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『二人の巫女⑤』★11万打記念作品&最終回萌え作品②

「さて、それでは、家に戻って薬草の選り分けを続けよう。」

暫く泣き続けて、ようやく気分が落ち着いたらしいかごめに向かい、楓が、優しく声を掛けた。観音開きの戸を閉じただけで、そのまま、家に戻ろうとする楓に、かごめが、慌てて言葉を!

「鍵とか掛けなくて良いの?楓ばあちゃん、あんな凄いお宝の山を仕舞ってあるのに。」

「さっきも云っただろう、かごめ。りんの持ち物には、全て、呪(しゅ)が掛けられていると。この村の者は、みんな、その事を知っておる。だから、鍵を掛ける必要など全く無いのだ。」

「ウ~~ン、そうか。それもそうよね。仮に、持ち出したとしても、絶対に使えないんだもん。これ以上の盗難保険って他にないわよね。」

「村の者は、『呪(しゅ)』の事を知っておるが、余所者は、それを知らん奴が多いからな。この宝の山の存在を聞き付けて襲撃を掛けてきた野武士どもも居ったぞ。」

「エエッ! 本当に?」

「アア、この村は、普段は、犬夜叉に守られておるからな。それに、珊瑚や法師殿、七宝も妖術で加勢するから、彼奴らも容易に手を出せなかったのだが・・・。たまたま、退治屋の仕事で犬夜叉と法師殿が、村を空けた時が有ったのだ。更に、間が悪い事に、七宝までもが狐妖術の試験を受ける為に村を留守にしていた。その事を知った野武士どもめ、千載一遇の好機とばかりに、村を襲ってきおったのだ。近在の村々に比べれば、この村は、比較的、豊かだからな。それに、何より、奴らの狙いは、りんのお宝だったのだ。珊瑚が、戦おうとしたが、生憎、双子を妊娠中で、然も、産み月が間近だった。到底、戦える状態ではなかった。それでも、飛来骨を持ち出し、何とか、野武士どもを撃退しようとしたのだ。わしも弓を番(つが)えて戦う積りだった。そんな一触即発の臨戦態勢の中、兄殿が、不意に現れてな。野武士どもの親玉を、アッと云う間に片付けてしまったのだ。目の前で、塵も残さず、消え失せていく頭目を見て、残った奴らは、鬼でも見たように泡を喰って逃げ失せていきおった。それ以後、この村は、狗神に守護されていると、近在では、専(もっぱ)らの噂だ。」

「殺生丸は、爆砕牙を使ったのね。あの刀なら、敵を、完全に消滅させる事が出来るから。」

「その襲撃が切欠となって、兄殿は、今や、村の者から『狗神さま』と崇められている。その兄殿が、大切にしている、りんに至っては、『狗神の姫さま』と呼ばれて、村の者全員が、それはそれは丁重な扱いをするようになったのだ。」

「それでなのね。殺生丸が、この村を、頻繁に訪れても、誰も、驚かないし、怖がらないのは。」

「元々、犬夜叉の兄という事もあって、そう悪い印象は持たれてなかったからな。それに、何しろ、あの容姿だ。村の若い娘が、何人も恋わずらいに掛かってな。しかし、兄殿は、りん以外には、一切、目もくれようとはせんから、大抵の者が、その内、諦めるのだが。中には、諦めの悪い者も居ってな。愚か者が兄殿に迫ろうとしたのだ。それも、りんとわしの目の前で。」

「せっ、迫ったあぁぁぁぁぁ!!! あっ、あの殺生丸に!?! すっごい度胸ね。 怖いもの知らずと云うか、無謀と云うか・・・」

「あの馬鹿娘は、一生、忘れられん教訓を得ただろうさ。兄殿の逆鱗に触れおって。目の前で、半分、変化した兄殿の姿を見て、みっともない事に、腰を抜かしおってな。ハッ、りんは、平然としておった物を。大体、あの二人の仲に割って入れる者など居りはせんのだ。」

「そうね。それは本当だと思うわ。りんちゃんは、きっと、何が有っても、殺生丸を信じ抜くだろうし、殺生丸も、りんちゃんを守り抜く。あの二人を見ていると、こんなに強い『絆』が有るのかって感動しちゃうくらい。」

「かごめよ、それは、お主と犬夜叉、又は、珊瑚と法師殿にも云える事だぞ。そうした強い『絆』が有ればこそ、奈落を、四魂の玉を滅する事が出来たのだ。」

「・・・・楓ばあちゃん。」

「よくぞ、あの辛い戦いをやり遂げてくれた。本来なら出遭うはずもなかった前世と今生、桔梗お姉さまとお主、互いの存在が、互いに辛い思いを惹き起こす。だが、それから逃げる事なく、桔梗お姉さまの存在を受け入れ、尚且つ、守ろうとさえしてくれた。かごめよ、お主の、その強く優しい心こそが、桔梗お姉さまの魂を救ってくれたのだ。妹として、心から礼を云う。そして、今度こそ、桔梗お姉さまが望んで得られなかった、犬夜叉との将来を、その手にシッカリと掴んでおくれ。それだけが、老い先短い、わしの何よりの願いなのだ。犬夜叉と二人で幸せになれ、かごめ。」

「楓ばあちゃんっ!」

年老いた巫女の胸に若い巫女が泣きながら飛び込む。老巫女は、慈母のような微笑みを浮かべ、泣きじゃくる若い巫女を、あやすように抱きしめていた。御神木を通して降り注ぐ木漏れ日が、祝福を授けるかのように、二人の巫女を、穏やかに包み込んでいた。      了

                                                         2007.7/23.(水)公開◆◆




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