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『降り積もる思い⑲=蟲壺虫(ここちゅう)=』

そういや、珊瑚が仲間に加わってからというもの一段と野宿が減ってたよな。
何しろ、アイツは妖怪退治の専門家だからな。
あの日も化けネズミを退治してたっけ。
滅茶苦茶、臭い煙で獲物を燻(いぶ)しだし飛来骨で一撃。
ホイ、退治完了てなもんだ。
俺は臭いがキツイのに弱いんだ。
思い出すだに、気分が悪いぃぃぃ。
ンッ?弥勒が居ねえ。
何処、行ったんだ?と思ってたら・・・・。
七宝が教えてくれたんだが、ノコノコ女についてったらしい。
それも美人と聞けば、もう間違いねえ。
爺さんが美女に化けた奈落から風穴の呪いを受けたってのに。
チットモ懲りねえ一族だぜ。
あの野郎の女好きも筋金入りってか。
そんな訳で宿に戻ってきた弥勒に対する女どもの態度は冷たかった。
まあ、自業自得だな。
次の朝、弥勒の床は蛻(もぬけ)の殻。
何処へ行ったか見当もつかなかった。
おまけに奈落が俺達を見張ってたんだ。
追い詰めて倒したが、それは傀儡(くぐつ)だった。
・・・・・おかしい。
まるで、俺達を誘い出す、イヤ、何かから遠ざけるような妙な動きじゃねえか。
嫌な予感は当たるもんだな。
冥加じいが、昨夜の弥勒の様子を教えてくれた。
アイツ、風穴をジッと見つめて何か深刻そうにしてたらしいんだ。
だが、捜そうにも手がかり一つ残ってねえ。
どうすりゃいいんだ!
イライラする俺の前に現われたのは弥勒の子分のタヌキ、阿波の八衛門だ。
変化して空を飛んでる処を最猛勝(さいみょうしょう)に襲われて逃げてきた。
毒虫どもめ、俺を見た途端、サッサと退散していきやがった。
八衛門に詳しい事情を聞けば、弥勒の奴、ヤッパリ危ない目に遭ってやがる。
ザッと掻い摘んで話せばだな。
美人に釣られて付いて行ったは良いが、ソイツは大蟷螂(おおかまきり)が化けてたんだとよ。
チィッ、爺さんと同じ手に引っかかりやがって。
風穴でソイツを吸い込んだは良いが、前脚の鎌で風穴を切られちまった。
そんでもって怪我を治す為に育ての親の寺に戻った。
だが、寺の和尚(おしょう)は何者かに操られ、弥勒を殺そうとしてるってんだ。
普段の奴なら心配ないが、風穴を切られてる上に薬で身体の自由が利かないらしい。
クソッ、死ぬなよ、弥勒。
変化したヒョウタン型の八衛門に乗って、大急ぎで現場に掛け付けて見れば。
無数の妖怪どもが寺を取り囲んでるじゃねえか。
雑魚は珊瑚に任せて弥勒を探す。
大蟷螂(おおかまきり)やら有象無象の妖怪どもが飛び掛かる寸前じゃねえか。
危ない処だったぜ、全く!
鉄砕牙で奴らを斬り倒したはいいが、厄介な相手が登場してきた。
夢心、あの寺の住職で弥勒の育ての親だ。
あの老いぼれ、蟲壺虫(ここちゅう)なんぞに操られやがって。
チイッ、弥勒を育てただけあって相当な法力の持ち主だったぜ。
クソ坊主め、大数珠で俺を縛りやがった。
弥勒に頼まれたから殺す訳にもいかねえ。
鉄砕牙は老いぼれの法力で変化が解かれちまってるし。
そうこうする内にも妖怪どもは容赦なく襲い掛かってくる。
仕方ねえから散魂鉄爪で凌いでたんだが。
段々、体力の限界に来た。
何せ、大数珠が、俺の妖力を吸い取ってるんだ。
クソッ、何時まで持つか。
老いぼれめ、弱ってきた俺を見て好い気になりやがって。
首をねじ切るだと。
調子に乗ってんじゃねえ!
力を振り絞ってクソ坊主の首ねっこを捉まえた。
こっちこそ、手前の首をねじ切ってやる!
そう思ったんだが・・・・。
この夢心て坊主を殺しちまったら弥勒の風穴の傷を治せる者が居なくなるって云うじゃねえか。
そう聞いちまったら思わず手の力が緩んじまった。
老いぼれめ、そこを空(す)かさず一気に法力を強めやがった。
バチバチッ・・・・シュ~~
力が・・・抜けていく。
弥勒は風穴に傷を負い、俺は妖力を吸い取られ、にっちもさっちもいかねえ。
その上、妖怪どもの大軍団が襲い掛かってきたんだ。
絶対絶命の状況ってのは、あの事だよな。
弥勒の野郎、碌に身体の自由も利かねえ癖に、風穴を開きやがって。
見ろ、踏ん張りが利かないせいで体勢が崩れてるじゃねえか!
老いぼれなんぞに構ってる場合じゃねえ。
バキ! 一発、喰らわせて坊主を気絶させ弥勒の許へ急ぐ。
ジャッ・・・数珠で風穴を封印した。
妖怪どもめ、風穴が閉じたのを見て勢い込んで襲ってきやがった。

「てめえら、こっから先・・・一歩も通さねえ!!」

渾身の力を振り絞って鉄砕牙を振った。
ゴッ・・・・グワッ!
そしたら、アッという間に妖怪どもが消し飛んだんだ。
あん時は驚いたぜ。
以前、殺生丸が鉄砕牙の真の力を見せた時と同じだ。
『一振りで百匹の妖怪をなぎ倒す』
初めて鉄砕牙の本当の力を引き出せたんだ。
形勢悪しと見て逃げようとした壺使いは珊瑚が始末した。
壺使いが持ってた壺に和尚を操ってた蟲壺虫(ここちゅう)を吸い込んだ。
これで、もう大丈夫のはず。
ン~~ッ、老いぼれ坊主め、起きやがらねえ。
どうした?と思ったらグースカ寝てやがる。
クソッ、好い気なもんだぜ。
散々、手間掛けやがって。
弥勒の手当てが終わった。
坊主が俺を呼ぶんで付いてった。
そしたら、こう云ったんだ。
一刻も早く奈落を倒せってな。
風穴は以前よりも拡がってたらしい。
つまり、それだけ寿命が縮まったってこった。
弥勒の風穴は奈落の呪いで穿たれた。
だから、奈落さえ倒せば呪いは解ける。
神妙な気持ちで話を聞き終わった俺の目に飛び込んできたのは・・・・。
こんな時でさえ、珊瑚の尻を撫で回すのを忘れねえ弥勒の姿だった。
呆れた助兵衛根性だぜ。
当分、死にそうもねえと俺が思っても無理ねえだろう?


 

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