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『降り積もる思い(29)=闘鬼神=』

悟心鬼に噛み砕かれた鉄砕牙。
茫然とする俺の前に三つ目の牛、猛々(もうもう)に乗った冥加爺が現われた。
そして直ぐさま俺に猛々に乗って刀々斎の許へ行けという。
鉄砕牙を打ち直してもらう為に。
マア、武器が無くちゃ困るからな。
俺は折れた鉄砕牙と破片をもってアイツの塒(ねぐら)がある山に向かった。
無残に噛み砕かれた鉄砕牙を見てビイビイ泣き喚く刀々斎。
フン、俺だって、内心、悪いとは思ってんだ。
ギャアギャア煩(うる)せえぞ。
泣いてる暇があったらサッサと打ち直せ。
そしたらよ、刀々斎の奴、繋(つな)ぎが要るっつうんだ。
ヘッ、繋(つな)ぎ?
何だろって思ってたら刀々斎が俺に口を開けろっつから大きく口を開けたら。
ゴキュッ!
ジィ~~~~~ン・・・・
あっ、あの爺、俺の左の犬歯をヤットコで抜きやがった。
いっ、痛いじゃねえか、この野郎!
頭に来て、一発、殴ったら、あのクソ爺、半日もありゃ生えてくると抜かしやがった。
ったく、確かにアイツの云った通りに半日もしたら新しい歯が生えてきたけどよ。
それにしても一言、歯を抜くなら抜くと断ってからにしやがれ。
鉄砕牙を打ち直すのに三日三晩かかるんだとよ。
俺は、ひとまず、仲間の許へ戻った。
明日には鉄砕牙が戻ってくる。
選(よ)りによって今宵は月のない晩、朔(さく)の日だ。
俺が月に一度だけ妖力を失う日。
白銀の髪は、お袋譲りの黒髪に、金色の目も黒い目に変化する。
爪も牙もない無力な人間になっちまう。
こんな時に襲われたら・・・・ひとたまりもねえな。
ひどく心許ないぜ。
そんな気分でいたら、かごめが話しかけてきた。
まだ本物の妖怪になりたいのかって。
そう訊かれて正直な話、俺はえらく途惑った。
初めて、かごめと逢った時、あの頃、俺は間違いなく本物の妖怪になりたかった。
その為に四魂の玉が欲しかったんだ。
でも、五十年前の俺と桔梗の悲劇の真相を知って目的が変わっちまった。
今は奈落を討ち果たす為に、かごめや仲間と共に四魂の欠片を追って旅をしてる。
本物の妖怪になりたいなんて望み、コロッと忘れてたぜ。
あの時、妖怪化して悟心鬼を引き裂いた時の俺は・・・・本物の妖怪だったんだろうか。
急に体が熱くなって・・・・。
俺は、純粋に獲物を引き裂くのを楽しんでいた。
喜びさえ感じてた。
俺は・・・・俺の心は・・・・
エエイ、今は、それどころじゃねえんだ。
とにかく今夜一晩やり過ごさねえと。
以前なら何処かにジッと身を潜め息を殺して敵に見つからないようにしてた。
でも、今は、かごめや弥勒、珊瑚に雲母(きらら)、七宝が居る。
仲間同士、集まって火を焚いて野宿だ。
ドンドン俺の秘密を知ってる奴が増えてる。
良いんだか悪いんだか。
ン~~~かごめが云うには良い事なんだろうぜ。
そうやって、色々と考えながら星を眺めてたら、おいでなすったぜ、厄介ごとが。
夥(おびただ)しい邪気を撒き散らしながら現われたのは短躯の妖怪。
髑髏(どくろ)を首飾りみてえにぶら下げてやがる。
不気味な野郎だな。
禿げ上がった額の上に盛り上がった瘤(こぶ)が角みてえだ。
奴が名乗ったところによると名は灰刃坊(かいじんぼう)、刀鍛治だとよ。
腕にしてるのは見るからに禍々しい邪剣、“闘鬼神”。
灰刃坊が云うにゃ闘鬼神は悟心鬼の牙から打ち起こした剣だそうだ。
つまり、悟心鬼の怨念まみれの剣ってこった。
フン、それなら、闘鬼神が俺の血を吸いたがるってのも道理だな。
悟心鬼を殺したのは俺だから。
ケッ、相手になってやるぜ。
飛び出していこうとする俺を庇って弥勒と珊瑚が飛び出す。
七宝とかごめは俺を引きとめようとする。
ゲッ、珊瑚が投げた飛来骨を、灰刃坊め、易々(やすやす)と闘鬼神で両断しちまいやがった。
なっ、何て剣だ。
そうか、鉄砕牙でさえ噛み砕いた悟心鬼の牙で出来た剣だ。
飛来骨ごとき何の造作もないってことだな。
それを見て取った弥勒が素早く攻撃対象を剣から使い手に切り替える。
法力を込めた御札を灰刃坊めがけ投げつけた。
狙い違わず灰刃坊の顔面に貼り付いた御札。
ジュッ・・・・
動きが止まった灰刃坊の顔面を弥勒が錫杖で思いっきりぶっ叩く。
ドサッ・・・倒れる灰刃坊。
頭をかち割られてるんだぜ。
普通なら勝負あったと誰もが思うだろう。
だがな、次の瞬間、灰刃坊の奴、立ち上がって攻撃してきたんだ。
どう見てもまともじゃねえ。
何かに操られてる。
そうか、敵は灰刃坊じゃねえ。
あの剣、闘鬼神だ。
灰刃坊が俺を挑発しやがる。
コソコソ女子供の後ろに隠れてるだと!
馬鹿にしやがって。
我慢ならねえ。
奴に向かっていこうとした矢先、ゴロロロ・・・雷の音が。
ズウウウウン・・・・地響きと共に刀々斎が三つ目の牛に乗って現われた。
見れば打ち直した鉄砕牙を抱えてるじゃねえか。
素早くひったくって自分の腰に差す。
ンッ、刀々斎の奴、灰刃坊と知り合いなのか。
弥勒も不思議に思ったんだろう。
どういう関係か聞いたら、これが、灰刃坊は刀々斎の弟子だってんだから驚いた。
尤も、とっくの昔に破門したらしいがな。
然も、その理由ってのが、またトンデモナイ。
灰刃坊の奴、一本の刀を作る為に、十人の子供を殺してるんだとよ。
血と脂を刀に練り込んで怨みの妖力を与える為にな。
こんな外道、生かしちゃおけねえぜ。
鉄砕牙を抜き放ち野郎と対峙する。
でも、妖力を失ってる今の俺じゃ鉄砕牙は変化しない。
エエイッ、迷ってる暇はねえ!
そのまま灰刃坊に打ち掛かる。
カカッ、ババッ!
何っ、組み合っただけで弾き飛ばされた!?
アチコチから血が噴き出す。
これは闘鬼神の剣圧か!?
倒れこんだ俺に灰刃坊が打ち込んできた。
それを鉄砕牙で受け止める。
カッ、何とか持ちこたえる。
変化はしないものの少しは頑丈になったらしいぜ、鉄砕牙。
ズタボロの俺を見て灰刃坊が余裕をかましてやがる。
だがな、そろそろ時間切れだぜ、灰刃坊。
夜明けだ、変化が始まる。
力が、妖力が戻ってくる。
ザワ・・・ミシ・・・爪が、牙が伸びる。
髪の色も目の色も変化する。
一気に鋭くなる嗅覚と聴覚、イヤ、五感の全ての感度が上がる。
そうだな、例えるならボンヤリとしか見えなかった風景が急にクッキリ見えてくるって感じかな。
脆弱な人間の能力を野生の本能が覆い尽くしていく。
力が漲(みなぎ)る。
半妖に戻った途端、脆弱な身体が変化して治癒能力が増し傷を治す。
瞬時に塞がり、もう跡形もない傷跡。
同時に鉄砕牙自体も細身のボロ刀から幅広の剛刀に変化する。
それは良い。
良いんだが・・・・重い!
なっ、何で、こんなに重いんだ!?
持ち上げるのさえ容易じゃねえんだぞ。
頭に来て刀々斎に理由を問い質したら、それは俺の牙の分だって答えやがった。
クソ~~~こんなんじゃ振るうことも出来ないじゃねえか。
そんな俺を見て灰刃坊が好機とばかりに突っ込んできた。
畜生、闘うしかねえ。
渾身の力を振るって滅茶苦茶重い鉄砕牙を肩で持ち上げ闘鬼神と打ち合う。
ギャン、カカッ、ギリ・・・・
互角か?と思ったが次の瞬間、灰刃坊の身体が切り裂かれバラバラと落ちていく。
シュ————地面に突き刺さった闘鬼神。
灰刃坊の右手だけが闘鬼神を握ったまま残っている。
闘鬼神の凄まじい剣圧に灰刃坊の身体が耐え切れなかったらしい。
灰刃坊に勝ったのは良い。
だがな、この鉄砕牙の異様な重さ、どう使えってんだ!
頭に来て刀々斎に喰ってかかったら、あのクソ爺、何て答えたと思う。
身体を鍛えろだあ!?
予想通りのアホな答えに、また一発、殴っといた。
全く碌でもねえ。
それはそうと使い手が死んだってのに闘鬼神の邪気は一向に消えない。
トンデモナイ置き土産をしてってくれたもんだぜ、灰刃坊。
俺達は、残った闘鬼神をどうしようかと相談し始めた。
その最中(さなか)、暗雲垂れ込める中からゴロゴロと響く雷鳴。
ドオオオン・・・・闘鬼神に稲妻が落ちた。
ジュッ・・・高熱に焼き尽くされる灰刃坊の右手。
ゴ————風を裂いて現われたのは双頭の竜に跨(またが)った殺生丸!
何故、コイツが此処に!?
だが、事情を聞けば、闘鬼神を灰刃坊に打たせたのは殺生丸だっていうじゃねえか。
然も、あの邪気塗れの闘鬼神を、殺生丸の奴、易々と御(ぎょ)しちまった。
生みの親の灰刃坊でさえ邪気に呑まれ命を落としたってのにだ。
クソッ、相変わらず底知れない強さだぜ。
闘鬼神を手中に収めるや、即座に、俺に勝負を挑んできた殺生丸。
確かめたいことが在るとか抜かしてな。
満足に振るうことさえ叶わない程、重くなった鉄砕牙。
圧倒的な不利を見越して、かごめが俺を止める。
ケッ、待ってくれって頼んで聞いてくれる相手かよ。
アイツとは何時だって顔を合わせりゃ闘うしかねえんだ。
クッ、おっ、重い。
スシリと手に堪える重みだ。
襲ってくる白刃を鉄砕牙を立てて躱(かわ)す。
重くて振るえねえからな。
そうしながらもビシビシと血が噴き出す。
さっきも経験したが闘鬼神の剣圧のせいだ。
こうなったら、一振り、一振りで決めないとやられる!
覚悟を決めて振るった一撃は殺生丸に軽々と受け止められちまった。
俺の方はビシビシとアチコチから血が噴き出してるってのに。
クソッ、殺生丸は涼しい顔で掠り傷ひとつ負ってない。
鉄砕牙を受け止めて瞬時に以前との違いを覚(さと)ったんだろう。
殺生丸の奴、少し鉄砕牙が重くなったのか?なんて聞いてきやがる。
馬鹿野郎、少しじゃねえっ!
俺が言い返すと同時に弾き飛ばされちまった鉄砕牙。
弾(はず)みで俺まで吹っ飛ばされた。
畜生、殺生丸め、相変わらずの馬鹿力だ。
俺の手を離れた途端、鉄砕牙が元のボロ刀に変化する。
エエイ、もう、あんな重い刀、要らねえ。
あれじゃ、どう頑張ったって勝てるものも勝てねえ。
丸腰で向かっていく俺に殺生丸がピタリと闘鬼神を向ける。
すると触ってもいないのに剣圧で吹き飛ばされた。
押し戻される身体、噴き出す血。
為す術もなく俺は草叢(くさむら)にうずくまった。
やられる!
そう思った瞬間、何かが、ゾワリと俺の中で蠢(うごめ)く。
悟心鬼を殺(や)った時と同じ感覚。
あのままだったら、妖怪化してたんだろうな。
でもな、あの時は、刀々斎が助け舟を出してくれた。
火吹きの術で周囲を火の海にして殺生丸の注意を逸らし、その間に、みんなで逃げた。
それ以後、闘鬼神は、魍魎丸に折られるまで殺生丸の愛剣になった。
唯な、あの剣は見るからに物騒だった。
何でかっていうとだな、普通、刀剣ってのは鞘と一対になってるもんだろ。
だがな、闘鬼神には鞘がねえ。
ギラギラした刀身が剥き出しになってた。
鞘を用意する前に灰刃坊が闘鬼神に取り憑かれちまったせいだけどな。
結果、灰刃坊は命を落とす羽目になった。
これまでの所業が所業だから、因果応報なんだろうけどよ。
とにかく、そういう訳で闘鬼神は抜き身のままだった。
そんな危ない剣を、殺生丸の野郎、全然、気にせず腰に差してやがったんだぜ。
フッ、考えてみれば殺生丸自身、以前は抜き身の剣みてえに怖ろしく危ない奴だった。
あんな危ない闘鬼神を扱えるのは、それ以上に危ない殺生丸だけだったってこったろうな。



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