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詩『美獣と童女』


                『美獣と童女』      2008.2/9(土)◆◆猫目石

 
道を開けろ

 我が道を阻む勿れ
 
 何者であろうと許さぬ

 邪魔をすると云うのなら

 一切 容赦はせぬ

この爪にて引き裂こうか

それとも毒で溶かされたいか

強く美しい獣は情けを知らぬ

美獣が求めし物は力の象徴たる牙の剣

だが父の形見の牙の剣は美獣の手に渡らず

蔑み憎んできた腹違いの弟の物に

父の後継者たる美獣に残されたのは

斬れない刀 癒しの剣

偉大なる父よ 我を愚弄なさるか

こんな剣が何の役に立とうか

誇り高き美獣の怒りは天を衝く

瞋恚のままに弟の剣を奪わんとする

されど牙の剣は美獣を認めず

それどころか斬り落とされし左腕

認めぬ 認めぬ 何故 我が物にならぬ

その剣は父の後継者たる我にこそ相応しき筈

諦めぬ 諦めぬ 何の才覚もない弟などに

剣を使いこなす事も出来ぬ奴などに

卑しき半妖の貴様如きに渡せようか

渡さぬならば奪い取るまで

繰り返される激しい争い

遂に奥義を極めし弟の放った技

皮肉にも我を救いしは厭(いと)い続けた剣

手負いの美獣は童女に出会う

稚(いとけな)く何の力も無い幼子

須臾(しゅゆ)の命

卑しき人の仔

月夜の晩 狼に奪われた命

冥府に降りた童女の魂

美獣は童女を救う

父の形見の癒しの剣で

運命の歯車が緩やかに廻り出す

宿命の糸を紡ぎ出して

美獣は童女に出会った

見えない運命の糸に導かれて

交わされた言葉なき誓い

この手で救いし命

何者にも奪わせぬ

二度と喪はぬ その笑顔
 
 

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