(拍手文)

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◆◆54巻の巻頭、曲霊にりんちゃんを拉致された後の邪見です。

拍手文を格納、小話Ⅱとしてupしました。
 
新しい拍手文は、現在、考案中です。


********『逃げるべきか、死すべきか①』**********
 

邪見は悩んでいた。
それは、もう、タラタラと脂汗を流す程、真剣に。
主の大事な大事な養い仔、りんが、曲霊の毒気に当たって、ズッと気絶したままなのだ。
もし、この場へ主が戻ってきたら・・・血を見る事は必至。
少々、怪我をする程度のお仕置きで済めば良いのだが、今回ばかりは、下手をすると殺されるかも知れない。
どうする?逃げるか?
イヤイヤ、そんな事をしても鼻の利く主の事だ。
仮に逃げ出したとしても即座に捜し出されて、余計に烈しい折檻を喰らう羽目になりかねない。
邪見の思考は、もうグルグルと堂々巡りを繰り返すばかりだった。




********『逃げるべきか、死すべきか②』**********
 

わしが、額に汗して必死に考えていた矢先に、りんが目覚めた。
曲霊を風穴で吸い込んで気を失い、りんと同じく道具小屋に寝かされていた法師。
弥勒とか云ったか、奴からザワザワとどす黒い邪気が抜け出たのだ。
その邪気が消え失せたと思ったら、法師が目覚めおった。
そうしたら、ほぼ同時に、りんも目を覚ましたのじゃ。
ヤレ、助かった、命拾いしたとホッと胸を撫で下ろしたものじゃった。




********『逃げるべきか、死すべきか③』**********
 

りんが目を覚ましたので、これで、殺生丸さまのお怒りを買う心配は無くなった。
ヤレ、有りがたい。
そう思って喜んだのも束の間。
りんは、法師から抜け出た曲霊の邪気に憑依されていたのじゃっ!
そして、妖怪に乗って、何処ぞへ行ってしまった。
事態は、一層、悪くなってしまった。
アア~~わしは、どうすれば良いのじゃっ!
このままでは、逃げても地獄、逃げなくても地獄。
どちらに転んでも主の超絶お仕置きが待っているに違いない。


 


********『逃げるべきか、死すべきか④』**********
 

りんが居なくなったと云うのに、のん気な法師と老巫女。
腹が立って、腹が立って、ついつい逃げるのも忘れて彼奴らに喰ってかかっていた時、殺生丸さまが!
音も無く背後に立っておられたのだ。
(ヒイィィィ~~~~ こっ、殺されるぅ~~~~!)
遂に、あの世行きかと覚悟したら・・・・。

「曲霊は生きていたか」

そう一言おっしゃるなり、即座に飛んで行ってしまわれた。
なっ、何と、曲霊は、彼奴めは、生きていたのか!
・・・・しぶとい奴だのう。
てっきり、殺生丸さまが、あ奴の息の根を止めたのだと思っていたが。




*********『逃げるべきか、死すべきか⑤』
 

わしを折檻するのも忘れて飛んで行ってしまわれた殺生丸さま。
それは、取りも直さず、りんの身に、危険が迫っているという事じゃろうか?
これでは、お仕置きを免れたのを喜んで良いのか、悪いのか、判断に苦しむのう。
とにもかくにも、殺生丸さまと、りんが、無事に戻って来てくれるのを祈るばかりじゃ。
アア~~~殺生丸さまの事じゃから大丈夫だと思いはするが・・・・。
何せ、相手は、あの、ずる賢い奈落と曲霊じゃからのう。
心配じゃ~~~! 
こんな処で気を揉んでるくらいなら、わしも一緒に付いていけば良かったわい。
何? 逃げないのか?じゃと! 
失礼な! わしを誰だと心得るのじゃ! 
殺生丸さまの第一の僕、邪見さまじゃぞ! 
わしが御供しないで、どうするのじゃ! 
・・・・・でも、置いてかれちゃった。
(内心、ホッとする邪見であった)

 


此処までお付き合い下さって有難う御座いました。これまで頂いた拍手に感謝致します。




**********潜入!奈落玉①**********

七宝は息を呑んだ。
・・・でかい! 
でか過ぎるぞ! 
何なんじゃ!
あの出鱈目な大きさは!
あれが全部、奈落だというのか?
あの訳が判らない大きな黒い玉が?!
あんな中に犬夜叉達は入って行ったと云うのか?
おっ、おら、やっぱり大人しく村で待ってる事にしようかな?
ホッ、ホレ、おらは、やっぱり子供だから・・・。
そう思ってたら、いきなり目の前で奈落玉に穴が開いたんじゃ!
奈落玉の一部が根こそぎ無くなっておる。
黒い冥道、間違いない!
犬夜叉の冥道残月破じゃ!
内で奈落と戦っておるのじゃ!
そしたら、琥珀が、強引に、その開いた部分に阿吽を突入させたんじゃ!
エ”ッ、そっ、そんな、おら、まだ心の準備が・・・
ア”~~~~~~~~~~ッ!

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気がでました!m(__)m


**********潜入!奈落玉②**********

事の成り行きで奈落玉の中に潜入してしまったおら達。
誰って、おらと邪見と琥珀の三人じゃ。
最初、おらは一人で奈落玉に乗り込む積りだったんじゃ。
そしたら邪見が声をかけてきおってのう。
その上、琥珀まで一緒に行きたいと云い出す始末。
そんな訳でな、仕方ない。
ここは三人で行こうと話が纏(まと)まったんじゃ。
阿吽に乗って近くまで寄って見れば桁外れの大きさではないか。
こっ、こんな化け物の中に入って行くのはチョッと・・・。
そう思ったが琥珀がサッサと阿吽を奈落玉に開いた穴へと突入させてしまったんじゃ。
こうして奈落玉の中に入ってしまった以上、覚悟を決めて犬夜叉達を見つけるしかないのう。
エエイ、男は度胸じゃ!
それにしても中は見かけより更に広い。
一体、奈落は、どれだけの数の妖怪を取り込んだんじゃろう。
これだけの規模の大きさじゃ。
どう考えても百や千の妖怪では利くまい。
多分、万単位、イヤ、下手すると十万、百万単位じゃろうな。
何とも呆れるような悪食(あくじき)振りじゃ。


拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気、倍増です!m(__)m


**********潜入!奈落玉③**********

ウワッ! 
目の前に奈落の触手がバキバキ突き出してきた!
アアッ!
邪見が突き飛ばされた!
ヒェ~~~~ッ!
次は、おらじゃあ~~~~~!
しっかりしなくては!
おらがシッカリしなくては!
そう思うんじゃが、固い触手が立ち塞がって。
邪見も琥珀も見えなくなってしまった。
ワアァ~~~~!
邪見~~~~~!
琥珀~~~~~!
何処に居るんじゃあ~~~~~!
一人は嫌じゃあ~~~~~!

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気3倍です!m(__)m



**********潜入!奈落玉④**********

ウウッ、一人は心細いのう、寂しいのう。
それでも気を取り直して奈落玉の中を彷徨い歩くおら。
そしたら光が見えたんじゃ!
あれは、きっと、犬夜叉やかごめの齎(もたら)した光に違いない!
光を目指すおらの前に、まっ、又しても黒い冥道が!
ドワ~~~~~~ッ!
あっ、危なかった~~~~
もっ、もう少しで、おらまで、あの世逝きじゃった。
(ドキドキしながら周囲を見回す七宝)
ンンッ、あそに居るのは夢幻の白夜ではないか?
背負っている刀を抜いたぞ。
エッ?! 
あの刀には刀身が無い!
なっ、何をする積りなんじゃ?
と見る間に黒い刀身が現れたぞ!
どっ、どういう事なんじゃ?
訝(いぶか)しむおらに白夜が話し掛けてきおった。
何でも、あの黒い刀身は冥道残月破の妖力を吸収した物だと。
そっ、そんな馬鹿な!
殺生丸や犬夜叉が、あんなに苦労して磨き上げた技じゃぞ!
貴様如きが、そんなに簡単に手に入れられる筈がないではないか!
そう喚くおらをアッサリ無視して白夜はサッサと消えてしもうた。
命が惜しかったら早く逃げた方が良いと忠告までくれてな。
つまり、おらは全く眼中にないと云う訳か?

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気4倍です!m(__)m


**********潜入!奈落玉⑤**********

白夜が姿を消してからじゃ。
何だか奈落玉の様子が可笑しい。
騒がしくなってきた。
見れば、奈落の体内がドンドン壊れ始めているではないか。
そう云えば、夢幻の白夜も左肩辺りからバサッと斬られたように無かった。
・・・という事はだ。
犬夜叉達の攻撃が利いていると考えて間違いなかろう。
ともかく犬夜叉やかごめ達と合流せねば!
そう思ってセッセと、まだ壊れていない中心部(上部)に向かって行けば。
バチーーーーーン
何かが、落ちてきた!
まともに顔に直撃じゃ。
キララではないか!
その後、次から次へと落ちてきよった。
カーーーーーーン
また、何か当たった。
さっ、流石にクラッときたぞ。
こっ、これは飛来骨と錫杖。
珊瑚と弥勒の武器ではないか。
それだけではない。
止(とど)めに本人達まで揃って落ちてきよった!
ギャアアアアアアア・・・・

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元気5倍です!m(__)m


**********潜入!奈落玉⑥**********

エエイッ、かくなる上は狐妖術! 風船玉じゃ!
落ちてきたキララ、飛来骨、錫杖、それから弥勒と珊瑚。
フゥ~~全て回収完了じゃ。
フウッ、フウフウ。
こっ、この術を会得しといて良かった。
おらの細腕では、どうやっても皆を抱えきれんかったからな。
ウム、真面目に修行はしておくもんじゃな。
奈落を滅したら狐妖術の試験に行くとするか。
大妖怪になるには、まだまだ腕を上げねばならんからのう。
目指せ、正一位(※官位)!
その前に、まず、この奈落玉から脱出せねばのう。

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気6倍です!m(__)m

 

**********潜入!奈落玉⑦**********

おらに気が付き感謝する弥勒。
そうじゃろう、そうじゃろう。
やっぱり、おらが居らんと困るじゃろうが。
珊瑚も程なく気が付いた。
二人とも、かなり瘴気を浴びているようじゃが大丈夫か?
すると弥勒が云ったんじゃ。

「珊瑚、私は、まだ戦える」

そう云えば風穴の音がせん。
前は、あんなにハッキリと聞こえていたのに。
裂け目が塞がったのか。
珊瑚も弥勒の様子に元気を取り戻したようじゃ。
ヨシッ、このまま奈落の中心部へ向かうぞ。
待っておれ、犬夜叉、かごめ。
今、行くぞ!

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気7倍です!m(__)m

 

**********潜入!奈落玉⑧**********

弥勒達を乗せたまま、おらは奈落の中心部に向かう。
奈落玉の内部は崩壊の一途を辿っておる。
それも見る間に片っ端から壊れていきよるんじゃ。
どうも、この壊れっぷりは、犬夜叉とかごめの攻撃のせいだけとは思えん。
もしかして・・・殺生丸か!
ウムッ、そうじゃ!そうに違いない!
アイツの爆砕牙なら、この破壊速度の速さも納得できる。
殺生丸が爆砕牙を振るったと云う事は・・・。
曲霊に拉致されたりんを、無事、救出したんじゃ。
そうじゃ、そうに違いない。
ヨシッ、そうと決まれば急がねば!
フウフウ、フウフウ。

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気8倍です!m(__)m



**********潜入!奈落玉⑨**********

見えた! 
犬夜叉とかごめが奈落と戦っておる。
キララが目を覚ました。
変化して弥勒と珊瑚を乗せ飛んで行く。
戦線復帰じゃ。
危ない!
かごめを狙って奈落が瘴気の塊りを飛ばしよった。
そうはさせじと珊瑚の飛来骨が、かごめに襲い掛かる瘴気弾を砕く。
次々と撃ち出される瘴気弾は弥勒が一気に風穴で吸い込んでいく。
おらは足場を失った犬夜叉とかごめを乗せる。
驚く犬夜叉とかごめ。
フフン、助けにきてやったんじゃ。
感謝せえよ!

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気9倍です!m(__)m

 

**********潜入!奈落玉⑩**********

おらが犬夜叉とかごめを乗せた途端、殺生丸がやって来た。
ガガガガガガ・・・ガガガッ・・
物凄い衝撃と破壊音と共に登場じゃ。
相変わらず派手じゃのう。
やはり、アイツ爆砕牙を振るったんじゃ。
ンッ、殺生丸の後方に続くのは・・・。
阿吽に乗った邪見と琥珀、それに、りんではないか。
そうか、皆、無事だったんじゃな。
ヨシッ、これで全員、勢揃いじゃ!
サア、みんなで奈落を倒すんじゃ!

拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気10倍です!m(__)m


『一郎太の恋』    2009.1/10(土)格納

俺の名は一郎太。
村長(むらおさ)の息子だ。
今年で十三になった。
俺には姉が五人もいる。
女ばっかり続いた後に一番最後に生まれたのが長男の俺だ。
つまり、俺は待望の跡継ぎって訳だ。
だから、親父もお袋も、俺を、特別、大事にしている。
いずれ、俺は親父の跡を継いで村長(むらおさ)になる。
村の誰よりもえらくなるんだ。
この村には巫女さまが居る。
楓さまと云って近在でも一番の霊力の持ち主なんだそうだ。
隻眼で右目に眼帯をしてる迫力のある婆さまだ。
楓さまには俺の親父も村人も一目置いてる。
その楓さまが、最近、養い仔を預かった。
奈落とかいう妖怪との戦いの後だった。
俺は、その頃、丁度、山向こうの親戚の家に遊びに行ってた。
だから、戻ってきた時、村の荒れた様子に吃驚した。
みんな、奈落って妖怪の瘴気のせいなんだとさ。
或る日、楓さまが養い仔を連れて、俺ん家に挨拶に来た。
それが、りんに会った最初だ。
とにかく村の子供とは見た目からして丸っきり違ってた。
りんは右の髪を一房、チョコンと結わえてた。
目が大きくて睫毛も長い。
村のどの女子(おなご)よりも可愛い顔をしてる。
それに色が抜けるように白い。
村の子供達は、みんな、毎日、田んぼや畑で親の手伝いをする。
だから、男子(おのこ)も女子(おなご)もみんな日に焼けてるんだ。
着物だって汚しても平気な野良着ばっかりだ。
でも、りんは、いつも綺麗な上等の着物を着てる。
まるで何処かの姫様みたいだ。
親父に聞いてみたら、りんは親なしっ子らしい。
何でも村に住み着いてる犬夜叉の兄貴が、りんを楓さまに預けたんだってさ。
犬夜叉は半妖だ。
俺達人間と違って髪は真っ白けだし目だって獣みたいな金色だ。
爪も長くて鋭いし、力だって滅茶苦茶強い。
真っ赤な衣を着て腰には大刀を差してる。
その犬夜叉の兄貴ってことは、やっぱり半妖なのかな?
そんな奴が、どういう理由で、りんを預けたんだろう。
まあ、そんな事はいいや。
とにかく、この村で一番えらいのは村長(むらおさ)の親父なんだ。
そして、その親父の跡を継ぐのが俺。
だったら、楓さまの養い仔のりんだって俺の云う事に従うべきなんだ。
なのに、りんは、ちっとも俺の機嫌を取ろうとしない。
村の子供は、男も女も、みんな俺の顔色をうかがうのに。
気に喰わない。
他の奴らにはニコニコ笑顔を見せるのに。
俺には、全然、笑いかけようともしない。
だから、ちょっと虐めてやろうと思ったんだ。
りんが楓さまの用で川向こうの村に行くため、橋を渡ろうとしてた。
俺は子分の奴らと一緒に橋の真ん中で待ち受けて通せんぼしてやった。
図体のデカイ吾作とヤセの耕平が俺の子分だ。
橋を通りたかったら土下座しろって。
そうしたら、りんの奴、泣きもしないでジッと俺の顔を見るんだ。
ドキッとするような澄んだ目だった。
まるで深い淵を覗き込んだような。
どうしようか?と俺が思う間もなかった。
イキナリ目の前に男が!
それも、今迄、見た事もないような形(なり)をしたお侍が!
背が高い!
見上げる程だ。
長い白銀の髪は腰まである。
右肩に掛かる豪華な白い毛皮。
見慣れない不思議な形の胴鎧。
腰には二本の大刀が。
もしかして、これが犬夜叉の兄貴なのか?
ソイツが俺の方を見た。
額には三日月の徴。
頬には二本の赤い線が走ってる。
犬夜叉と同じ金色の目。
でも・・犬夜叉とは・・全然・・・違う。
こっ・・怖い。
見られただけで凍り付くような・・・
ギュッて押し潰されそうな・・・
胃の腑がひっくり返りそうな気分だ。
身体中から冷や汗が吹き出して来る。

「「「ウッ、ウワアァァァァ・・・」」」

俺は叫び声を上げずにいられなかった。
吾作や耕平も同じだ。
大声で喚きながら死に物狂いで逃げた。
捕まったら殺される!
本当にそんな気がしたんだ。
おっ、怖ろしい、あれは魔物か。
暗くなってから家に戻ったら親父にコッテリ絞られた。
二度と馬鹿な真似をするんじゃないって。
云われなくても二度としねえよ!
犬夜叉は乱暴だけど怖くない。
でも、犬夜叉の兄貴は・・・。
どう云えばいいんだろう。
そっ、そうだ。
まるで蛇に睨まれた蛙(かえる)みたいな気持ちになるんだ。
金縛りに遭ったみたいに身体が動かなくなって。
猛獣に追いつめられた獲物みたいに逃げようにもに逃げられなくなる。
あんな思いは二度とご免だ。
犬夜叉の兄貴は『殺生丸さま』って名前らしい。
りんが、何時も、嬉しそうに、そう呼ぶんだ。
その後『殺生丸さま』は頻繁に村に現われるようになった。
勿論、りんに逢うためだ。
来るたびに必ず何か土産を持って来てるらしい。
珍しい食べ物に季節ごとの着物や帯、髪を纏める組み紐。
特に着物や帯は、村娘如きじゃ一生かかっても手に入れられない豪華な物ばかりらしい。
俺のお袋や村の女どもが、りんの土産を羨ましがって喋ってたからな。
そしたら不心得者の女がいて、りんの着物をくすねる事件が起こった。
元から手癖が悪いと評判の女だった。
でも、用心深くて誰も証拠を見つけられなかった。
その女、コッソリ家で、盗んだ着物を羽織ったらしい。
村中に響き渡ったトンデモナイ叫び声。
驚いた村の衆が駆け付けてみたら、そこには盗んだ着物を纏ったまま悶絶した女が。
りんの持ち物には『呪(しゅ)』が掛けられてたんだ。
え~~~と、『呪(しゅ)』ってのは・・・。
つまり、りん以外の誰かが、それを身に付けると怖ろしい幻に襲われるんだってさ。
楓さまが、後で村のみんなに詳しく説明してくれた。
それ以来、りんの持ち物に手を出そうなんて大馬鹿者は村に居なくなった。
アッ、また来た、『殺生丸さま』が。
そう云えば、前に来た日から三日経ってるな。
何時も、御供の小妖怪が付いてくるんだ。
あの小妖怪は邪見とか云う名前らしいや。
俺と吾作、耕平の三人は、邪見から目の敵にされてる。
橋ん所で、りんを通せんぼしたのをシッカリ見られてたらしい。
俺達を見かけると何時も人頭杖って奇妙な杖を振り回して追いかけて来るんだ。
だから、出来るだけ近寄らないようにしてる。
でも、遠くからコッソリ見るくらいは許されるよな。
りんが村に来てから三年が経った。
もう、以前みたいに女(め)の童って感じじゃない。
随分、娘らしくなった。
華奢で小柄だけど本当に綺麗だ。
今じゃ、りんは『狗神さまの姫さま』って呼ばれてる。
どうしてかって云うとだな。
以前、村を襲おうとした野武士の集団が居たんだ。
その頭目を『殺生丸さま』が腰に差した爆砕牙って刀で消しちまったから。
一刀両断なんてもんじゃない!
文字通り塵も残さず消しちまったんだ。
俺は、この目で見てたんだからな。
それ以来、『殺生丸さま』は『狗神さま』、りんは『狗神さまの姫さま』になったんだ。
神さまが相手じゃ、もう、どうしたって敵(かな)いっこないや。
やっと最近、りんのこと、諦めが付いたんだ。
ハア~~~俺って、随分、諦めが悪いや。     了

2008.11/13.(木)


 

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邪見のボヤキ⑫

ピヨピヨ邪見
次から次へと落ちてくる瘴気の塊に、村人が逃げ惑う。
何とも・・・・酷い惨状じゃ
今しも目の前で、親子と思(おぼ)しき男二人が、落ちてくる瘴気弾の餌食にならんとしている。
オウッ! 雲母に跨った法師が、風穴で、折り良く、瘴気弾を吸い取った。
ムムッ・・・しかし、奈落玉を何とかせんと、どうしようもないぞ。



そう思っていたら、奈落玉から脱出した犬夜叉が、新技の冥道残月破で奈落玉を攻撃。
刃の形をした冥道が、崩壊寸前の奈落玉に襲い掛かる。
殺生丸様の球形の冥道残月破を見慣れた身には、何とも面妖な!
だが、効果は有ったようじゃの。



奈落玉は、消滅こそしておらんが、今にも崩壊しそうな気配じゃ。
奈落玉の表面を覆い尽くす、幾つもの渦巻き。
まるで、奈落玉の断末魔のようじゃ。
このまま、消え去ってくれれば良いのだが。



巫女の霊力を持つ、かごめが、破魔の矢を、番(つが)えている。
奈落玉を射る積もりか???
ウゥ~~ム、この先、どうなるんじゃろう???
まあ、殺生丸様が控えていらっしゃる事だし、犬夜叉も居る。
何とかなるんじゃろうが・・・・。



イヤイヤ、油断は禁物じゃな。
あれだけ狡賢(ずるがしこ)い奈落の事じゃ。
どんな奇策が飛び出すやも知れん。
今迄、何度、奴を仕留めたと思わされては臍(ほぞ)を噛んで来た事か!



思い起こせば、白霊山の時と云い、あの世の境での戦闘と云い、彼奴のしぶとさは呆れる程じゃった。
何度、彼奴の体を斬り刻み打ち砕いてきた事か!
その度に、不死鳥のように蘇りおってからに。



だが、今度こそは、これまでのようには行かんぞ!
何と云っても、今や、殺生丸様には爆砕牙が有る。左腕も復活した。
犬夜叉めにも、殺生丸様に譲って貰った冥道残月破が有るしな。



そろそろ、お別れの時刻が、やって来たようじゃ。
名残惜しいが、此処で儂のボヤキもネタ切れになった。
いずれ、また、こうした機会もあろう。
ではな、皆の者、それまで達者で暮らせよ!


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邪見のボヤキ⑪

ピヨピヨ邪見
今にも崩れそうな奈落玉は、瘴気を撒き散らしながら、次第に高度を下げて行く。何とも不気味な姿じゃのう。
ンンッ、この方角は・・・・???
儂らが逗留していた人里に向かっておるではないか!
まさか・・・まさか・・・奈落の奴、これを村に落とす気じゃなかろうな???



内心、危惧する儂らの目の前で、ボコッという音と共に瘴気の塊りが!
剥がれ落ちて行く! 上空から雨のように村に降り注ぐ!
こんな強い瘴気に触れたら、人も獣も一瞬で御陀仏じゃ。
見ろ、村人の家が、瞬時に溶かされてしもうた。



フウッ・・・・危機一髪、それにしても危ない処じゃった。
もし、あの村に留まっていたら、儂も、あのように逃げ惑う羽目になっておっただろう。
それにしても、犬夜叉達は、何をしておるんじゃっ!
早く奈落玉の暴走を止めんかい!
このままでは、村が壊滅してしまうぞっ!



あの村、イヤ、楓という年老いた巫女の家には、りん共々、暫く厄介になった。そうした恩義がある以上、放ってもおけんではないかっ!
人間風情に恩義など感じたくないがな。
一応、妖怪にも“仁義”という物があるのじゃ。

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