※この画像は『妖ノ恋』さまからお借りしてます。
その後、神楽は気を取り戻したんじゃがな。
あ奴、助けてもらった癖に殺生丸さまに一言も礼をいわんのだ。
それどころか、あの失礼な言い種(ぐさ)!(ギリギリ)
『へえ・・・あんたにも情けってもんがあったのかい』じゃぞ。
それどころか殺生丸さまが奴を無視してそのまま立ち去ろうとしたらばな。
呆れたことに『待ちな、何があったのか聞きもしねえのか』と来た。
ええい、無礼者めがっ!(怒)
今、思い出しても腹が立つっ!
じゃが、流石は殺生丸さまじゃ。
即座に『貴様の身の上話になど興味はない』と斬って捨てられてな。
ふん、神楽め、思い知ったか、身の程しらずが。
大体、殺生丸さまが貴様如き賤(しず)の女(め)に興味をもたれるはずがないんじゃ。
すると、神楽の奴、今度は『奈落の心臓をみつけたといってもか!?』と畳み掛けてきよった。
むうぅっ、どこまでもあざとい奴。
あれには流石の殺生丸さまも反応されたわ。
なにせ当時一番の関心事じゃったもんな。
それから神楽の奴、何故、自分がこうなったのかを、やれ奈落の心臓が、妖気の結晶がどうのと自分の推察を交(まじ)えつつ話し始めてな。
新たに登場した御霊丸(ごりょうまる)なる輩(やから)についても喋ってから去っていきおった。
それにしても、あ奴、奈落の手下の癖に肝心のことを何も知らされておらんのな。
本当に信用されとらんかったんじゃな。
結局、奈落に利用されるだけ利用されて最後は殺されたらしい。
ん~~考えてみれば哀れな女じゃのう。
まあ、それはさて置いてじゃ。
わしゃ、あの時の神楽にひと言いたいっ!
殺生丸さまの御前(ごぜん)じゃというのに女子(おなご)が胸乳(むなち)をおっぽりだしたままとは何事じゃ!
全く隠す素振りさえ見せんのじゃぞ!
実にけしからん!
破廉恥にも程がある!
婦女子たる者、少しは慎みをもたんかい!
うぐぐっ、恥知らずめがっ!
何よりりんの教育に悪いではないかっ!(怒)
あんっ、どこで神楽の死を聞いたかじゃと?
それは、ほれ、殺生丸さまが曲霊(まがつひ)追跡の為、わしとりんを置き去りにされたことがあったじゃろうが。
殺生丸さまが奴と戦い爆砕牙を手中にされた後のことじゃ。
曲霊(まがつひ)、あ奴は四魂の玉の中に、長年、宿っておった悪霊じゃ。
ということはじゃ、当然、生身ではない。
犬夜叉の鉄砕牙は勿論、殺生丸さまの爆砕牙でさえ歯が立たん。
この世の者ではないんじゃからな。
となると天生牙でなければ斬れん。
だから、わしとりんは仲良くお留守番じゃった。
ううっ、そうじゃ、置いてきぼりにされたんじゃ~~(泣)。
足手まといだったんじゃ~~(泣)。
それでな、わしらは楓の村に逗留することになった。
何故、そこに?と思うじゃろ。
実はな、曲霊(まがつひ)との戦いの後、わしらと犬夜叉達は楓の村に場所を移しておった。
というのもな、爆砕牙の鞘(さや)を拵(こしら)える必要があったんじゃよ。
闘鬼神のように抜き身で持ち歩く訳にはいかんからな。
それで鞘を作るとなると、勿論、鉄砕牙と天生牙を鍛えた刀々斎しかおらん。
あの老いぼれ刀匠、この時あるを予感しとったらしい。
わざわざ塒(ねぐら)から出て『爆砕牙出現』を見にきたくらいじゃからな。
鞘の材料となる枝も前もって朴仙翁から譲り受けておいたという用意周到ぶりじゃった。
爆砕牙の鞘は天生牙や鉄砕牙と違い白木作りでな。
強力無比な爆砕牙に相応(ふさわ)しく荒々しい雷紋を彫り出した意匠になっておる。
それは見事な物じゃ。
でな、鞘が出来上がると同時に殺生丸さまは曲霊討伐にお出掛けになり、わしとりんは村に取り残されたという訳じゃ。
楓の家での逗留となると、当然、犬夜叉達も一緒じゃ。
さて、そうなるとじゃ、必然的に、毎晩、あ奴らと話をすることになる。
夕餉(ゆうげ)には全員、揃うからな。
まあ、お互い積もる話が山ほどあったからな。
それで双方が知ってることをアレコレ披露し合い、擦(す)り合わせた結果、神楽の死も判明したという訳じゃ。
あっ、琥珀に聞いたんじゃないのか?じゃと。
あ奴はりんと違って寡黙でな。
神楽のことも話そうとはせんかったんじゃ。
犬夜叉達からそれを聞いた時、わしゃ、『ああ、そうだったのか』とスンナリ納得したな。
あの女、妙に諦観しとるようなところがあったからのう。
内心、いつか奈落に殺されると覚悟しとったのかもしれん。
【賤(しず)の女(め)】:身分の卑しい女。
【夕餉(ゆうげ)】:夕飯、晩飯、晩餐のこと。
※『珊瑚の出産⑯』に続く
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