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『満月夜話②』最終回萌え作品③

「それはそうとよ、琥珀、おめえ、あれから珊瑚に顔を見せに村に帰ったか?」

刀々斎が、日頃の不義理を、鋭く琥珀に突っ込む。

「イエ・・何しろ・・そのぉ~~あの家・・狭い上にぃ~~家族が多く・・て。それにぃ~~姉上と法師・さまぁ~~仲が良い・・のはぁ~~有り難いんですが・・ああも・・目の前でぇ~~見せ付けられると・・正直・・・目のやり場に困りますぅ~~。」

「まあ、確かにそうだな。仲睦まじいのは結構なんだが、あんだけイチャイチャされると、独り者には却って目の毒だわな。じゃあ、珊瑚が、三人目の子供を産んだ事も知らねえな。」

刀々斎の発言に驚く琥珀。

「エエッ!まっ・・また・・産まれ・たんです・・かぁ~~」

「先日、わしが、犬夜叉様の様子を窺(うかが)いに村へ寄って来たんじゃ。上の双子は女子(おなご)じゃったが、今回、珊瑚が産んだ三人目の赤ん坊は男の子じゃ。あの調子だと、まだまだ、増えるな。」

ピョ———ン、冥加が、キララから、刀々斎の肩に跳び移り、話に乗り出してきた。

「つまり、おめえは、今や、二人の姪っ子と甥っ子が一人いる叔父さんっつう訳だ。まあ、精々、頑張れや。」

すかさず、刀々斎が、合いの手を入れる。
掛け合い漫才の呼吸である。
更に畳みかけるように、冥加が、今回、判明した衝撃的事実を告げる。

「それだけではないぞ。 何とっ! かごめが戻ってきたんじゃっ! 三年ぶりに骨喰いの井戸を通って!」

「エッ!そっ、それ・・・本当ですか!」

「勿論じゃとも!実に喜ばしい事じゃっ!ウウッ・・・犬夜叉様が、この三年間、どんなに、かごめに逢いたいと待ち焦がれておられたか。意地っ張りな御方ゆえ、絶対に、そんな素振りは、お見せにならなんだが・・・・。この冥加、犬夜叉様の僕として、こんなに嬉しい事はないわい。」

感極まったのか、冥加が、グスッと涙ぐむ。

「これで、もう、犬夜叉が、一人、ポツンと寂しそうにしているのを見ずに済むな。助かったぜ。元々、あいつらは、お神酒徳利みてえに、何時も、一緒だったからな。やっぱり、二人揃ってないと調子が狂うぜ。」

刀々斎も、人知れず、犬夜叉の心配をしていたらしい。
ポツリと述懐する。

「そう・・ですか。良かったぁ~~。犬夜叉さま・・・本当に・・良かったですねぇ~。」

琥珀も、かごめの事は、随分、気になっていた。姉の珊瑚の仲間というだけではない。かごめの霊力なくして奈落と四魂の玉の消滅は有り得なかったし、何より、かごめは、敬愛する今は亡き桔梗の生まれ変わりでも在る。更に、かごめは、犬夜叉にとって誰よりも大切な恋人だった。

「残るは、殺生丸と、あの嬢ちゃんだな。」

「刀々斎よ、それは、殺生丸様が、以前、連れ歩いていた童女の“りん”の事か?」

「アア、今は、村の長老でもある巫女の楓に預けられて暮らしてるそうなんだがな。おめえ、村に寄ったついでに見掛けたんじゃねえのか?」

「りんは・・・元気・・でしたか? 冥加さま。」

琥珀も気になるのだろう。遠慮がちに尋ねてきた。

「ウムッ、村に寄った時、チラッと目にしたんだが、随分、綺麗になっておったぞ。三年前に比べると、背も、大分、伸びておってな。イヤァ~~雛には稀な美少女じゃのう。後、三年もすれば、それはそれは、見目麗しい女子(おなご)になって引く手数多(あまた)は間違いなしじゃ。」

「ハッ! それじゃ、さぞかし、殺生丸が、近郷近在の男という男ども全てを警戒して神経を尖らしてるこったろうぜ。 冥加、おめえ、知ってっか? あの殺生丸が、この三年間、欠かさず、三日に一度は、あの嬢ちゃんに逢う為に、あの村に通い詰めてるってえ事を。」

「なっ、何と! そっ、そうなのか!?! あっ、あの大の人間嫌いだった殺生丸様がっ! ハア~~~変われば変わるもんじゃなあ。」

「俺もよ、つい先日、朴仙翁の処で聞いてきたばっかりなんだよ。あの樹仙の爺さん、おっそろしい情報通だぜ。自分が、あの場所から動けないもんだから、その分、鳥や獣を手懐(てなず)けて、アチコチの情報を、逐一、仕入れてんのさ。久し振りに世間話でもしてやろうと寄ってみたら、却って、こっちの方が驚かされる羽目になっちまってな。にしてもなあ、殺生丸の奴が、あのチッコイ嬢ちゃんに、其処まで真剣だとは思ってなかったぜ。エラク大事にしてるとは思ってたけどな。」

「りんは・・殺生丸さま・・に取って・・・特別・・でしたから・・・。」

琥珀が、以前、一緒に旅をしていた頃の事を思い出したのだろう。
ポツリポツリと喋り始めた。

「確かにな。琥珀、おめえから聞いた話じゃ、冥界まで取り戻しに行ったくらいだもんな。並大抵の執着じゃねえ事は確かだよな。大体、殺生丸が変わり出したのって、あの嬢ちゃんと拘わってからじゃねえのか?」

「俺が・・殺生丸さま・・のお供に・・加えて頂いたのは・・・。桔梗さま・・から離れて・・・奈落の分身・・夢幻の・・白夜に・・襲われたのを・・助けて貰った・・・時からです。それ以前・・の殺生丸さま・・の事は良く知りません。何でも・・邪見さま・・の云う事によると・・・りんは・・狼に襲われ・・て死んでた・・そうです。詳しい経緯(いきさつ)・は判りませんが・・殺生丸さま・・が・・天生牙を・・使って・・りんを・・・生き返らせ・・たんだと。」

「フ~~ン、多分、そん時、初めて、殺生丸が、天生牙を、本来の意味で使ったんだろうな。それまでは、単なる親父殿の“形見”としてお飾り同然の扱いだったもんな。」

「つまり、殺生丸様を変えたのは、童女の“りん“という訳だな。ンンッ、そう云えば、犬夜叉様が変わったのも、かごめと出会ってからではなかったか?」

冥加が、酒をチュ~~~と吸いこみながら、合いの手を入れる。

「ア”ッ、そうそう、思い出した! 此間(こないだ)、バッタリ、七宝と鉢合わせしたんだよ。狐妖術の試験の帰りだったらしい。その七宝がな、犬夜叉には内緒だって、コッソリ教えてくれたんだけどよ。殺生丸だけじゃねえ、犬夜叉もな、この三年間、ズ~~ッと、三日に一度は骨喰いの井戸に入っちゃ試してたらしいぜ。かごめに、何とか、もう一度、逢えないかってな。あの犬の馬鹿兄弟、仲悪い癖に、そういう処は、ソックリなんだよな。」

刀々斎が、グビリと酒を呷(あお)りつつ、殺生丸と犬夜叉を扱(こ)き下ろす。

                     2008.8/2.(土).公開◆◆



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