珊瑚の出産③ ※この画像は『妖ノ恋』さまの了解を得て公開しております。 パチパチ・・パチッ・・ 薪が勢いよく燃える音に珊瑚の呻き声と楓の声が入り雑(ま)じる。 それから二時(約四時間)ほど後、珊瑚は無事に女の双子を出産した。 産湯(うぶゆ)につけてやれば赤子達が矢継ぎばやに元気な産声(うぶごえ)を発する。 「ほぎゃあ・・ほぎゃっ・・」「ほぎゃ・・ほぎゃあ~っ・・」 弥勒が産室に駆け込んできた。 赤子の産声に矢も盾もたまらなくなったのであろう。 いつも冷静な男の目が潤んでいる。 弥勒:「珊瑚・・・」 珊瑚:「法師さま・・」 楓:「抱いてやりなされ、法師殿。元気な女の双子だ」 楓が生まれたばかりの赤ん坊を新米の父親に一人ずつ手渡す。 震える手で、それでもしっかりと子供達を抱きとめる弥勒。 楓:「さっ、後は家族だけにしてやろう。りん、帰るぞ」 りん:「はい、楓さま」 楓とりんは素早く後産の始末を終え産室から退出した。 犬夜叉が所在なさげに土間で待っていた。 楓:「おお、犬夜叉、戻っておったのか」 犬夜叉:「ああ、珊瑚の奴、無事にお産はすんだみてえだな?」 楓:「うむ、元気な女の双子じゃ」 犬夜叉:「ははっ、女だらけって訳だな。へっ、女好きの弥勒にゃ持ってこいじゃねえか」 そう云うなり踵(きびす)を返そうとする犬夜叉に楓が声をかける。 楓:「犬夜叉、赤子達の顔を見ていかんのか?」 犬夜叉:「ああ、また今度にするさ。あいつら、今、親子水入らずだろ。水をさす気はねえよ」 楓:「そうか」 そのまま犬夜叉は山の方へブラブラと歩いていった。 楓とりんは反対に村の方へと向かう。 ※『珊瑚の出産④』に続く。 [5回]PR