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珊瑚の出産⑤



※この画像は『妖ノ恋』さまの了解を得て公開しております。


りんが近づくにつれ邪見がクンクンと臭いを嗅ぎだした。
何か気になる臭いがするらしい。

邪見:「こりゃ、りん、お前、怪我でもしたのか?」

りん:「へっ!?」

邪見:「『へっ』ではない。微かだが、お前から血の臭いがするではないか」

邪見にいわれ、クンクンと自分の身体の匂いを嗅ぐりん。

りん:「血の臭い? あっ、そうだ、あたし、さっきまで楓さまと一緒にお産を手伝ってたの。だから血の臭いがしたんじゃないかな」

邪見:「お産だと。誰のじゃ?」

りん:「珊瑚さん」

邪見:「珊瑚? ああ、あの女退治屋のことか。そういえば、あの女、腹がでかかったな。そうか、子を産んだのか。となると父親は法師か」

りん:「うん、そうなの。それでね、お産が始まった時、法師さまはお仕事で村にいなかったんだけど七宝が飛んで教えてあげてね、慌てて駆けつけたんだって」

邪見:「仕事をおっぽり出してか?」

りん:「うん、でもね、後は犬夜叉さまに任せてきたんだって」

邪見:「犬夜叉にか?大丈夫か?あ奴に任せて。力まかせに家屋敷までぶっ壊したりせんかったじゃろうな」

りん:「大丈夫だったみたい。米俵を三俵ももらって帰ってきてたから」

邪見:「ほっ、相変わらずの馬鹿力じゃの。んっ?ということは、りん、お前、犬夜叉に会ったのか?」

りん:「うん、いきなり法師さまが現れて楓さまを連れてっちゃったから、あたし、道の途中で置き去りにされちゃって。そしたら、犬夜叉さまが茂みから出てきて一緒に珊瑚さんの家までついてきてくれたの」

邪見:「ふ~ん、そうか。して女退治屋が産んだのはどっちじゃ? りん、雄か?雌か?」

りん:「もう、邪見さまったら。犬猫じゃないんだから。女の子だったよ。それも双子なの。珍しいでしょ。ちっちゃいけど元気な子達でね。楓さまが云うには双子にしては大きい方なんだって」

邪見:「ふむ、人間は一度に一匹しか産まんのが普通じゃからな。それを二匹も産むんじゃ。母親の負担は大きい。その分、小さく産まれるのは自然の理(ことわり)じゃな」

りん:「へ~そうなんだ。邪見さまって物識りだね」

邪見:「うおっほん、まっ、それほどでもないがな」


※『珊瑚の出産⑥』に続く。



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