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第二十五作目『騒動事始め』★★★年賀作品

元旦――――偉容を誇る西国城の天守閣にある城主の私室にて、目が覚めるような瓜二つの美形が御二方。白銀の長い髪、金色の獣眼、額には月の紋様、頬の妖線は片や二筋、もう一方は一筋。 ここまで聞けば、もう、お判りだろう。御二方は、謂わずと知れた西国王の殺生丸と、その御母堂様。ノンビリと御屠蘇(おとそ)を嗜んでいらっしゃる御母堂様に対し、西国王の方は、何やら怒り心頭に発していらっしゃる御様子で、一体、何が、あったと云うのだろうか?
西国王の怒りに反応してモコモコが三倍近くに膨れ上がっている。邪見以下、木賊(とくさ)に藍生(あいおい)、主だった側近連中は、“触らぬ神に祟りなし”とばかりに母子の話し合いを遠巻きに眺めている。かなり離れていると云うのに、余程、気が立っているのか、ビリビリと襖(ふすま)越しにさえ怒りのオーラが伝わって来る。主の“お怒りモード”は、長年お仕えして、かなり慣れている邪見でも、思わずヒイィッ!と叫びたくなるような険悪さである。

「そう、カッカするな、殺生丸。折角の年賀の酒が不味くなるではないか。」

「・・・カッカしているのは誰のせいだと思っている!?」

「そんなに気に入らないのか? 先程の話が。」

「当たり前だ!!!」

「小娘・・・いや、りんを、妾(わらわ)の養女にすると申しただけではないか。」

「・・・私に一言の断りも無く!!!」

事の始まりは、西国城の大広間で行われていた年賀の宴に、突然、現われた御母堂様の、これまた突然の爆弾宣言に端を発している。何と、母君は、その席上で、りんを御自分の“養女にする”と宣言なさったのである。 これには、年賀の席に付いていた臣下一同、皆、呆気(あっけ)に取られ、中でも、そんな事は、一言も聞かされていない殺生丸にとっては、正に“寝耳に水”の出来事。それ故、只今、西国王の御機嫌は、絶不調、最悪の様相を呈しているのであった。

「では、聞くが、殺生丸よ。そなた、もし、妾(わらわ)が、りんを養女にする件について、話を持ちかけたら、どう反応していた?」

「当然、反対するに決まっているっ!」

「だろう? だから、相談しなかった。」

「・・・・・」

「それにだな、良く考えてみろ。確かに、そなたは、小娘を庇護しておるが、西国において、その身分は、何に相当するのだ? 養女にする訳でなし(出来る訳ないが)、義妹(ぎまい)でもなし、寵姫(ちょうき)     にも非(あら)ず(これも、まだ、当分は無理だな)。 良く云って客分(これにしても大分、無理があるな)が精々だろうに。不安定極まりない状態だな。」

「くっ・・・・」

母君に指摘されるまでもなく、それは、殺生丸自身、既に気付いていた事であった。しかし、これと云った方策が浮かばず、有耶無耶(うやむや)にしたまま、今日に至っていた。

「西国国内だけなら、それも良かろうさ。お主が、睨みを利かせている限り、誰にも文句は、言わせんだろうし、そんな命知らずは、おるまいからな。だがな、他国に対しては、そうはゆかぬぞ。
 何しろ、そなたは、妖怪世界において最大の領土を誇る西国の王なのだ。それだけでも、周りが放っておかない上に、その若さ、おまけに、性格は、ともかく、見掛けだけは、母親の妾(わらわ)に似たせいか、女どもに騒がれるような容姿をしておる。このままならば、早晩、何処ぞの国から婚姻の申し込みが来るに違いないさ。りんの存在など、一切、無視してな。いや、それだけならば、まだ良い。下手をすれば、邪魔な存在として抹殺の手が伸びるやも知れぬ。元々、りんは脆弱(ぜいじゃく)な人の仔。簡単に消せると判断されるかもな。もし、そのような事態に陥ったら、殺生丸、お前は、どうする積りだ?」

「・・・・・」

母の指摘は、尤もな事であった。事実、既に、そのような申し込みは、何度もあった。その度に、丁重な書状を添えて断ってきたが・・・・。 確かに、このままでは、母が云ったように、縁談を断る原因が、“りんの存在”と気付かれ、中には、刺客を差し向ける国も出て来るかも知れない。

「だからこそ、妾(わらわ)が、そうさせない為に、先手を打ってやったのさ。例え、人の仔であろうと、先代国妃、当代の生母の“養女”ともなれば、容易に手は出せまい。」

母の云う事は、しごく尤も、なのであるが、殺生丸は、素直に、その言い分に頷く気には、なれなかった。勿論、今、言われた事に異議を唱える気は無い。無いが・・・何か、引っかかるのである。
この母が、亡くなった父に引けを取らぬ程の妖力と知略を謳われた先代国妃が、唯、そうした事実だけで動くような甘い性格でない事は、息子である己が、一番、良く承知している。何が狙いだ?

「それに、建前だけでも、義理の兄妹となれば、そなたも、そうそう簡単に、りんに手は出せぬだろうし。あれは、まだまだ幼い。如何に人の仔の成長が、早くとも、後、数年は、待たねばなるまいよ。お主が、無茶をせぬように見張っていてやる必要がある。今では、“義理の母”という立派な名目もある事だしな。」

未だ衰えぬ絶世の美貌に、人の悪い微笑を覗かせて、心底、楽しそうに母君が、宣(のたま)う。それを聞いた殺生丸の秀麗な眉が、不快そうにピクッ!と跳ね上がった。 好い気な物だ! それが、目的か!? そう云えば、思い出した!! 本当は、娘が欲しかった!などと抜かして、幼い頃、この母は、事もあろうに、この私に女児の格好をさせていたのだ!!!
男児は、虚弱な事が多い為、健康に育つように女装させて育てる、という上流社会の風習を盾に。何も知らぬ私は、髪形まで母と同じにされて、毎日、人形代わりにアレコレ着せ替えられ遊ばれた
物だった。或る日、その馬鹿げた事実に気が付き、着せられていた女物の衣装を、せめてもの腹癒(はらい)せに、全て毒華爪で溶かし尽くし、以後、二度と女装などしてやらなかっが・・・・・。 
この女狐め!(御母堂様は、犬妖なので、この表現は正確ではありません。正しくは牝犬です。)今度は、りんを使って遊ぶ積りか! そうはいかん!! 何としても阻止してくれる!!!

「母上が、そう仰っても・・・本人である、りんが承諾せねば、この話は、成立致しません。」

「ああ、その事ならば、心配ない。既に、りんは、納得済みだ。」

優雅に朱塗りの盃の御屠蘇(おとそ)を干しつつ、事も無げに御母堂様が、言い放つ。

「・・・何だとっ!?」

普段の無表情は、何処へやら、殺生丸は、驚愕の表情(それでも判りにくい)を白皙の美貌に貼り付け、声を尖らせた。・・・・一体、何時の間に!?

「以前、そなたが西国城を留守にした際、遊びに来てな。その時、りんに話をして承知させた。」

やられたっ! そう云えば、母は、水鏡を使って“遠見”が出来るのであった。それにしても、何故、私に、その報告が来ていない!? 相模・・・・私の乳母になる前から母とは仲が良く、未だに文の遣り取りをしているらしかったな。 口止めでも、されたか! それに、何より、お喋りなりんが、この件に関しては、私に一言も洩らさぬとは、一体、どのような手を使ったのだ!?

「りんには、今日、妾(わらわ)が、お主と話すまで『一言も洩らしてはならぬ』と言い付けておいたからな。この養母(はは)との約束をチャンと守るとは、中々、見所があるぞ。流石、我が養女(むすめ)じゃ。」

誰が、貴様の養女(むすめ)だ! ギリッと牙を噛み締めた己を、さも面白そうに眺める母のしたり顔が、この上なく憎々しい!! 己が母でなければ、即刻、この手に掛けてくれよう物を!!!
袂(たもと)の中に隠した隻腕にグッと力を込めて押さえ付ける。己の怒気に自然に反応して爪に毒気が回り出しているのがハッキリ感じ取れる。全く!“煮ても焼いても喰えぬ相手”とは、この母の事だ!!! ・・・そう言えば、妖怪世界きっての武勇と知略を誇った、あの父上でさえも、この母には手を焼いていた。父方の従妹にして幼馴染、生まれた時からの許婚(いいなずけ)、妖力においては、ほぼ互角、戦闘力においても殆ど拮抗していたと言われる程の掛け値なしの実力者。父上が、叢雲牙、鉄砕牙、天生牙と三本もの剣を手中に収められたのは、もしかして・・・この母を抑える為ではないのだろうか・・・・? ふと、脳裏に浮かんだ考えに耽る間も無くパタパタと廊下を駆けて来る軽やかな足音が聞こえてきた。その後を追うのは、女人の衣擦れの音、相模か。

「りん様、お待ち下さい! そんなに急いで廊下を走っては、転んでしまいます!」

「だって、相模さま! 殺生丸さまのおっ母、じゃなかった!! ご、御母、堂、さまが、いらっしゃってるんでしょう。りん、一杯、貰ったお土産の御礼を言いたいのっ!!」

りんが正月用に着せられた吉祥の松竹梅の紋様をあしらった正装の打ち掛けを端折りながら、部屋の中に入ってきた。すぐ後に、相模も付き添っている。

「おおっ、りんではないか。ささっ、此方に来て、この養母(はは)に顔を良く見せておくれ。」

「ご、御、御母、堂さま、あんなに沢山のお土産、あ、ありがとう、ございました。」

「良い。良い。それにそんな堅苦しい呼び方をせずとも、“お母様”と呼んでおくれ。そなたは、妾(わらわ)の養女(むすめ)になるのだからな。」

「えっ! 殺生丸さま、あの話って、本当だったの?」

りんが戸惑って、少し、首を傾げながら、殺生丸に問い掛ける。そのまま、近くに寄って来たりんを側に引き寄せ、自分の隣に座らせる母君、相模も、その後ろに控えて座る。

「・・・・・」

一体、何と答えれば良いのか・・・。確かに母の云う通り、西国における、りんの身分は、宙に浮いたも同然の不安定な状態にある。さりとて、私の妻妾と云う訳にもいかないし・・・・・。
思案に暮れる私を窺(うかが)っていた相模が、意を決したように声を掛けてきた。

「殺生丸様、この度の御方様の申し入れ、何卒(なにとぞ)、お聞き入れ下さいませ。」

「・・・・相模。」

「先の妖猿族の襲撃からも既にお判りの筈でございます。このままでは、何時、また、あのような事が繰り返されるとも限りませぬ。りん様を護る為にも、伏してお願い申し上げます。」

妖猿族の長、猩々(しょうじょう)が、りんを襲った時、身を挺(てい)して、りんを庇った相模。もし、この忠義な私の乳母、現在の西国城の女官長が、一時でも、あの獰猛な猩々の猛攻を凌いでくれなかったら・・・・りんは・・・・りんの命は・・・・。 そう思い至った時、私の腹は、決まった。・・・・母の申し出を受けよう。
確かに、りんを母の養女にすれば、妖怪世界では誰も手出しが出来ぬようになるだろう。西国王、殺生丸の養い仔にして尚且つ先代の西国王妃、当代の生母、謂わば“国母”の養女ともなれば、
余程、無謀か、思慮の足らぬ愚か者でなければ、怖ろしくて到底、考え付きもしないだろう。

「判った、相模。・・・・この件、承知致そう。」

こうして“戦国最強”と謳われる西国王を後見に、その母を養母に、正しく“鉄壁の守護”と呼ぶに相応しい人(妖?)脈による強固な布陣が、人の仔であるりんを護る為に敷かれる事となった。

「さて、殺生丸の了承も取り付けた。これで、りんは、晴れて妾の養女(むすめ)じゃ。」

「そうなの? 殺生丸さま。」

りんが、今ひとつ、良く判らないらしく、私に尋ねてくるが、積極的に肯定などしたくない。

「・・・・・・」

養女の件を承諾したものの、母が、馴れ馴れしく、りんに接するのは、ハッキリ言って不愉快だ。

「フフッ、妾(わらわ)の養女(むすめ)になったと云う事は、殺生丸は、りんの義理の兄になった訳じゃ。これからは“お兄様”と呼ぶが良いぞ。 勿論、妾は“お母様”じゃ。」

「フゥ~~ン、じゃあ、おっ、お母様。いつも、沢山、お土産を下さって、ありがとう!」

りんは、何となく事の成り行きに納得したらしい。 礼儀正しく母に土産の礼なんぞ述べている。

「何の、何の、可愛い養女(むすめ)が喜んでくれるのなら、あの程度の物、お安い御用じゃ。」

「あんな甘くて美味しい物、りん、初めてだから、吃驚(びっくり)しちゃって!」

「金平糖の事か? あれはな、近頃、大和(やまと)の国にやって来た南蛮人なる外国(とつくに)の者が持ち込んだ菓子でな。別名が『糖花』『小鈴糖』とも言って、その美味なる事から大層、持てはやされておるらしい。そうか、りんは、あれが、気に入ったのか。では、この母の城に遊びに参るがよいぞ。他にも色々と、りんが気に入りそうな菓子やご馳走が、沢山、用意してあるからの。」

「乾し柿もある?」

「勿論じゃ。乾し柿の他にも、甘い甘い蜂蜜なども有るぞ。ご馳走も山ほど用意させよう。」

“お菓子とご馳走”りんにとっては、魔法のような言葉に、大きな目がキラキラと輝き、期待に胸をワクワクさせている様子が、ありありと判る。殺生丸に拾われる前は、万年飢餓状態が当たり前だったりんは、食べ物をくれる相手は、全て“良い人”という認識がある。それは、そうだろう。喰うや喰わずのカツカツの生活をしていた村の人達は、誰も、りんに食べ物を恵んでなどくれなかったのだから。いつも、お腹を空かせ、ひもじさに苦しみ、いや、それ以上に愛情に餓え、泣く事すら出来ずに心を殺して生きていた。殺生丸に出会った、あの運命の日まで。そうした経過もあってか、りんも、世間の幼児並に、美味しい食べ物の誘惑には、頗(すこぶ)る弱い。
しかし、殺生丸の許しが無ければ、御母堂様の城に出かける事は、叶わぬと判っているのだろう。苦虫を噛み潰したような表情の、今や“義理の兄”となった殺生丸を覗き込むように窺っている。

「殺生丸さま、えっと・・・りん、おっ、お母さまの処へ遊びに行っても良い?」

おずおずと、りんが、殺生丸に、養母の城への外出の許可を願い出た。それに対し、りんの養母(はは)となった御母堂様が、澄ました顔で、りんを諭(さと)す。

「りん、そなたは、本日より妾(わらわ)の正当なる養女(むすめ)じゃ。という事は、そなたを保護する権利は、まず養母(はは)である妾(わらわ)にある。今までは、殺生丸が、そなたの 保護者であったろうが、今日からは、殺生丸は、義兄(あに)、養母(はは)である妾(わらわ)の意向が、最優先される事になるのだ。」

グッ!・・・し、しまった! そうだった!! 養女の件を承諾すると云う事は、自動的に、りんを庇護する権利を母に譲る事になるのであった!!! 早まった! りんの身の安全を重視する余り、その事実を見落としていた!!! 今からでも遅くは無い。母の申し出を取り消して・・・・。そんな己の考えを見透かしたかのように、母が、ニンマリと笑って、此方を見やって言い放つ。

「殺生丸よ、今更、取り消しは効かぬぞ。何しろ、西国の主だった家臣一同が揃った年賀の席にて大々的に宣言した事。それを、今、此処で、覆(くつがえ)したとあっては、主君として臣下の者達に示しがつくまい。のう、そうではないか?」

ムムッ・・・それを計算の上で、年賀の席に乗り込んできたのかっ! してやられたっ!! あれほど堂々と宣言された後では、最早、私が、何を云っても、既に既成事実として皆の頭に刷り込まれてしまっているだろう。このっ! 奸智に長けた女狐め!!(くどいようですが、母君は、犬妖なので“牝犬”でございます) よくも、まあ、次から次へと悪知恵を巡らせた物だ!!!
腸(はらわた)が煮え繰り返る思いの己を意にも介さず、母が、りんを自分の城に連れて行こうと立ち上がった。蝶の紋様が艶やかな打ち掛けを羽織り、首からは、いつものように冥道石の首飾りを下げている。このまま、りんを懐に抱き込んで、天空にある自分の城まで飛ぶ積りか!? おのれ! そうはさせるか!! 如何に正式に養女にしたとは云え、これまで、りんを保護してきたのは、この私だ!! そうそう簡単に手渡して堪(たま)るものか!! りんを庇護するのは、今までも、そして、これからも私の権利だ!! いきなり現われ、横から口出ししてきた母の思うがままになど断じてさせぬ!!! 断固、阻止してくれる!!!
同じ様に立ち上がった殺生丸を見て、自分達と一緒に行ってくれる物と思い込んだらしく、りんが嬉しそうに話し掛けてくる。

「殺生丸さまも、おっ、お母さまの城に一緒に行ってくれるの? 久し振りだね。あのお城。」

「おや、殺生丸。そなたも久方振りに我が城に参る積りになったのか? 珍しいな。用が無い限り絶対に母の許を訪れようとはせなんだ薄情息子が。冥道残月破の修行以来ではないか。」

・・・・・そうだ、あの城で、りんは、二度目の“死”を経験していた。冥界の犬に連れ去られ、天生牙も利かず、冥界の主を斬ったにも拘わらず、息を吹き返す事は無かった。己に真の恐怖を味あわせた場所。 りんが己に取って何よりも大切だと痛感させた“苦い経験”を思い出させる母の城。初めは、一緒に行く気など毛頭、無かったが・・・・・あの事を思い出した以上、りんが母の城に行く積りとあらば、同行するしかあるまい。 それなら・・・・。

「邪見! 阿吽に鞍を付けよ!! 出掛けるぞ!!!」

「ハ、ハイィッ! たっ、只今!!」

邪見が、一挙に緊張して、人頭杖を片手に、慌てて飛び出して来た。

「御館さまっ! どちらへ!!」「大殿っ! 我らも、お供、仕(つかまつ)ります!!」

木賊(とくさ)に藍生(あいおい)も供を申し出るが、この場は、以前の事情を知る者だけに留(とど)めておいた方が良いだろう。

「いや、お前達は、残れ。まだ、新年の宴は続いている。私は、りんと共に母の城に出かけて来る。後の事は、重臣達と相談して、良きに取り計らえ。」

斯(か)くして、双頭の竜にチョコンと乗った小さなりんと邪見を、両側から護衛するように巨大な純白の化け犬二頭が、年明けの空を悠々と飛んで行くのでありました。それは、何とも壮大な見事な眺めで、西国城下の者どもも、思わず、足を止め、空を見上げて、その雄姿を拝んだのでありました。新年の朝日を弾いて神々しく輝く、巨大な化け犬、二頭の純白の毛皮、この滅多に拝めない西国王と王母の真の姿に、領内の者は、暫し見惚れ、畏敬の念を新たにしたのでありました。そして、それは、そのまま、この先、母子の間で繰り広げられる熾烈な“りん争奪戦”の始まりを告げる前哨戦でもありました。    了     2006.12/30(土)作成◆◆猫目石

《第二十五作目『騒動事始め』年賀作品についてのコメント》

2007年=平成19年★★★明けまして御目出度うございます。 今回の作品は、作中人物の一人が自ら動いてくれました。当初は、全然、予定に入ってなかったんです。そうしたら、書きすすむ内にスッと自然に前面に出て来てくれました。その人物とは、相模の事です。りんちゃんの世話をする内に、邪見と同じく、シッカリ情が移っているようです。りんちゃんの身を護る為に敢えて主君の殺生丸に進言してくれました。作中人物が作者の意向ではなく自ら動く、話には聞いていましたが、今回、初めて自分でも経験しました。
明けおめ作品=年賀作品に相応しく御目出度い気分になれる作品を目指しました。この作品を読んで少しでも御目出度い気分になって戴けたら幸いでございます。 ご訪問、有り難う御座いました。
2007.元旦.★★★猫目石★★★                       

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