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『想春(そうしゅん)=七宝=』

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昨日※上記の画像は『ぱたぱたアニメ館』よりお借りしました。
URL=http://www.pata2.jp/


オラの名は七宝。
犬夜叉達と一緒に奈落と戦った正義の子狐妖怪じゃ。
今日も骨喰いの井戸を覗(のぞ)き込む。
もうオラの習慣になってしまった。
奈落が滅したのは、丁度、今頃じゃったな。
桜がチラホラ咲き始めておった。
早いもので、そろそろ一年が経とうとしておる。
あの時、背後に出現した冥道に呑み込まれ、かごめは消えてしまった。
夢幻の白夜に斬られたせいじゃ。
オラは見たんじゃ。
白夜が冥道残月破の妖力を盗むところを。
だから、冥道が、かごめを吸い込んでしまったんじゃ。
それだけではない。
奈落が四魂の玉にかけた願のせいで骨喰いの井戸まで消えてしまったんじゃ。
確かに奈落は滅された。
弥勒の風穴が消えたのが証拠じゃ。
じゃが、かごめは何処へ?
それに四魂の玉は?
あの時、犬夜叉は何か勘付いたんじゃろうな。
すぐさま鉄砕牙を抜き冥道残月破を撃って冥道を出した。
そのまま犬夜叉は大きな刃型の冥道に入り込み、かごめを追いかけていったんじゃ。
考えてみれば、かごめは冥道に吸い込まれたんじゃから、犬夜叉が冥道に入って追いかけるのは道理じゃな。
それから、オラは待った、待ち続けた。
骨喰いの井戸の跡でズッと。
かごめと犬夜叉が戻ってくるのを・・・。
骨喰いの井戸が消えてから三日後、井戸があった場所から光の柱が立った。
光の柱が天に届いた瞬間、光は消えた。
後には元通りの骨喰いの井戸が現われた。
そして、井戸を潜(くぐ)って犬夜叉は戻ってきた。
でも・・・かごめは戻ってこんかった。
何故じゃ?
どうしてかごめは戻ってこんのじゃ!?
弥勒も珊瑚も楓も、勿論、オラだって、かごめの安否を何度も犬夜叉に訊ねた。
でも、犬夜叉は「かごめは無事だ」としか答えてくれなかったんじゃ。
その後は、誰が、どう尋(たず)ねても頑(がん)として口を割ろうとせんかった。
犬夜叉は頑固じゃからな。
こうと決めたら誰が何を言おうが梃子(てこ)でも動かん。
そのせいで、いつも、かごめに「お座り!」を喰らわされておったもんじゃ。
アアッ、また思い出してしまったではないか。
グスッ、かごめ~~
ズズ~~ッ・・・スンッ!(涙と鼻水をすする音)。
すまん、すまん、話を続けるぞ。
あの後、弥勒と珊瑚は夫婦(めおと)になって村に住み着いた。
弥勒は犬夜叉と組んで妖怪退治で生計を立てておる。
妖怪を追い立てるのは弥勒、退治するのは犬夜叉の役目じゃ。
弥勒自身が法力(ほうりき)で妖怪を滅するのも可能なんじゃが、犬夜叉が鉄砕牙で妖怪を斬り伏せて倒す方が派手で宣伝効果も高いからな。
「百聞は一見に如(し)かず」って奴じゃな。
お陰で評判は上々で、武蔵の国は疎(おろ)か周辺諸国にまで犬夜叉達の名は知れ渡っておる。
『半妖と法師の妖怪退治』とな。
それもあってか、退治料は、破格の値段じゃ。
何せ、お札一枚が米一俵じゃからのう。
弥勒の奴、相変わらず阿漕(あこぎ)じゃのう、完全にボッタクリじゃ。
とはいえ、そんな真似をするのはガッポリ貯めこんどる金持ちにだけじゃがな。
貧乏人からは、一切、報酬を受け取らん。
年が明けて弥勒と珊瑚の間に子供が生まれた。
助兵衛な弥勒に相応しく女子(おなご)じゃった。
それも双子じゃぞ。
弥勒め、いきなり二人の子持ち親父になりよった。
アッ、それと、もう一つ、りんが楓に預けられたんじゃ。
驚いたことに、殺生丸が、直(じか)に楓に頼み込んだんじゃ。
流石に、あのまま、りんを連れ歩くのは不味(まず)いと思ったんじゃろうな。
りんは村で暮らすことになった。
それで、オラ、殺生丸は、もう姿を見せないだろうと思っとったんじゃ。
アイツは大(だい)の人間嫌いだからな。
トンデモナイ!
殺生丸の奴、三日おきに、りんに会いに村を訪ねてくるんじゃ。
それも何やかんや品物を携えて。
勿論、土産(みやげ)を持つのは従者の邪見だけどな。
やれ食い物だ、櫛(くし)だ、飾り紐(ひも)だ、帯だ、着物だのと。
貢(みつ)いどる!
アレって・・・雄が雌に食い物を贈ったりする・・・アレだよな?
世にいう・・・“求愛行動”・・・とか呼ばれる。
あっ、あの殺生丸が・・・。
最初はオラも信じられんかったが、余りにも頻繁に目にするものだから、もう慣れっこになってしまって。
今では、みんな、それが当たり前になってしまったんじゃ。
完全に感覚が麻痺(まひ)しとるな。
かごめが居なくなってから、多かれ少なかれ変化はあったが、一番、変わったのは殺生丸じゃなかろうか?とオラは思うぞ。
チョイと脱線したな、話を元にもどすぞ。
オラ、かごめが居なくなった当初、悲しくて寂しくて・・・。
皆に隠れて泣いとった。
大好きなかごめ、抱っこされると何時もフワッと良い匂いがして。
綺麗で優しくて強いかごめ。
おっ母(かあ)みたいなかごめ。
何時も乱暴な犬夜叉からオラを庇(かば)ってくれた。
ワザワザ、アッチの世界から、いつもオラの為に美味しいアメを持ってきてくれたかごめ。
オラ、かごめに会いたくて会いたくて。
どうしても諦められなかったんじゃ。
だから、折りにふれては骨喰いの井戸を覗いとった。
毎日、毎日、自分でも呆れるくらいに。
そしたら、ある日、気付いたんじゃ。
犬夜叉が、夜、コッソリ骨喰いの井戸に入っとるのに。
それからは、毎晩、井戸から少し離れた風下になる場所から隠れて見張っとった。
匂いでバレンように。
犬夜叉は鼻が利くからな。
二日目は来んかった。
三日目、来た!
犬夜叉はキョロキョロと周りを見回して誰も居ないのを確認しとった。
それから、井戸の底をジッと見詰めて、思いつめた顔で井戸に入っていったんじゃ。
オラも息を詰めて見とった。
ドキドキしたぞ。
もしかしたら?と思ってな。
じゃが、以前のように光は射(さ)さず井戸は何も変わらんかった。
あれから一年が経つが、今も、犬夜叉は三日に一度は骨喰いの井戸に入っとる。
かごめと会えることを信じて。
だから、オラも諦めない。
犬夜叉が諦めない限り、オラも信じてるんじゃ。
いつか、きっと、かごめに会えると!

       了

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