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根の首騒動始末記=邪見覚書き=

お仕置き主従

あ~~~先頃、人界で根の首なる雑魚妖怪が騒動をおこしよった。
それだけなら別にどってことなかったんじゃがな。
根の首め、りにもって楓の村を襲いよった。
ここまで話せばもう分かるじゃろう。
殺生丸さまがな、万が一を考慮して、わざわざ村の上空で待機されたんじゃ。
何でって、そりゃ、分かるじゃろうがっ!
不届き者めが、りんを襲わんよう監視する為じゃ。


まっ、人間の村が襲われようが壊滅しようが別に殺生丸さまの知ったことではない。
じゃが、そこにりんの安全が関わってくるとなれば話は別じゃ。
りんは殺生丸さまの大事な養い仔じゃからのう。
騒動が終わってから楓に聞いたんじゃが、あの根の首は、楓の姉、巫女の桔梗が犬夜叉と出逢う前に封じた妖怪らしいな。
しかも桔梗は犬夜叉と恋仲だったそうじゃ。
なのに犬夜叉を封印したのも、これまた桔梗ときておる。
なんとも面妖な話じゃのう。
まあ、色々と複雑な事情があるんじゃろうが。


正直な話、一体、何があったのやら。
とはいえ五十年以上も昔のことじゃ。
当時のことを聞こうにも大抵の人間は亡くなっておる。
わしら妖怪と違って人間は短命じゃからな。
まあ察するに、多分、よくある痴情のもつれって奴じゃなかろうかと。
奈落が関わっておったそうじゃし。
あ奴はトコトン悪知恵にけておったからなあ~
殺生丸さまならともかく犬夜叉が相手では・・・
ハッ、どうせ赤子の手をひねるが如く容易くだまされたんじゃろうて。
何もかも完璧な殺生丸さまと違い犬夜叉は余り賢いとはいえんからのう。


それとな、これも楓に聞いたんじゃが、『かごめ』は桔梗の生まれ変わりだそうな。
いやはや驚いたのう。
前世と現世が同時に存在するなど、まず有り得んはずなんじゃが。
はっ? 何で知ってるかって?
りんから七人隊の睡骨なる死人しびとに攫われた時のことを聞いたんじゃ。
綺麗な巫女さまに助けられたってな。
殺生丸さまが言うておられたが、その巫女、桔梗とやらは生身ではなかったそうじゃ。
何でも死人が仮初かりそめの肉体をまとっていたそうな。
じゃからな、厳密にいうならば桔梗は『生きていた』とはいえん。
死人しびとが徘徊しておった訳じゃからのう。
そこんところが実にややこしい。


何がどうして、そうなったのやら。
まあ、四魂の玉が絡んでいたそうじゃからの。
そういう奇妙奇天烈なことが起きるのも無理ないかもしれん。
色々な事情がくちなわの交尾のように複雑に絡み合いもつれ合い・・・。
うげっ、想像するだに気色悪い。
ゾゾ~~っとするわい。
とにかく、考えるだけでややこしくてたまらん。


そもそも根の首が現れたのは山崩れで奴を封じていた塚が壊れたせいなんじゃ。
運の良い奴じゃ、そのまま大人しくしておればいいものを。
なのに根の首め、調子に乗りよってからに。
これ幸いとばかりに人を襲い始めよった。
奴に襲われるとな、人間は骨だけにされてしまうんじゃ。
養分を吸い取られるんじゃな。
更に生首だけを持ち去る。
実に気味が悪いというか趣味の悪い奴じゃのう。

(んっ、生首だけを持ち去る???)

そういえば似たようなことをやらかす妖怪がおったような。
確か・・名前が・・さっ・・さっ・・さっ・・
むぅ~~~喉元まで出掛っておるんじゃが。
う~~む・・うむむ・・・
えい、頑張れ、わし!
さくっと思い出すんじゃ。
ほれほれ、あの妖怪の名は?
そうじゃ、思い出したぞ。
『逆さ髪の由羅』じゃ。


あ奴は死人の髪を操る女妖怪でな。
根の首と同じように死人の首を持ち去るんじゃ。
とはいえ『逆さ髪の由羅』は根の首のような雑魚妖怪とは訳が違うぞ。
殺生丸さまには及びもつかんが、かなりの妖力の持ち主でな。
死人の髪を集め妖力で操るんじゃ。
んっ?! 何じゃと!
違う、違う、紙ではない。
頭に生える髪の毛のことじゃ。
むっ、わしにはないだろうと。
ほっとけ!


あの時、殺生丸さまとわしは楓の村に向かっておった。
勿論、例の如くりんに逢うためじゃ。
殺生丸さまはな、りんに逢うため三日おきに西国と人界とを行き来しておられる。
すると途中で骨だらけの死骸の集団に遭遇したんじゃ。
身なりからして武者のようだが正規の武将ではらしい。
旗指物はたさしものが見当たらんかったからな。
装具から推察して野盗のようじゃった。
人も馬も等しく骨だけのむくろになっておったわ。
唯、馬の首の骨は残っておるのに人の頭部だけがなかった。
となるとこれに該当する妖怪は???
ふむ、根の首じゃな。


根の首の臭いを嗅ぎ取った殺生丸さまは直ちに村へ急行された。
殺生丸さまは怖ろしく嗅覚が鋭い御方じゃ。
奴が楓の村に向かっておるのを嗅ぎつけられたんじゃろうな。
あの時、たまたま琥珀もそこに居合わせてな。
骨だらけの死骸どもに首をかしげておった。
じゃによって殺生丸さまが琥珀に奴らを襲った妖怪の正体を明かされたんじゃ。
琥珀も退治屋の端くれじゃからな。
奴の姉の珊瑚が法師の弥勒と夫婦になって楓の村に住んでおる。
となれば、当然、姉夫婦一家を心配して村に駆けつけるじゃろうし。


楓の村に着いた殺生丸さまは、何故か、そのまま珊瑚と法師の家の上空でとどまられた。

邪見:「あのぉ、殺生丸さま、楓の家には?」

殺生丸:「りんはこの家にいる」

邪見:「はっ?」

すると村の中で怪しい動きが!
土の中で何かが蠢いておるのだ。
上空から俯瞰するとこれが一目瞭然。
何者かが珊瑚の家に向かっておるではないか。
じゃが、殺生丸さまは動こうとされん。

邪見:「せっ、殺生丸さまっ!?」

殺生丸:「大事ない。奴の狙いは巫女だ」

巫女? 巫女といえば・・・そうか、かごめじゃ!
根の首の狙いは桔梗、即ち生まれ変わりの『かごめ』だったんじゃ。
奴にとって桔梗は自分を封じた憎い敵。
それに桔梗が持っておったはずの四魂の玉を根の首は欲しがっておったはず。
五十年以上、封印されておったせいで根の首は最近の事情を全く知らん。
桔梗がとっくの昔に死んだことも、勿論、四魂の玉が消滅したこともな。
それどころか奈落と犬夜叉達の四魂の玉を巡っての熾烈な争いも知らん。
知らん、知らんの知らん尽くしじゃ。
はあ~~っ、もう『時代遅れ』もいい所じゃな。
そう考えると奴も亡霊みたいなもんかの。


おまけにな、根の首の奴、あっさりと犬夜叉とかごめに退治されたんじゃ。
これが、もう、情けないくらい綺麗さっぱりとな。
元々、雑魚に毛が生えた程度の妖怪じゃ。
ろくに抵抗もできんままバッサリやられおった。
奴自身は自分が一端いっぱしの妖怪と自惚れておったのだろうが。
わざわざ伝家の宝刀、冥道残月破を使うまでもない。
極々、普通の風の傷とかごめの破魔の矢をお見舞いされて一巻の終わりじゃ。
あ奴、一体、何のために出てきたんじゃろう?
人騒がせな、いや、この場合、わしらも迷惑かけられたから妖怪騒がせかの。


まあ、あんな奴のことなどどうでもいい。
りんに土産を渡さねば。
今回の土産は櫛じゃ。
りんも今年でよわい九つ。
もう女のめのわらわとはいえん。
段々、娘らしゅうなってきたからの。
これからは身だしなみに気を付けねばならん。
じゃからの、髪を整える櫛を持ってきたんじゃ。


ほれ、りん、見てみい。
これでな、髪をくしけずるんじゃ。
さすれば、お前の癖毛もサラサラになるじゃろう。
猫っ毛のせいか直ぐに癖がつくからのう。
そう得々と説明しておったら殺生丸さまに蹴飛ばされた。

スコ―――――――――――――――――ン

あ"~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ

それはもう久々に本気の蹴りじゃった。
何故に? どうして? 殺生丸さま???
あっという間に楓の村は見えなくなり気がつけば山をひとつ越えておった。


朝方、ボロボロになって村に辿り着いたわし
ゼイゼイ・・ヒイハア・・
たまたま、珊瑚が朝餉あさげの支度で家の外におったんじゃ。
じゃからな、これこれこうでと昨夜の経緯いきさつを話して聞かせた。
するとな、えらく呆れた顔をされたんじゃ。

邪見:「何がいけなかったんじゃろう?」

珊瑚:「そりゃ、当たり前だろ。りんに櫛を贈ったんだから」

邪見:「だから、そこが分からんのじゃ。櫛を贈ってはいかんのか?」

珊瑚:「あのさ、邪見、昔から櫛には呪力があって別れを招くって云われてるんだ。だからさ、りんに櫛を贈るってことはだよ、殺生丸と別れろって意味にも取れるんだ」

邪見:「なっ、何じゃとおぉっ!」

大驚愕するわし
あごはずれるかと思ったぞ。
その後、わしは殺生丸さまの許へ直走ひたはしった。
殺生丸さまの前に身を投げ出し土下座して己の無知を謝りまくったんじゃ。
ふう~~~今、思い返しても、まるで呪いのようじゃった。
むっ、櫛といえば女、女の呪いか。
わし、誰ぞに怨みでも買ったんじゃろうか?
はっ、そういえば『逆さ髪の結羅』は髪を櫛で操る妖怪じゃったな。
ということは、これは、あ奴の呪いやもしれん。
いや、きっとそうじゃ。
はあ~~みだりに噂をするものではないのう。
本当にえらい目にあったわい、桑原、桑原。
         
              了

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