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『愚息行状観察日記④=御母堂さま=』

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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
 

それでな、この城に殺生丸が立ち寄ったあの日以来、折に触れては“遠見の鏡”を開き、愚息の動向を覗き見るのが妾(わらわ)の楽しみ、イヤ、日課となった。
二百年間、消息ひとつ寄こさなんだ馬鹿息子が、いきなり現われたのには、内心、驚かされたが、あれ程、人間嫌いだった殺生丸が、人間の子供を、それも二匹も連れていたのは更なる驚きだった。
まず一匹目は赤子に毛が生えたような童女。
二匹目は一匹目に比べれば、多少、大きいが、これも童(わらべ)の域を出ん。
どう贔屓目(ひいきめ)に見ても一人前とは云えぬ小僧だったからな。
最初は二匹とも餌にでもする積りなのかと考えたが。
それは、即座に、殺生丸に否定された。
餌でないというのなら、はて、どういう心積りで連れ回しておるのか。
これまでのあ奴の性状からすれば断じて有り得ぬ行為。
だが、そんな事は、まだまだ序の口だった。
その後の奴の前代未聞(ぜんだいみもん)の行動の数々に、益々、驚かされることになろうとはな。
正直、あの時は想像もせなんだわ。
それにしても、殺生丸め、無愛想、無礼なところは二百年前の小童(こわっぱ)の頃と全く変わっておらん。
長の無沙汰を詫びもせず“冥道残月破”なる技の冥道を拡げる方法を教えろと己が要望のみを妾(わらわ)に突きつけおったわ。
あれが二百年ぶりに逢った親に対する態度か。
フム、まあ、仕方ないか、今更、あ奴が孝心の篤(あつ)い孝行息子に変わろうはずもない。
それに、極めつけの意地っ張りである殺生丸が妾(わらわ)を頼って来たという事は、余程、進退谷(きわ)まっていたのであろうしな。
亡き夫、闘牙から頼まれておったことでもあった。
今にして思えば、闘牙は、何時の日か、この事あると予想しておった訳だな。
だからこそ、妾(わらわ)に、この冥道石を託した。
冥道石を使って殺生丸の冥道を拡げる手助けをしてやれと。
闘牙から手渡された時は冥道石のみだった。
そのままでは、常時、携行するのに不便だったのでな。
首飾りに仕立てさせ、いつも身に付けておけるようにした。
闘牙の形見でもあるからな。
そのような経緯(いきさつ)で冥道石の力を解放し愚息の望みを叶えてやったのだが。
結果的に冥道は拡がったが冥界の邪気に侵され人間の小娘が息絶えてしまった。
冥界から戻ってきた際の殺生丸ときたら、これまでに見たこともない顔をしておったぞ。
あの人間の小娘の死が、あんなにも、あ奴に衝撃だったとは。
何とも面妖な、これぞ驚愕の極みだな。
既に一度死んだ身ゆえ、小娘は天生牙では救えぬ。
従って妾(わらわ)が冥道石を使い小娘を蘇生させた。
冥道石も天生牙と同じだ。
唯一度きりしか使えぬ。
その事、しかと忘れぬよう愚息に釘を刺しておいた。
小娘が生き返った時、殺生丸め、必死に無表情を保とうとしていたのであろうが。
フフッ、あんなにも一心に小娘を見詰めておったのでは、そなたの思い、誰に云わずとも知れようぞ。
どうやら、殺生丸は父親と同じ道を歩むらしい。
人間の女に心を奪われたようだからな。
とは云うものの、あれは、まだ『女』とも云えぬ童女、鳥に喩(たと)えれば雛だぞ。
それも尻に卵の殻をくっつけておるような生まれたての・・・な。
あれでは殺生丸の相手になるには、どう少なく見積もっても、たっぷり数年は掛かろう。
マア、執念深い我が息子殿のことだ。
その時が来るまで、只管(ひたすら)、『忍』の一字で耐えるのであろうよ。
ククッ、あのどうしようもない朴念仁がな、想像するだに笑わせてくれる。
暫く逢わぬ間に何とも面白みのある男に育ったものよ、殺生丸。
二百年の無聊(ぶりょう)を一気に慰めてくれたぞ。
実に楽しませてくれるわ。
フフ・・・これだから愚息の行状を追跡するのは止められぬ。
さて、その後、あ奴らは、どうなったかな?
“遠見の鏡”を覗いてみれば、ヤヤッ、あれに見えるは死神鬼ではないか!?
まだ生きておったのか、あの男。
闘牙に冥道残月破を奪われ、頭を半分程も吹き飛ばされたというに。
 

『愚息行状観察日記⑤=御母堂さま=』に続く

 

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