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逢瀬は三日おきに

殺りんラブラブ
無性に何か書きたい気分がムクムク。
軽~~く小話を捻ることにしました。


巨大な西国城から双頭の騎竜、阿吽が飛び立つ。
勿論、騎乗しているのは殺生丸とお供の邪見である。
先頃、長の放浪から帰還したばかりの国主、殺生丸は三日おきに何処かへ出かける。
だが、何処へ出かけるのかは、極々、少数の側近と重臣、それに近親者以外、誰も知らない。
だから、殺生丸が三日おきに人里を訪れていると知ったら驚愕する者が続出するだろう。
『大の人間嫌い』という評判を持つ当代国主である。
確かに、それは、ごく最近までは真実だった。
『元』人間嫌いの殺生丸が訪れる人里は半妖の異母弟、犬夜叉が住み着いている村である。
父親である先代国主が逝去する直接の原因となった犬夜叉の母は人間であった。
その為、長年、殺生丸は犬夜叉を疎(うと)んじてきた。
しかし、そうした関係が、近年、多少、変化した。
奈落という共通の敵を倒すに際して、やむをえぬ事情からとはいえ、この化け犬兄弟は共闘したのである。
そうした経過もあって、殺生丸と犬夜叉の間には、あからさまではないが緩やかな信頼関係が保たれている。
だからこそ、殺生丸は、溺愛する人間の童女、りんを、犬夜叉が住む村の巫女、老女、楓に預けたのであった。
尤も、そうした経緯(いきさつ)を知る者は非常に少ない。
その為、未だ、当代国主は半妖の異母弟と仲が悪いと思い込んでいる者ばかりである。
当然、殺生丸が不仲の異母弟が住む人里に出かけているとは誰も思わないのであった。

「大殿、失礼致します」

カラリと襖(ふすま)を開ける音がする。
栗色の髪に水色の瞳の若者が国主の執務室に居ずまいを正(ただ)して入ってきた。
殺生丸の側近の一人、藍生(あいおい)である。
西国の重臣、尾洲の嫡男でもある。
大量の書類を腕に抱えている。
しかし、部屋の中は蛻(もぬけ)の殻(から)であった。

「大殿!?」

主の失踪に慌て始めた藍生。
そこへ同輩の木賊(とくさ)がやってきて一言。
木賊も藍生と同じく殺生丸の側近である。
灰色の髪に緑の瞳、落ち着きのある物腰。
これまた重臣の万丈が父親である。

「落ち着け、藍生。今日は例の日だ」

「例の日・・・ああっ、そうか」

「大殿は何があろうと、この日はお出かけになる。これからズッとな」

「フゥッ、あの大殿が、ここまで誰かに惚れこむとは。それも、ワザワザ、三日おきに人界にまで出かけていくなど・・・。信じられんっ!そうではないか、木賊?」

「お主が信じようと信じまいと、それが厳然たる事実だ。ともかく少しでも大殿の責務を減らすべく仕事に励もう。それが側近たる我らの務めぞ」

「ムッ、そうだな」

主の不在中に山積した書類を少しでも減らすべく、側近の両名は文机(ふづくえ)に向かいセッセと仕事に勤(いそ)しむのであった。




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