闇とともに(奈落) 来たな、珊瑚。 フッ、防毒面をりんに譲るとは。 罪滅ぼしのつもりか。 法師を救うためとはいえ、おまえはりんを殺そうとしたのだからな。 ククッ、何とも罪深い女だ。 もし飛来骨が当たっていれば、間違いなくりんは死んでいた。 惨(むご)たらしく身体を引き裂かれ妖毒に溶かされてな。 そして、りんが死んでいれば、珊瑚、お前も殺生丸に殺されていたはずだった。 そう、かごめが破魔の矢を射るのが、ほんの一瞬でも遅れていたらな。 だが、刹那の違いで、わしの体は砕かれ白夜がお前に見せていた幻も消えてしまった。 結果、りんは投げ出され、双頭竜に乗った琥珀に助けられた。 お前が逢いたがっていた法師は犬夜叉に助けられてココにいるぞ。 安心したか、珊瑚。 さあ、飛来骨を投げるがいい。 わしの思惑どおりに珊瑚が飛来骨を投げてきた。 邪気を巻き込み砕く飛来骨。 わしの邪気を巻き込んだまま珊瑚の手元に戻った。 防毒面を被っていない珊瑚は瘴気をタップリと吸い込む。 勿論、珊瑚を乗せた猫又もな。 瘴気に毒され落下していく珊瑚と猫又。 珊瑚を受け止めようとする法師が飛び出してきた。 奴らの足元の肉塊を塞(ふさ)ぎ法師と珊瑚を閉じ込めた。 クククッ、せめて最後の時くらいは二人きりにしてやろうと思ってな。 珊瑚と法師の絶望が四魂の玉に伝わってくる。 玉の中の光が押し潰される。 闇が拡がる。 砕かれた体が修復され鎧甲が全身を覆う。 懲りもせず犬夜叉が、わしに向かって冥道残月破を撃ってきた。 犬夜叉、見せてやろう。 これが四魂の玉の力だ。 闇の色に染まった四魂の玉を取り込み己と同化させた。 ドン、瞬時にわしの周囲に張り巡らされた蜘蛛の巣状の鎧甲。 冥道にさえ呑み込まれない。 元々、四魂の玉は桔梗の死とともに消えるはずだった。 だが、桔梗の犬夜叉への未練と生まれ変わりのかごめの体を利用して、再び、この世にもどってきたのだ。 かごめの破魔の矢に砕かれながらも、災いをふりまきつつ結集し、時空すら超える。 そして、今、闇色に染まり、この奈落とともにある。 四魂の玉は絶対になくならない。 そう、この奈落が滅びても・・・な。 りんを救出した以上、何時、殺生丸が爆砕牙を使ってもおかしくない。 爆砕牙を使われれば、この奈落が、どれほど膨大な数の妖怪を取り込んでいようと悉(ことごと)く破壊され尽くすだろう。 そうなる前に出来るだけの手を打っておかねばな。 かごめを、お前から奪ってやる。 ククッ、たとえ、この奈落が滅びようと、犬夜叉、決して、きさまを四魂の玉の悪(あ)しき因縁から逃(のが)しはしない。 [2回]PR