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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
「御方さまっ!」
権佐が松尾とともに部屋に飛び込んできた。
その時、鏡の中の毒蛾男が振り回した鞭が、りんの頭部に当たった。
ごく軽く触れた感じだったが、実際には相当の衝撃だったのだろう。
りんが増水した川に落ちた。
毒蛾男は、りんの髪紐を狙っていたらしい。
鞭で弾き飛ばされた紅白の髪紐が空中で孤を描き計算したかのようにポトッと男の手に落ちてきた。
川に落ちたりんが息をしようと必死にもがいて水面に顔を出した。
次の瞬間、上流から流れてきた太い丸太が、りんを・・・。
「りんっ!」 「「りんさまっ!」」
狗姫(いぬき)が、権佐が、松尾が叫ぶ。
狗姫達は知る由(よし)もなかったが、りんが落ちた川の上流には木材の切り出し場があり、そこには丸太が繋留(けいりゅう)されていた。
その切り出し場が、この大水で決壊し、繋がれていた木材が流れてきたのだ。
矢のように川を流れ下る丸太が、凶器となって、りんに襲いかかる。
避(よ)ける間もなく、丸太が、りんの頭部を直撃した。
りんの小さな顔が、ゆっくりと水中に消えていく。
それを見届けた毒蛾男は任務を完了したと思ったのだろう。
ニヤリと笑ったかと思うと背中の羽根を羽ばたかせ雨の中へと消えていった。
非常事態に狗姫が眦(まなじり)を決して矢つぎばやに命令を出す。
「天鼓、おるかっ!返事をいたせっ!」
「一鼓(いっこ)!」 「きゅいっ」
「二鼓(にこ)!」 「きゅきゅいっ」
狗姫の要請に応え、突如、白い兎の形(なり)をした山彦の精が二匹、パッと空中から現われた。
「一鼓は権佐につけ。二鼓(は妾(わらわ)に」
狗姫の言葉のままに一鼓が権佐の右肩に、二鼓が狗姫の左肩に、スッと取り付いた。
「権佐、“遠見の鏡”の前に立て。そうだ、妾(わらわ)の前にだ。事は一刻を争う。今から人界への道を開く。よいか、権佐、必ずや、りんを救出して戻れ」
「はっ!」
権佐への下知(げち)を下すや否や、狗姫は“遠見の鏡”に向かって、いや、実際には間に権佐を挟んで、印を組み呪(しゅ)を唱(とな)え出した。
「アモーガ オン アボキャ シッデイ アク オン アミリタ テイセイ カラ ウン オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ、次元透過の術、“神点”、走波!」
狗姫が印を切リ呪(しゅ)を唱え終えた途端、“遠見の鏡”が光を発し始めた。
光はドンドン強くなり目も眩(くら)まんばかりに輝きだす。
眩(まぶ)しさが最大限に到達した瞬間、光は一気に収束し鏡の中に吸収された。
光が消えると同時に権佐の姿も狗姫達の前から消えていた。
人界へと転送されたのだ。
先程まで曇りなく人界の様子を映しだしていた鏡面が、今は全ての光を失った鈍(にぶ)い闇の色に変わっていた。
りんの身が案じられてならないのだろう。
心配そうに松尾が口を開いた。
「御方さま、りんさまは大丈夫でしょうか」
「判らん。あの怪我と・・・大水だ。権佐が一刻も早く見つけてくれることを祈るしかないな」
鏡から発する眩(まばゆ)い光に全身を包まれた。
そう感じた刹那、気が付けば権佐は叩きつけるように降る雨の中に立っていた。
目の前には大水で氾濫する川が流れている。
妖界から人界への転送は上手くいったらしい。
いつも“遠見の鏡”が映し出していた人里に権佐はいた。
ハッ、呆(ほう)けている暇はない。
即座に下流に向かって権佐は駆け出した。
一刻も早く、りんさまを助け出さねば!
傷を負った上、この激流に呑み込まれたりんさま。
急がねば御命そのものが危うい!
銀色の雨を突っ切って、黄、黒、焦げ茶色が雑(ま)じり合った斑(まだら)の閃光が走る。
土を含んで流れ込む大量の泥水のせいで川の水は透明度を失い濁(にご)り始めている。
走りながら妖視で川を走査する権佐。
右肩には体毛を周囲の色に同化させた一鼓(いっこ)がピタリと貼り付いている。
すると信じられない光景が出現した。
川の流れに逆らうように、花が、薄紅色の花が浮き上がってきたのだ。
桜だ! 何千、何万とも知れぬ桜の花びらが!
在りえない! 桜は春に咲く花だ。
今は夏が終わったばかりの秋。
だが、現実に桜の花が川面(かわも)を埋め尽くしている。
ザアアッ・・・無数の桜の花弁は意思を持つかのように川から浮かび上がった。
球体、違う、楕円形の塊りとなって。
桜の花弁の集合体は何かを包み込むような形をしている。
そしてフワリと地面に着地した。
桜の花が霞(かす)むように消え現われたのは・・・りんさま!
桜の花弁が変化した小さな扇が少女を守るように胸元(むなもと)に鎮座していた。
りんの頭部からは血が流れている。
権佐は慌てて駆け寄り、りんの胸に耳を当ててみた。
弱いながらも規則正しい心臓の鼓動が聞こえる。
(有難い、生きておられる!)
幸(さいわ)いにも気絶したせいで、りんは水も飲んでいない様子だった。
権佐は急いで血止めを施し主の大切な姫を腕に抱きかかえた。
※『愚息行状観察日記(38)』に続く
朝晩は涼しくなりましたが、日中は、まだ結構
暑いです。
まずは、9月15・16日に拍手を贈って下さった方々に感謝致します。
有難うございます。

いつもパワーを貰ってます。
皆さま、長らく、お待たせしました。
明日、9月18日に新作
『愚息日記』の(37)
を公開します。
今
最後の
吟味推敲
を行ってます。
パソにジャンジャン取り込みます。
密林さんで購入。


そんな訳でチョッと
燻(くすぶ)ってます。
拍手の一つ一つに励まされてます。
コメントを贈って下さった美嘉さまへ

涼しく
なりました。
暑いのでチョッと涼しくなっただけでも
喜んじゃいます。
とっても嬉しゅうございます。
創作活動って
孤独な作業なんですよね。




美嘉さま
うさこさま
園子さま
へ

※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
「いかんっ!」
長い白銀の髪を揺らし佳人が叫んで立ち上がった。
眸の色は金、頬に走る赤い一筋の妖線が白皙の美貌を更に際立たせている。
女としては長身、絶世の美女である。
立ち姿までもが女神のように麗しい。
妖界で最大領土を誇る西国の王、殺生丸の生母にして王太后の狗姫(いぬき)である。
そして、この天空に聳(そび)える巨城の主でもある。
「松尾っ! 松尾はおるか!」
「何事にございますか、御方さま」
常ならぬ主の声に慌てて筆頭女房の松尾が駆けつけてきた。
部屋に入るなり松尾は狗姫の様相に目を瞠(みは)った。
いつも鷹揚に構えている主が血相を変えていたのだ。
「説明している暇はない。権佐が来ておったな。大至急、呼んでまいれっ!」
「はっ、はいっ!」
三年前、人界を放浪していた狗姫の嫡男、殺生丸が、二百年ぶりに西国に帰還した。
そして、先代の闘牙王亡き後、長らく空位であった西国王の位に就いたのは耳目に新しい。
二百年もの間、亡き夫の遺言を忠実に守り西国を狙う野心家どもに睨みを効かせてきた狗姫にとっては、やっと肩の荷が下りた慶事であった。
そんな狗姫の、ここ数年の楽しみは、“遠見の鏡”で人界を覗(のぞ)くことである。
何故、妖界ではなく人界なのか。
それは覗き見る対象が“りん”という幼い人間の娘だからであった。
大妖怪の狗姫が、何故、人間などを具(つぶさ)に観察するのか。
答えは簡単である。
“りん”という人間の娘が殺生丸の許婚(いいなづけ)、所謂(いわゆる)狗姫に取って将来の嫁だからに他ならない。
殺生丸が、極めつけの“人間嫌い”なのは妖界に遍(あまね)く知れ渡っている事実である。
だが、そんな息子が、どういう巡り合わせなのか、“りん”という幼い人間の娘を愛した。
いや、西国に帰還した今も尚、揺るぎない愛情を注ぎ続けている。
この三年間、殺生丸は、三日おきに欠かさず娘に逢いに人界を訪れているのだから。
その行動の一部始終を狗姫は“遠見の鏡”を通して見てきた。
だからこそ、今回の異常事態も逸早(いちはや)く察知した。
鏡の中、りんが、突如、現われた異形の妖怪に襲われている。
まるで滝のような雨が激しく降りしきる人里。
篠突く雨の中、濡れもせず女のような顔立ちの男が立っていた。
女とも見紛(みまが)う顔を彩(いろど)る原色の紋様が何とも毒々しい。
男の背には蝶のような大きな羽根が、いや、あれは蝶ではない、蛾だ。
それも、恐らくは猛毒の鱗粉を撒き散らす毒蛾の羽根だろう。
男は薄い結界を全身に張り巡らしているらしい。
結界が雨粒を弾いて男の全身を白く浮き上がらせている。
鞭を振りまわし徐々に川の方へとりんを追い込んでいく毒蛾の妖怪。
わざと鞭の狙いを外しているのが判る。
猫が鼠を甚振(いたぶ)るように男はりんを弄(もてあそ)んでいるのだ。
その証拠に鞭は髪の毛ひと筋の差でりんに当たっていない。
怖ろしいほどの精度で繰り出される鞭。
相当な手練(てだれ)だ。
傷ひとつ残さぬよう厳命されているのだろう。
気付くべきだった。
あの鮮やかな蝶が、りんの前に現われた時に。
大雨で川の水嵩が信じられない早さで増している。
明らかにりんは誘い込まれている。
この襲撃の目的は“りんの命”。
増水した川に落とし込んで溺死させる積りなのだろう。
それも偶発的な事故と思わせるよう証拠ひとつ残さぬように。
こうした巧妙かつ卑劣な手口を使うのは間違いなく・・・あ奴だ!
大した実力もない癖に欲だけは並外れて深い男。
己の欲の為、他者を陥れることに何の痛痒も感じない唾棄べき輩(やから)。
ギリッ・・・狗姫が唇を噛みしめた。
鋭利な牙が剥(む)きだしになる。
ようも、この狗姫を出し抜いてくれたわ。
覚えておれ、この借りは必ず返すぞ、豹牙(さいが)!
※『愚息行状観察日記(37)=御母堂さま=』につづく
新作、この後、出します。
『愚息日記』の(36)、急遽(きゅうきょ)、公開します。 

こけました



最猛勝(さいみょうしょう)
奈落
殿
今日もムアッ
と暑いです。
涼しい
と云えるレベルにはなりませんね。
でございます。
新作についての
お知らせを出します。
お出かけしてきますから。
到達しそうだった新作ですが・・・。
下落しました。
けど仕方ない。
スパッと切ってしまうか
悩みました。
と未練を断たないと支持者とは云えませんよね。
やっと朝と晩は過ごしやすくなってきました。


コメントを贈って下さった美嘉さま
本日、私の住む地方の最高予想気温は35度です。
やっと25度を割りました。
気分的に涼しくなりました。
ほんの少~~~しだけ和らぎました。
暑い夏は
初めてです。
最高に暑い夏
らしいです。
皆様の激励があればこそ頑張れます
美嘉さま
雀さま
うさこさま
園子さま
へ
「なっ・・・何という・・・」
「酷(ひで)え・・・な」
目の前の光景に弥勒と犬夜叉は言葉を失った。
見渡す限りの水、水、水。
それも黄土色に染まった泥水。
雨上がりの抜けるように青い空と対照的な色合いが酷(ひど)く違和感を与える。
耕(たがや)したばかりの畑が、収穫を待つ水田の稲が、見慣れた村の風景がどこにもない。
村の大半の家が荒れ狂う濁流に呑み込まれ水没しているではないか。
今しも一軒の家が水に押し出され倒壊しようとしている。
バシャッ!
遂に水圧に耐えかねて柱が折れた。
もう家の体(てい)を成していない残骸がバラバラになって崩れ落ちていく。
そして二人の前でアッという間に下流へと押し流されていった。
時々刻々、増水する大水の中、無理を押して犬夜叉と弥勒は出先から戻ってきた。
三日前、朝から犬夜叉と弥勒は村から遠く離れた町へ赴(おもむ)いた。
妖怪退治を請け負ったのだ。
弥勒が御札で妖怪を誘(おび)きだし犬夜叉が鉄砕牙で妖怪を倒す。
いつも通りの決まりきった慣れた手順。
犬夜叉が妖怪を退治した途端、雨が降り出した。
その時は、いつもの事だと、別段、二人は気にも留めなかった。
まさか、こんな大水になると誰が予測できただろう。
雨は一気に滝のような水量となり犬夜叉と弥勒は帰ろうにも帰れなくなってしまった。
その為、二人は妖怪を退治をした家の主の好意を受け、その晩は、その家に泊まることにした。
しかし、次の日になっても、雨は一向に止(や)む気配がなかった。
やむを得ず、二人は、二日目も、その家で厄介(やっかい)になった。
結局、雨は、二日二晩、休むことなく降り続き、漸(ようや)く三日目の朝になって止んだ。
世話になった分限者の家を早々に辞し村へ帰ろうとした犬夜叉と弥勒は氾濫する川から溢れ出す大量の水に目を瞠(みは)った。
町は地勢的に高台にある為、余り水の被害が出ていなかったのだ。
だが、楓の村は川の下流にある。
普通の雨なら心配する必要はないが、これほどの大雨である。
家屋が浸水している可能性は高い。
弥勒は足を速めた。
「急ごう、犬夜叉」
「ああ・・・」
後から後から溢れ出す水が足元を洗う。
増水する水に覆われ瞬(またた)く間に道は見えなくなってしまった。
「弥勒、負ぶされ!」
「すまん、犬夜叉!」
見るに見かねた犬夜叉が弥勒を背に負ぶった。
僅かに残った地面を見つけては、そこを足場に跳躍を繰り返す。
だが、直ぐに限界が来た。
進めば進むほどに地面が見えなくなっていく。
遂に完全に冠水してしまった。
それからは水との戦いだった。
腰まで水に浸かりながら二人は村へと急いだ。
犬夜叉の火鼠の衣も弥勒の法衣(ほうえ)も忽(たちま)ち水に浸かりドッシリと重みを増す。
だからと言って脱ぎ捨てる訳にもいかない。
グッショリと濡れて重い衣を纏(まと)い二人は水の中を歩く。
しかし、水圧に阻まれ足取りは思うように進まない。
容赦なく水温の低さが体熱を水圧が体力を奪っていく。
それでも気力を振り絞って二人は歩き続けた。
やっと夕方近くなって二人は村の入り口に辿り着いた。
そして、眼前に広がる光景に絶句した。
村の周囲の惨状に自失していた弥勒が、ハッと気を取り直した。
「そうだ、珊瑚と子供達は!? それに、みんなは!?」
「あっ、ああっ、そうだ、 かごめっ!」
同じように気力を取り戻した犬夜叉が周囲を見回す。
ポツンと遠目に楓の家が見えた。
小高い丘の上にある楓の家は今回の大水の被害を辛(かろ)うじて免(まぬが)れていた。
泥水から這(は)いあがり二人は丘へと向かう。
近付くに従い楓の家の周囲に人の姿が見えてきた。
楓の家から人影が飛び出してきた。
「珊瑚、子供達は無事か!?」
「法師さま!」
「怪我はないか、かごめ!」
「犬夜叉!」
それぞれに愛妻を抱き再会を喜び合う二組の夫婦。
「帰ったか、犬夜叉、法師殿」
楓が家の中から出てきて労(ねぎら)いの言葉をかける。
だが、どうしたことだろう。
見るからに憔悴した面持ちである。
「楓さま、良かった、ご無事でしたか」
弥勒が老巫女に言葉を返す。
「わしは無事だが・・・村の衆が何人も大水の犠牲になってしまった」
「・・・そうですか。しかし、これほどの大水です。人の力では、どうしようもありますまい」
楓は村を守る巫女である。
巫女であった姉の桔梗亡き後、五十年の長きに亘(わた)って村を守り続けてきた。
今回の大水で多くの村人の命が喪われたのは痛恨の出来事だろう。
だが、それだけではない。
どうしようもない憂愁と絶望感が楓の全身を色濃く覆(おお)っている。
今まで、どれほどの危難に見舞われようと、この気骨溢れる老女の隻眼から光が消えたことは無かった。
それが、今はどうしたことだろう。
見る影もなく打ち萎(しお)れているではないか。
一体、何があったというのだろう。
「どうしたんだ、楓婆(かえでばばあ)?」
老女の徒(ただ)ならぬ様子を訝(いぶか)しみ、犬夜叉が楓に声をかけた。
「犬夜叉、りんちゃんが・・・戻ってないの」
楓の代わりにかごめが答えた。
「何だとっ!?」
「何ですとっ!?」
「それは本当か、楓?」
「真ですか、楓さま?」
犬夜叉と弥勒の矢継ぎ早の問いかけに楓が重い口を開いた。
「三日前・・・大雨が降り出した昼頃から、りんの姿を見かけた者が誰も・・・いないのだ」
珊瑚が楓の後に言葉を付け足す。
「最後にりんを見たのは家の双子なんだ。綺麗な蝶を追いかけて川の方へ行ったらしい。大雨のせいで川が増水して・・・」
珊瑚は、喉まで出かかった言葉を、無理矢理、呑み込んだ。
頭の中に浮かんだ『りんの溺死』という最悪の事態を予想させる言葉を。
一旦、口にしたら、それが本当になりそうで震えが止まらなかった。
りん、楓が、犬夜叉の異母兄、大妖怪の殺生丸から預かった大切な大切な養い子。
この三年間、殺生丸が、三日おきに、りんに逢うために村を訪(おとな)わなかった事は一度もない。
それほど大妖は、りんに深い愛情を注いできた。
犬夜叉の異母兄、大妖怪の殺生丸は世にも稀(まれ)なる二本の名刀を腰に佩(は)く。
壱の刀は天生牙、ひと振りで百人の命を救う癒やしの刀。
弐の刀は爆砕牙、ひと振りで千匹もの妖怪を薙ぎ倒す必殺の刀。
二本の刀は、そのまま殺生丸という大妖怪が持つ“慈悲”と“非情”という相反する資質を示す。
もし・・・りんが、本当に死んでしまったとしたら・・・・。
殺生丸の怒りは、嘆きは、どれほど深く激しいだろう。
想像するだに怖ろしい。
況(ま)して、珊瑚は、三年前、弥勒を救いたい一心で奈落の罠に嵌り、りんを殺そうとして殺生丸に許されたことがある身だった。
当然、殺されると覚悟していた。
だが、信じられないことに許された。
殺生丸は慈悲を示してくれたのだ。
だからこそ、りんが、楓に預けられた時、珊瑚は心に固く誓った。
何があろうと、必ず、りんを守ろうと。
そんな決意にも関わらず、又しても、このような為体(ていたらく)。
珊瑚は激しく己を責めていた。
そして、それは犬夜叉達も同様だった。
殺生丸が、寵愛するりんを、楓に預けた、それは取りも直さず誇り高き大妖が人間である自分達を深く信頼してくれたからに他ならなかった。
その信頼の証(あかし)である、りんが、増水した川に落ちて死んでしまったかもしれない。
一体・・・どうすればよいのか。
暗澹たる思いに一同は、唯々、茫然とするしかなかった。
了