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第四作目『仇敵(原作バージョン)』

りんが攫われた。 
邪見が息せき切って駆けつけ急を告げた次の瞬間!!
辺りの闇に溶け込むかのように暗い影が、狒々の毛皮を身に纏い、己の前に現れた。
この臭いは・・・奈落。 
以前、四魂の欠片を埋め込んだ人間の左腕と毒虫、最猛勝の巣を己に差出し、犬夜叉達と闘わせようとした喰わせ者。 
相変わらず気に障(さわ)る臭いだ。

「ご安心下さい。殺生丸様。」 

・・・慇懃(いんぎん)無礼な申し様。

「願いを聞いて戴きさえすれば・・・りんと言う娘は無事にお返し致します。」

「奈落・・・か。」
 
「今度は何を企んでいる。」
 
・・・穢らわしい奴。

「特別な事ではございません、」
 
「只、犬夜叉を殺して下さればいい。」

「ふっ、そんな事の為に、もってまわった事を・・・」

ザシュッ!
目にも止まらぬ早業で殺生丸の爪が奈落の首を刎ねる。 
叢(くさむら)に転がる狒々の頭。
だが、見よ! 
奈落の死体は其処には見当たらず・・・残るは傀儡(くぐつ)と土くれ。

「この殺生丸が、たかが人間の小娘の為に、言いなりになると思っているのか。」

「では、殺生丸様、りんをお見捨てに・・・・・・?」
 
「って、殺生丸様っ。どちらへ!?」

邪見が喚く。
言うまでもない。 
不快な奈落の臭いを追うのだ。 
あ奴め・・・わざと臭いを洩らして、この殺生丸を誘いおる。
今度こそ斬って捨ててくれるわ。
一見、何の変哲もない風景の場所に辿り着いた主従。 
邪見が心配そうに尋ねる。

「殺生丸様、一体、どうなさるお積りで・・・」 
「奈落の城だ・・・」

「は・・・?」
 
「はて・・・城など見えませぬが・・・」

グニャリと空間が歪み結界が開く。 
奈落の城が目の前に出現した。
篝火(かがりび)の焚(た)かれた主殿に奈落が座している。 
周囲には瘴気が満ち、此処が妖怪どもの巣窟である事を嫌が上にも示している。 
・・・人間の城を乗っ取ったのか。

「わざと臭いを洩らし、城の場所を教え・・・・・・この殺生丸を招き入れるとはな。」

「只、お招きしただけでは、来て頂けそうにもなかったので・・・・・・・・」

「尤も、お捜しの小娘は、此処にはおりませんがな・・・・・・・」
 
不遜な笑みを洩らす奈落。

「何しろ、この瘴気の中では、人間は一瞬たりとも息ができませぬ。」
 
ククッ・・・・

「小娘は。城の外で、お預かりしております。 今の所は、ご安心を・・・」

「奈落、貴様、私が、りんを助けに来たのではない事くらい判っているだろう。」

「はい・・・殺生丸様は、人に指図されるのが大嫌いなご様子・・・」

「言いなりに犬夜叉を殺すでなく、小娘を捜すでなく・・・くくっ・・・」

「まず、この奈落を殺しに来ると・・・判っておりました。」
 
そう、待っていたのだ・・・お前を。

「ふっ・・・まんまと私をおびき出したと言いたげだな・・・」
 
・・・策ばかり弄しおって・・・

「用件は後でゆっくり聞いてやろう。」
 
「貴様が生きていたらの話だがな。」
 
バキッ!!
研ぎ澄まされた爪が鳴る。 
ザワザワと周囲の空気が殺生丸の妖気で揺らめく。
( くくく・・・殺生丸―――嫌でも、この奈落に力を貸してもらうぞ)

「くくく・・・殺生丸様、折角、ご足労頂いたのだ。」
 
瘴気が溢れ始める。
ザワ・・・・・・

「この奈落・・・たっぷりと、おもてなし致しましょう。」 

バキッバキッ・・・バキバキッ!
見る間に醜悪な本性を現し出した奈落。 
不気味な触手、蟷螂のような前脚、百足のような胴体。
見れば見るほど醜悪にして不快極まりない、その姿。 
・・・おぞましい・・・。

「ふっ、クズ妖怪の寄せ集め・・・」
 
「奈落・・・それが貴様の正体か。」

侮蔑を含んだ殺生丸の問いかけに奈落は、薄気味悪い余裕を覗(のぞ)かせながら答えた。

「正体・・・いいえ、この姿は・・・まだ途中で御座います。」
 
シャッ―――――!
襲い掛かる触手、ドカッ! 
地面にのめりこむ程の攻撃が、次から次へと繰り出される。

「ふん・・・目的は、この殺生丸の命・・・か」 

攻撃を躱(かわ)しつつ闘鬼神を抜き放つ殺生丸。
バキバキッ・・・バキッ! 
不気味な触手を闘鬼神で斬って捨てる。
ザンッ! ドカッ!
バラバラに寸断され地に落ちる触手の塊り。 
シューシューと切り口から音が漏れる。

「奈落・・・貴様ごとき下等妖怪・・・。 この殺生丸に指一本、触れる事は出来ん」

「くくく・・・」
 
斬り刻まれながら、尚も余裕の笑みを洩らす奈落・・・。
ザワ・・・ザワザワ・・・ビシッ!ビシビシッ!
触手が、肉片が、一つに集まり始めたではないか。
ザザッ・・・ビチッ! 
殺生丸の左の足許に絡み付く肉片。 
その上、更に、新しく斬った触手の肉片までもが今度は、失った左腕の袂(たもと)に捲きついてきた。 
ビシッ!
(くくく・・・・・・斬り刻んだ分だけ、貴様は、儂の肉片に包まれていく。 そして・・・)
異変が生じた! 
(この感じは・・・何者かが儂の結界を破ろうとしている!)

「神楽、行け!」
 
櫓(やぐら)の辺りで、儂と殺生丸の闘いを見ていた神楽に命じた。
己の身から生じた分身とはいえ、完全に儂に忠誠を誓っている訳ではない神楽。
何故、そのような事が判ると? 
儂の分身だからだ。 
もし、儂が神楽ならば・・・いつまでも、儂の支配下におりたい等とは、露ほども思うまいからな・・・。
だが、今の処は、面と向かって儂に逆らう気配は見せておらん。 
駒として生かしておいてやる。

「来客か、奈落・・・その者は気の毒だな。」

「折角、尋ねてきたというのに・・・」

「生きた貴様に会う事は叶わん!」
 
闘鬼神の闘気を高め、一気に振り下ろす。

ザシュッ!ドガッ!
ボタボタと零れ落ちる肉片の山。
攻撃を受けながら満足気に奈落がほくそえむ。 
謀(はかりごと)を巡らし他者を陥れて生き永らえた生。
邪悪な計画の完成は、もう、目の前まで来ている。 
(くくく、もう少しだ・・・)
(殺生丸、貴様は、間もなく、この奈落の肉塊に喰われ・・・儂の体の一部になる!)
何?! 向かってくる気配! 
神楽め、仕留めそこねたか。 
まあ、いい。 少し急ぐとするか。

「殺生丸様・・・ゆっくりと、お相手している暇は無くなった」
 
そう、これが最後・・・。

「貴方様の、その、完全なる妖怪のお力・・・全て、この奈落が食らわせて頂く。」

肉片が一斉に殺生丸に襲いかかる。
瞬(またた)く間に肉片が殺生丸を覆い尽くしたと思った、その時、犬夜叉が、結界破りの赤い鉄砕牙とともに乗り込んできた。

「奈落!!」

「それが・・・てめえの本性か!!」

「犬夜叉・・・」 

「喰らえ!風の傷!」
 
ゴオォ~~~! 妖気が渦を巻く。
奈落の結界に牙を剥く犬夜叉の風の傷。 
結界破りの力を付けたおかげで更に妖力が増している。
粉砕される奈落の結界。 
バババッ! ドガガッ!
驚きを隠せない奈落。 
・・・・馬鹿な! こんな筈では・・・くくっ!!
動揺する奈落を尻目に、肉塊の山に、切れ目が走った。 
ピシッ! バラバラ・・・バラッ・・・
殺生丸が闘鬼神を手に中から現れた。 
些(いささ)かの損傷も無く、いつも通りの涼しい顔で。
兄が現れた事に驚く犬夜叉。
 
「殺生丸・・・」
 
何故、此処に・・・?

今や、形勢は逆転した。 
殺生丸を取り込み、完全なる妖怪の力を己の物にする筈が・・・。

「ふっ、奈落よ、皮肉だな。」
 
これ以上は無いだろう皮肉を込めて殺生丸が話しかける。

「私を包んだ貴様の肉片が・・・犬夜叉の風の傷の盾になろうとは・・・」

(誤算だった・・・。 犬夜叉がここまで攻め込んで来るとは・・・)
ひとまず、此処は凌がねばならない。 
犬夜叉でけでなく殺生丸までをも相手にするには分が悪すぎる・・・。 
一旦、引いて態勢を立て直さねば・・・。

「くくく、犬夜叉、貴様・・・。結界を斬れるようになったのか」

「奈落、てめえ・・・今度こそ逃がさねえぞ」
 
「覚悟しやがれ!」

犬夜叉が吠える! 
唸りを上げて鉄砕牙を振りかざそうとした瞬間、一瞬、早く殺生丸が突っ込んできた・

「こ奴は、私の獲物だ!」
 
振り下ろされる闘鬼神。 ドガッ!
ズタズタになった奈落の本体。 
ブワッ!最早、これまでと見て取った奈落が瘴気を撒き散らして逃げる体勢を取った。 
最猛勝も後を追う。 ブ~~~ン

「殺生丸様・・・今日のところは退散致します」
 
ザア―――――――

「馬鹿が・・・私から逃げられるとでも思っているのか」 

ザワッ・・・ミシミシ・・・・
殺生丸の妖気が変化し始めた。 
朱の紋様は色濃く太くなり、双眸も血のように赤くなり今にも本性に変わろうとした時、奈落が投げつけた捨て台詞。

「くくく、殺生丸様。 変化して儂を追うよりも、お連れの小娘を早く迎えに行かれた方が良い・・・」

殺生丸の変化が止まる。 
更に追い討ちをかける奈落の台詞。

「りんは、今、琥珀という者と一緒にいる」
 
琥珀という名前に犬夜叉が反応した。
珊瑚の弟、琥珀の事か!? 
犬夜叉の疑問に答えるように奈落が言葉を付け足す。

「それが、どういう事か・・・犬夜叉・・・貴様なら想像が付くだろう・・・」

琥珀は奈落に支配されている・・・背中に四魂の欠片を仕込まれて。
奈落の命令があれば――――琥珀は誰であろうと殺す――――――

「おう、殺生丸。 お前、人質でも取られてんのか?」
 
「りんってのは、お前の連れか?」

・・・りんを攫ったのは、逃げる時を稼ぐ為・・・か。
奈落―――――つくづく姑息な奴だ。 
ひとまず、りんを連れ戻す事が先決だ。
妖力を使い、空を飛び現場に急行する殺生丸。 
奈落が仄(ほの)めかした琥珀とやらの事も気に掛かる。
空から妖視で、りんを捜す。 
見えた! 
どうやら、あれが琥珀とかいう小僧らしい。
倒れたりんに、覆い被さるような体勢で鎖の付いた鎌を構えている。
奈落に感じた怒りとは別の、凶暴な感情が湧き出してくる。 
りん!
小僧の背後に降り立ち、様子を窺う。 
りんに目立った外傷は無いようだ。
私の気配に気付いた小僧が、無謀にも武器を構えて、向かってこようとする。

「ほお・・・刃向かう気か・・・」
 
それならば、受けて立つまでの事。
爪を鳴らし、引き裂いてやろうとした、その瞬間、飛び込んできた犬夜叉が小僧を殴りつけた!

「琥珀! 何やってんだ、てめえ!」
 
叢(くさむら)に倒れる小僧。
犬夜叉の連れの女・・・かごめとか言ったか、その女も駆けつけ、りんの様子を確かめる。

「大丈夫よ。この子・・・・・・・気絶してるだけだわ」 

かごめの言葉に安堵する犬夜叉。

「聞いた通りだ、殺生丸。 琥珀には手を出すな!」

「無駄だ、犬夜叉。 貴様が、どう庇い立てした処で・・・」

「その小僧は、どうあっても私の爪に掛かりたいらしい・・・」

起き上がり、鎖鎌を構え、攻撃の態勢を整える琥珀とかいう小僧。
ジリジリと機を窺うその気配。

(くっ、これも奈落の暗示か!――――殺生丸を挑発して殺されろと・・・)
犬夜叉の苦悩をよそに狙い定めた鎖鎌が放たれた!
ジャッ!! それを鉄砕牙で弾き飛ばす犬夜叉。
だが、一瞬の間隙(かんげき)を突き、殺生丸が琥珀の喉頸を掴んだ!
しなやかで強力な力を秘めた毒の爪を持つ殺生丸の手。
その気になれば瞬時に琥珀の命を奪えるだろう大妖の手。
(それにしても・・・おかしい。この小僧、何故、泣かぬ!恐れ慄(おののか)かぬ!)
(今まで、この殺生丸に捕らわれ、何の感情も見せなかった相手はいなかった)
(これは・・・何かあるな・・・)

「小僧の武器を、振り払うとは・・・犬夜叉、貴様が、そんなに兄思いとは知らなかったな」

「何、寝言いってやがる! てめえ、その手、離さねえと、たたっ斬るぞ!」

(やはり・・・この小僧・・・奈落に何か仕組まれてるな・・・泣きも喚きもしない・・・)
(この目つき・・・・・・・気に喰わん!)
 
小僧を放り出してやる。 ドサッ!
りんが気が付いたらしい・・・己を見た途端に、嬉しそうに笑い、名を呼ぶ。

「!」

しかし、琥珀とかいう小僧に気付いた瞬間、何とも複雑な表情を見せた。
開放された小僧は、奈落の分身、神楽の羽根に乗り、去っていく。 
ビュウゥ~~~~~
かごめは、戸惑いながら、殺生丸に感謝した。
 
「有り難う・・・琥珀君を許してくれて・・・」

「あの小僧は、私に殺されようとしていた。」 

淡々と言葉を返す殺生丸。

「殺生丸、お前・・・・・・気付いていたのか。」 

そうか・・・だから、殺さなかったんだな。

「奈落のくだらん思惑に乗りたくなかっただけだ。」
 
如何にも殺生丸らしい言葉。
幼いりんが、殺生丸の後を追って、駆けて行く。 
後ろを振り返りながら、可愛らしく別れの言葉を口にして。 
かごめ達には信じられなかった。
あの・・・殺生丸が・・・冷酷非情な男が・・・あんな小さな人間の女の子を連れている?
今まで・・・誰にも執着した事の無い男が、初めて興味を示した存在。
りん―――幼い童女の存在が、この後、冷酷非情と怖れられた大妖の心の在り様を変化させていく。
何事にも頓着せず、己の気の向くままに生きてきた殺生丸が保護した人間の小娘。
その、りんを攫い、あまつさえ、命さえも奪おうとした奈落。
それは、取りも直さず、殺生丸に対する挑戦状であった。 
これ以後、奈落は、殺生丸の仇敵として狙われる事になる。 
共に天を戴く事も叶わぬ不倶戴天の敵として。     了

                                       2006.5/22.(月) 作成◆◆

《「仇敵」についてのコメント》

ご存知、りんちゃんが初めて攫われた事件を題材に書き上げた作品です。
奈落と殺生丸、犬夜叉界の二大イケメンの対決。
当時は、管理人、まだ奈落に、そう思い入れが無かったので普通に書いてます。
13作目では、この「仇敵」の奈落バージョンを、再度、書き上げています。

2006.8/10(木)★★★猫目石

 

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