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『降り積もる思い③=逆髪の結羅=』最終回萌え作品⑤

屍舞烏(しぶがらす)を片付けたと思ったら、肝心の四魂の玉は、かごめの放った破魔の矢によって粉々に砕けちまった。
それだけじゃねえ!
砕けた欠片は、アチコチ、四方八方に飛び散ってしまったんだ。
・・・・・何てこった。
四魂の玉を頂戴して、こんな処とは、サッサとおさらばする積りだったのに。
欠片を、全部、集めるだけで、どんだけ時間が掛かると思ってんだよ。
全く、トンデモナイ疫病神だと思ったもんだぜ。
誰をって・・・・かごめの事だよ!
あいつと拘ってから、コッチ、碌な目に遭うわねえってな。
言霊の念珠で縛られるわ、四魂の玉は砕いちまうわ。
そりゃ、封印を解いてくれた事だけは感謝したけどな。
あの頃は、真剣に、そう思ってたな。
おまけに、息吐く暇もなく、新手の妖怪が、四魂の玉の欠片を狙ってきやがった。
今度の相手は、今迄みたいな雑魚じゃねえ。
逆髪(さかさがみ)の結羅(ゆら)って云って、鬼の仲間だ。
手強かったぜ、アイツは。
何しろ斬っても突いても死なないんだからな。
怖ろしく厄介な敵だった。
結羅の攻撃方法だが、髪を操って攻撃してくるんだ。
その髪が、コッチには見えないんだ。
かごめや楓ばばあと違って、俺に、霊力は無いからな。
おまけに、髪を使って、生きてる人間まで操れる。
まず、楓ばばあが、結羅に操られた村の娘に襲われ、大怪我を負わされた。
反撃したくても、操られてるのは村の人間だから、コッチャ、下手に手出しできねえと来てる。
その癖、操られてる方は、全く手加減なしで襲ってくるんだ。
ここは、一旦、逃げるしか無いだろう。
その上、結羅の操る髪を見破る事の出来るかごめは、トットと自分の世界に帰っちまうし。
だから、かごめの匂いを追って、骨喰いの井戸に入ったんだ。
思えば、あの時が、初めてだったな。
かごめの世界へ行ったのは。
あの頃は、行こうと思えば、何時だって、骨喰いの井戸が、コッチとアッチ、二つの世界を繋いでくれた。
かごめの云う処によると、アッチは五百年後の世界だそうだが。
奇妙な世界だったな。
何度か行き来する内に慣れたけど。
辿り着いてみれば、あいつ、悠長に家族と一緒に晩飯なんぞ食ってたっけ。
オデンとか云う食い物だったよな。
あれも、結構、上手いんだよな。
俺は、あの食い物、エッと、何て云ったっけ?
そうそう、カップラーメンが、一番、好きだけどな。
アァ、話が途中だったな。
早速、かごめを連れて戻ろうとしたら、かごめのお袋が引き止めるんだ。
何か文句でも?と思ったら、俺の犬耳をクイクイ引っ張って本物かどうか確かめやがる。
かごめの弟の草太まで同じ事をしようと順番待ってるんだ。
あいつら、紛れもなく親子だぜ。
俺の着物に結羅の髪が引っ付いていたらしくてな。
かごめが、血相変えて、骨喰いの井戸へ確かめに行ったんだ。
俺には、見えないが、かごめには見えるらしいや。
かごめが云うには、井戸を通り抜けて、髪の毛がウジャウジャ這い回ってたらしい。
事実、俺には見えないが、髪の束が絡み付いてくる感触は判った。
防ごうにも見えなくちゃ、どうしようもない。
そうしたら、かごめが、結羅が操ってる本線を見つけ出し、その髪を掴んで自分の血が伝うようにしたんだ。
それを切った途端に髪の攻撃が収まった。
かごめの奴、このまま、アッチの世界に居たら、自分の家族まで危ない目に遭うと悟ったらしい。
やけに素直に戻る気になったんだ。
良く見りゃ、頬に怪我してるみてえだし、これ以上、怪我させるのも悪いから俺の火鼠(ひねずみ)の衣を貸してやったんだった。
一応、あいつの目が無けりゃ、どうにもならないからな。
向こうへ戻った途端、目にしたのが首を狩られた落ち武者どもの一行だ。
生きてた時は侍として威張ってたんだろうが、無残なもんだぜ、ああなると。
落ち武者どもの骸(むくろ)を見て、かごめ、へたり込んでるかと思えば、置き去りにされてた弓矢を拾い上げて使おうとしてたっけ。
今、思い出しても、かごめは、最初から、度胸が、据わってたよな。
かごめの指示通りに進めば、現れてきたぜ。
髪を操る御本尊が!
見た目は十七・八かそこらの娘みたいだが、油断は出来ない。
あれだけの妖術を使いこなす奴だからな。
そう思ってたら、結羅の奴、髪で、俺の動きを封じておいて刀で斬り付けてきやがった。
そんな俺を見て助太刀する積りだったのか、かごめが、ヘナチョコの腕で弓を撃ってきたんだ。
かごめが、巫女だってのは、本当だった。
ヘナチョコな矢が当たる度に、結羅の張り巡らした髪がパシパシ消える音がしたからな。
そして、次の当たり損ねの矢が、結羅の髪の巣に当たったんだ。
ゲッ、髪の巣が崩れて、中から、さっきの落ち武者どもの生首が出てきた。
それだけじゃねえ、骨だけになった髑髏(しゃれこうべ)がウジャウジャ出て来たんだ。
結羅の奴、そうやって人間どもの首を狩り、髪を操ってきたんだな。
ふざけた事に、俺の頭も、その中に入れてくれるとさ。
ケッ、白銀の髪が、珍しいんだとよ。
俺の方に注意を惹きつけている積りだったのに、結羅の奴、イキナリ、かごめに、髪を通して火を放ちやがった。
“鬼火櫛(おにびぐし)”って云うらしい。
結羅の妖術の一つだ。
かごめをやっつけ、次は、俺を殺(や)る積りだったんだろう。
さっき、俺を斬り付けた鬼の宝刀、“紅霞(べにかすみ)”を振り回してきた。
こうなったら、俺の血に妖力を込めたあの技を使うしかねえ。

「喰らえっ、飛刃血爪(ひじんけっそう)!!」

狙い過(あやま)たず、血の刃は、結羅の右手を斬り落とした。
なのに、あの女は、痛そうな素振りもしやがらねえ。
それどころか、巣に蓄えこんだ髑髏どもを使って攻撃を仕掛けて来たんだ。
髑髏に気を取られてたら、その隙を衝いて、斬り落とされた右腕の刀で、二の太刀を喰らわしてきやがった。
再度、飛刃血爪で防ごうとしたら、チッ、髑髏どもに邪魔された。
グッ・・・しまった。
三の太刀を貰っちまった。
背後から刀が迫ってたのに気付かなかった。
イヤ、気付いてはいたが、髪で、動きが邪魔された。
ククッ・・・流石の俺も、これだけ血を流しちゃ満足な動きが出来ねえ。
大分、弱った俺を押さえ付けて首を刎ねようとする結羅。
首を刎ねて髪を操ろうって魂胆だ。
誰が、ムザムザそんな事させるかよ!
アイツが、刀を振り切る前に、渾身の力で、胸元を右手で抉(えぐ)ってやったんだ。
これで、息の根が止まるだろうと思ったのに。
結羅の奴、平気の平左だ。
一体、どうなってるんだ?
こいつの急所は、何処に有るんだ!?!
俺と結羅が、死闘を繰り広げてる間に、かごめが、髪の巣に登っていた。
何かを目指してるようだった。
それを見た途端、結羅が。急に慌て出した。
何か、よっぽど見つけられちゃ不味い物があるらしい。
そうしたら、かごめが教えてくれたぜ。
ある髑髏を指差して、こう云ったんだ。

「犬夜叉、あの髑髏に何か・・・何かある!」

かごめの指摘が図星だったんだろう。
結羅め、さっきまで闘ってた俺を放って、かごめを狙い出した。
左手で髪の束を操って髪(くし)の檻(おり)を作り出し、かごめに斬り付けたんだが。
かごめは、俺が貸した火鼠の衣を纏っている。
だから、さっきの鬼火櫛による炎攻撃にも火傷ひとつ負ってないし、腕も傷ついてない。
業を煮やした結羅は、かごめの首に髪を巻き付け、首を落とそうとした。
が、そうは問屋がおろさない!
飛刃血爪で結羅の左腕を斬り落とした。
これで、両腕は使えない。
もう、髪を操る事は出来ないだろう。
そう思ったのに、四の太刀を貰っちまった。
刀を握ったまま斬り落とした右腕を操ってる。
何故、両腕のない状態で、まだ、髪を操れるんだ?
五の太刀が来る!斬り落とした右腕が!
ギュン!ピシッ!
何だ・・・急に動きが止まった。
かごめが、何か有ると云ってた髑髏を破魔の弓で突いてる。
ビシビシッ・・・髑髏に罅(ひび)が走る。
怒り心頭に発した結羅が、かごめに、刀を向ける。
危ない! 髪一重の差で、かごめが、髑髏を完全に破壊した。
パシッ・・・髑髏の中に隠されていた櫛が割れた。
と同時に結羅が消滅した。
文字通り、塵も残さずに。
後に残ったのは結羅の愛刀、紅霞と鞘。
そして、パタパタと風に煽(あお)られる結羅が纏っていた衣装だけ。
あいつは、結羅は、櫛に魂移(たまうつ)ししてやがったんだ。
道理で、斬っても、突いても、平気だった訳だぜ。
随分、ひでえ目に遭ったが、とにかく四魂の欠片は取り戻せた。

「行くぞ、かごめ。」

声を掛けたら、かごめの奴、驚いてたな。
初めて名前を呼んだって。
そう云われれば、そうだった。
桔梗の生まれ変わりって事に拘(こだわ)って、それまで名前で呼んでなかったからな。
あの頃は、まだ鉄砕牙も現れてなかったよな。
肌身離さず身に付けている腰の大刀に目を遣る。
鉄砕牙、大妖怪の親父の牙から打ち出された刀。
謂わば、親父の形見。
この刀を巡って、何度、腹違いの兄、殺生丸と闘った事か。
そもそも、殺生丸が、この刀を欲しがらなかったら、鉄砕牙は、この世に出現さえしなかっただろう。
イヤ、下手すると、俺の右目の黒真珠に永遠に封じられたままだったかもな。
そう考えると、全てが成るべくして成った、そんな気がするぜ。


 

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