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モゾッ・・・ズッ・・ズズッ・・・体内で蠢(うごめ)く有象無象の気配。
身の内に取り込んだ何十、何百とも知れぬ妖怪どもが表面に出ようともがいているのだ。
ピシッ、バリッ・・・人払いした薄暗い部屋の中、端整な容貌の青年の右腕が変化した。
浮かび出てきたのは異形の腕だった。
鋭い爪が覗く赤黒い皮膚のおぞましい鬼のような腕。
それを青年は驚きもせずに眺めグッと握りこみ封じ込める。
フッ・・・鬼の腕が引っ込んだ。
青年の意思のままに。
男にしては色の白い、だがスンナリと筋肉のついた綺麗な腕が見える。
(アレを出して以来、頻繁に出て来ようとする)
(フン・・・まだ鬼蜘蛛とは縁が切れんようだな)
周囲の者達には城主の人見蔭刀(ひとみかげわき)として認識されている人物、奈落は、内心、自嘲するように呟いた。
つい先日、奈落は、ある肉塊を生み出した、イヤ、切り離した。
奈落に取って最も忌まわしい鬼蜘蛛の意識を持つ肉塊を。
鬼蜘蛛、五十年前、巫女である桔梗に浅ましい想いを抱いた野盗。
四魂の玉を餌にして男の魂を繋ぎに使い数多(あまた)の妖怪が合体して生まれたのが半妖の奈落だ。
誕生したばかりの奈落は鬼蜘蛛の執着を利用した。
嫉妬に狂う男が桔梗を殺すように仕向けたのだ。
事は思惑通りに進んだ。
桔梗は深手を負って死に、恋仇の犬夜叉も封印された。
だが、誤算が生じた。
肝心の四魂の玉が桔梗とともに消え失せてしまったのだ。
それ以後、鬼蜘蛛の意識は眠りについた。
魂までも引き換えにして望んだ桔梗の死に絶望したのか。
不意に今まで眠り込んでいた鬼蜘蛛の意識が目覚めた。
死んだ筈の桔梗が甦ったことに気付いたのか。
何度、桔梗を殺そうとしても出来ないのだ。
体が、否、心が、それを受け入れようとしない。
あの薄汚い野盗の意識が己の意思に頑強に抵抗する。
だから、切り離した。
この奈落から。
その結果が、こうだ。
体内に巣喰う妖怪どもが、ザワザワと蠢(うごめ)き這い出てこようとする。
気を許せば今にも体外に飛び出しかねない。
鬼蜘蛛の桔梗への執着、妖怪には有るまじき人間の凄まじい情念こそが妖怪どもを押さえ付けてきたのだ。
(まだ早かったか。もう一度、奴をこの身に取り込まねばならんな)
鬼蜘蛛の肉塊を体外に排出してからズッと監視は続けてきた。
旅の修行僧の顔を奪い無双と名乗っているらしい。
(ククッ・・・期せずして見栄えの良い顔を選んだようだな)
予測違(たが)わず無双は犬夜叉達と接触した。
どう足掻こうが宿怨(しゅくえん)が互いを引き寄せあうのだ。
最猛勝(さいみょうしょう)を供に奈落は鬼蜘蛛改め無双の許へと急いだ。
浅ましくも薄汚い欲に塗(まみ)れた人間の魂を、再度、体内に取り込む為に。
了
【宿怨(しゅくえん)】:前々からの怨み。
『降り積もる思い(27)=神無=』の後の部分に桔梗が出てきます。
鬼女、裏陶(うらすえ)の鬼術によって、無理矢理、あの世から魂を引き戻された桔梗の魂。
当初は犬夜叉に対する怨みの念に凝り固まっていた桔梗ですが、次第に本来の巫女の使命に目覚めていきます。
犬夜叉達と行動を共にこそしませんが、同じ目的(『打倒奈落
四魂の玉
消滅
』)に向かい尽力します。
そんな桔梗の心情を管理人なりに推測して描写してみました。
【生と死の間(あわい)に漂いて】
濃い藍色の闇の中、朧(おぼろ)に光る死魂虫(しにだまちゅう)。
ユラユラと宙を浮遊するアレらが運んでくるのは哀れな女の死魂(しにだま)。
ポオッと仄かな輝きを宿しつつ死魂は静かに私の中に吸い込まれていく。
済まない 死せる女達の魂よ。
今暫(しば)し私とともに在ってくれ。
骨と土で作られた仮初めの体に納められた我が魂は体同様に不完全な物。
死魂を取り入れねば、この身を動かすことさえ叶わぬ。
生者ではないが完全な亡者とも云えぬこの身。
何故、 このような形で現世(げんせ)に留(とど)まるのか。
無理矢理、この世に引き戻された当初は、それすら定かではなかった。
唯々、愛憎に心引き裂かれた記憶だけが回帰して憎くて愛しい男を殺したいと思った。
亡者と生者、どう足掻こうと結ばれぬ運命(さだめ)。
ならば地獄へまでも共に連れゆこうと願った。
されど、天は、それを許さなかった。
愛しい男の、犬夜叉の傍らには私の生まれ変わり、かごめが寄り添っていたのだ。
輪廻の輪は既に回り始めていた。
私は桔梗、過ぎ去りし昔の亡霊。
だからといって、このまま消えることなど出来ようか。
もう一度、この世に連れ戻されたのには何か意味があるのではなかろうか。
そして思い悩んだ末に到達した結論は“四魂の玉を今度こそ消滅させる”こと。
私と犬夜叉が引き裂かれたのも元を糺(ただ)せば四魂の玉が紡ぎ出す悪しき因果の糸に絡め取られた結果。
鬼蜘蛛とて四魂の玉の力に惹かれ妖怪達に利用されたに過ぎない。
奈落という半妖を生み出す為に。
諸悪の根源である四魂の玉を今度こそ完全にこの世から消す。
そう思い定めた時、もはや迷いは消え去っていた。
不思議なほど心は静かで凪(な)いでいた。
浄化の巫女として奈落を倒し四魂の玉を消滅させよう。
それこそが、再び、この世に連れ戻された私の使命なのだろう。
◆◆54巻の巻頭、曲霊にりんちゃんを拉致された後の邪見です。
拍手文を格納、小話Ⅱとしてupしました。
新しい拍手文は、現在、考案中です。
********『逃げるべきか、死すべきか①』**********
邪見は悩んでいた。
それは、もう、タラタラと脂汗を流す程、真剣に。
主の大事な大事な養い仔、りんが、曲霊の毒気に当たって、ズッと気絶したままなのだ。
もし、この場へ主が戻ってきたら・・・血を見る事は必至。
少々、怪我をする程度のお仕置きで済めば良いのだが、今回ばかりは、下手をすると殺されるかも知れない。
どうする?逃げるか?
イヤイヤ、そんな事をしても鼻の利く主の事だ。
仮に逃げ出したとしても即座に捜し出されて、余計に烈しい折檻を喰らう羽目になりかねない。
邪見の思考は、もうグルグルと堂々巡りを繰り返すばかりだった。
********『逃げるべきか、死すべきか②』**********
わしが、額に汗して必死に考えていた矢先に、りんが目覚めた。
曲霊を風穴で吸い込んで気を失い、りんと同じく道具小屋に寝かされていた法師。
弥勒とか云ったか、奴からザワザワとどす黒い邪気が抜け出たのだ。
その邪気が消え失せたと思ったら、法師が目覚めおった。
そうしたら、ほぼ同時に、りんも目を覚ましたのじゃ。
ヤレ、助かった、命拾いしたとホッと胸を撫で下ろしたものじゃった。
********『逃げるべきか、死すべきか③』**********
りんが目を覚ましたので、これで、殺生丸さまのお怒りを買う心配は無くなった。
ヤレ、有りがたい。
そう思って喜んだのも束の間。
りんは、法師から抜け出た曲霊の邪気に憑依されていたのじゃっ!
そして、妖怪に乗って、何処ぞへ行ってしまった。
事態は、一層、悪くなってしまった。
アア~~わしは、どうすれば良いのじゃっ!
このままでは、逃げても地獄、逃げなくても地獄。
どちらに転んでも主の超絶お仕置きが待っているに違いない。
********『逃げるべきか、死すべきか④』**********
りんが居なくなったと云うのに、のん気な法師と老巫女。
腹が立って、腹が立って、ついつい逃げるのも忘れて彼奴らに喰ってかかっていた時、殺生丸さまが!
音も無く背後に立っておられたのだ。
(ヒイィィィ~~~~ こっ、殺されるぅ~~~~!)
遂に、あの世行きかと覚悟したら・・・・。
「曲霊は生きていたか」
そう一言おっしゃるなり、即座に飛んで行ってしまわれた。
なっ、何と、曲霊は、彼奴めは、生きていたのか!
・・・・しぶとい奴だのう。
てっきり、殺生丸さまが、あ奴の息の根を止めたのだと思っていたが。
*********『逃げるべきか、死すべきか⑤』
わしを折檻するのも忘れて飛んで行ってしまわれた殺生丸さま。
それは、取りも直さず、りんの身に、危険が迫っているという事じゃろうか?
これでは、お仕置きを免れたのを喜んで良いのか、悪いのか、判断に苦しむのう。
とにもかくにも、殺生丸さまと、りんが、無事に戻って来てくれるのを祈るばかりじゃ。
アア~~~殺生丸さまの事じゃから大丈夫だと思いはするが・・・・。
何せ、相手は、あの、ずる賢い奈落と曲霊じゃからのう。
心配じゃ~~~!
こんな処で気を揉んでるくらいなら、わしも一緒に付いていけば良かったわい。
何? 逃げないのか?じゃと!
失礼な! わしを誰だと心得るのじゃ!
殺生丸さまの第一の僕、邪見さまじゃぞ!
わしが御供しないで、どうするのじゃ!
・・・・・でも、置いてかれちゃった。
(内心、ホッとする邪見であった)
此処までお付き合い下さって有難う御座いました。これまで頂いた拍手に感謝致します。
**********潜入!奈落玉①**********
七宝は息を呑んだ。
・・・でかい!
でか過ぎるぞ!
何なんじゃ!
あの出鱈目な大きさは!
あれが全部、奈落だというのか?
あの訳が判らない大きな黒い玉が?!
あんな中に犬夜叉達は入って行ったと云うのか?
おっ、おら、やっぱり大人しく村で待ってる事にしようかな?
ホッ、ホレ、おらは、やっぱり子供だから・・・。
そう思ってたら、いきなり目の前で奈落玉に穴が開いたんじゃ!
奈落玉の一部が根こそぎ無くなっておる。
黒い冥道、間違いない!
犬夜叉の冥道残月破じゃ!
内で奈落と戦っておるのじゃ!
そしたら、琥珀が、強引に、その開いた部分に阿吽を突入させたんじゃ!
エ”ッ、そっ、そんな、おら、まだ心の準備が・・・
ア”~~~~~~~~~~ッ!
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気がでました!m(__)m
**********潜入!奈落玉②**********
事の成り行きで奈落玉の中に潜入してしまったおら達。
誰って、おらと邪見と琥珀の三人じゃ。
最初、おらは一人で奈落玉に乗り込む積りだったんじゃ。
そしたら邪見が声をかけてきおってのう。
その上、琥珀まで一緒に行きたいと云い出す始末。
そんな訳でな、仕方ない。
ここは三人で行こうと話が纏(まと)まったんじゃ。
阿吽に乗って近くまで寄って見れば桁外れの大きさではないか。
こっ、こんな化け物の中に入って行くのはチョッと・・・。
そう思ったが琥珀がサッサと阿吽を奈落玉に開いた穴へと突入させてしまったんじゃ。
こうして奈落玉の中に入ってしまった以上、覚悟を決めて犬夜叉達を見つけるしかないのう。
エエイ、男は度胸じゃ!
それにしても中は見かけより更に広い。
一体、奈落は、どれだけの数の妖怪を取り込んだんじゃろう。
これだけの規模の大きさじゃ。
どう考えても百や千の妖怪では利くまい。
多分、万単位、イヤ、下手すると十万、百万単位じゃろうな。
何とも呆れるような悪食(あくじき)振りじゃ。
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気、倍増です!m(__)m
**********潜入!奈落玉③**********
ウワッ!
目の前に奈落の触手がバキバキ突き出してきた!
アアッ!
邪見が突き飛ばされた!
ヒェ~~~~ッ!
次は、おらじゃあ~~~~~!
しっかりしなくては!
おらがシッカリしなくては!
そう思うんじゃが、固い触手が立ち塞がって。
邪見も琥珀も見えなくなってしまった。
ワアァ~~~~!
邪見~~~~~!
琥珀~~~~~!
何処に居るんじゃあ~~~~~!
一人は嫌じゃあ~~~~~!
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気3倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉④**********
ウウッ、一人は心細いのう、寂しいのう。
それでも気を取り直して奈落玉の中を彷徨い歩くおら。
そしたら光が見えたんじゃ!
あれは、きっと、犬夜叉やかごめの齎(もたら)した光に違いない!
光を目指すおらの前に、まっ、又しても黒い冥道が!
ドワ~~~~~~ッ!
あっ、危なかった~~~~
もっ、もう少しで、おらまで、あの世逝きじゃった。
(ドキドキしながら周囲を見回す七宝)
ンンッ、あそに居るのは夢幻の白夜ではないか?
背負っている刀を抜いたぞ。
エッ?!
あの刀には刀身が無い!
なっ、何をする積りなんじゃ?
と見る間に黒い刀身が現れたぞ!
どっ、どういう事なんじゃ?
訝(いぶか)しむおらに白夜が話し掛けてきおった。
何でも、あの黒い刀身は冥道残月破の妖力を吸収した物だと。
そっ、そんな馬鹿な!
殺生丸や犬夜叉が、あんなに苦労して磨き上げた技じゃぞ!
貴様如きが、そんなに簡単に手に入れられる筈がないではないか!
そう喚くおらをアッサリ無視して白夜はサッサと消えてしもうた。
命が惜しかったら早く逃げた方が良いと忠告までくれてな。
つまり、おらは全く眼中にないと云う訳か?
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気4倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑤**********
白夜が姿を消してからじゃ。
何だか奈落玉の様子が可笑しい。
騒がしくなってきた。
見れば、奈落の体内がドンドン壊れ始めているではないか。
そう云えば、夢幻の白夜も左肩辺りからバサッと斬られたように無かった。
・・・という事はだ。
犬夜叉達の攻撃が利いていると考えて間違いなかろう。
ともかく犬夜叉やかごめ達と合流せねば!
そう思ってセッセと、まだ壊れていない中心部(上部)に向かって行けば。
バチーーーーーン
何かが、落ちてきた!
まともに顔に直撃じゃ。
キララではないか!
その後、次から次へと落ちてきよった。
カーーーーーーン
また、何か当たった。
さっ、流石にクラッときたぞ。
こっ、これは飛来骨と錫杖。
珊瑚と弥勒の武器ではないか。
それだけではない。
止(とど)めに本人達まで揃って落ちてきよった!
ギャアアアアアアア・・・・
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気5倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑥**********
エエイッ、かくなる上は狐妖術! 風船玉じゃ!
落ちてきたキララ、飛来骨、錫杖、それから弥勒と珊瑚。
フゥ~~全て回収完了じゃ。
フウッ、フウフウ。
こっ、この術を会得しといて良かった。
おらの細腕では、どうやっても皆を抱えきれんかったからな。
ウム、真面目に修行はしておくもんじゃな。
奈落を滅したら狐妖術の試験に行くとするか。
大妖怪になるには、まだまだ腕を上げねばならんからのう。
目指せ、正一位(※官位)!
その前に、まず、この奈落玉から脱出せねばのう。
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気6倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑦**********
おらに気が付き感謝する弥勒。
そうじゃろう、そうじゃろう。
やっぱり、おらが居らんと困るじゃろうが。
珊瑚も程なく気が付いた。
二人とも、かなり瘴気を浴びているようじゃが大丈夫か?
すると弥勒が云ったんじゃ。
「珊瑚、私は、まだ戦える」
そう云えば風穴の音がせん。
前は、あんなにハッキリと聞こえていたのに。
裂け目が塞がったのか。
珊瑚も弥勒の様子に元気を取り戻したようじゃ。
ヨシッ、このまま奈落の中心部へ向かうぞ。
待っておれ、犬夜叉、かごめ。
今、行くぞ!
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気7倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑧**********
弥勒達を乗せたまま、おらは奈落の中心部に向かう。
奈落玉の内部は崩壊の一途を辿っておる。
それも見る間に片っ端から壊れていきよるんじゃ。
どうも、この壊れっぷりは、犬夜叉とかごめの攻撃のせいだけとは思えん。
もしかして・・・殺生丸か!
ウムッ、そうじゃ!そうに違いない!
アイツの爆砕牙なら、この破壊速度の速さも納得できる。
殺生丸が爆砕牙を振るったと云う事は・・・。
曲霊に拉致されたりんを、無事、救出したんじゃ。
そうじゃ、そうに違いない。
ヨシッ、そうと決まれば急がねば!
フウフウ、フウフウ。
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気8倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑨**********
見えた!
犬夜叉とかごめが奈落と戦っておる。
キララが目を覚ました。
変化して弥勒と珊瑚を乗せ飛んで行く。
戦線復帰じゃ。
危ない!
かごめを狙って奈落が瘴気の塊りを飛ばしよった。
そうはさせじと珊瑚の飛来骨が、かごめに襲い掛かる瘴気弾を砕く。
次々と撃ち出される瘴気弾は弥勒が一気に風穴で吸い込んでいく。
おらは足場を失った犬夜叉とかごめを乗せる。
驚く犬夜叉とかごめ。
フフン、助けにきてやったんじゃ。
感謝せえよ!
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気9倍です!m(__)m
**********潜入!奈落玉⑩**********
おらが犬夜叉とかごめを乗せた途端、殺生丸がやって来た。
ガガガガガガ・・・ガガガッ・・
物凄い衝撃と破壊音と共に登場じゃ。
相変わらず派手じゃのう。
やはり、アイツ爆砕牙を振るったんじゃ。
ンッ、殺生丸の後方に続くのは・・・。
阿吽に乗った邪見と琥珀、それに、りんではないか。
そうか、皆、無事だったんじゃな。
ヨシッ、これで全員、勢揃いじゃ!
サア、みんなで奈落を倒すんじゃ!
拍手★有難うございました!(●^o^●)
元気10倍です!m(__)m
『一郎太の恋』 2009.1/10(土)格納
俺の名は一郎太。
村長(むらおさ)の息子だ。
今年で十三になった。
俺には姉が五人もいる。
女ばっかり続いた後に一番最後に生まれたのが長男の俺だ。
つまり、俺は待望の跡継ぎって訳だ。
だから、親父もお袋も、俺を、特別、大事にしている。
いずれ、俺は親父の跡を継いで村長(むらおさ)になる。
村の誰よりもえらくなるんだ。
この村には巫女さまが居る。
楓さまと云って近在でも一番の霊力の持ち主なんだそうだ。
隻眼で右目に眼帯をしてる迫力のある婆さまだ。
楓さまには俺の親父も村人も一目置いてる。
その楓さまが、最近、養い仔を預かった。
奈落とかいう妖怪との戦いの後だった。
俺は、その頃、丁度、山向こうの親戚の家に遊びに行ってた。
だから、戻ってきた時、村の荒れた様子に吃驚した。
みんな、奈落って妖怪の瘴気のせいなんだとさ。
或る日、楓さまが養い仔を連れて、俺ん家に挨拶に来た。
それが、りんに会った最初だ。
とにかく村の子供とは見た目からして丸っきり違ってた。
りんは右の髪を一房、チョコンと結わえてた。
目が大きくて睫毛も長い。
村のどの女子(おなご)よりも可愛い顔をしてる。
それに色が抜けるように白い。
村の子供達は、みんな、毎日、田んぼや畑で親の手伝いをする。
だから、男子(おのこ)も女子(おなご)もみんな日に焼けてるんだ。
着物だって汚しても平気な野良着ばっかりだ。
でも、りんは、いつも綺麗な上等の着物を着てる。
まるで何処かの姫様みたいだ。
親父に聞いてみたら、りんは親なしっ子らしい。
何でも村に住み着いてる犬夜叉の兄貴が、りんを楓さまに預けたんだってさ。
犬夜叉は半妖だ。
俺達人間と違って髪は真っ白けだし目だって獣みたいな金色だ。
爪も長くて鋭いし、力だって滅茶苦茶強い。
真っ赤な衣を着て腰には大刀を差してる。
その犬夜叉の兄貴ってことは、やっぱり半妖なのかな?
そんな奴が、どういう理由で、りんを預けたんだろう。
まあ、そんな事はいいや。
とにかく、この村で一番えらいのは村長(むらおさ)の親父なんだ。
そして、その親父の跡を継ぐのが俺。
だったら、楓さまの養い仔のりんだって俺の云う事に従うべきなんだ。
なのに、りんは、ちっとも俺の機嫌を取ろうとしない。
村の子供は、男も女も、みんな俺の顔色をうかがうのに。
気に喰わない。
他の奴らにはニコニコ笑顔を見せるのに。
俺には、全然、笑いかけようともしない。
だから、ちょっと虐めてやろうと思ったんだ。
りんが楓さまの用で川向こうの村に行くため、橋を渡ろうとしてた。
俺は子分の奴らと一緒に橋の真ん中で待ち受けて通せんぼしてやった。
図体のデカイ吾作とヤセの耕平が俺の子分だ。
橋を通りたかったら土下座しろって。
そうしたら、りんの奴、泣きもしないでジッと俺の顔を見るんだ。
ドキッとするような澄んだ目だった。
まるで深い淵を覗き込んだような。
どうしようか?と俺が思う間もなかった。
イキナリ目の前に男が!
それも、今迄、見た事もないような形(なり)をしたお侍が!
背が高い!
見上げる程だ。
長い白銀の髪は腰まである。
右肩に掛かる豪華な白い毛皮。
見慣れない不思議な形の胴鎧。
腰には二本の大刀が。
もしかして、これが犬夜叉の兄貴なのか?
ソイツが俺の方を見た。
額には三日月の徴。
頬には二本の赤い線が走ってる。
犬夜叉と同じ金色の目。
でも・・犬夜叉とは・・全然・・・違う。
こっ・・怖い。
見られただけで凍り付くような・・・
ギュッて押し潰されそうな・・・
胃の腑がひっくり返りそうな気分だ。
身体中から冷や汗が吹き出して来る。
「「「ウッ、ウワアァァァァ・・・」」」
俺は叫び声を上げずにいられなかった。
吾作や耕平も同じだ。
大声で喚きながら死に物狂いで逃げた。
捕まったら殺される!
本当にそんな気がしたんだ。
おっ、怖ろしい、あれは魔物か。
暗くなってから家に戻ったら親父にコッテリ絞られた。
二度と馬鹿な真似をするんじゃないって。
云われなくても二度としねえよ!
犬夜叉は乱暴だけど怖くない。
でも、犬夜叉の兄貴は・・・。
どう云えばいいんだろう。
そっ、そうだ。
まるで蛇に睨まれた蛙(かえる)みたいな気持ちになるんだ。
金縛りに遭ったみたいに身体が動かなくなって。
猛獣に追いつめられた獲物みたいに逃げようにもに逃げられなくなる。
あんな思いは二度とご免だ。
犬夜叉の兄貴は『殺生丸さま』って名前らしい。
りんが、何時も、嬉しそうに、そう呼ぶんだ。
その後『殺生丸さま』は頻繁に村に現われるようになった。
勿論、りんに逢うためだ。
来るたびに必ず何か土産を持って来てるらしい。
珍しい食べ物に季節ごとの着物や帯、髪を纏める組み紐。
特に着物や帯は、村娘如きじゃ一生かかっても手に入れられない豪華な物ばかりらしい。
俺のお袋や村の女どもが、りんの土産を羨ましがって喋ってたからな。
そしたら不心得者の女がいて、りんの着物をくすねる事件が起こった。
元から手癖が悪いと評判の女だった。
でも、用心深くて誰も証拠を見つけられなかった。
その女、コッソリ家で、盗んだ着物を羽織ったらしい。
村中に響き渡ったトンデモナイ叫び声。
驚いた村の衆が駆け付けてみたら、そこには盗んだ着物を纏ったまま悶絶した女が。
りんの持ち物には『呪(しゅ)』が掛けられてたんだ。
え~~~と、『呪(しゅ)』ってのは・・・。
つまり、りん以外の誰かが、それを身に付けると怖ろしい幻に襲われるんだってさ。
楓さまが、後で村のみんなに詳しく説明してくれた。
それ以来、りんの持ち物に手を出そうなんて大馬鹿者は村に居なくなった。
アッ、また来た、『殺生丸さま』が。
そう云えば、前に来た日から三日経ってるな。
何時も、御供の小妖怪が付いてくるんだ。
あの小妖怪は邪見とか云う名前らしいや。
俺と吾作、耕平の三人は、邪見から目の敵にされてる。
橋ん所で、りんを通せんぼしたのをシッカリ見られてたらしい。
俺達を見かけると何時も人頭杖って奇妙な杖を振り回して追いかけて来るんだ。
だから、出来るだけ近寄らないようにしてる。
でも、遠くからコッソリ見るくらいは許されるよな。
りんが村に来てから三年が経った。
もう、以前みたいに女(め)の童って感じじゃない。
随分、娘らしくなった。
華奢で小柄だけど本当に綺麗だ。
今じゃ、りんは『狗神さまの姫さま』って呼ばれてる。
どうしてかって云うとだな。
以前、村を襲おうとした野武士の集団が居たんだ。
その頭目を『殺生丸さま』が腰に差した爆砕牙って刀で消しちまったから。
一刀両断なんてもんじゃない!
文字通り塵も残さず消しちまったんだ。
俺は、この目で見てたんだからな。
それ以来、『殺生丸さま』は『狗神さま』、りんは『狗神さまの姫さま』になったんだ。
神さまが相手じゃ、もう、どうしたって敵(かな)いっこないや。
やっと最近、りんのこと、諦めが付いたんだ。
ハア~~~俺って、随分、諦めが悪いや。 了
2008.11/13.(木)