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『血色の恋情=蛇骨=』



※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。


餓鬼の頃から気付いていた。
俺は血の色が好きなんだって。
赤い赤い血の色。
見てるだけでゾクゾクするぜ。
俺の母親だった女が情夫に刺されて死んだ時がそうだったな。
父親は誰かって?
知らねえよ。
あの女は自分好みの男なら誰彼かまわず咥えこんでたからさ。
その内の誰かだろうさ。
一度、あいつに聞いてみたんだけどさ。
ハッ、相手にした男が多過ぎて自分でも判らないんだとさ。
 


ああ、お袋が何で刺されたって?
お決まりの痴情のもつれって奴さ。
ああだこうだと言い合ってたかと思ったら、男が、いきなり懐から合口を出してさ。
お袋にドスッ! 
丁度、心の臓にあたる位置に刺さったんだからひとたまりもないやね。
酒の飲みすぎで黄ばんで艶を失ったお袋の肌から噴き出す赤い血。
刺した野郎が刃物を抜いてったんでブシュ------ッて血が溢れてさ。
あっという間に、そこらじゅう血の海さ。
鉄錆みたいなムッとする匂いが立ちこめる中、真っ赤な血の色が、やたら綺麗でさ。
餓鬼の俺は惚(ほう)けたように見蕩(みと)れてた。
あの時、気付いたんだよな。
俺って血に興奮するんだって。
あの真っ赤で綺麗な色と匂いに包まれてると身体が熱くなってくるんだよ。



それからだな、俺が人を斬るのに精を出すようになったのって。
男も女も老いぼれも子供も斬ってきたけど、やっぱ男を斬る時が一番興奮するぜ。
それも俺好みの男を斬る時が最高にいい。
想像するだけでいっちゃいそうだぜ。
俺は男が好きだからな。
女を見ると虫酸(むしず)が走るんだ。
殺されたお袋がさ、男に振られてムシャクシャすると、いつも俺を殴ったり蹴ったりして溜飲を下げてたんだ。
『あたしが男に振られるのはお前がいるからだ』ってさ。
ケッ、勝手なもんだよな。
自分の色香が落ちたのを人のせいにするんじゃねえよ、ババア。
そもそも誰も『産んでくれ』なんて頼んでないっつうの。
そんなんだったからな、別にお袋が殺されても悲しくなかったぜ。
むしろ、死んでくれて清々したな。
あの阿婆擦(あばず)れ、俺を人買いに売る算段だったらしいから。
もう自分じゃ男を引っかけられなくなってたからな。
俺を売った金を元手にチョッとした店でもやる積りだったらしいや。
その手筈をつけようとした矢先に情夫に殺されたって訳さ。
ヘヘッ、笑えるだろう、馬鹿な女さ。
まっ、あんな女の話はこれくらいにしとこう。
 


俺が好みの男を斬る時はだな、まず、斬り刻んでタップリ血を流させる。
いきなり殺しちまっちゃ元も子もない。
そんなんじゃ、全然、楽しめねえもんな。
まず、少しづつ斬って血を流させジワジワと相手を弱らせるんだ。
真っ赤な血の色と匂いを堪能したいからな。
ゾクゾクするほど綺麗だぜぇ、鮮血ってのは。
そうやってさ、血を流させてくとさ、どんな強気の男でも最後は息も絶え絶えになってくるんだ。
血が足りないから目は霞んでくるし身動きひとつするのも辛くなってくるのさ。
そうなりゃ、もう、こっちのもんだ。
後は好きなように料理させてもらう。
相手は血が流れすぎて抵抗もできねえほど弱ってる。
そこで俺が冥土の土産に優し~~く抱いてやるのさ。
俺が満足する頃にゃ、大抵、相手は死んじまってるけどな。
だから、俺が好きな男は、みんな死んじまうんだ。
おかげで、いっつも新しい獲物を探さなくちゃならねえ。
そこんとこが困りもんだな。
 


四魂の欠片で生き返って何が嬉しかったかって?
そりゃ、犬夜叉、アイツに逢えたことだぜ。
犬夜叉の兄貴の殺生丸、アイツともやりあったけど俺の好みじゃねえ。
色男ってのは認めるけど、これがすかした野郎でさ。
可愛げってもんが、からっきしねえんだ。
そんな兄貴に引き換え犬夜叉は可愛いくていいぜ。
綺麗な顔立ちに、真っ赤な童水干、ピョコンと飛び出た犬耳、何もかもが俺好みだ。
こりゃ、何が何でも果し合わなくっちゃと思ったぜ。
蛇骨刀で斬り刻んで満足するまでいたぶりてえ。
犬夜叉は鼻っ柱が強いからな。
奴が涙と鼻水でグジュグジュになった顔が見てえ。
きっと犬っころみたいに可愛いだろうぜ。
アイツの形見は、あの可愛いらしい犬耳で決まりだ。
ヘヘッ、考えただけで萌えるぜ!
 

        了
 

 

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