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処女作◆『闘鬼神再び』

風の中に覚えのある匂いが混じっている。 
どうやら・・・・こちらに向かっているらしい。
殺生丸は軽く地を蹴って浮かび上がった。

 

「殺生丸さま、どちらへっ!?!」

邪見が慌てて尋ねるが、そのまま無視した。
りんは阿吽の背に乗っている。 
暫く放っておいても危険は無いだろう。
目指す相手は程無く見つかった。

 

「よおっ!殺生丸。久し振りじゃねえか。奈落を討ち果たしたそうだな。」

 

「・・・・何の用だ、刀々斎。」

 

「相変わらず無愛想な奴じゃな! 少しは、あの嬢ちゃんを見習ったらどうなんだ!?!」

 

「余計な世話だ。 それより用件をさっさと話せ。」

 

「全く! 親父殿は、もっと愛嬌があったぞっ!!」

 

「まあいい・・・・。 お前、あの、りんとか言う嬢ちゃんを連れて西国に戻るそうだな。」

 

「それで、餞別をやろうと思ってな。」

 

「・・・・・貴様にそのような物をもらう義理は無い。」

 

「ふん!借りを作りたくないってか? 別に、そんなつもりじゃねえよ。」

 

刀々斎は三つ目の妖牛、猛々に括りつけておいた包みを解き、そのまま殺生丸に放り投げた。
隻腕で難なく包みを受け止めた殺生丸は、嗅ぎ覚えのある匂いに反応した。

 

「・・・・・これはっ!?!」

 

「おうよっ! 以前、お前が捨てた闘鬼神さ。 俺が拾って鍛え直し、朴仙翁に頼み込んで鞘を付けてやったのよ。」

 

包んであった布を解くと鞘に収められた闘鬼神が出てきた。 
匂いに敏感な殺生丸が気付かないのも無理は無かった。 
魍魎丸に叩き折られた鬼の刀は禍々しい邪気を放つ妖剣で、持ち主に取り付きそのまま剣に操られるままに殺戮を繰り返すという恐ろしい代物だったのだ。
殺生丸だからこそ、闘鬼神の邪気を押さえ込み従わせる事が出来たのだ。
だが、今の闘鬼神からは、以前のような邪気が感じられない。 
何故だ?

 

「鞘だよ。 朴仙翁の仙気が闘鬼神の邪気を抑えてるのさ。 何てったって、樹齢二千年の朴の木だからな。 そんじょそこらの妖怪の邪気なんぞに負ける訳は無いさ。それに、俺が打ち直して、性根を叩き直してやったからな。」

 

「・・・・・私には天生牙がある。」

 

「馬鹿言ってんじゃねえよっ!! 天生牙は敵に使ったが最後、即!相手を冥土に送っちまうとんでもない即死剣じゃねえか!! そんな剣をホイホイと使われて堪るもんかい!!そりゃあ、お前が、あの剣を滅多矢鱈と使うとは思えねえがな。それでも西国に、あの嬢ちゃんを連れて戻るとなりゃ大騒動になる事は間違いない。中には、嬢ちゃんが、お前の弱点と知って、狙ってくる輩も出てくるだろうさ。そんな時、誰彼構わず天生牙を振るってみろ!! 殺すまでもない相手までも殺しちまうぞ!それを考えれば、鉄砕牙なんぞ天生牙に比べれば可愛いもんさ。破壊力こそ凄まじいが飽くまで破壊のみ。 まあ、犬夜叉が結界破りだの、他にもゴチャゴチャ余分な力を付けてるみたいだがな。」

 

「・・・・・要は出来る限り天性牙を使うな、という事だな・・・・?」

 

「まあな、天生牙は、鉄砕牙に比べ、扱いが格段に難しい。」

 

「相手の生死をも握る事が出来る刀だ。・・・・・だからこそ、お館様は、殺生丸、お前にそれを託されたんだろうよ。」

 

ピクッと殺生丸の秀麗な眉が跳ね上がった。 
二百年を経て猶、父親の事に関しては過剰に反応してしまう殺生丸であった。 
誰よりも強かった父上・・・・・・・・。
何時の日にか貴方を倒す事が私の目標だった。 
・・・・・・なのに願いは叶えられず。
私に遺されたのは天生牙・・・・・斬れない刀・・・・・どれほど落胆した事か!!
その上・・・・・自分が切望した鉄砕牙が、半妖の異母弟に託されたと知った時、私の憎悪は膨れ上がり、犬夜叉を殺す事のみを思い詰めるようになった。
死者と闘う事は出来ぬ故・・・・・あ奴を倒す事により、己が、己こそが、父上の真の後継者だと証明する為に・・・・・。 
挙句の果て・・・・・殺すどころか左腕を斬り落とされ・・・・・再度、挑んでみれば、犬夜叉は風の傷を使いこなし、又もや、私に瀕死の重傷を負わせたのだ。
鉄砕牙に拒まれ、蔑んできた半妖に叩きのめされ、私の矜持も身体もボロボロに傷ついていた。
屈辱感に苛まれていた。 ・・・・・・そんな時に出会ったのが・・・・・・(りん)だった。
人間の小娘・・・・・・みすぼらしい子供だった。 
そんな者に、この殺生丸が介抱されるなど!!
・・・・・・・あってはならぬ事だった。
牙を剥き双眸を紅く染め威嚇したにも拘わらず・・・・・小娘は寄ってきた。
何度、私が拒絶しようとも・・・・・小娘は、やって来ては、水を、食い物を置いていった。
呆れて・・・・・遂には根負けして、言葉をかけてやったのであった。

 

「・・・・・余計な事をするな。人間の食い物は口に合わん・・・・・。」

 

それでも・・・・・小娘は諦めようとはせずに、やって来た。
今度はネズミとトカゲを持って・・・・・・・・・

「いらん。」

小娘はハア~と溜め息を吐き、少し途方に暮れているようであった。
良く見れば、明らかに誰かに殴られでもしたのか、顔半分が腫れあがっている。
唇も切れている。 

「顔をどうした?」 

声を掛けられた事に驚き小娘が覗き込む。

「言いたくなければいい。」 

どうやら口が利けないらしい。
次の瞬間、小娘は笑った。 
それは嬉しそうに、花が綻んだような笑顔だった。
痛々しい虐待の跡が残る幼い顔が眩しいほどに輝いて・・・・・・。

(何が嬉しい。 様子を聞いただけだ。)

狼と血の匂いに引き寄せられ森の中で見つけたのは・・・・・・小娘の骸。
妖狼どもに噛み殺され、血溜まりの中に倒れていた。 
以前の己ならば躊躇する事なく見捨てていただろう。 
だが・・・・・・何かが私を押し止めた。
あの時、私の脳裏に去来したのは・・・・・・。 
小娘の花のような笑顔。 
何ひとつ媚びる事も諂う事もなく・・・・・唯々、純粋に嬉しくて堪らない感情のままに見せた笑顔。
気が付けば、己は、天生牙を抜き放ち・・・・・・小娘の命を冥府から呼び戻していた。
以来・・・・・・天生牙の価値を認め、折りにふれ、必要がある時には振るってきた。
穢らわしい奈落の分身である神楽にも遣おうとしたが・・・・・救ってやる事は出来なかった。
憐憫の情とでも言えば良いのだろうか・・・・・・・?
あの女が私に何を求めていたのか・・・・・判ってはいたが、己には既にりんが居る。
他の何よりも大切な存在・・・・・私に、よもや、そのような者が現れようとは誰が想像し得たであろう。
だが、それは、紛れも無い事実で、今更、否定もするまい。
りんを連れ西国に帰還する。 
奈落を倒した時点で、もう人界に留まる理由も無くなった。
鉄砕牙が守り刀と知り、犬夜叉から奪う必要も消え失せた。
西国に、己の本来居るべき場所に戻る時がやって来たのだ。
鞘から闘鬼神を抜き放ち下段に構える。 
以前とは比べ物にならぬ程、鋭い闘気が殺生丸の妖気に反応して周囲に満ちる。 
ユラユラと蒼白い炎が刀身に立ち昇る。

「・・・・・・流石に見事な腕だな、刀々斎。」

「お前が素直に褒めると・・・・・・何か気持ち悪いな。」

 

「・・・・・・フン。」

 

「じゃあな、嬢ちゃんを大事にしろよ!!」

 

老妖怪は、妖牛に一打ちくれると、そのまま空の向こうに消えていった。

 

「・・・・・・貴様に言われるまでもない。」

 

闘鬼神を鞘に収めると殺生丸も地を蹴り、己を待つ者達の許へ向かった。
明日は、いよいよ西国へ帰還する。・・・・・・・りんを連れて。              了

                                                                 2006.5/4(木) 作成◆◆

 

《処女作「闘鬼神再び」についてのコメント》

この話は「瓢箪から駒」を地で行った作品です。 
天生牙が物凄くおっかない必殺即死剣になってしまって怖いなあ~と思ってた矢先、untitledxxさんの未来設定の作品を読みました。
その作中、殺生丸が闘鬼神を使うシーンがあって『ソウダ!!闘鬼神を復活させれば良いんだ!』と思い至りこの作品を書き上げました。
因みにuntitledxxの久世さんは、当時、原作を読んでいらっしゃらなかったので闘鬼神が魍魎丸に叩き折られた事をご存知なかったとの事。 
つまり、本当に偶然から生まれた作品です。

   2006.8/9(水)★★★猫目石

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