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珊瑚の出産④



※この画像は『妖ノ恋』さまの了解を得て公開しております。

晩秋の少し肌寒い陽気の中、巫女装束の楓とりんが仲良く連れ立って歩く。
本物の祖母と孫のようである。

楓:「そういえば、りん、今日は兄殿が来る日ではなかったのか?」

りん:「えっ! あっ、はい、そうでした」

兄殿とは殺生丸を意味する。
りんを預かって以来、楓は殺生丸をそう呼んでいる。
腹違いとはいえ犬夜叉の兄だからである。
りんを預かった当初、楓は勿論、犬夜叉や珊瑚に弥勒までもが思った。
殺生丸はもうりんをの面倒を見みないだろうと考えていた。
というのも殺生丸が大の人間嫌いだったからである。
殺生丸は己と違い人間の母をもつ半妖の犬夜叉を露骨に蔑(さげす)み顔を見るのさえ嫌(きら)っていたのだ。
嫌うくらいなら、まだいい。
とことん仲の悪い犬夜叉と殺生丸は、父親の形見の剣、『鉄砕牙』を廻(めぐ)って何度も命賭けの兄弟喧嘩を繰り返していた。
その際、巻き添えを喰ったかごめと弥勒、それに七宝は危うく殺生丸に殺されかけたことさえある。
だから、誰もが予想しなかった。
殺生丸がりんに逢う為だけに村を訪れるなど。
それも思い出したかのように偶(たま)に来るなどという生易(なまやさ)しいものではない。
キッチリ三日おきに現れるのだ。
まるで判で押したかのような律儀さである。

《りんを楓に預ける辺りの件(くだり)は拙作の第58作目『決断①~③』をご参照ください》

最初は物珍しくとも頻繁に繰り返されれば、いつしか誰もが慣れる。
今や、殺生丸の訪問は村では極当たり前のこと、いつのもことと扱われている。
その当の大妖がお供の小妖怪、邪見を従え現れた。
夏と違い勢いを失った陽射しに白銀の髪が柔らかく煌めく。
まるで秋空に広がる筋雲のようだ。

りん:「あっ、殺生丸さま!」

楓:「ほっ、『噂をすれば影』だ。ではな、りん、夕餉(ゆうげ)までには帰るんじゃぞ」

りん:「はい、楓さま」

幼女はいそいそと待ち人のもとへと駆けつけた。


※『珊瑚の出産⑤』に続く。



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