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闇に覆われた結界の中、密談が交わされている。
主らしき男が部下に問い掛ける。
「・・・手筈(てはず)は?」
密談と意識しているせいだろうか。
普段の胴間声(どうまごえ)とは似ても似つかぬ低い潜(ひそ)めた声。
そんな主に合わせるように部下も声を潜める。
「ハッ、仰せの通りに」
「雨師(うし)と風伯(ふうはく)は?」
「諾(だく)と」
「見返りは?」
「雨師が貴酒を百斗、風伯が筝(そう)と琴(きん)を五十器ずつ」
「フム、かなりの物入りだな。まあいい。儂(わし)が西国の実権を手中にすれば、その程度の損、瞬(またた)く間に取り戻せるわ」
「御意」
「それで、今回、使う忍びは?」
「毒蛾の蛾々を」
「あ奴か。だが、くれぐれも獲物には傷を残さぬよう念を押しておけ。襲われた証拠を残さんようにな。飽くまでも溺死という形にするのだぞ。僅かたりとも我らが関与したと疑われんように。判っておろうな」
「重々、承知しております」
「よし、では、早速、明後日、決行するのだ。明日はいかんぞ。殺生丸が人間の小娘に逢いに行く日だからな。フォッフォッ、精々、最後の逢瀬を楽しむがいい。これで邪魔な存在はいなくなる。次は、傷心の殺生丸を我が娘に慰めさせればよい。そのまま勢いにまかせて娘を娶(めと)らせて。さすれば、儂(わし)は西国王の舅(しゅうと)じゃ。子供でも出来れば外祖父ぞ。由羅には何としてでも男子を産んでもらわねばな。孫を足掛かりにジワジワと実権を握ってくれるわ」
「待ち遠しゅうございますな、豹牙(さいが)さま」
「フッ、儂(わし)は先代、闘牙王の従兄弟だ。この西国では、一番、血が近い親族なのだぞ。もっと厚遇されても当然であろうが。にも関わらず、殺生丸め、儂(わし)を冷遇しおって。二百年もの間、国を放り出し、このまま人界をほっつき歩いているのだろうと思えば、いきなり帰ってきおってからに。国主の座に就くや否や、不正な蓄財に励む者を次々と摘発し始めおった。長年、西国を支えてきた儂(わし)らの抗議を聞こうともせん。それどころか、抵抗する者は容赦なく牢に繋(つな)がれ断罪される始末よ。免職に蟄居(ちっきょ)、閉門、領地の召し上げは当たり前。それどころか、下手をすれば罪状によっては、打ち首、獄門の刑も有りうる。そうした所業を、殺生丸の奴め、平然と顔色ひとつ変えずやってのけおった。要職は、次々と、あ奴の息の掛かった者に挿(す)げ替えられ儂(わし)は閑職に追いやられてしまった。その上、高貴な犬妖に下賤(げせん)な人間の血を交(ま)ぜようなどと・・・・断じて許さんっ!」
次第に興奮してきたのだろう。
豹牙(さいが)と呼ばれた男が声を荒げた。
闇に染まる結界の中、点(とも)された明り取りの火に照らされ男の姿が浮かび上がる。
小山のような巨躯に縮れた赤い髪、荒削りな容貌、尊大な物腰の壮年の男が盃を手に座している。
髪と同色の赤い眉が逆八の字に跳ね上がり魁偉な容貌を、尚更、荒々しく見せる。
豹牙(さいが)は身の内に湧きあがる憤りを掻き消そうとするかのように酒を呷(あお)った。
帰還した殺生丸が、まず断行したのが西国に巣喰う鼠どもの一掃だった。
二百年にも亘(わた)る国主の不在は野心家どもを増長させた。
その最たる者が豹牙(さいが)である。
もし、世に名高い“西国の二本柱”、名臣の中の名臣と称(たた)えられる尾洲と万丈が国政の手綱を、天空の城に座す前西国王妃の“狗姫(いぬき)の御方”が睨みを利かせていなかったならば、間違いなく西国の王位簒奪(さんだつ)を企て実行していたであろう男だった。
しかし、実際には隙のない尾洲と万丈に阻まれ西国の実権を握れなかった豹牙(さいが)は、その鬱憤を晴らすかのように、先代国主の従兄弟という本来なら遠縁でしかない血縁を盾に取り弱者を虐(しいた)げ己の懐(ふところ)を肥やしてきた。
典型的な虎の威を借る狐の如き輩(やから)である。
強い酒が胃の腑を焼くに従い豹牙(さいが)の舌は、益々、滑(なめ)らかになった。
「全く、親が親なら子も子だ。大体、先代の闘牙が亡くなったのは竜骨精との闘いで負傷した身でありながら人間の女を助けに行ったせいではないか。それが原因で殺生丸は大の人間嫌いになったと聞いておる。それが今はどうだ。三日おきに人間の小娘に逢いに人界に出かけるなど腑抜けになったとしか思えん。一体、どういう料簡(りょうけん)だ。呆れて物も云えんわ!」
ダンッ!
豹牙(さいが)が力任せに盃(さかずき)を膳に叩き付けた。
赤毛の男は並々ならぬ膂力(りょりょく)の持ち主である。
グラッ・・・・
余りの勢いに結界内の空気が揺らぐ。
ビシッ!
衝撃で盃と膳が真っ二つに割れた。
・・・カラン・・・
これからの先行きを暗示するかのように割れた盃が転がっていた。
※雨師(うし)=雨の神
※風伯(ふうはく)=風の神
※閉門(へいもん)=一定期間、門を閉ざして出入りを禁じる刑罰。
※蟄居(ちっきょ)=閉門のうえ、一室に謹慎させる刑罰。
※獄門の刑=首切りの刑を受けた者の首をさらす刑罰。さらし首。
※『濁流③=襲撃=』に続く

公開の運び
になりそうな勢いだ。
明日辺り公開できるのではないか


『濁流』に妾(わらわ)は登場せんが、ガッカリせんでもよい。
8月20日に拍手を贈って下さった方々に御礼申し上げます。
有難うございます。感謝
感謝にございます。
拍手&コメントは管理人の心の支えです。
執筆してきました。

『濁流』は、【原作のその後】を綴る作品です。
オリジナルストーリーです。
平和な膠着状態を
一気に突き崩していきます。
不幸に
したい訳ではありません。
大団円
、
ハッピーエンド
に持っていきたいばかりに苦心惨憺(くしんさんたん)しているのであります。
『濁流』
が遂に始まりました。
暑いです。
)
今日の最高気温・・・・37℃なんですよ








お陰さまで新作の第一部を公開できました。
雀さま、
リサさま、
感謝×感謝
です。

『濁流②=暗躍=』に取り掛かってます。
原作に忠実に沿った形で執筆してきました。
皆様のご期待に
沿えますよう、精一杯、頑張ります。
雨が降り続いている。
小糠雨(こぬかあめ)や霧雨のような少量の雨ではない。
雨粒の一つ一つが大きい。
天から大粒の雨粒が休む間もなく叩きつけるように降り注ぐ。
豪雨だ。
昼頃から降りだした雨。
止(や)む気配は一向にない。
大量の雨水が集中して河川に流れ込む。
しかし、量が多過ぎて排水が間に合わない。
見る間に水路から溢れ出す水、水、水。
決壊する堰(せき)、逆流する水。
氾濫する水が押し寄せてくる。
水の浸入が速すぎる。
逃げる時間さえ無い。
村でも低い位置に建てられた家々は、あっという間に濁った水に呑み込まれ見えなくなった。
荒れ狂う濁流に為す術もなく村人の命が失われていく。
助けに行こうにも、ここは農村であって漁村ではない。
肝心の船がないのだ。
そうする内にも水位はドンドン上がり高台にある楓の家にまで迫りつつある。
間の悪いことに犬夜叉も弥勒もいない。
妖怪退治を依頼され朝から家を留守にしているのだ。
この雨で何処かで足止めでもされているのだろう。
猫又の雲母(きらら)がいてくれれば空を飛んで戻ることも出来ただろうが、今は、生憎、琥珀と共に武者修行の旅に出て、ここ数年、戻ってない。
更に悪いことに七宝までもが妖術修行に出掛けていなかった。
せめて七宝だけでも居てくれれば狐妖術の風船球変化で助けられる村人もいただろうに。
楓は、最近、寄る年波に足腰がメッキリ弱り以前のようには動けない。
代わりに、かごめと珊瑚が中心になって走り回り村の衆に楓の家への避難を指図している。
篠突く雨に雨具など何の役にも立たない。
二人ともびしょ濡れになりながら陣頭指揮を取っている。
楓が、かごめに訊ねた。
「かごめ、りんを知らないか?」
「りんちゃん? 朝、顔を見たきりだけど」
珊瑚が口を出してきた。
顔色が真っ青になっている。
「家の双子と遊んでたんだ。でも、蝶を追いかけていって川の方へ・・・。その後、姿を見てない」
大水からの避難で誰も彼もが騒然としている。
そんな雰囲気の中、衝撃的な事実が判明した。
りんが何処にもいないのだ。
ヒラヒラと蝶が飛ぶ。
りんは見たこともない綺麗な蝶を夢中で追いかけていた。
鮮やかな朱色の四枚の羽根には上下に目のような模様がある。
朱色と黒が交じり合う上羽根の目は黄白色の縁取り。
黒の中に鮮やかな水色の斑点が散る下羽根の目は褐色の縁取り。
朱色、水色、黄色、白、褐色、そこに黒が入り、一層、鮮やかさを際立たせている。
かと思うと蝶が羽根をたたんだ瞬間、そこに現われるのは黒褐色の裏羽根。
よくよく見ると細(こま)かい縞が羽根一面に走っている。
まるで最上級の黒のお召しを纏((まと)う貴婦人のようだ。
正(まさ)しく豪奢と洗練の極み。
蝶が舞うごとに、緋色の羽根が、羽根を飾る目の模様が、ユラユラと揺れて催眠効果を発揮する。
四つの瞳にジッと見詰められている。
そんな錯覚さえ抱(いだ)かせる。
誰もが幻惑されそうになる。
蠱惑的な魅力を放つ妖美な蝶。
蝶の名は孔雀蝶。
華麗な姿に何と似つかわしいことか。
命名の由来は孔雀の羽根のような目を持つことに起因している。
本来、孔雀蝶は、高い山地に生息する。
そんな蝶が、何故、こんな人里に?
りんは孔雀蝶に誘われるままにフラフラと川の方へと誘導されていた。
ポツリ、水滴が頬を打つ。
ハッと、りんは正気に返った。
「あっ、あれ?」
周囲を見回してみた。
蝶は、もう何処にも見えなかった。
りんは、何時の間にか、珊瑚の家から、随分、遠ざかった場所に来ていた。
目の前には川が流れている。
ポツ・・・ポツ・・・ポツ・・・
最初は疎(まば)らに大地を打っていた雨が、急に、天水桶を引っくり返したような土砂降りに切り換わった。
アッという間もなく、りんはズブ濡れになっていた。
容赦なく降り注ぐ雨に新調の小袖が濡れて肌に張り付く。
髪から小袖からポタポタと雫が滴(したた)り落ちる。
「かっ、帰らなきゃ。楓さまが心配しちゃう!」
りんが慌(あわ)てて走り出そうとした瞬間、目の前に大きな影が立ちはだかった。
※『濁流②=暗躍=』に続く




小分けにした方式
で出していきます。
公開
できます。
四部
五部
)
新作の
第一部を公開させて頂きます。
いつも『やる気』の源になってます。
新作の第一部が公開の目途に漕ぎ着けました。




三日月です。
ムシムシと
暑い一日でした。
最終日なのでアイコンも、それに相応しいものにしました。
残暑にヘタバリそうな管理人の心の支えです。
贈って下さった無記名の御方
有難うございます。
1600字台です。
と迷ってます。
コウでもない
と悪戦苦闘してます。


新作に
苦慮する身にはエールが身に沁みます。
取り掛かってます。

)
完全に読みきった訳ではありませんが、エイヤ
と思い切りました。
全てをキッチリと決めてから書く方式ではありません。

連続になります。
立秋に入ったとはいえ蒸し暑い日が続いてます。
アイコンも、それらしいモノにしました。
新展開の新作か
