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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
殺生丸に付いて来た緑色の小妖怪がなんのかんのと騒ぎ立てる。
小煩(こうるさ)い奴だ。
名前は・・・何と云ったかな。
マア、そんな事はどうでもいい。
愚息の行動を冥道石で探ってみる。
フム、冥界の犬を癒しの天生牙で斬り捨てたか。
冥界の犬の体内に呑み込まれた人間の小娘と小僧(こぞう)が出てきた。
ンンッ!? 何と殺生丸が小娘に手を触れたではないか。
それも、やけに優しい手付きで。
これまでの奴なら断じて有るまじき行為。
あの人間の小娘・・・一体、殺生丸の何なのだ?
小妖怪に問い質してみるがサッパリ要領を得ん。
相変わらず小娘は目を覚まさないが小僧の方は気が付いたようだ。
そうこうする内に更に冥界の妖(あやかし)どもが殺生丸達に襲いかかる。
小僧に小娘を背負わせ殺生丸は妖どもの相手を。
手際よく奴らを片付け冥界へと足を進める。
進めば進むほどに戻る道は崩れていく。
そして遂には冥界に行き着く。
暫(しばら)くして小僧が小娘の異変に気が付いたようだ。
さもありなん、冥界の闇の中、人間の子供ごときの命、簡単に尽きてしまおう。
天生牙を抜き放ってみたものの、あの世からの使いが見えず戸惑う殺生丸。
その時、闇が、冥界の真の闇が黒雲のように覆いかぶさり小娘をかっ攫(さら)っていった。
小娘を追い冥界の闇の中に踏み込んでいった殺生丸と小僧。
このままでは人間どころか殺生丸の命とて危ぶまれる。
小妖怪も騒ぐことだし、そうさな、この辺りで母の親切を示してやるとするか。
冥道石の首飾りを高く掲げ、冥界の殺生丸の前に現世へ戻る道を開いてやった。
すると、どうだろう、あ奴、この母の親切を無視しおったではないか。
何とまあ、可愛げのない。
フン、勝手にするがよい。
頼まれても、もう二度と母は救いの手など差し伸べてやらぬ。
冥界の主(ぬし)が現われた。
巨大な闇その物のような存在。
小娘が大きな手に、ひっ摑(つか)まえられておる。
周囲には死人(しびと)の山。
夥(おびただ)しい数の老若男女(ろうにゃくなんにょ)の死人どもが山を成しておるのだ。
殺生丸が冥界の主を斬って捨てた。
癒しの刀、天生牙で。
だが、小娘は生き返らない。
おかしいな、何故だ。
小妖怪に訊ねてみる。
成る程、やはり、あの小娘、既に一度、天生牙で甦っていたのか。
それではどうしようもないな。
天生牙で命を呼び戻せるのは一度きりなのだから。
小娘が生き返らなかったのが、余程、衝撃だったのだろう。
殺生丸が天生牙を取り落としおった。
腑甲斐ない奴だ。
刀の成長の為に冥界に踏み込んだのではなかったのか。
突如、死骸の山が揺らいだ。
亡者(もうじゃ)どもが縋(すが)るように天生牙を取り囲んでおった。
まるで救いを求めるようにな。
殺生丸が再び天生牙を手にした。
小娘を腕に抱いたまま天生牙を天に向かって翳(かざ)せば。
眩しい光が満ち溢れ、死人(しびと)達を浄化していく。
神々しいまでに神聖かつ厳粛な情景。
そして、そのまま冥道を開けば、以前の三日月型とは比べ物にならぬ大きさに拡がっておるではないか。
真円ではないが、それに近い形の冥道。
その中から小娘を抱いた殺生丸と小僧が現世に戻ってきた。
『愚息行状観察日記③』に続く