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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
アワワワワワワワワワワ・・・・・・
やっ、やはり予測した通りじゃった。
殺生丸さまは猛烈に激怒しておられる。
ハゥ~~~因(ちな)みにワシは阿吽の尻尾に死に物狂いで摑まっておる。
何でかって?
そりゃ、シッカリ摑まってないと今にも振り落とされそうだからじゃよ。
それほど猛烈な速さで飛んでおるのじゃ。
アッ、因(ちな)みに行き先は天空に浮かぶ御母堂さまの城だからな。
ビュンビュンと物凄い風斬り音が耳に入ってくる。
ヒィ~~~殺生丸さま~~~
ワシが落っこちる前に到着して下されぇ~~~~
それでなくても殺生丸さまから発される殺気が凄まじく強烈でな。
ウ~~~今、この瞬間にもビリビリと感電しそうな程なんじゃ。
正直、お側にいるだけでも青息吐息の有り様よ。
ウ~~~~息が詰まるぅ~~~~
尤(もっと)も殺生丸さまが雷を落としたいのは御母堂さまだろうがな。
どうしてだと!?
あのなあ、御母堂さまは『りん』を三年間も匿(かくま)っておられたんだぞ。
殺生丸さまが血眼(ちまなこ)になって『りん』を捜しているのを百も承知の上でな。
それを考えれば殺生丸さまが怒り狂って当然、寧(むし)ろ怒らない方が不思議じゃろうが。
オオッ、ああだこうだ言っておる内に見えてきたぞ、御母堂さまの城が。
雲海の中、天空に聳(そび)え立つ白亜の巨城(きょじょう)。
相変わらず凄い威容じゃのう。
流石に先の西国王妃、現王太后の居城なだけはあるわい。
一見、優美な外観の城じゃが、実際は空飛ぶ移動要塞といったところか。
城全体を御母堂さまの張った結界が覆っている。
機動性といい防御力といい、難攻不落の城とは、当(まさ)に、この城のことよな。
などと暢気(のんき)に考えておったら・・・・・・。
ゲエッ、せっ、殺生丸さま、まっ、まさか、このまま突っ込んでいくお積りで!?
アレ~~~~~~ッ、たっ、助けてぇ~~~~~~~
まっ、まだ死にたくないぃ~~~~~~~~~
ドオォ-----------------------------------------------ン!
バチッ!バシッ!バリバリッ!ババババッ!
ヒィ~~~~~~~~~~~~物凄い衝撃が!
ほっ、星が飛んでおるぅ~~~
めっ、目が回るぅ~~~~
クラクラするぞぉ~~~~
目の前が真っ暗に・・・なった。
バタッ!
----------------暗転
ガバッ!
ハッと気が付いた時、ワシは天空の城の中の一室に寝かされておった。
側には松尾殿ともう一名、女房がおってな。
ワシが気絶していた間に起きたことについてザッとあらましを説明してくだされた。
殺生丸さまは、りんが寝ている部屋においでだそうな。
すぐさま駆けつけようとしたんじゃが、松尾殿に今は遠慮するようにと忠告されてな。
考えてみれば、これは殺生丸さまと『りん』との三年ぶりの逢瀬じゃ。
下手に邪魔などしたら馬に、イヤ、殺生丸さまに間違いなく蹴り殺される。
昔から、そういう点では容赦のない御方じゃからな。
ここは殺生丸さまが戻ってこられるまで大人しく待つのが得策じゃろう。
松尾殿に伺ったところでは、ワシは阿吽の尻尾を掴んだまま気絶しておったらしい。
結界に衝突した際の衝撃に目を回したんじゃな。
人頭杖も固く握り締めて絶対に手離さなかったそうじゃ。
何せ、以前、手から離した時、「次は殺すぞ」と殺生丸さまに脅されてるからな。
ムゥッ、流石は従者の鑑(かがみ)、主の言いつけを守るワシって偉い!
自画自賛はこれくらいにして話を進めるぞ。
殺生丸さまは結界に真っ正面から突っ込んでいかれた。
妖力の強弱から見れば殺生丸さまと御母堂さまは、ほぼ互角だが、城の結界の強度は、さして強くないらしい。
松尾殿から聞いたんじゃが、元々、この城の結界は天空に紛れ込んでくる妖怪どもを排除する意図の結界だそうな。
(つまり、裏の意味を探れば御母堂さまが、その気になりさえすれば結界の強度を上げることなど、いとも容易(たやす)いと、そう示唆しておられるのですな、松尾殿)
従って殺生丸さまの力量なら結界を破るのは大して難しくはないのだとのこと。
だが、そうと判っておっても何の質疑応答もなくズカズカ結界に踏み込んでいくのはチョッと不味いというか、その何だ・・・。
イヤイヤ、いくら親子の関係とはいえ、やはり相当に無礼千万ではないのかと思うんじゃが。
でも、今回ばかりは完全に鶏冠(とさか)に来ておられたからなあ、殺生丸さま。
などとあれやこれや気を揉んでおったが、ワシの心配は杞憂だったらしい。
戻ってこられた殺生丸さまは、ここ数年、イヤ、これまでお仕えした百五十年の年数の中でも最高に上機嫌であられた。
無表情なのは変わりないんじゃがな、発しておられる雰囲気が、それ、何と言ったらいいのか。
ともかく、先程とは比べものにならないほど柔らかいんじゃ。
そうじゃな、例えるなら真冬の冬山からポカポカと暖かい春の野山に瞬間移動したような感じだな。
何より殺生丸さまが右肩から流しておられる豪奢な純白の毛皮が、ふわっふわのモコモコが、見たこともないほど膨らんでおったのだ。
それに良く見ると微かに震えておる。
近くで見んと判らんような、極々、微かな震えじゃったがな。
思うに、あれは歓喜の余りに震えておられたのではないかと。
お側に居なかったので正直な話、何があったのかは知らん。
だが、主の途轍もない機嫌の良さにワシは『万事、塞翁(さいおう)が馬』を決め込むことにした。
まっ、『終わり良ければ全て良し』ってことで。
今回は、これで終わりにしておく。
長々と引き留めて悪かったな。
また、何時か話をする時もあろう。
それでは、皆の者、達者でな。
さらばじゃ!
了
※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
由羅とやらの絶叫は、それは凄まじくてな。
ワシャ、、鼓膜が破れるかと思ったわ。
阿鼻叫喚とは、あのことじゃな。
それから、バッタリと倒れたんじゃが。
余程の恐怖を味わったのか、由羅の目はカッと見開き口も閉じておらんという体(てい)たらく。
その上、髪は逆立ってるわ、開いた口からは涎(よだれ)が垂れてるわと。
いや、もう、実に見苦しい有り様じゃった。
妙齢の女子(おなご)に取っては『恥ずかしい』のひと言に尽きるじゃろうな。
だが、りんが受けた苦痛と恐怖を思えば、この程度、まだまだ生ぬるいわな。
勿論、殺生丸さまと御母堂さまは醒めた顔で由羅の醜態を眺めておられたぞ。
厚顔無恥の見本のような豺牙(さいが)も事ここに到って遂に万策尽きたと観念したのか急に大人しくなりおった。
そうだな、さしずめ『尾羽打ち枯らした鷹』といった風情かな。
ガックリと力尽きた姿は見るからに悄然としておった。
つい先程まで、ああも五月蝿く喚きたてておったのにな。
もう抵抗する気力もないんじゃろう。
それを見た御母堂さまが豺牙を拘束していた権佐殿に離してやるよう命じられた。
権佐殿が拘束していた腕を外すとガクッと頽(くずお)れるように座り込む豺牙。
だからなあ、豺牙が、あんな暴挙に出るとは思いもせなんだのよ。
まさか、次の瞬間、『りん』が我々の前に現われるとは。
墨色に染まる宵闇の中、不意に我々の前に姿を見せた『りん』。
淡い輝きを発する内掛けを纏った姿が、まるで蛍の精のようじゃった。
正直、ワシャ、自分の眼を疑ったぞ。
だって、そうじゃろう。
あんなにも逢いたい逢いたいと願い続けた『りん』が、いきなり目の前に現われたんじゃ。
思わず口を開けて茫然としてしもうた。
ワシがそうなんだから殺生丸さまは尚更じゃったろう。
するとな、感動に浸(ひた)る間もなく座り込んでいた豺牙が急に立ち上がったんじゃ。
そして、大声で喚きながら『りん』に襲い掛かりおった。
奴の罪状が明らかになった今、豺牙には良くて流罪、下手すれば斬首の刑が待ち受けておる。
イヤ、殺生丸さまが寵愛する『りん』を襲ったんじゃ。
間違いなく死罪じゃろう。
どちらにしても豺牙一門は破滅じゃ。
だからこそ『りん』を道連れにしようと思ったんじゃろう。
豺牙め、破れかぶれの行動に打って出よった。
逸早く事態に気付いた御母堂さまが叫ぶ。
「しまった! りん、逃げろっ!」
「りんっ!」
殺生丸さまも『りん』の名を呼びながら走る。
爆砕牙を電光石火の早業(はやわざ)で抜き放ち一閃(いっせん)。
逆賊(ぎゃくぞく)を斬る!
ザシュッ!ガッガガガガガガガガガガ・・・・
正(まさ)に神速(しんそく)。
刹那の攻防であった。
瞬時に全ての片が付いておった。
爆砕牙で両断された豺牙。
目の前で豺牙の身体が破壊されていく。
塵のように細かく破砕され消滅していく。
何度見ても凄まじい破壊力じゃわい。
オワッ、見取れている場合ではない。
『りん』が今にも倒れそうではないか。
フラフラしておる。
いかん、受け止めねばっ!
と思ったらば御母堂さまが『りん』の側に来ておられた。
いっ、何時の間に!? 素早いっ!
殺生丸さまの速さには定評があるが御母堂さまも全く遜色ないではないか。
そして倒れかかる『りん』をソッと受け止め軽々と抱き上げられたんじゃ。
どうやら『りん』は気絶したようじゃな。
目を瞑(つむ)っておる。
ンッ、この光景は以前にも見たことがあるような・・・。
そうじゃっ、狼どもに噛み殺された『りん』を殺生丸さまが天生牙で蘇生させた時と全く同じではないか。
あの時も殺生丸さまが『りん』を隻腕に抱いておられた。
ウム、見れば見るほどソックリじゃ。
御母堂さまは殺生丸さまに良く似ておるからな。
イヤイヤ、殺生丸さまが御母堂さまに似ておるのだ。
殺生丸さまは御母堂さまの息子だからな。
それにしても先程の映像からして御母堂さまが全てを御存知なことは必定。
『りん』は御母堂さまの手許におった訳じゃ。
成る程、だからか、あれ程、人界を捜し回っても見つからんかったのは。
フムフム、納得じゃ。
とととっ、待てよ・・・ということはだぞ、御母堂さまは殺生丸さまが『りん』を捜しておられたことを百も承知の上で三年間も『りん』を隠しておられた・・・という事になるわな。
(・・・・・・)
タラ~~リ、タラタラ(冷や汗)
こっ、これは由々しき事態じゃ。
間違いなく殺生丸さまは怒り心頭に発される。
「殺・・生・・・丸・・さま・・・」
耳に残る小さな声、倒れる前に『りん』が呼んだのは、やはり、殺生丸さまだった。
気が付けば御母堂さまの脇を権佐殿と松尾殿、他の女房衆が固めておる。
そして、同様に殺生丸さまの周囲も重臣の尾洲殿、万丈殿、女官長の相模殿、側近の木賊(とくさ)殿、藍生(あいおい)殿が主を守るように立っておった。
※『邪見の僕(しもべ)日記⑩』に続く