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『二人の巫女④』★11万打記念作品&最終回萌え作品②

「なっ、何? 何なの? これって、まさか・・・・」

「そう、その、まさかだ。兄殿、殺生丸が、この三年間に、りんに贈った品々だよ。」

外見は、チョッと小奇麗な程度の鄙(ひな)びた小屋、しかし、その中に、一歩、足を踏み入れてみれば、そこかしこに溢れる雅にして煌びやかな調度品の数々。
螺鈿(らでん)細工の櫛(くし)に豪華な丸鏡、瑪瑙(めのう)や鼈甲(べっこう)、珊瑚の簪(かんざし)、何枚もの艶やかな絹の着物に反物、色も模様も違う何本もの帯と髪を飾る錦の組み紐、それに、この時代には、非常に珍しい高価な磁器や上等な漆器まである。
素晴らしい細工が施された文机(ふづくえ)に何本もの箪笥(たんす)と長持。
都に住まう高貴な身分の姫君でさえ、果たして、これほど見事な品々を持っているかどうか?

「もう、目が潰れそう。楓ばあちゃん、これだけで一財産じゃない。やってくれるわね、殺生丸。」

「こんな鄙びた村には、上等すぎて不釣合いな品ばかりだろう。だが、あの兄殿にとっては、極々、普通のありふれた品々なのだろうな。」

「これを見たんじゃ、さっきの着物を盗んだ女(ひと)の気持ちが判らないでもないわね。それにしても、凄い。桁外れの質と量だわ。」

「何しろ、三年分だからな。まあ、いずれ、これらが、りんの嫁入り道具になる訳だ。それも考慮の上で選んだ品々ばかりだろう。」

「・・・・最初っから、りんちゃんを手離す気持ちなんか、これっぽっちも無かったんだ、殺生丸。」

「だな、この品々を見ると。実に兄殿らしいわ。言葉による意思表示は、何ひとつ無いが、兄殿の行動が、この見事な品々が、どんな言葉よりも、遥かに雄弁に、その揺るぎない想いを物語っておる。」

「本当に、りんちゃんが、大事なんだね。」

「アア、その通りだろうな、かごめ。りんを、心底、大切に思うからこそ、人里に預け、りん自身に、己の将来を決めさせようとしたのだ。りんは、一度、イヤ、実際には、二度、死んだ身だと聞いておる。最初、狼にかみ殺された時、兄殿に、天生牙で救われたそうだな。その時点で、りんの命は、兄殿の物だと云っても通るだろう。あれだけ、兄殿を慕っている、りんの事だ。あのまま、連れ歩いたとしても、一言も文句は云わなかっただろう。だが、それでは、明らかに、りんの為にならん。だからこそ、敢えて、この村に、りんを預けた。兄殿が、どれほど、りんの事を思っているか、この事からだけでも容易に窺い知れよう。」

「りんちゃんは、殺生丸に取って本当に大事な大事な『お姫さま』なのね。それにしても羨まし~~い。犬夜叉なんて、あたしに花ひとつ贈ってくれた験(ため)しが無いのに。」

「マア、人それぞれだからな。尤も、兄殿は、人ではないから、そう云って良い物かどうか。そう嘆くな、かごめ。犬夜叉には犬夜叉にしか無い良い処が一杯あるだろうが。」

「まっ、まあね。」

「それに、物を贈った事はないかも知れんが。かごめ、犬夜叉が、お主を思う気持ちは、兄殿が、りんを思う気持ちに決して引けは取らんぞ。」

「エヘヘ・・・・そっ、そうかな。」

「もう、二度と逢えないかも知れない。そうと知りながら、三年間も、骨喰いの井戸に入り続けた犬夜叉の気持ちを思うと、わしは、涙が出そうになるぞ。時には、絶望しそうになった時も有っただろう。同じ三年間とは云っても、犬夜叉と兄殿とでは渇望の度合いが全く違う。兄殿の場合は、別段、相手が消え失せた訳ではないからな。逢いたいと思えば、何時でも逢えた。それに引き換え、犬夜叉の方は、お主に逢う事は愚か、声を聞く事も、まして、匂いを嗅ぐ事さえ出来なかったのだからな。」

「・・・・そうね、犬夜叉には、随分、辛い思いをさせちゃったわね。」

「そう思うなら、その分、犬夜叉に優しくしてやれ。あいつは、人一倍、寂しがり屋だからな。極めつけの強情っぱりでもあるから、、絶対に、人前では、そんな素振りを見せようとはしなかったが・・・。この三年間、ズッと寂しかった筈だ。例え、周りに、仲間の七宝や珊瑚、法師殿、それに、わしが居ても、その寂しさは埋められなかっただろう。恐らく、心に、ポッカリ、穴が開いたような気持ちを抱えて生きていたと思うぞ。」

「ウン、そうね、そうだよね。あたしも寂しかった。どうしても、もう一度、犬夜叉に逢いたかった。」

涙が、ポツリと、かごめの手に落ちた。犬夜叉への思い、現代に残してきた家族への思い、そんな様々な思いが、ゴッチャになって、心の中に溢れ、涙の川となって頬を伝う。

「アア、これこれ、泣くでない、かごめ。責める気は無かったのだ。」

「ウウン、教えてくれて有難う、楓ばあちゃん。」

                         2008.7/22.(火).公開◆◆


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