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奈落と神楽

狒々の奈落

今、『降り積もる思い(26)=神楽=』の執筆真っ最中です。
その為、神楽が初登場するコミックス15巻をジックリ&仔細に読み返してるんですが。
つくづく奈落ってフィクサー(黒幕)だなと感じました。
奈落の場合、フィクサーの持つ他の意味、まとめ役や調停者なんて役割は全く有りません。
ズバリ、黒幕その物です。


最終決戦で奈落が大蜘蛛に変化しますが、その性(さが)は当に巣の中央で網を張る蜘蛛そのものです。
用心深さも並大抵ではありません。
殆どの場合、自らの傀儡(くぐつ)を使って本体に影響が出ないようにしています。
自分の力量が、まだ充分ではないと熟知していたのでしょう。
ですから、極力、自分の正体がばれないよう細心の注意を払っています。
策士の面目躍如(めんもくやくじょ)です。


そんな奈落を見ていると神楽が哀れに思えます。
神楽も彼女なりに策を廻らしはするのですが、奈落は、それさえ計算の内に入れてます。
所詮、神楽も、奈落の手の内で泳がされているのです。
散々、利用され、挙句の果て、瘴気を注がれ絶命する神楽。


でも、神楽は、たった一つだけ善行を積んでいました。
それは琥珀の命を救ったこと。
奈落の分身として世に生み出されて以来、ズッと他者を殺害してきた神楽。
自分が自由になる為、奈落の殺害さえ目論んでいました。
危ない橋を渡っているのは百も承知だったはず。
薄々、自分が奈落に殺されることを察知していたのでしょう。


そんな彼女が初めて自らの意思で何の見返りもなく救った琥珀の命。
だからこそ、最後の最後、兄上に見守られ逝くことが出来たのだと思います。
原作者である高橋先生の大いなる慈悲を感じる神楽の最後でした。
一面の花の中、微笑んで静かに消えていく神楽。
思い出すと何だか祝福さえ感じさせる美しい場面でした。

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