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『降り積もる思い⑤=旅の始まり=』最終回萌え作品⑤

何時までも楓ばばあの村でグズグズしてたって、四魂の玉の欠片が見つかる筈がねえ。
こうなったら、コッチから捜しに行くしかねえよな。
幸い、親父の形見、鉄砕牙も手に入ったし、かごめと二人、欠片捜しの旅に出る事にした。
旅に出て三日後、妙な奴と出会ったんだ。
すっげえお人好しで馬鹿な信長ってえ何処ぞの若侍。
身なりからして、割と良い処のお坊ちゃんて感じだったっけ。
そういや、武田の者とか云ってたよな。
奴と出合ったのが、この旅の最初の思い出になった。
とにかく、アイツ、人一倍どんくさいもんだから、供の者と逸(はぐ)れて迷子になってたんだよな。
腹を空かせて、子飼いの猿、日吉丸に食い物を調達させる積りが、かごめの着物を盗みやがった。
あの馬鹿、ブラジャーとか云う、かごめの乳当てを、手に、マジマジと眺めてやがったんだぜ。
事情を聞いてスッカリ同情したかごめが、メシを喰わせてやったんだが・・・。
その上、奴の目的地まで付き添ってやれってよ。
マア、あのドジぶりじゃな、心配にもなるか。
仕方ねえから、アイツの目的地まで付き合ってやったんだが、これが、大当たり。
その国の殿様が、物の怪に取り憑かれてるって云う専(もっぱ)らの噂でな。
こりゃ、四魂の欠片と関係が有るに違いない。
早速、その夜、城に忍び込もうとしたら、アイツ、自分まで行くって云い出して。
チャッカリ、俺の背中に乗っかりやがったんだ。
クソッ、かごめならイザ知らず、何で野郎なんか背に乗せにゃならんのだ。
城の中に忍び込んでみれば、結構、デカイ城なのに、誰も見張りがいねえ。
成る程、冥加じじいの指摘も、尤もだな。
確かに可笑しい。
見れば、見張りは居るが、眠ってるじゃねえか。
冥加が云うには、妖術で眠らされてるんだとさ。
信長の奴、調子こいて大声で自分の探してる姫さまの名前を連呼しやがって。
スッカリ、囚われの姫を救う正義の味方気取りだぜ。
マア、城の者は、全員、妖術で寝てるから良いけど。
アイツ、隠密には、絶対、向いてねえな。
そうやって、アチコチ捜し回ってる内に、姫の部屋に辿り着いたんだっけ。
あの馬鹿、姫付きの老女を、姫と勘違いしやがって。
本当に、何処までもトンマな奴だぜ。
露姫ってえ姫さまの話じゃ、この城の殿さま、ヤッパリ、物の怪に乗っ取られてるようだった。
そうこうする内に、御大(おんたい)のご登場だ。
ヘッ、身体中、包帯でグルグル巻きにしやがって。
如何にも胡散臭い奴だぜ。
どう出てくるかと思ってたら、イキナリ、口から何か飛び出して来た。
飛びのきざま、顔を覆ってる包帯を引き裂いてやったら・・・・。
現れたのは、ゲッ、巨大な蛙じゃねえか。
文字通りの殿さま蛙ってか。
かごめが、クソ蛙の野郎、右肩の下辺りに四魂の欠片を仕込んでるって教えてくれたぜ。
俺から見れば、大して強そうにも思えないんだが、冥加じじいが、忠告してきた。
何でも、アイツ、九十九(つくも)の蝦蟇(がま)とか云う齢(よわい)三百年の妖怪らしい。
一筋縄じゃいかねえとさ。
ケッ、一発で引き裂いてやるぜ!
そうしたら、あのクソ蛙、瘴気を吹きかけてきやがった。
ガハッ、油断した。
まともに吸い込んじまったぜ。
俺が倒れてる間に、クソ蛙め、飛び道具のような舌で、信長をやっつけ、露姫を攫っていきやがった。
もう、許さねえ、あのクソ蛙。
ギッタギッタにやっつけてやる!
城の奥まった部屋に辿り着いてみれば、何だ、これは?!
デッカイ蛙の卵に娘達が封じられてるじゃねえか。
露姫まで卵の中に入れられちまってるぜ。
冥加によると、あのクソ蛙は、こうやって娘達の魂を熟成させて喰らうんだとよ。
ハン、見た目と同じで、けったくそ悪い趣味してやがるぜ。
ブホ!さっきのようにクソ蛙め、口から瘴気を吐き出しやがった。
二度も同じ手に引っ掛かるか!
鉄砕牙を抜き放ち、瘴気ごと袈裟懸(けさが)けに斬り付けてやったぜ。
このまま、一気に、腹かっさばいて四魂の玉を取り出してやる。
そしたら、あの野郎、部屋中に溢れてる蛙の卵に閉じ込めた娘達の魂を四つも呑み込みやがった。
なっ、何だ、傷が消えたぞ。
どうやら、娘達の魂を呑み込むたびに奴の寿命は延びるらしい。
俺とクソ蛙が闘ってる間に、信長が、露姫を、卵から救出した。
アイツ、ああいう処だけは、チャッカリしてるんだよな。
露姫が、助けてくれた信長に取り縋ったを幸い、抱きしめて悦に入ってやがる。
てめえ、今、どういう状況か判ってんのか!?
それを見た殿さま蛙め、「姫に何をする~~~」だぜ。
姫を喰らおうとしたてめえが、云う事か。
鉄砕牙で、一発、頭を叩(はた)いてやったらヘナヘナと座り込んみやがってよ。
ンンッ、どうも様子が変だ。
かごめが話をしてみると、どうも、殿さまは、まだクソ蛙の中で生きてるようだ。
今迄は、クソ蛙に意識を乗っ取られてたんだな。
部屋中に溢れてる蛙の卵の中の娘達を見て、愕然としてたぜ。
まあ、無理もないけどな。
驚いた事に、殿さま、自分を斬れっつうんだ。
自分に取り憑いてる物の怪ごと斬ってくれってんだぜ。
フ~~ン、流石に一国の殿さまやってるだけはあるな。
良い覚悟じゃねえか。
んじゃ、遠慮なく、と思ったら。
かごめが血相変えて止めやがるわ、おまけに信長もだ。
クッソ~~斬っちまえば事は簡単なのによ。
鉄砕牙を振り下ろしたものの、仕方なく的を外したぜ。
クッ、下手に同情なんぞするもんじゃねえぜ。
あのクソ蛙、途端に飛び道具みてえな舌で、俺の右の脇腹を突き刺しやがった。
今度は、かごめを狙ってやがる。
冥加じじいが、かごめに、クソ蛙を倒す秘策を授けたは良いが・・・。
大量の湯を浴びせろだとぉ!
馬鹿野郎、ここが、何処か判ってんのか?!
火の気も禄にない城のど真ん中だぞ。
厨(くりや)じゃねえんだ。
そうこうしてる内に、クソ蛙が、かごめを、長い舌で捕まえに掛かった。
それを見た信長、傷を負わされた身で、果敢にも殿さま蛙を羽交い絞めに。
そこまでは良かったんだが、アイツは、やっぱり抜けてるぜ。

「湯を沸かせ————っ!」

とにもう、黙って聞いてりゃ、何、悠長な事云ってやがるんだ。
こうなったら、もう、情けは無用だ。
クソ蛙をたたっ斬ってやる。
鉄砕牙を振りかざそうとする俺を、それでも必死に止めようとする信長。
人が死ぬのは嫌なんだとよ。
この戦乱の世に怖ろしく甘っちょろい事をほざきやがって。
チッ、判ったよ。
だが、そこまで云うんなら、俺は手を出さない。
自分達だけで何とかしな。
仕方ねえから鉄砕牙を鞘に収めてやったぜ。
そんな信長の命乞いが終わるや否や、クソ蛙め、恩を仇で返しやがった。
信長を力で振り切って床に叩き付けやがって。
それでも、まだ、取り縋って止めようとする信長を、クソ蛙め、右胸の脇を飛び道具の舌で串刺しだ。
二度までも、クソ蛙の串刺しを受けた信長、
今度こそ、目が覚めたかと思いきや、まだ、苦しい息の下でほざくんだ。

「殺してはならん。」

大した頑固者だぜ。
ドレ、かごめ達は、どうなったか、見てくるか。
死なせる訳にゃいかねえからな。
チッ、案の定、追い詰められてるじゃねえか。
もう、これ以上、甘い顔は出来ねえな。
一気に散魂鉄爪で片を付けてやる!
そしたら、クソ蛙に向かって行く俺に、かごめの奴、「おすわり」を喰らわせやがった。
言霊の呪文で否応なく床に叩き伏せられる俺。
そんな俺を、尻目に、かごめが、ヘアスプレーとか云うアッチの世界の道具を手に日吉丸から貰った小さな種火を一瞬で猛火に変えたんだ。
炎に苦しがって殿さまの身体から出てきた九十九の蝦蟇。
この機を逃すか!
「散魂鉄爪!」
最初から狙ってた通りにクソ蛙を引き裂いてやったぜ。
キイィィィ・・・・ン
後に残ったのは四魂の欠片。
ヨシッ、これで首尾よく二つ目の欠片を入手だ。
どうやら、殿さまも無事みたいだし、囚われていた娘達の大半も助かったな。
生憎、信長の恋は成就しなかったがな。
自分まで殺されそうになりながら、必死に恋仇の命乞いしやがって。
全く馬鹿な野郎だ。
お人好しにも程があるぜ。
だが、アイツの愚直なまでの信念には、チョッピリ感動したぜ。
あの後、別れたんだが、アイツ、郷里(くに)にチャンと帰り着けたんだろうか。
最後の最後までドジだったからな。




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