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『妻問ひ』◆五周年記念作品




※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。


妻問ひ】=①異性を恋い慕って言い寄ること。②求婚すること。③男が妻・恋人のもとへ通うこと。
この作品の場合は③の意味です。


夏の宵、天空の母の城に『りん』を訪ねた。
昨年の秋、やっと三年ぶりに見つかった愛しい少女。
そして、今年の正月に晴れて婚約を交わした。


今年の夏も例年の如く暑い。
大妖の我にとっては、これしきの暑さ、何程のこともない。
だが、か弱い人の身の『りん』には堪(こた)えるだろう。
旅の途上で覚えた『りん』への配慮。


そういえば、邪見の奴も、連日、「暑い!暑い!」と喚(わめ)いておったな。
余りに煩(うるさ)いので軽く蹴飛ばしたら西国城の池に嵌(は)まり込んでいた。
あの池に放してあるのは極彩色の小魚。
朱、金、青、緑、紫と見た目は美しいが歴(れっき)とした食肉魚だ。
大きな水音に餌が投げ入れられたと勘違いした魚どもが一斉に集(たか)っていた。
形こそ小さいが食欲旺盛な魚どもだ。
あれらには鑑賞と同時に池に潜む忍びを駆逐する役目がある。


邪見め、慌てて池から飛び出したが軽く齧(かじ)られたらしい。
暫らく膏薬の臭いがプンプンしていた。
フッ、このような晩に不粋な従者のことなど放念しておこう。
殺生丸は愛しい少女を抱き寄せた。
『りん』は山吹茶の地色に朝顔の模様の小袖を纏っている。
以前、私が贈った布地で拵(こしら)えたものだろう。
今の季節に良く合う。


三年ぶりに見た『りん』は背が伸びていた。
髪も腰に届くほどに長くなった。
城での暮らしで陽に焼けることもなくなった雪白の肌。
夜空の星のように煌く瞳を飾る長い睫毛。
相変わらず表情豊かな顔は嬉しげに微笑んでいる。


今宵の月は満月。
あの月が隠れるまで二人こうしていよう。
蛍が飛び交っている。
あの虫も相手を求めているのだろう。
今は触れるだけに留めておこう。
次こそは堂々と母の許しを貰おう。

   
          了
 

拍手、有難うございます。
いつも感謝しております。
八月八日をもって当ブログも五周年を迎えました。
今後も、どうぞ宜しくお願い致します。
ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。


 

 

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