邪見のボヤキ⑨ さしもの奈落も、爆砕牙の途轍もない破壊力が、これ以上、波及しないように本体を切り離しおったわ。 殺生丸様を始めとして、周囲を、グルッと犬夜叉とかごめ、法師と退治屋に囲まれていると云うのに。 奴め、一向に堪えた素振りも見せん。 辛うじて爆砕牙の破壊を免れた体と頭部のみで、一体、どう対抗する積もりなんじゃろう??? ウゲッ! 彼奴め、又も変化しおった! どうやら、心を、完全に四魂の玉に喰わせたらしい。 今迄とは、全く顔が違う。 筋々の入った仁王のような憤怒の表情。 頬には殺生様のような妖線が一筋。 妖怪特有の尖った耳。 ウネウネとうねっていた黒髪は、色を無くし、ゴワゴワと硬そうな感じに変わりよった。 ともかく、見るだに怖ろしげな鬼のような風貌じゃ。 それに周囲に浮かんでいた十字形の盾も変形させおった! なっ、何なんじゃ、あの、あばら骨を大きくしたような薄気味の悪い装甲は??? 殺生丸様が、お側にいらっしゃらなければ、トットと逃げ出したくなるような不気味さじゃ。 ウオッ! 奈落め、瘴気の塊をボコボコと幾つも作り出して、それで攻撃してきおった。 犬夜叉めが、刃型の冥道残月破で、瘴気弾を切り裂いて防御じゃ。 ムムッ・・・何時の間に、球形から、あんな形に変化したのじゃ? そう思って見物してたら、今度は、何と、下の方から瘴気弾が! すかさず、殺生丸様が、「くだらん。」の一言と共に、爆砕牙で、それを破壊される。 フフン、流石は我が主、殺生丸様! 何時もながら、お見事で御座いますぞ! 「邪見!」 殺生丸様が、鋭く儂を呼ばれる。 「奈落の体から出ろ。」(待ってました、その御言葉!) 矢継ぎ早の指示に、主の意図を、素早く読み取る儂。 これぞ長年の間に培った阿吽の呼吸じゃ。 主従とは、須(すべか)らく、儂と殺生丸様のように、“以心伝心”が出来てこそ本物なのじゃ。 その点、琥珀なんぞは、儂に比べると、まだまだだな。 この肝心な時に、呼んで頂けないのが、その証拠じゃ。 ウムッ、やっぱり、儂って、僕(しもべ)の鏡! [1回]PR