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『二人の巫女②』★11万打記念作品&最終回萌え作品②

「オオ、そうだ。りん、仕事は、かごめが手伝ってくれる。今日は一日、好きに過ごして良いぞ。」

「エッ、でも、本当に良いんですか?楓さま。」

「アア、今日の仕事は薬草の選り分けだけだ。二人も居れば充分。それに、ソロソロ、今日辺り、あの御仁が、やって来る頃じゃないかね?」

楓の言葉に、りんの顔がパアッと華やいだ。
透き通るような白い肌に、ホンノリと桜色の朱が注して、何とも可憐で愛らしい。
同性のかごめでさえ、思わず顔が綻ぶような初々しさである。

「ハイ、じゃあ、失礼します。有難う、楓さま、かごめさま。」

二人の巫女に礼を云うと、愛らしい少女は、小鳥のように駆けていった。

「さて、それでは、まずは、薬草の見分け方から教えてやろう。かごめの世界では、色々と便利な道具や薬が有ったようだが、コッチには、そんな物はないからな。まず、自分達で薬草を栽培し、それを収穫。天日に晒して乾燥させ生薬にする。それから、その生薬を調合して用途に合わせて丸薬や膏薬を作り出さねばならん。冗談抜きに、お主が覚えねばならん事は山のように有るぞ。」

「ハ~イ、頑張ります、お師匠様!」

乾燥させた薬草を選り分けながら、楓とかごめ、二人の巫女の話が続く。
楓の薬箱には、ドクダミやセンブリ、ゲンノショウコ、ユキノシタ、ヨモギなどの生薬が、何時でも使えるように、キッチリと区分けされて入っている。
大部分が薬草だが、変わった処では、熊の胆(い)などが有る。
これは、山で、マタギ(=猟師)が熊を仕留めた際、譲ってもらった物である。
大層、苦い代物で、心臓や胃腸の弱った者に効果が高いらしい。

「楓ばあちゃん、さっきの話だけど、あの御仁って殺生丸の事?」

「勿論だ、かごめ、他に誰がいる。」

「ウ~~ン、正直な話、あの殺生丸が、態々(わざわざ)人里に出向いてくるって事自体、信じられないの。」

「かごめ、お主は此処に居なかったから知らんだろうが。殺生丸は、流石に、あの犬夜叉の兄なだけはあるぞ。犬夜叉が、この三年間、お主に逢いたいばっかりに、三日に一度は骨喰いの井戸に入っていたように、兄殿も三日おきにりんに逢いにやって来たのだ、それも必ず土産を携えてな。全く、浮気症の人間の男どもに爪でも煎じて飲ませたいような律儀さだったぞ。」

「ハハハ・・・・(毒入りの爪だったりして)」

「煎じると云えば・・・・かごめ、この『センブリ』は、『千振り』と書くのだが、何故、こんな名が付いているか判るかね?」

楓が乾した薬草の一種を手に取り、新米の助手、見習い巫女のかごめに問い掛けた。

「・・・・・??? 知らない。何か、意味があるの。」

「これはな、千回、煎じて振り出しても、まだ苦いという意味から付けられた名なのだよ。故に『千振り』と云う。」

「ヘエ~~~面白いね。チャンと意味が有って付けられてるんだ。」

「他にも、この『ドクダミ』などは、毒を矯(た)める、止める、という効果から、そう呼ばれる。また、別名、『十薬(じゅうやく)』とも云ってな。生の葉のまま、患部に貼って良し、煎じて飲むに良し、又は、丸薬にするも良しと、様々な用途に使える。謂わば万能薬に近い。因(よ)って『十薬』という別名が付いておる程だ。」

「フ~~~ン、そんなに色々な効果のある薬草だったんだ。『ドクダミ』って。知らなかった。実家の神社の日陰なんかで割と良く見かけたけど。アッ、そう云えば、ママが、お酒に漬けたりして保存してたわ。チョッとした腫れ物なんかに効果抜群だって。でも、これ、かなり臭うわね。犬夜叉の側では使わない方が良いかも。何しろ、珊瑚ちゃんの臭い玉で気絶するくらいだから。」

「そうだな。犬夜叉の奴、わしが薬箱を持ってる時は、出来るだけ、側に寄らないようにしておったな。『良薬、口に苦し』と云って、効き目が高い薬草ほど、臭いがキツかったり、苦かったりするからな。」

「云われてみると、そうね。良く効くお薬って、大抵、苦いもの。」

「苦いから効くのかも知れんな。それから、この『ゲンノショウコ』、主に下痢止めに使うのだが。これなどは、服用後、直ぐに効果が現れる処から、『現の証拠』と付けられている。別名が『たちまち草』、これも、たちまち効果が現れるという意味からだ。」

「現の証拠・・・・か。それにしても、あの殺生丸が、良く、りんちゃんを手離す気になったわよね。」

「そうだな、兄殿なりに色々と考えたのだろうさ。このまま、連れ歩いて良い物かどうか。りんは女の子だ。いずれ、成長すれば月の物も来よう。その時、男ばかりでは、どう対処すれば良いかも判らんだろうしな。それに、あのままでは、余りにも人との接触が少なすぎて、りんは、人でありながら人ではない存在になってしまっただろう。幼子の成長は早い。もう後数年もすれば、りんが、将来の伴侶として、人間の男を選ぶか、兄殿を選ぶか、選択する時が来るだろう。その時、どちらを選んでも、困る事のないようにようにとな。実に行き届いた心憎いばかりの配慮じゃないかね。尤も、それは、建て前で、これまでの兄殿の行動を見る限り、りんを手離す気は毛頭なさそうだがな。」

「それにしても、三日おきに逢いにくるなんて凄いわ、殺生丸。しかも、それを、ズット三年間も続けるなんて。犬夜叉も殺生丸も意思が強いのね」

「フッ、かごめよ、それは一応、目に見える部分だけだぞ。」

「エッ、実際は違うの?」

「犬夜叉は、七宝が見ていたから、実際、そうなんだろうが、兄殿の方は、イザ、人里にりんを預けてみたものの、心配で、最初の内は、ズッとりんの側に潜んでいたのではないかと思われる節が有るのだ。」

それを聞いた、かごめが、途端に目をキラキラさせ始めた。
元々、かごめは、現代っ子気質で、野次馬根性が、イヤイヤ、好奇心が、相当、強い。
何か、ワクワクするような話が聞けるのではないかという期待に胸を弾ませ、楓の方にグッと身を乗り出してきた。

「何? 何? 何か有ったの? 楓ばあちゃん。」

「ウムッ、これは、りんが、村に来て、まだ間がない頃の話なのだがな。かごめ、お主、りんに初めて会った時、どう思った?」

「どうって? まず、あの大の人間嫌いの殺生丸が、人間の、然も、小さな女の子を連れてるって事に、吃驚したわよ。正直、信じられないってのが本音だったわ。そうね、とっても可愛い子だなって思ったわ。あんまり可愛いから、もしかして、殺生丸が、攫(さら)ってきたんじゃないかって半分冗談で考えたくらい。」

「だろう。わしやお主でさえ、そう思うのだ。それが、同じ年頃の男の童だったら、尚更だろうな。りんは子供とは云え、とびっきりの器量良しだ。早速、村の餓鬼大将に目を付けられてな。あの年頃の男童の行動は判るだろう。好きな子を、態(わざ)と困らせて関心を惹こうとするのだ。マア、幼稚といえば幼稚なんだが。りんが、わしの用で川向こうの村の者に薬を届ける為、川に架かっている橋を渡ろうとした事があったのだ。その時、悪餓鬼どもが、橋の前で通せんぼをしてな。橋を渡りたかったら、土下座しろとか何とか、無理難題を、りんに突き付けたのだよ。りんが困り果てていたら、物陰から、兄殿が、ヌッと現れてな。ギリッと、そいつらを睨(ね)めつけたのさ。後は、もう、どうなったか、判るだろう。腕白坊主どもは、蜘蛛の子を蹴散らすように、一目散に逃げて行ったそうだ。」

「ヒエ~~~ッ、あっ、あの殺生丸に睨みつけられたの!?! その男の子達も可哀相に(トラウマにならなきゃ良いけど・・・・)。 あたしでさえ、あいつの真剣な睨みは心臓に悪いってのに。」

「兄殿が出張らなければ、あの小妖怪、邪見が、人頭杖を振り回す気、満々だったらしいぞ。」

「ゲッ、人頭杖って、あの超強力火炎放射器!」

「何だ、かごめ、その超強力・・・火炎・・何たらとは?」

「アッ、エ~~と、炎を吐きまくる杖って事。」

「ウム、そうだな、人里で、そんな物騒な物を振り回されては困る。」

「それじゃ、殺生丸ったら、邪見と二人がかりで、ズッと、物陰に隠れて見張ってた訳? すっごい過保護!」

「マア、そうだろうな。あの犬兄弟は、揃いも揃って自分の女を守ろうとする気持ちが怖ろしく強い。かごめよ、お主は、気付いてないようだが、犬夜叉だって相当な物だぞ。」

「ヘッ、そっ、そうなの?」

「とまあ、そんな訳でな、どうやら、兄殿は、物陰に気配を潜めて、ジッと身を隠していたらしい。そうでなければ、ああも都合良く出てはこれまいからな。」

「ねえ、楓ばあちゃん、その話ぶりを聞いてると、まるで本当に見てたみたい。」

「見てたのさ、わしではなく琥珀が。雲母(きらら)に乗って上空から事の一部始終をな。珊瑚に逢う為に、久し振りに村にやって来る途中だったらしい。」

「成る程、琥珀くんが雲母(きらら)に乗ってね、納得。アッ、そう云えば、琥珀くん、元気?その後、どうしてるの?」

「琥珀は、強い退治屋になる為、修行の旅に出ておる。随分、背が伸びて逞しくなったぞ。前回、見た時は、確か、珊瑚の背を越していたな。」

「エエ~~ッ! 珊瑚ちゃんって、確か、あたしよりも背が高かったわよね。じゃあ、あたし、琥珀くんに追い越されちゃったんだ。ガァ~~~ン!ショック!」

「あの年頃の男子は、筍(たけのこ)のように、少し見ぬ間にドンドン成長するからな。もう数年もすれば、法師殿や犬夜叉と肩を並べる程になるだろうて。最初、困っているりんを見かけて、琥珀自身が、悪餓鬼どもを懲らしめようと思ったそうだ。そうしたら、キララを降下させようとした矢先に、兄殿が割って入ったという訳だ。」

「フ~~~ン、姫を助ける騎士(ナイト)登場って訳ね。それも、二人も!キャッ、素敵!」

「何だ、かごめ、そのナイトとやらは?」

「ウウン、こっちの話。気にしないで、楓ばあちゃん。」

                          2008.7/20.(日)公開◆◆


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