忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『降り積もる思い⑫=接触=』最終回萌え作品⑤

弥勒が旅の一行に加わってから野宿が減った。
塒(ねぐら)を探す段になると、いっつも都合良く辺りで一番立派な屋敷の上空に不吉の雲が垂れ込めるんだ。
そして、弥勒の野郎が、何だかんだ上手い事、屋敷の者を言いくるめて、その日の宿を確保する。
今日も今日とて、その算段で今夜の宿にありついた。
どう考えても胡散臭い!
思い切って弥勒に問い質してみれば、野郎、シレッとした顔で「嘘も方便」とか抜かしやがった。
あっ、呆れたぜ。
こいつは、何時も、こんな事をしてきたのか。
・・・・ヤッパリ不良だ、こいつ。
改めて、そう思った時、かごめの奴が四魂の欠片の気配がすると云い出したんだ。
急いで外に飛び出せば、巨大な鬼が、コッチに向かってくるじゃねえか。
そして、鬼の右肩には殺生丸が!
(生きていたのか!)
喜べば良いのか、悲しめば良いのか、正直、複雑な心境だったぜ。
従者の邪見も傍に居る。
鬼の肩からフワッと跳び下りる殺生丸。
次の瞬間には、もう眼前に居た。
クッ、瞬時に間合いを詰めてきやがる。
畜生、相変わらず油断も隙もねえ。
性懲りもなく、また鉄砕牙を狙ってきやがった。
鉄砕牙を抜き放って、一撃、お見舞いしてやったんだが・・・・。
軽々と躱(かわ)されちまった。
それだけじゃねえ!
片手で大きく振りかぶった俺は右腕を掴まれちまった。
殺生丸の爪から毒が放出される。
ジュ———ッ
猛毒で腕が溶かされいく。
アイツは、それで俺が鉄砕牙を手離すと思ってたんだろうが。
ケッ、誰が手離すかよ!
左腕を添えて逆に奴を真っ二つにしてやる積りで押し返した。
一旦、後ろに飛び退(の)いた殺生丸。
今度は右肩から掛けている毛皮を伸ばしてきやがった。
毒でやられている俺の右腕は握りが甘くなってる。
バシッ!
クッ、鉄砕牙を弾かれちまった。
慌てて取りに走れば、殺生丸の奴、左手で鉄砕牙を掴みやがった!
どっ、どうして持てるんだ?!
結界に拒まれるんじゃなかったのかよ!
驚く俺やかごめを尻目に、殺生丸の奴、鉄砕牙の真の威力を見せてやるとか云って、邪見に命じて鬼に山から妖怪どもを追い出させたんだ。
現れた夥(おびただ)しい数の妖怪。
そいつらを鉄砕牙の一撃で薙ぎ倒しちまった。
唯の一撃でだぞ!
おまけに山まで消し飛んじまった。
信じられないような鉄砕牙の力を見せ付けてくれたぜ。
そんな中、かごめが、俺達の間に割って入った。
普通の人間なら女が割って入れば事が収まりやすいんだがな。
生憎、殺生丸は人間じゃないし、女を殺す事さえ屁とも思わない輩なんだ。
下手に割って入ると怪我どころか殺されるぞ。

「どいてろ、かごめ」

そう云って、かごめを庇って前に出れば、弥勒の奴が出しゃばってきやがった。
「犬夜叉一人では無理です」とか、何とか抜かしてな。
ダア~~~ッ! うるせえ!
俺の前に出るんじゃねえっ!
俺と弥勒が押し問答していると邪見がしゃしゃり出てきやがった。
この場は自分に任せてくれとかゴチャゴチャとな。
殺生丸は様子見をする積りらしい。
邪見が鬼を嗾(けしか)けてきた。
チッ、ここは、やる気満々の弥勒に任せるか。
弥勒が封印の数珠を解いた。
ゴオ~~~~~~~ッ
風穴が猛烈な風切り音を発し周囲の物を何もかも呑み込もうとする。
鬼の右腕も見る間に呑み込まれていく。
だが、弥勒が否(いや)でも風穴を閉じざるを得ない代物を殺生丸が投げた。
地獄の毒虫、最猛勝(さいみょうしょう)の巣。
ブワッと湧いて出てきた虫どもが先を争って風穴に入り込む。
吸い込んだ虫の毒にやられたのか。
弥勒が風穴を閉じて蹲(うずくま)っちまった。
毒虫どもが襲ってくる。
チッ、こんな虫ども、散魂鉄爪で引き裂いてやるぜ。
一応、鬼は倒したが、肝心の殺生丸は、どうもなってない。
鉄砕牙も奪われたままだ。
不味い! 
殺生丸が鉄砕牙を振るう気だ。
ここは何としても止めないと!
毒でやられた傷口に爪を立て血を滲ませる。
飛刃血爪で殺生丸の気を逸らす。
その隙にへたり込んだ弥勒を抱えて倒れた鬼の体の陰に隠れる。
そこに居た七宝に弥勒の介抱を任せた。
殺生丸が鉄砕牙を振るった。
鬼の体が千切れて吹き飛ばされる。
その残骸に紛れて飛び出し殺生丸の前に躍り出る。
鉄砕牙は鞘で受け止めた。
ググッ・・・・力と力の押し合いだ。
殺生丸が鉄砕牙を引いて振りかぶろうとした。
ゴッ、風が、さっきのトンデモナイ一撃を見舞おうとする殺生丸。
俺に襲い掛かろうとする鉄砕牙に何かが当たった!
カッ! ガガガッ・・・
変化が、鉄砕牙の変化が解けた!
矢だ! かごめの破魔の矢が鉄砕牙の変化を解いたんだ!
かごめが矢を番(つが)えて殺生丸に狙いを定めている。

「殺生丸! 次は左腕をぶち抜くわよ!」

左腕? 何の事だ?
かごめが次の矢を放った。
躱(かわ)された!
三の矢を放とうとする。
駄目だ! かごめ逃げろ!
かごめに襲い掛かろうとする殺生丸を必死に止める。
俺の一撃は奴の顔を掠(かす)め傷を一本付けた。

「速いな・・・その女のことになると・・・」

この時、殺生丸が吐いた台詞。
確かにな、否定はしない。
俺は、かごめが絡んでくると反応速度が格段に上がるようだ。
とにかく、かごめを避難させないと。
こんな危ない場所に置いとけるか。
それに、かごめのおかげで、何故、殺生丸が鉄砕牙を持てるのか判ったぜ。
妖怪の殺生丸は、本来、鉄砕牙を持てない筈なんだ。
なのに、持ってるってえ事は、その左腕は奴の腕じゃねえ。
アイツの左腕は俺が斬り落としたからな。
間違いねえ、今、鉄砕牙を掴んでいる左腕は人間の腕だ。
それを四魂の欠片で繋いでるんだ。
つまり、その腕をぶん取っちまえば奴はもう鉄砕牙に触ることも出来ない。
おまけに四魂の欠片まで付いてくるってえこった。
一石二鳥だぜ!
そう思って左腕を狙ったんだが・・・・。
フッ・・・俺の爪を躱(かわ)す殺生丸。
ドガッ!それどころか、俺は右顔面に一撃もらっちまった。
畜生、奴の毒で右頬が爛(ただ)れてるぜ。
何とかして奴の左腕をもぎ取ろうとするんだが。
クソッ、殺生丸の奴、チョコマカ逃げやがって。
俺を嬲(なぶ)ってるのか!
クッ、今度は左肩に毒華爪を喰らっちまった。
シュッ・・・見るに見かねたかごめが破魔の矢を!
バコッ! 殺生丸の妖鎧を砕いた!
殺生丸の気が削がれた。
ドガッ! 奴の一瞬の隙を突いて、どてっ腹に一発、お見舞いだ。
だが、次の瞬間、殺生丸の奴、俺の首を掴んで、かごめに向かって放り投げたんだ。
ドカッ! ズザザザ——ッ
起き上がって見れば、何てこった!
かごめを下敷きにしてるじゃねえか!
かごめ、しっかりしろ!
よくも、よくも、かごめまで。
許さねえぞ、てめえ!
毒にやられ苦しい息の中、弥勒までが乗り出してきた。
女にさえ情け容赦しない殺生丸のやり口に我慢できなくなったらしい。
風穴を開こうとするんだが止めさせた。
あの毒虫の巣が、まだ近くに有るんだ。
かごめを弥勒と七宝に任せ殺生丸と対峙する。
鉄砕牙を振らせたら最後だ。
その前に、奴が完全に振り切る前に止めるんだ。
ビシビシと当たる風に耐えつつ間合いを詰める。
アイツの懐に飛び込むんだ。
ゴオッ!凄まじい風が発生する。
完全に振り切ってないってのに、この威力だ。
もし、そうなったら全員が皆殺しだ。
捕らえた!
鉄砕牙を持つ左腕を掴んだぞ!
渾身の力で鉄砕牙を振ろうとする殺生丸を押し止(とど)めた。
ギリギリ・・・ギリギリ・・・ズ・・ズズッ・・・
弥勒、七宝、何、ボサッと見てるんだ!
早く逃げろ!

「走れ———っ!」

殺生丸の左腕は封じたが右手はガラ空きだ。

「敵に背中をさらすとは!」

ドスッ! ズッ・・・
野郎、毒を持つ右手で俺の土手っ腹に風穴を開けやがった。
凄まじい苦痛が俺を襲う。
だが、そんな事に構っちゃいられない。
力任せに奴の左腕をもぎ取って鉄砕牙を取り戻す。
ヨシッ、これで、もう殺生丸は鉄砕牙に触る事すら出来ない。
ガクッ、膝が落ちる。
クソッ、力が抜ける。
立っている事さえ出来ないとは・・・
目が・・・霞む。
畜生・・・気が・・遠くなって・・・きやがった。
死んでも・・鉄砕牙は・・・渡さ・・ね・・え・・・

「犬夜叉———っ!」

かごめが俺を呼ぶ声が聞こえる。
無事・・・なんだ・・な・・・良かっ・・・た・・・
そのまま俺は鉄砕牙を構えたまま気を失ったらしい。
気が付けば俺は弥勒の子分、阿波の八衛門狸の背に乗ってた。


 

拍手[1回]

PR