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『四方山話=炉端談義=⑧』

「巫女さまは、睡骨と知り合いだったみたい。首に矢を受けた睡骨は、元の優しかった睡骨に戻ったみたいで、巫女さまに、お願いしてたの。『もう、これ以上、人を殺したくない。四魂の欠片を取ってくれ』って。巫女さまは、迷ってたみたい。そしたら、蛇みたいな刀が、地を這うように近付いて来て、睡骨の首の欠片を弾き出したの。欠片を取った途端に、睡骨の体は、骨だけになって・・・。蛇骨は、欠片を持って、そのまま聖域の中に逃げてったんです。殺生丸さまが、直ぐに、その場を離れる積もりみたいだったから、あたし、巫女さまに、お礼だけ云って、お別れしたの。」

 
りんの話を聞き終えた、かごめが、ポツリと呟く。

 
「睡骨は・・・苦しんでいたのね。」

 
「自分の中の、もう一人の自分・・・か。」

 
  半妖である犬夜叉は、朔の日が来れば、否応なく人間になってしまう。謂わば、もう一人の自分が存在するような物である。睡骨の話は、犬夜叉には、全くの他人事とは思えなかった。

 
「それ・で・・良かった・・のですよ。やっと・・睡骨の・魂は・・救われた・のです。」

 
弥勒が、数珠を提げた方の手を挙げ、仏に仕える法師らしく睡骨の冥福を祈る。

 
「そうかもね、弥勒様の云う通りだわ。」

 
かごめが、弥勒の意見に同意する。

 
「かも・・な。」

 
  犬夜叉も、納得したかのように頷く。何処となくシンミリした空気の漂う中、それを台無しにするような濁声(だみごえ)が、一気に、その場の雰囲気を破った。邪見である。酔っ払って呂律が廻らない上に、大声で、がなり立てるので聞き苦しい事、この上ない。

 
「そっ・・そ・んな事・・が有った・・のか? こりゃっ・・りん! 儂は・そん・な事・は・・ひとっ・言・・も・聞い・て・・お・らんぞっ!」

 
「だって、あの後、邪見さまは、直ぐに、殺生丸さまと一緒に何処かへ出かけちゃったじゃない。話す暇がなかったんだもん。」

 
「ム・・・あの・時・の・事か。白霊・山から・・出て・来・た・・新・生・奈落・・と殺生・丸様・が・遣り・・合った・時の・・・」

 
「エッ・・・殺生丸は、奈落と闘ったの?」

 
  邪見の話に、又も、驚かされる、かごめであった。聞けば、聞くほど、今迄、知らなかった驚愕の事実が、次から次へと、明らかになっていく。

 
「アア・・・奈落が、桔梗を瘴気の谷間に落とした後でな。」

 
  苦々し気に、犬夜叉が、かごめに教えてやる。当時の事を思い返すと、どうしても、あの時の兄の行動に、納得がいかない犬夜叉であった。そして、それは、同時に、奈落から桔梗を助ける事が出来なかった自分の不甲斐無さに対する“苛立ち”の裏返しでもあった。そんな犬夜叉の複雑な男心など、一切、斟酌せずに、邪見が、奈落と殺生丸との小競り合いについて熱弁を振るい始めた。

 
「奈落・め・・あ奴・白霊・山か・ら出て・来た・途端・・態度・が・でかく・なり・・おって。いきな・り・・殺生・丸様・を・呼び捨・てに・し始め・た・・のじゃ。見た・目も・・以前に比べ・て・大分・・変わって・おった・・がな。おまけ・に・奴は・・殺生・丸様・・を・挑発し・おって・から・・に。実に・許し・難い・・わ・い。あ奴・め・ワザ・・と・闘鬼・神の・攻撃・・を受け・おった・・のじゃ。今回・の・新・し・い・・自分が・・どんな・に・強・い・・の・かを・見せ・付ける・・ように・な。奈落・の奴・・殺生・丸様・に・・ズタズ・・タに・され・て・・も全く・意に・・介さん・よう・じゃった。それど・ころ・か・・不気味・な・笑いを・・浮かべ・なが・ら・・受け・た攻撃を・・そっく・り・そのま・ま・・返し・て・きおった・・の・じゃ。何せ・あの・・闘鬼・神の・破壊・・力じゃ。一旦・放った・・己の・剣・圧が・・まとも・に・・戻って・・来るんじゃ・ぞ。あの・時は・本に・吃驚・・し・た・のお~~。ヒック!尤も・・あれ・は・・新し・い・自分の・・力を・・試し・たよう・・な・・感じで・・の。謂・わ・ば・・小手調・べ・で・本気・・では・なかった・よう・・じゃが・な。」

 
「そうか、闘鬼神の剣圧も返されたのね。風の傷と同じ様に。」

 
「ンンッ・・では・犬夜・叉・も・・奈落・と・闘った・・の・か? かご・・め。」

 
「ウン、やっぱり同じように、そのまま、返されちゃったのよ。あの時は、本当に吃驚したわ。」

 
かごめの返事を聞いて、邪見が、一層、熱を込めて話し出す。

 
「フム・・・とっ・とにか・・くじゃ・・奈落・・の・手先に・・一度な・らず・・二度・まで・も・・りんを・攫わ・れ・た・・殺生丸・様は・・用心深・く・・なられ・たの・か・・それ・以・後・僅か・・で・も危険・・な場・所に・は・・決し・て・りん・・を・連れ・・て行こ・うと・は・なさら・・なく・なった・の・じゃ。元々・・過保護・気・味・じゃった・・が・・白霊・山・の事件・・の後・は・・より・一層・・その・傾向・・が・顕著・に・なって・の。お出掛・けに・・なる・際は・・絶対・に・・阿吽・を・りん・・の許・に・残・し・て行・か・・れるよ・う・になった・・のじゃ。いや・・それ・どころ・・か・儂さえ・・も・一緒に・・置いて・行かれ・・る・ように・・なった。二度・の・拉致・・に加え・・て・冥界・で・の事・も・有・・る。これ・ま・での・話・で・・如何・・に・・殺生丸・様・が・・りん・を・大事に・・して・おられ・・る・か・・お前・達に・も・・判った・・じゃろ・・う・て。よい・・か・・努々(ゆめゆめ)・・りん・を・粗末・・に扱う・で・ない・・ぞっ!」

 
  邪見の熱の籠もった話を、弥勒が、ハイハイ、お説、ご尤もと神妙に拝聴しつつ、巧みに、自分達が聞き出したい話題の方へと、邪見を誘導していく。

 
「フム・・そう・ですね。それに・・ついては・重々・・納得で・す。委細・・承知・しました。それで・・ですね・・邪見殿。先日・琥珀から・極々・簡単に・兄上に・拾われ・・た経過・・を・聞いた・のです・が・もっと・・詳しい・経緯(いきさつ)を・是非と・も・教えて・もらえ・・ません・か?」

 
「琥珀・を・・拾った・経過・か? あの・時は・な・・急に・殺生丸・様が・・奈落・の・臭いが・・する・と・仰って・・天生・牙を・抜き・・放って・冥道・残月・破を・・彼奴め・に・あの・夢幻・の・白夜に・・お見舞・い・したの・・じゃ。あ奴・も・奈落・・の・分身・だから・な・・同じ・臭い・が・するの・・は当然・だわ・・な。生憎・冥道・の・軌道・か・ら・ほん・の僅・・か・逸れ・ていた・・せい・で・あの・世に・送り・損ねた・・がな。儂・と・りん・が・・現場・に・駆け・・付け・て・みれば・・琥珀・が・蛇に・・噛まれ・て・倒れ・て・おった・・のよ。何・でも・・奈落・の・瘴気・が・・タップ・リ・・染み・こま・せ・てある・・毒・蛇・だった・・そう・な。」

 
邪見の話を聞いていた、りんが、此処で、又も、絶妙な合いの手を入れて来た。

 
「あの毒蛇に、邪見さまも、一緒に噛まれちゃったんだよね。」

 
「ばっ・・馬鹿・・もん!・りんっ・・・余計・な・・事・は・・云わんで・・良いっ!」

 
耳寄りな情報に、弥勒が、身体を乗り出して訊いて来た。

 
「ホホォ~~・・それ・は・・それ・は・・初耳・です・な。しかし・・どうして・邪見・が?」

 
りんが、無邪気に、その時の事を思い出しながら話す。

 
「あのね、殺生丸さまが、『触るな・・毒蛇だ』って仰ったのに、邪見さまったら、蛇に近付いて、それで、ガブッて、噛まれちゃったの。」

 
「ヘッ、間抜けなこった。どうせ、ボ~~ッとしてたんだろう。」

 
「なっ・・何お~~ヒック!・・ウイック!・・おっ・・覚え・て・おれ・・よ・犬・夜叉・・」

 
相変わらずの憎まれ口を叩く犬夜叉に、歯噛みして悔しがる邪見であった。

 
「あらあら、大変だったわね、邪見。それで、それで、りんちゃん、どうなったの?」

 
面白そうな話に、かごめも、ズイッと身を乗り出して来た。

 
「エッ・・とね、それで毒消しの薬草を貰いに行ったの。薬草畑を作ってる地念児さんの処へ。」

 
「エ~~~ッ、地念児って、あの地念児さんの事よねっ! 半妖のっ!」

 
「かごめさま、知ってるの?」

 
「知ってるも何も、以前、雲母が、奈落の瘴気でやられた時、同じ様に毒消しの薬草を貰いに行った事が有るのよ。そうか、地念児さんの処へね。地念児さん、元気だった? それから・・あの、凄く・・元気なお母さんも?」

 
「ハイ、山姥(やまんば)のおっ母も元気でした。アッ・・と、いけない。」

 
「山姥(やまんば)・・・」

 
りんの言葉に、内心、大いに頷きつつも、チョッピリ複雑な心境の、かごめであった。

 
(子供は、正直だなぁ。マア、確かに、あたしも、初めて、地念児さんのお母さんを見た時、そう思ったもんね。)

 
「ワッハッハ、りん、上手い事云うじゃねえか。俺も、最初、あの婆(ばばあ)を見た時、テッキリ、そう思ったぜ。」

 
犬夜叉が、りんの話に、ゲラゲラ笑いこける。


★★★『四方山話=炉端談義=⑨』に続く★★★

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