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『降り積もる思い⑱=似非(えせ)水神=』

ン~~と、珊瑚が仲間に加わってから最初に戦ったのが・・・・。
そうそう、思う出したぜ。
似非(えせ)水神だ。
大きな湖のほとりにある村。
その村じゃ大水が出る度に湖の水神に生贄(いけにえ)を捧げてきたらしい。
何でもそうしないと水神の祟りで村が滅ぼされちまうんだとさ。
俺達は、その生贄を運ぶ輿(こし)に出喰わしたんだったよな。
話を聞くと、どうも胡散臭い。
ソイツ、水神じゃなくて妖怪じゃねえのか?
そう思って退治してやろうと弥勒が話を持ちかけたら。
村の名主の野郎、剣もホロロに突っぱねやがった。
自分の子供が生贄にされようってのに矢鱈(やたら)迷惑そうで妙な態度だったな。
それもその筈、輿(こし)の中の子供は自分の子じゃねえ。
替え玉だったんだ。
あの名主、自分の子可愛さに使用人の子供を身代わりに仕立てやがった。
本当に呆れた馬鹿親だぜ。
息子の方は親と違って大分マシだったがな。
エ~~~ッと名前は・・・・太郎・・太郎。
そうだ、太郎丸とか云ったな。
アイツ、自分の代わりに生贄にされようとした友達を助けようとしてたんだ。
親父に似てクソ生意気な奴だったけどな。
イキナリ金品を投げ付けて俺達を雇ってやるとか抜かしやがってよ。
餓鬼のくせに偉そうにしてたから一発殴っといた。
動物の世界でもそうだが、どっちの立場が上かハッキリさせとかないとな。
太郎丸の案内で船で湖の中に潜入してみると。
見えてきた、見えてきた。
湖のど真ん中に、やけに立派な社(やしろ)が建ってるじゃねえか。
大門の前に門番が陣取ってやがる。
こちとら急いでんだ。
雑魚に構ってる暇はねえ。
手っ取り早く門番どもをブン殴って気絶させ先を急いだ。
内部に入り込んだら出て来る、出て来る。
次から次へ水神の手の者が刃向かってきやがった。
どいつもこいつも片っ端から殴って片付ける。
奴らは、みんな、鯉や沢蟹の化身だったからな。
殺すまでもない。
奥殿に辿り着くと、居た、居た、人喰い水神が。
俺は、奴は妖怪に違いないと思ってたからな。
鉄砕牙を抜いて確かめてやろうとしたんだ。
だが、あの野郎、神器を持ってやがった。
本物の水神が持つべき神器、雩(あまごい)の鉾(ほこ)。
鉄砕牙が神器に当たった途端、変化が解けちまった。
あの時は驚いたぜ。
後で判ったんだが、アイツは、やっぱり偽者だった。
但(ただ)し、神器の方は本物だ。
厄介な事にな、偽者でも神器を持っちまえば本物と同じ力を振るえるんだ。
似非(えせ)水神め、雩(あまごい)の鉾(ほこ)を使って俺達を瞬時に水の底に引き込みやがった。
あの時、水に流されて俺とかごめは逸(はぐ)れちまった。
運の悪いことに大岩が水に押し流されてきてな。
俺の頭にブチ当たったんだ。
それで俺は気を失って流されちまった。
気が付けば水神の社(やしろ)の外に浮かぶ小島の上にいた。
弥勒と珊瑚も一緒だ。
俺達を助けてくれたのは水神の眷属で鯉の化身達だった。
俺の意識が覚醒する際に聞こえてきた話によるとだな。
あの人喰い水神は、元々この湖に棲んでいた精霊で本物の水神に仕える身だったらしい。
それが、本物を騙して岩場に幽閉した挙句、神器、雩(あまごい)の鉾(ほこ)を奪って水神になり代わったんだとよ。
道理で神器が本物な訳だ。
とんでもねえ罰当たりだぜ。
本物の水神を助けるのは弥勒達に任せて俺は急遽(きゅうきょ)かごめ救出に走った。
駆け付けてみれば、正に間一髪!
似非(えせ)水神め、神器の鉾(ほこ)で、かごめを串刺しにする寸前だった。
フウ~~~危ない処だったぜ。
鉄砕牙で神器を受け止めたらヤッパリ変化は解けちまった。
チッ、偽者が持ってても神器の威力は本物だぜ。
似非(えせ)水神め、正体を見破られた途端、水中に身を隠しやがった。
あん畜生の本性は水蛇の化身だったんだ。
長い図体で人をグルグル巻きにしやがって。
爪で胴体を引き裂いてやったんだが。
野郎、俺を巻き込んだまま水中に潜りやがった。
あのまま水中で溺れさせる積もりだったんだろう。
クソッ、あの時、弥勒と珊瑚が本物の水神を連れてきてくれなかったら・・・・。
恐らく息が止まって御陀仏だったろうな。
いくら頑丈な俺でも魚じゃねえんだ。
水中じゃ息が出来ねえ。
岩屋にズッと幽閉されてたせいで形(なり)は小さくなってたが、流石は本物の水神だ。
耳飾り一つで周囲に溢れていた水を割っちまった。
『水切りの法』とか云うらしい。
唯、その後がなあ。
力を使い果たしたせいでチビ水神は寝ちまったんだ。
まあ、それは良い。
おかげで俺は息を吹き返したからな。
珊瑚が雲母(きらら)に乗って偽者の気を惹いてくれてた。
ヨシッ、その隙に俺は地道に野郎の身体をよじ登って偽者の頭の部分に辿り着いた。
神器の鉾さえ奪っちまえばコッチのもんだ。
鉾ごと腕を引き千切ってやったぜ。
ハッ、それまですかした神様面してたが、似非(えせ)水神め、神器を奪ったら本性が丸出しだ。
蛇野郎が、鉾を取り返そうとジタバタ悪あがきしやがって。
てめえ、往生際が悪いぞ。
一発、眉間に叩き込んで水中に落としてやった。
ド———————ン!
かごめの奴、俺が偽者と格闘してるってえのに。
俺の心配じゃなく『鉾』を渡せだあ?
チイッ、似非(えせ)水神が神器で呼んだ雨雲が竜巻を起こして村に迫りつつある。
こりゃ、早いとこ、雩(あまごい)の鉾(ほこ)を本物の水神に渡して竜巻を治めてもらわねえとな。
蛇野郎の口を無理矢理こじ開け『鉾』を投げる。
だが、偽者野郎が長い図体を利用して『鉾』が社(やしろ)に届くのを邪魔しやがった。
万事休すか?と思ったら太郎丸が『鉾』を取りに湖に飛び込んだんだ。
村を救いたい一心からだろう。
親父は、しょうもないが息子は大した者だぜ。
将来、村を背負って立つ名主に相応しいぜ。
太郎丸が『鉾』を掴んだ。
クソッ、蛇野郎め、まだ諦めてねえ。
長い胴体で太郎丸を弾き飛ばしやがった。
すかさず珊瑚が飛来骨で蛇野郎の胴体を両断した。
太郎丸の奴、気絶しながらも『鉾』を手離さねえ。
大した根性だぜ。
そのまま、湖の中に沈んでいく。
胴体を分断されながらも、あん畜生、まだ襲ってきやがった。
グズグズしてられねえ。
一気に片を付けるぜ。
鉄砕牙で蛇野郎の開いた口を、そのまま大きく引き裂いてやった。
野郎、そんなになっても、まだ死なねえ。
最後の締めは弥勒に任せた。
風穴で似非(えせ)水神を吸い込んで終わりだ。
後は太郎丸と鉾を回収してと。
神器を本物の水神に渡した。
水神は女神だった。
神器に触れた途端、オオッ、チビ水神がググンと大きくなった。
かごめよりもデカイぞ。
俺と比べても、そう大して変わらないくらの背丈だ。
水神が神器を荒れ狂う天に向けてかざし声を発した。

「雲切り!」

それと同時に幾つもの渦巻く竜巻がピタリと収まった。
見る間に雨雲は消え去り明るい陽射しが戻ってきた。
こうして村は壊滅状態から救われたって訳だ。
とんだ足止めを喰っちまったぜ。
ン~~何だよ、弥勒、その大荷物は?
ハアッ、太郎丸の親父に云った?
今回の件を村の衆に事細かに伝えましょうって。
・・・・お前、それって恐喝だろう。
弥勒の奴、当時も今も阿漕(あこぎ)なやり口は全然変わってねえな。



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