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そうそう、コッチに来て驚いたことがもう一つあったわ。
なんだと思う?
それがね、りんちゃんのことなの。
なんと、りんちゃんってば楓ばあちゃんと一緒に暮らしてたの。
これまた吃驚(びっくり)よね。
あたし、てっきり殺生丸が連れ歩いてるもんだとばっかり思ってたわ。
何でも殺生丸が楓ばあちゃんに頼み込んだらしいわよ。
りんちゃんを預かってくれって。
あの殺生丸が人間に頼みごとをするとはねえ。
まさしく『晴天の霹靂(へきれき)』だったわ。
それか『驚き桃の木、山椒の木』よね。
それにしても変われば変わるものねえ。
とても出逢って早々、あたしを殺そうとした冷血漢とは思えないわ。
あれっ、知らなかった???
殺生丸って昔は冷酷非情だったのよ。
妖怪だろうが人間だろうが気に障(さわ)れば情け容赦なくズバズバ殺しちゃうの。
もの凄~~くおっかない奴だったのよ。
あたしだって何度殺されそうになったことか。
犬夜叉だってそうよ。
お父さんの形見である鉄砕牙をめぐって何度も殺生丸に殺されかけたの。
その度に大怪我をして。
本当に傍(はた)迷惑な兄弟喧嘩だったわ。
犬夜叉と殺生丸って兄弟なんだけど昔はすっごく仲が悪かったのよ。
なんでかっていうと殺生丸は純血の妖怪だけど犬夜叉は半妖なの。
わかるでしょ、つまり、お母さんが違うのよ。
犬夜叉のお母さんは人間なの。
異母兄弟ってやつね。
だからかしら、殺生丸は犬夜叉をひどく蔑(さげす)んでたの。
卑しい人間の血が混じってるってね。
人間なんか目にするのも穢(けが)らわしいって感じだったわ。
それが今や平気で村に出没してバンバン姿を見せてるのよ。
あたしが驚くのも無理ないでしょ。
これは犬夜叉が楓ばあちゃんから聞いた話なんだけど。
りんちゃんを預かったのは人里にもどす訓練なんですって。
将来、どっちでも選べるようにって。
それって、りんちゃんに人里で暮らすか、殺生丸と暮らすかを選ばせるってことよね?
でも、殺生丸にりんちゃんを手放す気なんてあるのかしら???
あたし、絶対に無いと思うわ。
だって、しょっちゅう、りんちゃんに逢いにきてるのよ。
あの極めつけの人間嫌いだった殺生丸が。
それも、何かしらお土産を携えて。
やれ着物だの、帯だの、髪飾りだの、それはもう色々と。
おまけに、殺生丸が持参する品が、これまた、こんな鄙(ひな)びた人里では滅多に見られない上等な品ばかりなの。
もう、村の人達に交じると浮くのなんの。
だって、りんちゃんだけが色鮮やかで上等な着物を着てるんだもん。
あたしは現代にいたから別にカラフルな着物に驚いたりしないんだけどさ。
ろくに色目の着物をみたこともない村の人からみればお姫さまも同然よね。
そんな事情から、りんちゃんは、やっぱり特別扱いなの。
まあ、無理もないか。
あんな綺麗で強くておっかない大妖怪がついてるんだもんね。
りんちゃん、完全に殺生丸のお姫さまじゃない???
というか許婚(いいなずけ)扱い???
もう将来は殺生丸のお嫁さんコース確定でしょ。
りんちゃんはりんちゃんで殺生丸大好きだしね。
顔よし、頭よし、財力あり、完璧じゃない。
あんな婿がね(=婿さん候補)がついてるのよ。
りんちゃんに求婚する身の程しらずなんか出るもんですか。
それでも殺生丸が村に頻繁に顔をだす意味は?
あれ、どう考えても威嚇と牽制よね。
何の???って。
そんなの決まってるでしょ。
りんちゃに手をだすなってことよ。
三年ぶりに会ったりんちゃんは随分と大きくなってたわ。
村の暮らしにもすっかり馴染んでるようだし。
楓ばあちゃんとの仲もよくて二人が一緒にいると本物の祖母と孫みたいなの。
りんちゃんって、元々、可愛い娘だったんだけどね。
衣食住が安定したせいか、益々、肌艶がよくなって凄く綺麗になってたわ。
本当に美少女って感じなの。
あと数年もしたら間違いなく凄い美女になるでしょうね。
殺生丸が焦るはずだわ。
※⑧に続く
高校の卒業式の後、あたしは謝恩会に出席。
友達との別れを惜しんだの。
みんな、それぞれ進路が違うからね。
思いっきり食べたり喋ったり楽しい時を過ごしたわ。
今、思い返してみると、あれは本当にみんなとのお別れだったのね。
そして次の日、あたしは久し振りに骨喰いの井戸をのぞきこんだの。
目にうつったのはいつもと同じ涸(か)れ井戸の底。
色々な思いが胸にあふれて思わず目をつむっちゃった。
そして願ったの。
(犬夜叉----逢いたい)
感じるはずのない風が井戸の底から吹いてきて。
目をあければ、そこにあったのは晴れ上がった青い空。
(・・・信じられない)
(つながったんだ、アッチに)
あたしの様子に何かを感じたママが側にきて・・・
そして井戸の底をのぞいて全てを察してくれたの。
「そらが・・・」
「ママ・・・私・・・」
あたしが何をいおうとしたのかママは直ぐに察してくれた。
これは骨喰いの井戸があたしにくれた最後のチャンス。
多分、井戸をくぐれば、もう二度と戻ってこれない。
でも、もう、あたしは決めてたんだ。
四魂の玉を滅した時、犬夜叉とともに生きるって。
だから、あたしは・・・
ママは涙ぐみながら笑ってソッと背中を押してくれた。
「それでいいのよ」
ごめんね、ママ、ろくに親孝行もできずにコッチにきちゃって。
あれから四年、あたしは元気に暮らしてるよ。
草太、爺ちゃんとママを頼むね。
あんたが日暮神社の跡をつぐのよ。
大変だろうけど頑張ってね。
あたしはコッチでうちの神社の初代になるから。
そう考えたらストンと納得できた。
ああ、そうか、そうだったのかって。
そうして、あたしは犬夜叉のいる世界に戻ってきたの。
三年ぶりに村に戻ってみれば色々なことが少しづつ変化していた。
まずは七宝ちゃん、村の外に修行にいくことが多くなったわ。
いっぱい修行してお父さんのように立派な狐妖怪になるんだって。
つい先日出かけたばかりだから、当分、戻ってこないでしょうね。
でも、何といっても、あたしが、一番、驚かされたのは珊瑚ちゃんよ。
なんと三年間で三児の母になってたの。
凄いわ、もう吃驚(びっくり)仰天よ。
双子の女の子と生まれたばかりの男の子。
かわいかったわよお。
それが今やお転婆なお姉ちゃん達と泣き虫な坊やに成長。
あっ、でも、珊瑚ちゃんのお腹が大きいから、そろそろ四人目が産まれるんじゃないかしら。
凄いわ、弥勒様。
この調子だと、まだまだ増えそうよね。
夫婦仲はいいみたい。
弥勒さまが浮気しなければ・・・ね。
それから珊瑚ちゃんの弟の琥珀くん。
彼は強い退治屋になるため修行の旅にでてるんですって。
猫又の雲母(きらら)が一緒だから安心ね。
ちっとも帰ってこないって珊瑚ちゃんがぼやいてたわ。
11歳だった琥珀くんも今じゃ18歳。
現代だったら高校生か大学生よね。
でも、戦国時代のコッチじゃ立派な大人の仲間入りだわ。
会うたびに大きくなって今じゃ完全に見上げるほどなの。
もしかすると犬夜叉よりも大きいかも???
※⑦に続く
さて、首尾よく和紙を手に入れたのはいいんだけど。
う~~~ん、和紙は十枚しかないのよね。
残る八枚は楓ばあちゃんにあげたから。
来年、また和紙作りをするまで新しい紙は手に入らない。
えっ、いますぐ作ればいいじゃなかって?
それが出来ればね。
コウゾの刈り取りは冬場におこなうものなの。
でも今年の分はみんな刈っちゃったでしょ。
来年、新しく生えてくるまで待たないと無理なのよ。
とっても貴重な十枚の和紙、あだや疎(おろそ)かには扱えません。
う~~ん、ママ達に手紙を書くのはいいとしても十枚しかないもんね。
書く内容を厳選しなきゃ。
なにをどう書けばいいかな。
とりあえず、あたしがコッチにきてからのことを思い返してみるか。
え~~と最初はあたしがコッチにきたばかりの頃のことね。
あれは、そう、高校を卒業した次の日だった。
あたしは久し振りに骨喰いの井戸をのぞいてみたの。
四魂の玉との最後の戦いが終わって現代にもどったあたし。
でも、犬夜叉は強制的にアッチに引き戻されてしまった。
そして、それ以来、骨喰いの井戸はアチラと繋がらなくなってしまった。
最初の頃はね、無事、コッチに戻れたせいもあって、あたし気付かなかったの。
前みたいに簡単にアッチへ行けると思ってたわ。
でも、井戸におりたのに何も起きなかったの。
これは何かの間違いじゃないかって何度も何度も繰り返したのよ。
でも、駄目だった。
骨喰いの井戸はあたしを通してくれなかったの。
もう犬夜叉に逢えないなんて信じられなかった。
珊瑚ちゃんや弥勒さま、七宝ちゃんや楓ばあちゃんにも。
みんなアッチの時代で知り合った大事な人達なのに。
そりゃあ、落ち込んだわよ。
しばらくはショックで立ち直れなかった。
でも、これ以上、ママ達に心配かけたくなかった。
唯でさえ、みんなに酷く心配させたばかりだったしね。
それに高校入学とか色々あって、そうそう落ち込んでばかりもいられなかった。
だから、ひとまず気持ちを切り替えて学生生活に打ち込むことにしたの。
クラブ活動が盛んな高校だったから弓道部に入って部活に励んだわ。
桔梗の形見の梓弓があったしね。
これまでずっと我流でやってきたから基礎から覚えようと思ったの。
何より弓を手にしているとアッチと繋がってるような気がして。
三年間、真剣に弓道に打ち込んだわ。
精進の甲斐あって一年の時は都大会で準優勝、二年の時は全国大会でも準優勝、三年生の時はついに全国大会で優勝。
どうかしら、我ながら中々の戦歴だと思うんだけど。
勉強の方だって、結構、頑張ったのよ。
戦国時代のことをもっと知りたかったから歴史関係の本を探しては片っ端から読破。
随分、この時代について詳しくなったわ。
大学だって史学科に入学が決まってたんだから。
あ~~でも、こっちに来ちゃったから入学式には出られなかったんだ。
入学式用に新しいスーツを用意したのに一度も袖を通してないの。
ああ~~ん、勿体な~~い!
あれ着て入学式に出てからこっちに来ればよかったあ。
まあ、仕方ないけど。
でも、あのまま現代にいたら大学を卒業する頃ね。
きっと就職活動でワタワタしてたんだろうなあ。
それが戦国時代で永久就職だもんね。
とはいえ、あんまり犬夜叉に養ってもらってるって実感はないのよね。
犬夜叉は弥勒さまと組んで妖怪退治を請け負ってるんだけど。
あれって仕事がないときは一年でも二年でも全然ないのよ。
つまり、無収入のときが多いわけ。
弥勒さまは法師だから普通に弔(とむら)いなんか頼まれるからいいけど犬夜叉じゃそうはいかないでしょ。
だから暇な時はそこらでゴロゴロしてるの。
犬夜叉って甲斐性がないのよねえ。
なんだろう、この感じ、え~~となんていったっけ?
亭主、元気で留守がいい、じゃなくて!
髪結いの亭主?うん、かなり近い。
そっ、そうだ、ヒモ、ヒモよ。
だから、あたしが巫女でしっかり稼がないとっ!
ああっ、また話が横道にそれた。
ごめん、ごめん、元にもどすわね。
※⑥に続く
チャプッ チャプッ チャプチャプッ チャプッ チャプッ
かごめは紙を梳く~~~♪
ヘイヘイホ~~~♪
ヘイヘイホ~~~♪
いや~ん、つい『与作』の替え歌うたっちゃった。
だってピッタリの気分なんだもん。
とにかく、あたしは紙を梳いて梳いて梳きまくるわ。
目指せ、紙梳き職人!
う~~ん、紙梳きって結構むずかしいのね。
簡単そうにみえるけど、これって紙の繊維を均等に枠内に散らばす必要があるの。
でないと、ある部分にだけ繊維がたまって厚みが均等にならないのよ。
ということは、すくった液を前後に滑るように揺すって動かさないと。
それを何度も何度も繰り返す必要があるの。
そ~~れ、そ~~れ。
チャプ チャプ チャプッ チャプッ
セッセッセ~~のヨ~~イとな。
うん、やっぱりそうだ。
コツをつかまないと上手くできないわ。
以前、アッチで和紙の紙梳きを見学した時は簡単そうにみえたんだけどなあ。
ん~~実際にやってみないとわかんないものね。
ふぅ~~~やっと一枚だけ梳けたあ。
まだまだよ、頑張ろう。
今、盥(たらい)の中にある分だけでも梳いてしまわなくっちゃ!
お昼に始めたんだけど、これ、暗くなるまえに終われるかなあ?
はあ?、暗くなったら明かりをつければいい???
ダメ、ダメ、ダメというより無理。
それは現代ならばの話でしょ。
戦国時代は陽が出てから暮れるまでが活動時間なの。
暗くなったらどうするって?
ご飯たべたら後は寝るしかないの。
だから、夜に作業なんて絶対に無理!
大体、照明器具がないんだもん。
夜はね、真っ暗が普通なの。
満月の晩は明るいけどね。
半月より大きければ結構明るい。
でも細い三日月ていどじゃね、暗いわよお。
朔(=新月、月のない晩)の晩なんて完全に闇の世界よ。
おまけに朔の日は犬夜叉が人間になっちゃうから余計に危ないわ。
妖力を失うから爪も牙もなくなっちゃうし力も人間並みになっちゃうの。
白銀の髪は黒髪になっちゃうし犬耳だって人間の耳になっちゃうのよ。
初めてみた時は本当に驚いたわ。
人間になった犬夜叉は少しヤンチャだけど凛々しい男の子だった。
ドキっとするくらい素敵だったわ。
あら、やだ、なに云わせるのよ。
恥ずかしいじゃない!
バシッ!(力まかせ)
だから朔の晩はしっかり戸締まりするの。
村には基本的に囲炉裏の火しかないもんね。
そりゃあ、御大尽の家なら油に火をともして使うこともあるけど。
この時代、油って凄く貴重だから滅多に使えないのよ。
だから夜遊びに慣れた現代人には辛いかもね。
テレビも携帯電話もパソコンもないから、勿論、ゲームなんてできっこないし。
そもそも電気が使えないんだもん。
どうしようもないでしょ。
あたし? あたしはコッチにいた経験があるから慣れてるわ。
そりゃあ、戻った当初は少しだけ戸惑ったけど。
はあ~~やっと・・全部、梳きおわったあ。
う~~~腕が疲れたよお。
さあて何枚梳けたかな?
ひい・ふう・み・よう、あ~~~まどろっこしい。
やっぱり自分のやり方で数えよう。
1・2・3・4・5・6・7・・・・
ええ~~~っ、たったの十八枚なの!?
あっ、あんなに手間暇かけて・・・十八枚。
くうっ、がっかりしてる暇はないのよ、かごめ!
まだ和紙作りの最終工程が終わってないんだから。
梳き終わった和紙は重石を載せて余分な水分を更に取り除く。
それから一枚、一枚、板というか平らな所に貼って天日で乾かのす。
幸い好天に恵まれ作業は順調に進んでいった。
そして三日後、ついに念願の和紙は完成した。
やった! やった! やったわ~~~っ!
ついに和紙ができたのよお~~~。
かっ、感動~~~。
はあ~~テンションあがるわ~~~。
この手触りは紛れもなく和紙だわ。
ちょっとあちこち厚みが違うけど、そこは全くの素人ってことで勘弁して。
来年はもっと綺麗な和紙を梳いてみせるから。
とにかく、これでママ達に手紙が書けるうぅぅっ!
でも、十八枚しかないから全部使うわけにはいかないわよね。
御札に使う分は分けておかないと。
となると、そうねえ、手紙に十枚もらって楓ばあちゃんに八枚あげよう。
御札に使ってもらうの。
きっと喜んでくれるわ。
よしっ、来年も頑張って和紙をつくるぞ。
今度はもっと沢山の枚数ができるよう工夫しよう。
コウゾも増やさなくっちゃね。
というより、これから村の人にも手伝ってもらって和紙作りを続けていこうと思うの。
どうしてかっていうと手紙は勿論だけど御札作りにも和紙は絶対に必要だもんね。
自給自足できるならいうことないでしょ。
それに和紙って貴重品だから量産すれば村の特産品になると思うの。
そうすれば他の物品と交換できるわ。
いわゆる物々交換ってやつよ。
この時代、貨幣経済が発達してないからね。
だから、欲しい物があったら和紙と交換してもらうの。
あら、別に戦国時代に貨幣がなかったわけじゃないのよ。
中国のお金である宋銭とか明銭が流通してたそうだから。
でも流通してたのは主に京の都を中心にした近畿地方、つまり西日本ね。
特に九州の豪商たち、ほら有名な博多商人なんかが使ってたそうよ。
当時の博多、いまでいう福岡はアジアと直接貿易をして巨万の富を得ていたから。
だからね、この武蔵の国、東日本に属する関東地方の田舎に貨幣は流通していません。
というか貨幣があったとしても通用しないってのが本当のところかな。
だって、この村の人達って、きっと貨幣をみた経験がないと思うのよ。
そういう人達にお金を理解しろっていう方が無理じゃない?
※⑤に続く