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『四方山話=炉端談義=⑦』

「でも、りんちゃん、どうして、殺生丸は、蛇骨と闘う羽目になったの?」

 
「エッとね、最初の時は、あたしが、殺生丸さまや邪見さまと一緒に居た時に、襲ってきたんです。物陰から急に蛇みたいに刀が飛び出してきて。殺生丸さまが、闘鬼神で、あいつと闘ったの。殺生丸さまの邪魔にならないように、邪見さまと一緒に、その場から逃げようとして、吊り橋を渡ろうとしてたんだけど、そしたら、反対側から手に鉤爪を付けた怖い顔の男の人が現れて・・」

 
「エエッ、今度は、睡骨が、襲ってきたの!?」

 
「成る程、二段構えか。あいつらも悪知恵が良く廻るぜ。」

 
かごめと犬夜叉が、それぞれ感想を述べる。

 
「狭い橋の上で、邪見さまが、その鬼みたいな顔の人の攻撃を、必死に防いでくれてたの。でも、あっちは、大きな男の人だし、鋭い鉤爪を使ってくるから、邪見さまが、人頭杖を使って、一気に炎で焼き払おうとしたの。それなのに、あの人、死ななくて・・・。」

 
「そりゃ、そうだろ。あいつら、死人だからな。四魂の欠片を取らない限り、くたばらないぜ。」

 
犬夜叉が、りんの疑問に答えてやる。

 
「犬夜叉さま、あの人達って・・・やっぱり、もう死んでたの?」
 
 
「アア、奴ら、四魂の欠片を死体に入れて仮初(かりそ)めの命を保ってたんだ。」

 
「そうか、そうだったんだ。死人だから、邪見さまの人頭杖で焼き払っても、斬られても、死ななかったんだね。」

 
犬夜叉の言葉に納得したらしく、りんが、話を続ける。

 
「人頭杖で、橋げただけじゃなく橋の綱まで焼き払っちゃったから、そのまま、みんな、落っこちちゃったの。」

 
「それで、りんちゃん、無事だったの?」

 
かごめが、当時の状況を心配して、りんに訊く。

 
「はい、気が付いた時は、あたし、男の人に抱っこされてたんです。でも、さっきの怖い人とは、顔が、全然、違って、とっても優しそうな感じだったから、その人の村まで連いてったの。」

 
「あの村だわ、犬夜叉。睡骨が、善人の医者の時に、子供達の面倒を見ていた村に、りんちゃんを連れて行ったのよ。」

 
「そうみたいだな、かごめ。でも、睡骨の野郎、何だって、村に戻ったりしたんだ?」

 
「そうよね、何故かしら? それで、りんちゃん、村では、どうしてたの?」

 
「エッとね、村に着いたら、あたしと同じくらいの年頃の子達が居たの。でも、すぐに、村の人が、何人か来て、その睡骨って人に、村から出て行くように頼んでたみたい。そしたら、いきなり、鉤爪で村長みたいな人を殺して。あっという間に、村の人達は、みんな、殺されて。・・あたし、逃げなきゃって思ったんだけど、蛇みたいな刀を使う人に捕まっちゃったの。それでね、あの睡骨って人、子供達も一緒に殺そうとしたの。でも、出来なかったの。まるで、誰かに止められてるみたいだった。」

 
「きっと、睡骨の中の善人が、止めたのね。睡骨は、多重人格者だから。」

 
「かごめさま、多重・・人格・者って?」

 
りんが、耳慣れない言葉に、戸惑い、かごめに聞き返す。

 
「アッと、ご免なさい。この言葉は、戦国時代には無いもんね。そうねぇ、全く違う二つの性格を、一人の人間が持ってると云えば、判るかな? 睡骨は、善人と悪人という二つの顔を持っていたの。だから、善人の時は、優しい顔に、悪人の時は、鬼みたいな顔になったのよ。」

 
「でも、あの時は、顔が、変わらなかったんです、かごめさま。優しい時の顔のままだった。」

 
「ウ~~ン、多分、睡骨の中の善人が、悪人に、完全に乗っ取られたんじゃないかしら? 子供達を殺せなかったのは、きっと、睡骨の中に、僅かに残っていた良心が、止めたんだろうと思うわ。
それで、りんちゃん、蛇骨に捕まったって聞いたけど、それから、どうなったの?」

 
「毒虫が、飛んで来て、殺生丸さまが来るって蛇骨って人に教えたの。それで、お山の方に連れてかれて・・・。」

 
「そう・じゃ・・お前・を・連れ・戻す・・為に・殺生・丸・様は・・聖・域の・結界・・の・中に・向か・われた・・のじゃ。」

 
邪見が、りんの言葉に、おっ被(かぶ)せるように嘴(くちばし)を挟んできた。

 
「橋・から・・落ち・た・お前は・・川に・流され・・た・のじゃ。それ・で・殺生・丸・様も・匂い・・を・追え・な・かった。だか・ら・・亡霊ど・もの・臭い・・を嗅ぎ・当て・て・・そ奴ど・も・の場所・・へ・と・赴かれ・・た・のじゃ。そ・の・場所が・・選り・に・も選って白・霊山・・の・聖域・の中・と・・きてる。如何に・・殺生・丸・様と・云えど・・浄化・され・てしま・・うので・は・ない・か・・と・儂は・・必死・に・・お止・め・申し・・上げ・た・・のだ・が・聞き・届け・・ては・下さ・ら・なかった・・のじゃ。」

 
「エエッ! 殺生丸も、聖域の中に入ったの?」

 
「「「「!?」」」」

 
かごめが、吃驚して叫ぶ。犬夜叉も驚いている。

 
「何・・とっ!」

 
弥勒が、思わず言葉を漏らした。あの聖域は、妖気も邪気も、全て浄化してしまう程、強力な場だ。
事実、半妖の犬夜叉でさえ、あの結界の中では、妖力を失い、人間になってしまったと聞いている。
そんな危険な場所に自ら踏み込んで行くとは・・・やはり、この童女、りんに対する大妖の執着は、
並大抵の物ではない。

 
(フフ・・・感動してしまいますな、兄上。貴方の事でしょうから、その当時、気付いておられたかどうか、怪しい物ですが。犬夜叉と同じように、貴方達、犬兄弟は、揃いも揃って鈍いですからな。
そういう変な処は、実に良く似ている。愛しい者を救おうと、危険も顧みず、死地に乗り込んで行く。
これぞ、正しく“愛の為せる業”ですな。そう、丁度、私が、珊瑚を想うように、又は、犬夜叉が、かごめ様を守ろうとするように・・・)

 
「その蛇骨と睡骨って人達、お山の中に入り込んで、殺生丸さまを待つ積もりだったみたいなの。
 結界の中だと、キツイだろうって蛇の刀の人が云ってました。」

 
「それでも、来たのね、殺生丸は・・・。」

 
(あの意地っ張り! 犬夜叉の兄なだけは有るわ。兄弟して、本当に頑固なんだからっ!)

 
かごめが、犬夜叉の兄の性格から予測して答えを出す。

 
「ハイ、殺生丸さまは、もう、お山の中で待ってました。殺生丸さまは、とっても強い御方だけど、今度は、二人も相手だし、結界の中だし・・・あたし、凄く心配で。あたしは、睡骨って人の左脇に抱え込まれていて、逃げようにも身動き出来なくて・・・。」

 
りんの話に、かごめが、憤慨して喋り出す。

 
「ンモォッ! あいつらのやりそうな事だわ。人質を取るなんて、如何にも、奈落の手先らしいじゃない。ネッ、犬夜叉。卑怯な方法が、すっごく得意なのよ。」

 
「そうだな、あの結界の中じゃ、殺生丸でも相当に苦戦しただろうぜ。大体、息苦しいわ、動きは、矢鱈、遅くなるわで、いつもの力の半分も出せやしないと来てる。睡骨が、りんを抱え込んでたとなると、殺生丸と闘ったのは、蛇骨だな。フン、確かにな、睡骨の鉤爪程度じゃ、普通の人間相手なら充分だろうが、殺生丸が相手じゃ分が悪すぎるだろうさ。」

 
「犬夜叉さまの云う通りです。殺生丸さまと闘ったのは、蛇の刀を使う人の方だったの。クネクネと蛇みたいな動きをする、あの刀。でも、殺生丸さまが、蛇の刀を巻き込んで、遠くの方に飛ばしたら、そしたら、あの、蛇骨って人、睡骨に、こう云ったんです。『山から離れるな』って。それを聞いた睡骨が、あたしの首元に、グッと鉤爪を突き付けて『言われなくても判ってる。サッサとそいつを片付けろ』って・・・。」

 
「怖かったでしょう、りんちゃん。」

 
「ハイ、怪我は、しなかったけど、鉤爪が喉に喰い込んで、暫く跡が残ってました。」

 
「こんな小さな子に、そんな酷い事をするなんて・・・。現代なら、即、刑務所行きよっ!」

 
かごめが、怒りに駆られて叫ぶ。

 
「かごめ、刑務所とは、何じゃ?」

 
七宝が、またまた、耳慣れぬ言葉に首を捻る。

 
「ウ~~~ン、エッ・・とね、そうそう、牢屋の事よ、又は、牢獄。」

 
「そうか、牢屋か。そうじゃな、そんな悪い奴は、捕まえて牢屋に押し込めておくに限るな。」

 
「そうよね、七宝ちゃん。で、りんちゃん、その後、どうなったの?」

 
「殺生丸さまが、自分は、蛇骨に向かって行きながら、闘鬼神を後ろ向きに投げたんです。それで、
 蛇の刀の攻撃をモコモコで躱(かわ)して、手刀で、蛇骨の胸を貫いたの。闘鬼神は、あたしを捕まえてる睡骨の胸に突き刺さって・・。あたし、動けるようになったから、殺生丸さまの所に行こうとしたのに、また、押さえ付けられちゃったんです。蛇骨って人も、殺生丸さまに、胸の辺りを貫かれてるのに、死ななくて。睡骨が、あたしを殺そうと鉤爪を振り上げて。今度こそ、『殺されるっ!』って、そう思ったんです。あたし、怖くて、思わず、目をつぶってしまって。そしたら、風を切る、ゴッて音が聞こえて、目を開けたら、睡骨が、首に矢を受けて倒れてたの。矢を射て、あたしを助けてくれたのは、綺麗な巫女さまでした。」

 
「桔梗だわっ!」

 
「そうか、りんを助けたのは、桔梗だったのか・・・」

 
「お姉さま・・・」

 
「桔梗・・・」

 
「そうじゃったのか・・」

 
「アア・・そう・だった・・のですね。」

 
かごめが、犬夜叉が、楓が、珊瑚が、七宝が、弥勒が、それぞれ、今は亡き美しい女(ひと)に思いを馳(は)せる。死して、尚、清冽な追憶の残り香を、香り高く鮮やかに漂わせる巫女の魂。


★★★『四方山話=炉端談義=⑧』に続く★★★

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