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あれは俺が山で暮らすようになって三年目の春だったかな。
始めの頃は鬼どもに追かけられたりして逃げ回ってばかりだった。
けど散魂鉄爪の使い方を知ってからは逆に追かける側になった。
俺は自分が、結構、強いんだって気が付いたんだ。
そんなある日、俺に逢いにきた妖怪がいた。
尻尾が三つに分かれた鼬(いたち)妖怪だ。
鬼火のような炎がチロチロと奴の側で燃えてた。
後で聞いたら炎と風を操るんだってさ。
鼬(いたち)妖怪は樹の上に陣取って俺をジロジロと見た。
それから感心したように言ったんだ。
炎娘:「へえ、アンタが殺生丸さまの半妖の弟かい。フ~~ン、確かに髪も目の色も同じだ。犬の大将が人間の姫との間に子供を作ったっていう、あの噂は本当だったんだね」
犬:「お前は?」
炎娘:「ああ、まだ名乗ってなかったね。アタシは三又炎娘(ミツマタエンジョウ)ってんだよ。見た通り本性は鼬(いたち)の妖怪さ。で、アンタの名前は何ていうんだい、半妖?」
犬:「・・・犬夜叉」
炎娘:「フ~~ン、随分と強そうな名前じゃないか。誰に付けてもらったんだい?」
犬:「・・・父上」
炎娘:「そうかい、犬の大将が次男に名前をね。チャンと気に掛けてたんだ」
犬:「・・・・・・」
炎娘:「その名前、大事におし」
犬:「うん!」
三又炎娘(ミツマタエンジョウ)との話で俺は初めて自分に『兄上』がいるらしいってことを知った。
名前は『殺生丸』、俺と違って純粋な妖怪で凄く綺麗で強いんだって。
それから俺は話を聞いてくれそうな妖怪に会うたび『兄上』のことを聞いて回った。
殺生丸を知らない妖怪は一匹もいなかった。
どいつこいつもチョッとした恐怖心と憧れを込めて『兄上』について話してくれた。
だからかな、チョッピリ期待してたんだ。
もしかして『兄上』なら半妖の俺でも受け入れてくれるんじゃないかって。
今から思うと笑っちまうけどな。
あの殺生丸が俺を可愛がってくれるなんて。
無い、無い、絶対、あり得ねえ!
何だってチビの頃の俺は、そんな馬鹿なことを考えたんだか。
りんを拾ってから少しは性格が丸くなった殺生丸ならイザ知らず、それ以前の冷酷非情な殺生丸じゃ、どう逆立ちしたってあり得ないぜ。
でも、あの頃は真剣にそう思ってたんだよな。
実際に殺生丸と初めて逢ったら、チビの俺の幻想は呆気なく崩れた。
確かに殺生丸は今まで見た誰よりも綺麗だったさ。
発してる妖気だって凄く強かった。
本当にチョッとでも触れたら斬れるんじゃないかって思うくらいに鋭い妖気だった。
ついでにアイツは筋金入りの『人間嫌い』だったんだ!
アイツ、俺の匂いを感知するなり何て言ったと思う?
『そこの半妖、目障りだ、去れ、さもなくば殺す』だぜ。
ケッ、お偉い純血の大妖怪さまにしてみりゃ半妖の弟なんぞ不愉快そのものなんだろうさ。
大っ嫌いな人間の血が混ざってるんだもんな。
『目障り』だぜ、『目障り』!
そうかい、「お邪魔しました」とばかりに直ぐに立ち去ったさ。
・・・塒(ねぐら)に戻ってからチョッピリ泣いたことは誰にも内緒だぜ。
了
2011.9/25.(日)作成 by猫目石