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餅つき(弥勒視点)②


※この画像はアニメ「犬夜叉」からお借りしてます。

餅つきが始まった。
弥勒は珊瑚とともに活気あふれるその様子を感慨深く眺めていた。
昨年、奈落のせいで村は大きな損害をこうむった。
田畑は荒らされ瘴気によって焼け落ちた家も多かった。
とはいえ人命がひとりも損なわれなかったのは幸いだった。
失った家屋はまた建て直せばいい。
だが人の命はそうはいかない。
失われれば二度と戻らないのだから。


『奈落殲滅』という父祖三代にわたる長年の宿願をはたした私は珊瑚と共に村に住みつくことにした。
勿論、犬夜叉も一緒だ。
それに七宝と雲母(きらら)もいる。
三人と二匹、中々の大所帯だ。
楓さまに何もかもおんぶに抱っこする訳にはいかん。
御足(おあし=お金)を稼がねばならん。
となると、やはり、あれだな、妖怪退治だ。
犬夜叉と珊瑚がいれば文字通り『鬼に金棒』。
三人であちこちを巡って稼ぎまくった。
村の立て直し資金もできた。
それを使って家々を直し田畑も元に戻した。


今年、いや年があらたまったので昨年だな。
大きな戦乱もなく天候も順調な年だった。
おかげで作物の出来もよかった。
それで村では無事に年を越せたことを祝って餅をつき神仏に供えることになった。
明け方から村の衆が総出で準備にとりかかっていた。
もうもうと上がる蒸気、糯米(もちごめ)を蒸す匂いが周囲に満ちる。
なんとも食欲をそそる匂いだ。
男も女も老いも若きも皆、目を輝かせ『餅つき』に見惚(みと)れている。
私の傍らにいる珊瑚も嬉しそうに眺めている。
珊瑚の腹はふっくらと膨(ふく)らんでいる。
私と珊瑚の子供だ。
産み月は近い。
以前はどんなに憧れても手に入れることはできまいと諦めていた望み。
今はその全てがこの手の中にある。
平安、愛しい妻、生まれてくる我が子。
(心から感謝いたします)
弥勒は溢れんばかりの喜びとともに神仏に祈った。  了



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