贈呈小説『助けて!』(りん視点) ※『月の船』さまサイト二周年記念に進呈※ 殺生丸さまが曲霊(まがつひ)を追って、お出かけになって、もう十日。 お言いつけ通りに邪見さまと一緒に巫女の楓さまの村でお留守番してたの。 琥珀は曲霊に四魂の欠片を汚(けが)されてからチットモ目を覚まさない。 お姉さんの珊瑚さまが側に付いてるから大丈夫だよね。 それに、殺生丸さまが、きっと曲霊を退治して下さるもん。 法師さまも居るし、それに殺生丸さまの弟さまの犬夜叉さまだっておいでだし。 かごめさまは、この数日、いらっしゃらない。 大事なご用が井戸の向こうの世界で有るんだって。 それで、ついさっき、犬夜叉さまが、かごめさまをお迎えに井戸に入られたの。 まだまだ寒さが厳しい頃だったから囲炉裏で火に当たっていたの。 側には邪見さまが居て少し奥に琥珀が寝てたんだっけ。 ザワザワ・・・何かが地面を這ってくる! 大きな目が琥珀の中に入っていく。 曲霊だ! 法師さまと珊瑚さまが慌てて小屋の中に入ってきた。 目でも見える曲霊の禍々しい気配。 ザ—————・・・・ 変な音がする。 そしたら妖怪達が家を壊して入ってきたの。 ドカドカと大きな音を立てて。 その中の蛇みたいな妖怪に乗って琥珀が飛んでいこうとしてる! 法師さまが風穴を開いて曲霊を吸い込もうとしたんだけど・・・・。 吸いきれなくて逆に風穴が裂けてしまったの。 それだけじゃない! 琥珀の四魂の欠片から何か湧いてきた。 あれは曲霊の目? 法師さまの口許から血が! 琥珀の鎖鎌が変化して珊瑚さまに襲い掛かる! 最初の攻撃はかわしたけど。 次は、かわし切れなくて左肩を。 「琥珀、やめて!」 曲霊に乗っ取られた琥珀が、お姉さんの珊瑚さまを殺そうとしてる。 止めなきゃ! そう思って飛び出したあたし。 ババッ! でも、琥珀の、ううん、曲霊の毒気に当たって気絶しちゃった。 その後の事は覚えてないの。 「う・・・・」 気が付いた時、変な柔らかい物の上に寝てたの。 まるで何かの身体みたいな。 後で教えてもらったけど、あれは奈落の体だったんだね。 「きゃ・・・」 目の前には曲霊の大きな怖い顔が! 逃げなきゃ! 一生懸命走って逃げようとしたの。 怖くて思わず叫んじゃった。 「殺生丸さま、殺生丸さま、助けて!!」 そしたら、目の前に犬夜叉さまが見えた。 殺生丸さまの弟さま。 走り寄ったんだけど、何か、様子が変だった。 いつもの犬夜叉さまじゃない。 凄く怖いお顔。 目は赤くて頬には線が浮き出てて。 牙もむき出しで。 まるで妖怪みたい。 だから逃げようとしたら・・・・。 曲霊が追いかけてきてた。 迫ってくる大きな不気味な顔。 「きゃっ!」 尻餅ついちゃった。 怖くて怖くて涙がにじんできちゃった。 犬夜叉さまも追いかけてきた。 てっきり、襲われると思ったのに。 違うの、犬夜叉さまが狙ってたのは・・・・曲霊! 爪で、あの悪霊をやっつけようとしたの。 殺生丸さまと同じ強くて鋭い爪。 でも、曲霊は全然どうもならなくて。 逆に犬夜叉さまの中に入っちゃった。 琥珀の時みたいに操るつもりなんだ。 その時、殺生丸さまが見えたの。 奈落の体の中を矢のように飛んできて下さった。 モコモコにかごめさまをしがみ付かせて。 嬉しくて殺生丸さまの名前を呼ぼうとしたの。 でも、急に地面だと思ってた部分が・・・・。 下にめり込んで! あたしも叫び声も呑み込んでしまった。 「殺生丸さ・・・」 もがいてももがいてもどうしようもない。 苦しいよ、息が出来ない。 助け・・て・・・殺生丸・・さま・・・ 了 ◆◆猫目石 2008.10.24 [0回]PR