[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
巨大な冥道に呑み込まれていく半妖。
それを見て殺生丸が鉄砕牙に変化した天生牙を捨てた。
黒い冥道に引き寄せられ呑み込まれていく天生牙。
天生牙が冥道に入った瞬間、鉄砕牙が共鳴した。
ムッ、半妖の鉄砕牙が、また変化したぞ。
今度は刀身をビッシリと覆う緑色の鱗。
鱗の形状からして、あれは竜もしくは竜人の物だな。
どうやら、あれも半妖が会得した技と見える。
随分と多彩な技を駆使するものよ。
闘牙が鉄砕牙を所持していた頃は風の傷と爆流破だけであったが。
ンッ、鉄砕牙が変化したと同時に妖気が。
あれは半妖の妖気だな。
中心に妖穴がある。
何と、半妖が己の妖穴を斬りおった。
一気に大きくなっていく半妖の妖気の渦(うず)。
冥道が半妖の妖気に侵食されていくではないか。
この分なら半妖が冥道から脱出するのも時間の問題だろうと思った矢先、背後から金剛石の槍が嵐のように襲いかかってきた。
半妖の背中に金剛石の槍が、二本、命中した。
鉄砕牙に変化した天生牙からだ。
天生牙も鉄砕牙と同じく闘牙の牙から打ち出された刀。
謂わば闘牙の分身と云ってもよい。
その刀が己が息子を害そうなどとする筈がない。
ということはだ、あれは、あの鏡の欠片を操る者の意思だな。
いかん、瘴気が金剛石の槍から放散された。
半妖の妖気が弱まっていく。
それを見て殺生丸が即座に動いた。
自ら冥道の中に乗り込んでいく。
弟を助ける積りか。
変化した天生牙を掴んだ殺生丸が大きく振りかぶった。
受けて立つ半妖の弟。
見かけはソックリ同じ鉄砕牙と鉄砕牙の打ち合い。
打ち合うのが兄弟なら刀までもが兄弟剣。
奇(く)しき運命(さだめ)よな。
火花が飛び散るような激しい一撃。
その衝撃で殺生丸の刀を覆っていた鏡の欠片が掃(はら)われた。
変化が解けた。
元の天生牙だ。
幅広の鉄砕牙と違い細身の美しい刀。
それが・・・折れた。
イヤ、あれは、わざと折りにいったな。
殺生丸の表情を見れば判る。
遣る瀬無さと惜別の情が綯(な)い交(ま)ぜになった複雑な思いを宿す目。
そうか、殺生丸、冥道残月破を自ら半妖に譲るか。
覚悟の上で天生牙を折ったのだな。
そなたらしい、今、この場で、あの技を半妖にくれてやるとは。
天生牙が折れた途端、鉄砕牙が変化した。
今までに見たこともない黒い刀身、冥道残月破を取り込んだ鉄砕牙だ。
ンッ、半妖は瘴気にやられ気を失ったようだ。
あの瘴気は半妖の身には流石にきつかろうな。
ホッ、殺生丸が弟の背中に突き刺さった金剛石の槍を抜いてやりおった。
あれにも少しは兄らしいことが出来るのだな。
だが、半妖は目を覚まさない。
どうするのか?と思ったら、殺生丸の奴、すかさず半妖に一発喰らわしおったわ。
さしずめ、兄から弟に対する辛口の教育的指導とでも言えばよいのか。
妾(わらわ)には兄弟姉妹が居らぬので良く判らんが男兄弟とはああいうものなのか。
何とも、まあ、荒っぽいのう。
とは云うても兄弟揃って未だ冥道の中。
早く脱出せねば、そのまま、両名とも、あの世行きだぞ。
ほれ、もう身体が消えかけておる。
半妖が意を決して黒い鉄砕牙で冥道を斬った。
ヨシッ、冥道が下界に向けて開いたぞ。
ンッ、冥道から何かが落ちた。
光に煌めいて、あれは・・・・。
半妖は気力・体力が限界にきておったらしいな。
転がるように冥道から落ちていく。
それに比べ殺生丸の方は悠然と何事も無かったかのように地面に降りていく。
何とも対照的な兄弟だのう。
刀々斎が殺生丸に何やら話しかけておる。
チッ、こういう時こそ会話を聞きたいのだがな。
だが、まあ、何となく推測はつく。
冥道から落ちてきた天生牙を持っていけとでも云うておるのだろうて。
不思議だな、あの時、折れたと思った天生牙が無傷で冥道から出て来るとは。
全ては闘牙の望んだままに物事が推移したということかな。
でなければ天生牙が元通りのままの筈がない。
冥道残月破を鉄砕牙に譲った以上、もう天生牙に攻撃能力はない。
尤も厳密に云えば違うがな。
天生牙は、この世のモノこそ斬れぬが、あの世のモノは斬れるのだから。
刀々斎を無視してズンズン歩いていく殺生丸。
それを必死に追う小妖怪。
ンッ、あの小娘が天生牙を刀々斎から受け取ったぞ。
フフッ、それでよい。
そなたからなら殺生丸も天生牙を受け取るであろう。
いずれ天生牙が役立つ機会も巡ってこよう。
必ずしも敵がこの世のモノだけとは限らぬからな。
さて、それでは、仕事に戻るとするか。
明日、また暇を見つけて覗いてみるとしよう。
云っておくが、まだまだ愚息の観察は終わっておらんぞ。
『愚息行状観察日記⑨=御母堂さま=』に続く