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『降り積もる思い⑧=タタリモッケ=』最終回萌え作品⑤

イライラ・・・イライラ・・・・
アアッ、もう、じれってえな。
まだ掛かるのかよ。
雷獣兄弟の兄、飛天の雷撃刃を受け、折れかけた鉄砕牙の鞘。
その折れた部分を補強する為に、鋼蜂(はがねばち)の蜜蝋(みつろう)で固めさせてる。
ワ———ン、ブブブ・・・・
何千匹もの蜂どもが、鉄砕牙に集(たか)って修理の真っ最中だ。
イライラしてる俺の気持ちを逆撫でするように子狐妖怪の七宝がチョッカイ出してきやがるし。
アア、もう、やかましい!
かごめ、かごめと煩(うる)せえぞ。
ン? 何だ、ありゃ?
夜の小川の上にフワフワと浮かび上がる影は・・・蛍?
イヤ、蛍だけじゃねえ。
人魂? 子供達みてえだ。
それにデッカイ鞠(まり)か鈴みてえな・・・・。
ありゃ、妖怪か?
目は殆ど閉じているな。
子供の人魂が遊ぶのに合わせて笛を吹いてる。
ホウー・・・  ホウー・・・・  ホウー・・・・
物識りの冥加が云うには、あれは、タタリモッケとか云うらしい。
幼子の魂から生じた妖怪なんだってよ。
ああやって死んだ子供の霊が成仏するまで、一緒に遊んでやるんだそうだ。
まさか、雷獣の次は、悪霊と拘(かかわ)る事になろうとはな。
かごめのお節介め。
あいつは、妙に正義感が強いからな。
コッチに来たかと思えば、俺を無視して、イキナリ、冥加と話を始めて。
何を聞くのかと思いきや、つい、此間(こないだ)見たタタリモッケの事だ。
アッチの世界でも、かごめの奴、タタリモッケを見たらしい。
厄介な事に、かごめの奴、アッチの世界で悪霊になりかかってる子供の幽霊と関わり合いになっちまったんだ。
何でも、かごめの弟の草太、奴の友達の姉ってのが、そうらしい。
幽霊ってのは、妖怪と違って、たたっ斬れば良いってもんじゃねえ。
下手に触ると怪我どころじゃ済まないんだ。
そのまま放って置けばいいものを。
アイツの性分なんだろうな。
何とか助けてやろうとして、却って自分が危ない目に遭ってるんだ。
チッ、しょうがねえな。
四魂の欠片を捜すのに、アイツの目は欠かせないし。
助けに行くとするか。
アッチの世界に行ってみれば、案の定だ。
相手の幽霊は、殆ど、悪霊になりかかって凶暴化してる。
怨みの念が膨れ上がって暴走してるんだ。
あの幽霊、もう少しで自分の弟を殺しちまう処だったぞ。
あんなんを、一体、どうやって救うってんだ。
完全に悪霊になっちまったら、普段は閉じてるタタリモッケの目が開く。
そしたら、霊を地獄に連れて行くんだ。
不味いぞ、かごめ。
タタリモッケの目が開ききっちまった。
このままじゃ、あの子供の幽霊、地獄に連れてかれちまうぞ。
後を追って駆けつけてみれば、部屋の中は炎の海だった。
あの子供、真由(まゆ)って餓鬼(がき)は、自分の家で火に焼かれて死んだみてえだな。
タタリモッケは、霊を死んだ時の状態に戻して、ソコから地獄に連れて行くそうだから。
これも、冥加の受け売りだけどな。
何っ!?
タタリモッケ、何をする気だ?
かごめが連れていかれた・・・・
消えた・・・・?
餓鬼が死ぬ寸前の状況に、無理矢理、巻き込まれたかごめ。
炎に巻かれ一人焼け死んだ子供。
母親に助けて貰いたかったのに気付いて貰えなかった。
その思いが怨みに変わり悪霊化してたんだな。
かごめの説得も、中々、聞こうとしなかった。
遂に地獄の扉が開き、落ちて行こうとする餓鬼。
それでも必死に餓鬼を引き留めようとした、かごめの命掛けの説得。
もう少しで地獄に落ちる文字通りの崖っぷちで、やっと相手を納得させたぜ。
フゥ~~~何て危なっかしいんだ!
もう少しで、かごめまで地獄に引き摺り込まれる処だったじゃねえか。
それにしても、あん時は驚いたな。
かごめの奴、本当に霊を鎮(しず)めちまったぜ。
大したもんだぜ、巫女ってのは。



 

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