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『愚息行状観察日記①=御母堂さま=』



※上の画像は『妖ノ恋』さまより使用許可を頂いております。


 今日も今日とて“遠見の鏡”を使い愚息の行状を観察する。
ンッ? 愚息は誰かとな。
ホッ、決まっておろうが。
妾(わらわの)一人息子、西国王、殺生丸のことよ。
アァ、妾(わらわ)か?
妾(わらわ)はな、殺生丸の生母にして先(さき)の西国王妃の狗姫(いぬき)じゃ。
そうさな、人間風に云うと王太后(おうたいこう)という地位にある。
尤も、堅苦しい呼び名は御免なので通常は“狗姫(いぬき)の御方”と呼ばれておるがな。
マア、そのような事はさて置いて我が愚息の話に戻るとしよう。
あの薄情者め。
西国を出奔して以来、二百年も、この母に消息ひとつ知らせなんだ癖に、ある日、突然、降って湧いたように我が天空の居城に乗り込んできおったのだ。
その前に久々の空中逍遥と洒落込んでおった妾(わらわ)を強引に捉まえてな。
そして天生牙の冥道を拡げたいと己の用件のみをほざきおった。
長の無沙汰を詫びもせず時候の挨拶ひとつ口にせずにだぞ。
全く我が息子ながら相変わらず煮ても焼いても喰えぬ奴よな。
巷(ちまた)でも言うではないか。
『親しき仲にも礼儀あり』と。
昔から愛想のない子供だったが成長しても、さして変わりがない。
一体、誰に似たのやら。
ハッ?妾(わらわ)ではないぞ。
父親の闘牙でもないな。
親父の方は、息子とは違って、これまたエラク愛想が良くてな。
アチコチの女が闘牙に岡惚れしておったくらいだ。
ムッ、話が飛んだな。
元に戻そう。
殺生丸は父親のせいもあってか極めつけの人間嫌いであったはず。
それが、どうした気紛れか、あの時は人間を二匹も連れておったのだ。
一匹は赤子に毛が生えたような童女、もう一匹は、まだまだ一人前の男には程遠い小僧(こぞう)。
最初は二匹を『餌』にでもする積りなのかと思ったが、そうではないらしい。
マア、とにもかくにも、この母を頼って参ったのだ。
望みは叶えてやろう。
今は泉下の闘牙に頼まれたことでもあるしな。
それに何より面白そうだ。
この冥道石を使ったら何が起きるのかがな。
さて、殺生丸は不測の事態にどう対応するのであろうか。
首飾りに仕立てた冥道石を両手で掴み胸元で構える。
そして徐(おもむろ)に冥道石の力を解放してやった。
冥道石から飛び出してきたのは黒い巨大な犬。
冥界の犬だ。
殺生丸に襲い掛かる。
天生牙を抜き放ち冥道残月破で攻撃する殺生丸。
だが、殺生丸の冥道残月破にも冥界の犬はビクともせぬ。
空中を自在に飛び回る冥界の犬。
当然だな、あんな不完全な冥道では。
真の冥道は真円を描くもの。
殺生丸の冥道は大きくはあるものの瘠せこけた三日月の形。
すると、冥界の犬め、何を思ったのか。
二匹の人間の子供達を呑み込んで冥道に逃げ込んだのだ。
冥界の犬を追って自ら冥道に入ろうとする殺生丸。
まさか、あ奴が躊躇(ためら)いもせず冥道に入ろうとするなど、正直、妾(わらわ)も予想せなんだわ。
それも、あれ程、嫌っておった人間の為にとはな。
殺生丸は犬を斬りに行くだけだなどと抗弁しておったが。
フッ、ばればれの口実ではないか。
冥道は虚空に消え失せた。
後は冥道石を使って殺生丸の行動を追えばよい。

『愚息行状観察日記②』に続く

 

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