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『満月夜話③』最終回萌え作品③

「やはり、何と云っても、同じ父君の血を引く御兄弟じゃからな。」

「大体、犬夜叉が、鉄砕牙を手に入れたのも、かごめ絡みじゃなかったか?冥加。」

「ウムッ、そう云われれば、あの時、台座に突き刺さっていた鉄砕牙を抜いたのは、かごめだったな。殺生丸様は、勿論、犬夜叉様でさえも抜けなんだのに。」

「そんでもって、殺生丸が、天生牙を、やっと正しく使った時も、りんが、絡んでるしな。どうも、あいつら馬鹿兄弟は、自分の女、つまりは『守る者』を見つける事によって、運命が開けるようだな。犬夜叉にとっての『かごめ』然り、殺生丸にとっての『りん』然り。それまでは、奴らが、どう足掻こうが、運命の扉はビクともせんかった。そういう星の許に生まれてんだな。」

「鉄砕牙は、元々、お館様が、犬夜叉様の母君、人間である十六夜様を守る為に作らせた刀だからな。当然、守る者の為でなければ発動せん。天生牙に至っては、敵を滅するどころか、完全なる“癒し”の刀じゃ。慈悲の心無き者には何の価値も見出せまい。そう考えると、お館様は、ご子息それぞれに、必要な者を見出す為の刀を残された訳だな。まるで、息子達の未来を予見したかのように。イヤ、もしかすると、本当に御存知だったのかも知れん。」

「かごめは、鉄砕牙を発動させ、りんは、天生牙を、イヤ、殺生丸の中に眠っていた慈悲の心を発動させたってこったな。」

「あの・・刀々斎さま・・・以前の・・殺生丸さまは・・・そんな・・に怖ろしい方・・だったんですか?」

酔いが、少し、醒めたのか、琥珀が、大分、シッカリした口調で話しかけて来た。

「琥珀よ、おめえは、りんと一緒の殺生丸しか知らんだろうから無理もないが。それ以前の殺生丸と来たら、全く容赦なしでな。“冷酷無慈悲”を、それこそ地で行ってたんだぜ。このワシにしたって、何遍、あいつに、危うく殺されそうになった事か。」

ポリポリと頭を掻きつつ琥珀の疑問に答えてやる刀々斎。
肩に担いだ大きな金槌が、如何にも刀鍛治らしい。

「ムウッ、刀々斎の云う通りじゃぞ、琥珀。殺生丸様は、西国のお世継ぎだけあって、幼い頃から徹底した帝王教育を受けてこられた御方じゃ。元々の性格もあったんじゃろうが、そのせいで、人一倍、矜持が高い。その上、強さに対して妄信的なまでの価値を見出しておられた。だから、弱者に対する情けなど欠片ほども持ち合わせておられんかった。人間など、当然、『虫けら』程度の認識じゃ。そんな殺生丸様が、唯一、尊敬しておられた父君が、人間である犬夜叉様の母君を救う為に命を落とされたんじゃ。畢竟(ひっきょう)、それが原因で、殺生丸様の人間に対する憎悪、嫌悪感は、一方ならぬ物があったのじゃ。」

冥加も、刀々斎に同意して答える。

「でも・・狼に・・かみ殺された・・・りんを・・救ったの・・も殺生丸さま・・ですよね。」

「ウムッ、そこの処が、良く判らんのじゃ。一体、どういう経緯(いきさつ)が有って、りんを助けたのか。邪見に聞いても、サッパリ、要領を得んしのう。マア、犬夜叉様に『風の傷』をお見舞いされた後だという事だけは確かなんじゃが。」

「冥加さま・・俺・奈落に・・操られていた頃・・りんを・・殺そうとした事が・・有るんです。本当なら・・殺生丸さまに殺されたって・・・チットモ・・おかしくない・・状況でした。なのに・・殺されずに・・放たれました。」

「フム・・・・やはり、りんに出会ってからの殺生丸様は、以前とは違うな。」

「だな。りんに会う前の殺生丸なら、問答無用で、即刻、“瞬殺”だろうぜ。あいつは、元々、おっそろしく短気なんだしよ。」

イモリの黒焼きをバリバリほお張りながら、刀々斎も、冥加に同意する。

「大体、奈落を追いかけるようになったのも、元はといや、りんが“拉致”されたせいなんだよな。それ以前に、チョッカイ掛けられたせいも有ったんだろうが。自分が保護してる『りん』に危害を加えられそうになった。奈落め、けしからん!落とし前付けてやるっ!てえ、丸っきり、餓鬼大将みてえな魂胆からなんだぜ。」

「殺生丸様も、結構、大人気ないのう。」

「馬鹿云ってんじゃねえよ、冥加。あいつは、スカした形(なり)や言葉遣いのせいで、一見、分別を弁(わきま)えてるように見えるがな。中身は、単細胞で喧嘩っ早い犬夜叉とドッチコッチの餓鬼なんだぜ。あいつらに比べれば、実際の年は下だろうが、法師の方が、遥かに精神的に大人ってもんだ。」

「ウ~~ム、そう云われれば返す言葉もないな。」

「とにかく、最終的に、犬夜叉は、冥道残月破を、鉄砕牙に取り込んで自分の物にしたし、殺生丸は、殺生丸で、左腕を取り戻し、爆砕牙を手に入れた。結局の処、全ては、お館様の望んだ通りになったってえ訳だ。」

「つまり、御二方とも、成長された。『大人』になったと云えるのだな、刀々斎よ。」

「そうだな。見た処、犬夜叉は、相変わらずの乱暴者だし、殺生丸も、以前と大して変わらん無愛想な奴だ。だが、確かに、何かが、変わった。犬夜叉は、かごめと拘わる事によって、今まで厭(いと)うてきた自分の半妖としての弱さを直視し、それを受け入れた。だが、それによって仲間を得、真の強さを手に入れた。殺生丸は、殺生丸で、りんと拘わる事により、慈悲の心を目覚めさせ、真の大妖怪に相応しい心情と力量を手に入れた。あいつは、なまじっか力が有り過ぎるばっかりに、あのままじゃ、力だけ、強さだけを追い求める愚か者で終わっちまっただろうからな。それでは、どうやったって、お館様を超える事は出来ん。」

                     2008.8/3.(日).公開◆◆
 


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