「そ・の時・・周囲・の死体・の山・・が・りん・を隻腕・に・・に抱・いた殺・生丸様・・に・イ・ヤ・・天生・牙にか・も・知れん・・な・雪崩・れ込ん・・で・きたん・じゃ。ま・る・・で・・・『救って・く・・れ』と縋・るかの・・ように・な。そ・れを・・見た・殺生丸・様・が・・取り落・とされ・・た天生・牙を・・拾・い上げ・・天に・向かっ・て翳(かざ)・さ・れたの・・じゃ。深い・・冥界・の闇の・・中・眩し・・い程・の光・が・・天生・牙か・ら・拡が・・り・冥界・・の死人・・達が・次々・・と浄・化・・され・ていった・・そう・じゃ。それと・同時・に・・冥道・が・中か・・ら開い・て・な。それ・も・・以前・の・細い・・三日・・月・のよう・・な形・では・・なく・かな・り・・円に・近い・・形で・な。こう・し・て・・殺生丸・様と・・り・ん・・琥珀・は・・現世・に・戻って・・来・たの・・じゃ。」
「冥界から戻って来られたのは良いけど、りんちゃんは、死んだままだったんでしょ。でも、今、りんちゃんは生きてる。一体、どうやって生き返らせたの?」
かごめが、疑問点を、邪見に問い質す。
「焦る・でな・・い。今か・ら・・それを・話・・す。冥道・を拡げ・・る事は・出来・た・ものの・りん・の心・・の蔵は・止・まった・・まま・・じゃ。殺生・丸様は・・そ・の原因・・を作った・御母・堂・様に・・今に・も・喰って・掛からん・・ばかり・じゃった。そ・んな・・殺・生丸様に・・御母堂・様は・・諭す・ように・・話され・た。天・生牙で・の蘇生・・は・一度・きり・じゃ・・と。そ・して・・天・生牙を・・持つ・者と・して・殺生・丸様は・・愛し・き・命・・を・救お・うと・する・・心と・同時・に・それ・・を・失う・悲し・みと・・恐・れ・・を知る・・必要が・有ったの・だ・と。天・生牙は・・癒し・の・刀。例・え・武器と・して・振るお・うと・・命の・重さ・・を知り・・“慈悲・の・・心”・を持って・・敵・を・葬らね・ば・ならな・いのだ・・とな。それ・・こそ・が・百の・・命を・救い・・敵を・冥道・・に送・る天・生牙を・・持つ・者の・資格・なのだ・・と・な。だか・・ら・り・ん・は・・死なね・ば・ならな・・かった。殺・生丸様・が・“慈悲・の心”・を知る・・為に・な。だが・頭で・・は・そう・か・・と・納・得・は出来・・ても・悲し・み・が・消え・・る訳では・ない・・じゃろ・う。殺生・丸・・様が・・一見・・無・表情・な・・御顔・の・下で・・ど・ん・なに・悲しん・・で・おられ・る・か・・が・・儂・に・は・手に・取るよ・・うに・判った。あ・の・・御気性・・どん・な時・で・・も・涙は・お見せ・・に・なる・・ま・い。じゃ・から・・代わり・に・・儂が・泣い・・て差し・上げた。御母・堂・・様が・・不思議・そ・う・に・・何故・儂が・・泣く・・の・か・を訊かれ・・て・な。そ・の理由・・を・お答え・したら・・今度・は・殺生・丸様に・訊ねら・・れた。『悲しい・・か・殺生丸?』・と。殺生丸・様は・一言・・も口を・利かれ・な・かっ・・た。・・じゃが・・どっ・・ど・ん・・なに・・隠そ・う・として・・も・隠し・き・れ・る・・物で・は・な・・い。悲愴・・な・想・い・・が滲・み・出・て・おら・れた・のじゃろ・・う・て。そ・れ・を見て・・取った・御・母・堂・・様が・・徐(おもむろ)・に・冥道・石・の・首・・飾り・・を首・・か・ら外さ・れ・・て・な。玉・座・に・・横た・え・・られ・た・り・んの・・首に・掛けら・れ・・た・のじゃ。す・ると・・冥・道石から・ボウ・・と微か・・な光・・が漏れ・出・した・・のじゃ。そ・・の光・・は・次第に・・強く・なり・・辺り・・を・・眩し・・く照らし・出す程に・・輝き・出し・・た。そ・れ・は・・そ・れ・は・・美し・い・輝き・・じゃっ・た。そして・・光・が・・収まった・・時・・小さ・な・・鼓動・・が・聞こ・え・て・・きた・・の・じゃ。り・んの・・心・の・・蔵が・脈打・つ・・音じゃ。ユッ・・ク・リと・・り・んが・・目を・開け・た。あ・・あ・の・・瞬間・・を・儂・・は・生涯・・忘れ・ま・・い。殺・生・丸・・様の・瞳に・・瞬・時・・映った・驚愕・・の想い。確か・に溢れ・てい・・た・喜び。停止・・し・てい・た・器・官・・が・急に・・動き出・した・・せいじゃ・・ろう。り・んが・・咳き・込・ん・で・・な。そ・んな・り・ん・に・・殺生丸・様・が・・ソッと・手・・を差し伸・べら・れ・た・・。そ・して・・優・し・く・頭を・・撫で・ら・れ・こう・仰った・の・・じゃ。『もう・・・大丈夫だ。』・と。 ま・るで・御・自分・に・も・・り・ん・にも・・言い・聞か・せ・て・おられ・る・ような・・そ・んな・・感・じ・・じゃった。」
「「「「「「 ――― 」」」」」」
沈黙が、炉辺に舞い降りた。言い知れぬ感動が、その場に居る一同を、静かに包み込んでいた。暫くしてから、かごめが、やっと口を開いた。
「・・・そうか、そうだったんだ。」
弥勒が、感慨深げに、りんを見て、呟いた。
「兄上は・・りんを・とても・・大事に・・思って・らっしゃる・・んですな。」
その言葉に邪見が、直様(すぐさま)、反応した。
「その・・通り・じゃ。だ・から・・決して・りん・・を粗末・に扱う・・でない・ぞ。もし・・りん・に何・か・・有り・で・も・したら・・儂・が・殺生丸・様に・・殺さ・れ・・るっ!」
「殺され・・ると・は・穏やか・・では・有りま・せん・・な。冗談・・でしょう? 邪見殿。」
半信半疑で、問い返す弥勒に、邪見が、つい、口を滑らせる。
「何・処が・・冗談・な物・・かっ! 白霊・山の・・時・だって・な・・・アワワッ・・イッ・イヤッ・・些・か・喋り・すぎ・・た。儂は・・もう・一言・・だって・喋ら・・ん・ぞっ!」
「かご・め・・様。」
弥勒が、素早く、かごめに目配せした。以心伝心、弥勒の云わんとする事が、即座に伝わってきた。合点承知! 炉辺に置いてあった超強力アルコールのウオッカ“スピリタス”を取り上げるかごめ。ここは、もう一度、邪見を酔い潰すに限る。警戒心を緩めさせて知りたい情報を引き出すのだ。
「さっ、邪見、飲んで、飲んで。」
かごめが、空になった邪見の盃に注ぎ足してやる。
(もっと酔わせて、色々聞き出さなくちゃ!)
盃から零れそうな『ウオッカ』を、ついつい、口に運んでしまった邪見。
例によって、ボワッと炎を口から吐く。酔いが、又、廻って来たらしい。
「ウプッ・・・ウィ~~~ック!」
「ねえ、邪見、白霊山で、何が有ったの?」
かごめが、誘導尋問に乗り出した。
「あのね、あの、お山では、あたしは、何ともなかったけど、邪見さまも阿吽も、凄~く具合が悪かったの。グッタリしちゃって。」
りんが、白霊山での事を思い出したのか、説明を入れて来た。
「フ~~~ン、そうか。邪見も阿吽も妖怪だもんね。あの白霊山の聖域に近付けば、当然、そうなるわよね。七宝ちゃんや雲母、半妖の犬夜叉でも、そうだったし。鋼牙君達も、同じだった。でも、殺生丸は、どうだったの? りんちゃん。」
巧みに、尋問の矛先を、邪見からりんの方に変更する、かごめ。
「ウ~~ン、殺生丸さまは、全然、そんな風に見えなかったけど。」
りんの言葉に、邪見が、噛み付いた。
「あっ・・当・・たり・前・じゃっ! 殺生・丸・様・・は・大妖・・怪じゃ・・ぞっ! あっ・あの・程度・・で・・具合・が・悪く・・なら・れ・たりは・・せん。し・かし・・あ・の・・聖域・は・あら・ゆ・・る妖・気・・邪気・を・浄化・・して・しま・・う・場・所・・じゃ。並み・の・妖怪・・なら・・ば・・到底・耐えら・れ・・ま・いて。イヤ・耐え・る・・所か・そのま・ま・浄化・され・・て消滅・して・しまい・・かねん。殺生・丸・様・だから・こそ・あ・の・聖域で・も・・御・自分を・保って・・おられ・た・のじゃ。と・は・云え・相当・にキ・ツイ・事は・確か・・じゃった・ろ・うて。頑固・な・御方・じゃか・ら・・絶対・に・顔に・出さ・れ・たり・・はせん・かった・じゃ・ろう・・が。」
「そう云えば、あの蛇みたいな刀を使う男の人が、そう言ってたよ、邪見さま。」
りんの言葉に、かごめが、飛び付いた。
「りんちゃん、それって、目の下から模様が有って、男の癖に、女みたいに頭に簪を挿した奴の事じゃない? それで、女物の着物を着流しにして、おまけに片っぽの裾を捲り上げて帯に挟んでなかった?」
「はい、その通りです。かごめさま。」
「間違いない。あいつだわ。七人隊の蛇骨よ、犬夜叉。」
「ああ、そうだな。殺生丸も、あいつと闘った事が有るのか。蛇骨は、男好きだから、殺生丸も、さぞかし、迷惑したこったろうぜ。」
「同感・です・・な。」
犬夜叉と同じく蛇骨に気に入られた弥勒が、以前の事を思い出して辟易したように呟く。
「そう云えば、犬夜叉、お前は、特に、蛇骨に気に入られておったな。しかし、あいつも妙な奴じゃったな。男の癖に男が好きとは。のう、弥勒、ああいう奴は、割と世間に居るのか?」
好奇心の強い七宝が、物識りの弥勒に、早速、質問を開始する。
「七宝・・お前・も・子供・の癖に・・妙な・処が・・鋭い・・です・ね。そう・で・す・・な。多い・・とは・思いま・せん・が・・都あた・りなら・ああ・い・う輩・が・探せば・結構・・見つか・るで・しょう。この頃・では・戦国武・将で・も・色・小姓・を・抱えて・・いる・と噂に・聞き・ますか・・ら。」
「法師さまっ! 七宝は、まだ子供なんだよっ、それに、りんだって聞いてるんだ。そんな事、ワザワザ、此処で説明せんで良いっ。」
珊瑚が、柳眉を逆立てて、弥勒を叱り飛ばす。真面目で潔癖症の傾向が強い珊瑚には、衆道(男色)の話は、些か、刺激が、強すぎたのだろう。顔を真っ赤にして怒っている。もし、膝に琥珀を載せていなければ、飛来骨を振り回して暴れていたかもしれない。りんは、先程の会話が、何を意味しているのか良く判らなかったのだろう、キョトンとしている。
「さ・珊瑚・・おっ・落ち・着いて・・落ち・着いて・・下さい。」
「ウワ~~ン、珊瑚、怒らんでくれぇぇ・・。子供のチョッとした好奇心の表れなんじゃあぁ。」
「本当に、もう、しょうもないっ!」
「ヤ~~~イ、ヤ~~~イ、叱られてるんでやんの。」
此処で、犬夜叉が、止せばいいのに、調子に乗って弥勒と七宝をからかう。
「ハア~~~・・とんだ・トバッチリ・・です。」
「うっ、五月蠅いわいっ! 大体、犬夜叉、お前が、蛇骨なんぞに気に入られるからイカンのじゃっ!」
「ケッ! そんな事、こっちの知った事かよ。」
「犬夜叉、そこら辺で止めときなさいよ。七宝ちゃんも、いちいち噛み付かないの。」
珊瑚に怒られ、かごめに窘(たしな)められ、しょげる七宝と弥勒を尻目に、かごめが、当時の状況を更に詳しく、りんから聞き出す。
★★★『四方山話=炉端談義=⑦』に続く★★★
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