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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
無事、冥界から戻ってきた殺生丸。
必死に無表情を保とうとしているようだが、どうにも抑え切れないのだろう。
沸々(ふつふつ)と身の内から沸き立つ怒りの炎が見えるようだ。
小娘が息絶えたのが、余程、堪(こた)えているらしい。
今にもコチラに喰ってかかりそうな気配だな。
フッ・・・青いな、殺生丸。
二百年前の小童(こわっぱ)の頃に比べれば確かに形(なり)は成長したと云えよう。
だがな、妾(わらわ)の目から見れば、そなた如き、まだまだ経験も知識も足りぬ若輩者(じゃくはいもの)ぞ。
そなたには、まだ親として教え諭(さと)さねばならぬ事が多々ある。
まず、最初に教えてやろう。
天生牙で死人(しびと)を呼び戻せるのは一度きりなのだ。
そう告げた途端、殺生丸の無表情な面(おもて)に無念と落胆の色が生じた。
うすうす予期してはいたのだろう。
だが、改めて事実と知らされ、愕然たる思い消し難(がた)しといった処か。
殺生丸、そなた、天生牙さえ有れば死など恐るるに足りぬと心得違いをしていたようだな。
愚かな、我ら妖怪には人間が持ち得ぬ力があるが神ではない。
殺生丸、そなたは知らねばならん。
命の重さ、儚(はかな)さを。
限りある命だからこそ愛しいのだ。
愛しいからこそ失うのが悲しい、恐ろしい。
そこに慈悲が生じるのだ。
天生牙は癒しの刀。
その刀を持つ者は、たとえ武器として振るう時も慈悲の心をもって敵を葬らねばならん。
それが百の命を救い敵を冥道に送る天生牙を持つ者の資格なのだ。
亡き夫、闘牙の言葉を、一字一句、違(たが)えることなく殺生丸に伝える。
流石に父の言葉は身に沁みたのであろう。
あの頑固一徹な殺生丸が神妙に聞き入っておった。
ンッ!?脇を見やれば小妖怪が泣きじゃくっておるではないか。
妖怪が泣くとは珍しいのう。
我らは感情に左右される人間と違い、そうそう簡単には泣かぬもの。
そんなにも悲しいのかと問うてみれば、何と、小妖怪め、主(あるじ)である殺生丸の代わりに泣いておるとな。
目の前の息子は相変わらず無表情のままだが、よくよく見れば、そこに深い悲しみの色が透けて見える。
仕方あるまい、奥の手を使うか。
「・・・二度目はないと思え」
そう、次こそは最後だぞ、殺生丸、心せよ。
冥道石も天生牙と同じだ。
二度は・・・使えぬ。
首飾りを外し息絶えた小娘の首に掛けてやる。
小娘の胸に置いた冥道石から溢れ出す目が眩(くら)むような目映(まばゆ)い光。
この光こそ冥界に置き去られていた小娘の命その物なのだ。
フム・・・にしても、この光、尋常の輝きではないな。
やはり、この小娘、只の人間とは、到底、思えぬ。
その時、極々、微(かす)かに何かが、妾(わらわ)の意識に引っ掛かった。
深い深い潜在意識の底に横たわる小箱の中に封印されてきた真実。
数年後に気が付くことになるが、あの時は、さして気にもしなかった。
アァ、これは、いずれ、また別の機会にでも話すことになろう。
今は小娘蘇生の話に戻ろう。
光が消えるとともに小娘に命が宿る。
よし、戻ってきたな。
トクン・・・妾(わらわ)の聡(さと)い妖耳に聞こえてきた小娘の心の臓の鼓動。
無論、殺生丸の耳にも聞こえておろう。
小娘がつぶらな瞳をゆっくりと開けた。
その様子を瞬(まばた)きもせずジッと凝視する殺生丸。
冥界で息が止まった小娘。
まだ上手く呼吸しづらいのだろう。
ゴホゴホと小娘が咳き込み涙ぐめば・・・。
何と殺生丸の奴、冥界の中と同じように手を差し伸べておるではないか。
あれ程に矜持の高い奴が膝を折り小娘の頬をソッと優しく撫でておる。
「もう・・・大丈夫だ」などと声まで掛けて。
小娘を蘇生させた妾(わらわ)には目もくれん。
殊勝にも愚息の代わりに小妖怪が妾(わらわ)に礼を述べよった。
フム、この態度は従者の鑑(かがみ)ともいうべきだな。
小妖怪が云うところによると殺生丸は甚(いた)く喜んでおるらしい。
それにしても、人間の小娘一匹に、この騒ぎ・・・。
ハァ~~呆(あき)れたものよ。
変なところが父親に似てしまったな。
もう用は済んだとばかりにサッサと我が城から立ち去ろうとする愚息とその一行。
小娘は殺生丸のすぐ後を、小僧は、その数歩後に付き従う。
小妖怪が主(あるじ)の代わりに妾(わらわ)に頭を下げ退去の挨拶を述べる。
それにしても気になるな、あの人間の小僧。
普通の人間ならば冥界の中で生きていられるはずがない。
にも拘らず生きているということは・・・。
不思議に思い小僧に問うてみたところ、四魂の欠片で命を繋いでおるとな。
そうか、やはり、おまえも尋常な生の有りようではないのか。
ならば、小僧も小娘と同じ、天生牙では救われぬ命。
その事をしかと忘れぬよう小僧に告げおいた。
『愚息行状観察日記④』に続く
『愚息行状観察日記③=御母堂さま=』を公開します。
※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
殺生丸に付いて来た緑色の小妖怪がなんのかんのと騒ぎ立てる。
小煩(こうるさ)い奴だ。
名前は・・・何と云ったかな。
マア、そんな事はどうでもいい。
愚息の行動を冥道石で探ってみる。
フム、冥界の犬を癒しの天生牙で斬り捨てたか。
冥界の犬の体内に呑み込まれた人間の小娘と小僧(こぞう)が出てきた。
ンンッ!? 何と殺生丸が小娘に手を触れたではないか。
それも、やけに優しい手付きで。
これまでの奴なら断じて有るまじき行為。
あの人間の小娘・・・一体、殺生丸の何なのだ?
小妖怪に問い質してみるがサッパリ要領を得ん。
相変わらず小娘は目を覚まさないが小僧の方は気が付いたようだ。
そうこうする内に更に冥界の妖(あやかし)どもが殺生丸達に襲いかかる。
小僧に小娘を背負わせ殺生丸は妖どもの相手を。
手際よく奴らを片付け冥界へと足を進める。
進めば進むほどに戻る道は崩れていく。
そして遂には冥界に行き着く。
暫(しばら)くして小僧が小娘の異変に気が付いたようだ。
さもありなん、冥界の闇の中、人間の子供ごときの命、簡単に尽きてしまおう。
天生牙を抜き放ってみたものの、あの世からの使いが見えず戸惑う殺生丸。
その時、闇が、冥界の真の闇が黒雲のように覆いかぶさり小娘をかっ攫(さら)っていった。
小娘を追い冥界の闇の中に踏み込んでいった殺生丸と小僧。
このままでは人間どころか殺生丸の命とて危ぶまれる。
小妖怪も騒ぐことだし、そうさな、この辺りで母の親切を示してやるとするか。
冥道石の首飾りを高く掲げ、冥界の殺生丸の前に現世へ戻る道を開いてやった。
すると、どうだろう、あ奴、この母の親切を無視しおったではないか。
何とまあ、可愛げのない。
フン、勝手にするがよい。
頼まれても、もう二度と母は救いの手など差し伸べてやらぬ。
冥界の主(ぬし)が現われた。
巨大な闇その物のような存在。
小娘が大きな手に、ひっ摑(つか)まえられておる。
周囲には死人(しびと)の山。
夥(おびただ)しい数の老若男女(ろうにゃくなんにょ)の死人どもが山を成しておるのだ。
殺生丸が冥界の主を斬って捨てた。
癒しの刀、天生牙で。
だが、小娘は生き返らない。
おかしいな、何故だ。
小妖怪に訊ねてみる。
成る程、やはり、あの小娘、既に一度、天生牙で甦っていたのか。
それではどうしようもないな。
天生牙で命を呼び戻せるのは一度きりなのだから。
小娘が生き返らなかったのが、余程、衝撃だったのだろう。
殺生丸が天生牙を取り落としおった。
腑甲斐ない奴だ。
刀の成長の為に冥界に踏み込んだのではなかったのか。
突如、死骸の山が揺らいだ。
亡者(もうじゃ)どもが縋(すが)るように天生牙を取り囲んでおった。
まるで救いを求めるようにな。
殺生丸が再び天生牙を手にした。
小娘を腕に抱いたまま天生牙を天に向かって翳(かざ)せば。
眩しい光が満ち溢れ、死人(しびと)達を浄化していく。
神々しいまでに神聖かつ厳粛な情景。
そして、そのまま冥道を開けば、以前の三日月型とは比べ物にならぬ大きさに拡がっておるではないか。
真円ではないが、それに近い形の冥道。
その中から小娘を抱いた殺生丸と小僧が現世に戻ってきた。
『愚息行状観察日記③』に続く
1月2日の(0時、1時、21時)に拍手を贈って下さった方々に感謝致します。
有難うございます。拍手&コメントは何時だって管理人の元気の素です。
お陰さまで新作『愚息行状日記』が④に入りました。
後程、上記の作品の②を公開致します。
+
を贈って下さったCさま、有難うございます。

有難うございます。直接、サイトの方へお返事しておきました。 
※上の画像は『妖ノ恋』さまより使用許可を頂いております。
今日も今日とて“遠見の鏡”を使い愚息の行状を観察する。
ンッ? 愚息は誰かとな。
ホッ、決まっておろうが。
妾(わらわの)一人息子、西国王、殺生丸のことよ。
アァ、妾(わらわ)か?
妾(わらわ)はな、殺生丸の生母にして先(さき)の西国王妃の狗姫(いぬき)じゃ。
そうさな、人間風に云うと王太后(おうたいこう)という地位にある。
尤も、堅苦しい呼び名は御免なので通常は“狗姫(いぬき)の御方”と呼ばれておるがな。
マア、そのような事はさて置いて我が愚息の話に戻るとしよう。
あの薄情者め。
西国を出奔して以来、二百年も、この母に消息ひとつ知らせなんだ癖に、ある日、突然、降って湧いたように我が天空の居城に乗り込んできおったのだ。
その前に久々の空中逍遥と洒落込んでおった妾(わらわ)を強引に捉まえてな。
そして天生牙の冥道を拡げたいと己の用件のみをほざきおった。
長の無沙汰を詫びもせず時候の挨拶ひとつ口にせずにだぞ。
全く我が息子ながら相変わらず煮ても焼いても喰えぬ奴よな。
巷(ちまた)でも言うではないか。
『親しき仲にも礼儀あり』と。
昔から愛想のない子供だったが成長しても、さして変わりがない。
一体、誰に似たのやら。
ハッ?妾(わらわ)ではないぞ。
父親の闘牙でもないな。
親父の方は、息子とは違って、これまたエラク愛想が良くてな。
アチコチの女が闘牙に岡惚れしておったくらいだ。
ムッ、話が飛んだな。
元に戻そう。
殺生丸は父親のせいもあってか極めつけの人間嫌いであったはず。
それが、どうした気紛れか、あの時は人間を二匹も連れておったのだ。
一匹は赤子に毛が生えたような童女、もう一匹は、まだまだ一人前の男には程遠い小僧(こぞう)。
最初は二匹を『餌』にでもする積りなのかと思ったが、そうではないらしい。
マア、とにもかくにも、この母を頼って参ったのだ。
望みは叶えてやろう。
今は泉下の闘牙に頼まれたことでもあるしな。
それに何より面白そうだ。
この冥道石を使ったら何が起きるのかがな。
さて、殺生丸は不測の事態にどう対応するのであろうか。
首飾りに仕立てた冥道石を両手で掴み胸元で構える。
そして徐(おもむろ)に冥道石の力を解放してやった。
冥道石から飛び出してきたのは黒い巨大な犬。
冥界の犬だ。
殺生丸に襲い掛かる。
天生牙を抜き放ち冥道残月破で攻撃する殺生丸。
だが、殺生丸の冥道残月破にも冥界の犬はビクともせぬ。
空中を自在に飛び回る冥界の犬。
当然だな、あんな不完全な冥道では。
真の冥道は真円を描くもの。
殺生丸の冥道は大きくはあるものの瘠せこけた三日月の形。
すると、冥界の犬め、何を思ったのか。
二匹の人間の子供達を呑み込んで冥道に逃げ込んだのだ。
冥界の犬を追って自ら冥道に入ろうとする殺生丸。
まさか、あ奴が躊躇(ためら)いもせず冥道に入ろうとするなど、正直、妾(わらわ)も予想せなんだわ。
それも、あれ程、嫌っておった人間の為にとはな。
殺生丸は犬を斬りに行くだけだなどと抗弁しておったが。
フッ、ばればれの口実ではないか。
冥道は虚空に消え失せた。
後は冥道石を使って殺生丸の行動を追えばよい。
『愚息行状観察日記②』に続く
素敵イラストサイト
『妖ノ恋』
さまからチビチビ御母堂さま&兄上のアイコン許可を頂きました。
春から
縁起が良いわえ。
Chihiroさま
、本当に有難うございますぅ~~~
感謝
感激
雨あられ
にございますぅ~~~
喜びの覚めやらぬまま
、一気に御母堂さま視点の
作品も公開しようと思います。
題名は『愚息行状観察日記(ぐそくぎょうじょうかんさつにっき)』です。
書き上げました。
凄く楽しい
んです。
『降り積もる思い(31)=かごめと桔梗=』
を差し置いて
字数が伸びる
伸びる(ギュ~~~ン)。
書き出したばかり
なのに。


一度きりの御登場
なのにインパクトは
超弩級(ちょうどきゅう)

最高
です。
吃驚仰天
しました。
驚愕
その物でした。
百年以上お供してるのに
)
ポンと
華麗に御登場。
『驚天動地』
って、御母堂さまの御登場にピッタリの言葉です。
魅力的なこと
ったら
綺麗で、
お茶目で、息子である兄上に負けるどころか下手すると喰ってしまうほどの
強烈なキャラクター
なんですもの。
兄上の御生母さま
、お見事です。
メロメロ
です。
何か書きたい気分が
湧き起こってきました。
お目出度い気分に
させて下さる御方なんですよね。
好き好き
、大好きです


明けましておめでとうございます。
大晦日に引き続き当方では雪が降ってます。
非常に珍しい雪正月になりました。
初詣などの際はシッカリ防寒の上でお出かけ下さい。
本年も
どうぞ宜しくお願いいたします。
2010.平成22年.元旦.
猫目石

