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『夢幻のままに=白夜=』

狒々の奈落

ピシッ・・・奈落の分身、夢幻の白夜の体に亀裂が走った。

「殺生丸・・・とうとう使いやがったのか」

ポツリと白夜は呟(つぶ)いた。
今も伝わってくる破滅的な震動が決定的な事実を教える。
爆砕牙・・・殺生丸の愛刀。
一度(ひとたび)振るえば、その驚異的な破壊力は斬った対象を粉々に粉砕するまで持続する。
そればかりか、爆砕牙に斬られた残骸を吸収すれば本体その物にまで同様の破壊効果が及ぶ怖るべき刀。
次から次へと矢継ぎ早に奈落の体が破壊されていく。
怖ろしいほどの速さで。

「急いだ方がいいな。最後のご奉公が待っている」

夢幻の白夜は奈落の体の中心へと急いだ。
ここも奈落の体の中ではあるが、核ともいうべき奈落の本体からは離れている。
何しろ、奈落は、何千、イヤ、何万体もの膨大な数の妖怪を取り込んでいる。
その体内の奥行きの深さと広さは巨大な城に匹敵するほどである。
奈落が呼んでいる。
早く来いと。
アア、判ってるさ、奈落。
アンタの望みを叶えてやるよ。
この冥道残月破の妖力を吸収した刀で、かごめを斬ればいいんだろう。
その後、どうなるのかは知らないけどな。
マア、その時は、もう、俺は、この世にいないだろうから、どうなろうと構わないけどさ。
思えば短い付き合いだったな、奈落。
アンタの最後の分身として、この世に生み出された俺。
最初の分身は神無(かんな)だったよな。
つい、こないだ死んだばかりの。
犬夜叉と闘って最後は自爆させられたんだったな。
それから、次が、俺は顔も見たことがない神楽。
コイツはアンタ自身が始末したんだったっけ。
それから悟心鬼。
コイツは犬夜叉と闘って鉄砕牙を噛み砕いたんだったよな。
尤も、最後は妖怪に変化した犬夜叉に殺されちまったけどな。
悟心鬼の奴、殺されはしたものの、殺生丸が奴の牙の破壊力の凄まじさに目をつけてな。
灰刃坊(かいじんぼう)とかいう外道(げどう)の刀鍛治の処に奴の牙を持ち込んで鍛えさせたのさ。
その結果、出来上がったのが“闘鬼神”って訳だ。
結構、凄い剣だったんだぜ。
犬夜叉の鉄砕牙と互角か、下手するとそれ以上に強かったからな。
この闘鬼神は暫(しばら)く殺生丸の愛剣だった。
だけど、魍魎丸との戦いで折れちまったんだよな。
その後の経過は御存知の通りさ。
話を続けるぜ。
奈落の分身の四匹目が獣郎丸と影郎丸、コイツらは兄弟だったな。
結構、良い所まで犬夜叉を追い詰めたらしいが、妖狼族の鋼牙が加勢して、最後は犬夜叉にやられたんだったよな。
白霊山で奈落は今までにない徹底的な体の組み換えをした。
そうして生み出されたのが赤子だ。
赤子は奈落の心臓そのものだった。
そのせいもあって、それまでの分身どもに比べると別格の存在だった。
神楽なんかとは、てんで扱いが違ってたみたいだぜ。
何と言っても命の要の心臓だからな、無理もないけど。
赤子は、その後、二つに別れて、その片割が白童子になるんだよな。
アイツらは奈落の心臓だけあって、いずれ、奈落に取って変わる積りだったらしいぜ。
だから、奈落に対抗する為に魍魎丸なんてトンデモナイ鎧を創りだした。
マッ、無駄な足掻きだったけどな。
奈落は、そんな事、とっくの昔にお見通しだったんだから。
結局、白童子は法師の風穴に呑み込まれ、赤子は魍魎丸ともども奈落に吸収されたって訳さ。
アア、考えてみると奈落の分身は、どいつもこいつも、皆(みんな)、死んでるんだよな。
犬夜叉に殺されるか、奈落に殺されるかだけど、どっちにしろ死ぬのに違いはない。
赤子の場合は、奈落に、そっくりそのまま吸収されてるから、殺されちゃいないけどな。
それでも、赤子という存在自体は消滅してるから、やっぱり、ある意味、殺されたと云っても可笑しくないよな。
お前は奈落を裏切らないのかって?
不思議と、その気にならないんだな、これが。
どうも、俺は、分身の中でも鬼蜘蛛よりも人見蔭刀(ひとみかげわき)殿の割合が多いみたいでな。
そう、あの人見家の若様さ。
病弱だが、歴(れっき)とした一国一城の主(あるじ)だった御方。
それから、極々、微かにだが無双とかいう坊主も混じってる。
だからかな、奈落を裏切ろうって気持ちが起きない。
それに、今更、裏切ってどうなるってんだい。
どうせ奈落が死ねば俺も同時に滅びる分身の身なんだぜ。
だったら、せめて俺だけでも最後まで奈落の望むままに働いてやるさ。
奈落の本当の望みは叶わなかったんだからな。
四魂の玉が完成して奈落が云ったんだ。
「何もない」ってな。
そりゃないだろう。
あれだけ大それた事を仕出かしておいて、その挙句が「何もない」だぜ。
ハアッ、泣けてくるぜ。
とどのつまり、奈落の本当の望みは、あの巫女、桔梗なんだよな。
だから、桔梗を、自分の手で壊したあの時点で奈落の本当の望みは潰(つい)えちまったのさ。
馬鹿な奴だよ、奈落は。
犬夜叉に取られたくないばっかりに、恋い焦がれた女を自分で殺しちまうんだから。
嫉妬に狂う男の性(さが)って奴だろうな。
他の男に取られるくらいなら自分の手にかけて殺そうってんだ。
考えてみれば哀れだよな、奈落も。
自分の魂を妖怪どもに差し出したってのに望みは叶うどころか利用されただけ。
四魂の玉にしたってそうさ。
粉々に砕け散った欠片を集める為に上手く奈落を利用したんだ。
結局、奈落も他の者と同様、体良(ていよ)く四魂の玉に操られた口なのさ。
アア、もう話してる暇はなくなった。
そろそろ行くぜ。
俺は夢幻の白夜。
その名の如く夢幻のままに消えていく。
じゃあな、あばよ。                   

                                 了

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