忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『愚息行状観察日記(24)=御母堂さま=』



※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。


殺生丸と巫女が肉塊に隠れた半妖を追う。
鉄砕牙は巫女が拾う。
殺生丸は鉄砕牙に触れることが出来ない。
父である闘牙が封印を施しておいたからな。
厚い肉壁を爪で抉(えぐ)る殺生丸。
肉壁の向こうに半妖がいるのだろう。
ほどなく貫通した。
殺生丸が肉壁の外側へ出た途端、半妖が襲い掛かってきた。
長く鋭い剥(む)きだしの爪。
襲う弟、躱(かわ)す兄。
半妖の隙を衝いて殺生丸が透(す)かさず弟を殴り飛ばす。
それぞれ足場を固めて対峙する兄弟。
空中で激しくぶつかりあう兄と弟。
拮抗する力、爪と爪の応酬。
ムッ、殺生丸の着物の右袖が裂けた。
やるな、半妖。
殺生丸が天生牙を抜いた。
ここで一気に片を付ける積りか。
何と!半妖めが天生牙を鷲掴(わしづか)みにしおったではないか。
不味(まず)い、あ奴め、天生牙を叩き折る気だ。
そうはさせじと殺生丸が大きく踏み込み半妖を押し出す。
追い詰められる半妖、睨み合う兄と弟。
その最中(さなか)、巫女が動いた。
鉄砕牙を半妖に渡さんとしたのだろう。
だが、足場の悪い大蜘蛛の体内。
案の定、足を踏み外し落ちかけた。
すると驚いたことに巫女が持っていた鉄砕牙を肉壁に突き立て踏みとどまったのだ。
巫女の身体の重みで裂けていく肉壁、ずり落ちていく巫女。
怪我をした右手で鉄砕牙を掴んでいる巫女。
傷口が開いたのだろう。
鮮血が着物に滲む。
半妖に鉄砕牙を渡そうとする巫女の意図を察した奈落が、そうはさせじと動いた。
肉壁を触手に変化させ巫女を弾(はじ)き飛ばしたのだ。
辛うじて肉壁に突き刺さっていた鉄砕牙は押し出され、巫女も虚空に投げ出されてしまった。
落ちていく巫女と鉄砕牙。
それを見た半妖が天生牙を手離し巫女を追う。
悪霊の呪縛から解放されたのか。
殺生丸も半妖を追う。
半妖が巫女に追いつき抱きとめた。
鉄砕牙は、そのまま落ちていく。
ムッ、悪霊が分かたれ一部が巫女に移ろうとしている。
今度は巫女を支配しようというのか。
悪霊の意図を察した半妖が巫女から急いで離れようとする。
その時、何と、鉄砕牙が、半妖めがけて飛んできた。
主の危機に反応したのか。
半妖の手に戻ってきた鉄砕牙。
戻ったと同時に鉄砕牙が変化(へんげ)した。
アレは・・・竜の鱗が浮き出た刃。
以前、冥道の中で見た竜鱗の鉄砕牙!
何だ、悪霊の様子が可笑しい。
動こうにも動けないように見える。
 

「あの悪霊、どうやら動けないらしいぞ、松尾」
 

「左様にございますな、御方さま。恐らく変化した鉄砕牙が曲霊(まがつひ)の動きを封じ込めているのではないかと思われます」
 

竜鱗の鉄砕牙のせいなのか。
まるで縫い止められたかのように身動き一つできない悪霊。
必死にもがく悪霊を殺生丸が天生牙で斬り捨てた。
あの場にいたら、きっと悪霊の断末魔が聞けたのだろうな。
それほどまでに己の絶対的優位を覆(くつがえ)されたのが信じられなかったのだろう。
驚愕の表情を貼り付けたまま悪霊は消え失せた。
綺麗に影も形も残さずにな。
あれほど梃子摺(てこず)らされた割には、随分と呆気(あっけ)ない最期だった。
少し拍子抜けしたぞ。
 

「よしっ、やっと悪霊を倒したな、殺生丸」
 

「お見事にございます、若さま。文字通り一刀両断にございますな」
 

もう用は済んだとばかりに、サッサとその場を後にする殺生丸。
半妖と巫女を一顧(いっこ)だにせん。
悪霊を倒した以上、一刻も早く小娘の許に駆けつけたいのだろうな。
我が息子ながら、こういう処は実にハッキリしておる。
愛想もへったくれもない。
相変わらずだな。
 

「さて、松尾よ、殺生丸は今度こそ悪霊を倒した。次は小娘の救出だな」
 

「仰(おっしゃ)る通りにございます、御方さま。さぞかし、今の若さまは気が急(せ)いておられましょうな」
 

小娘の居場所が特定できたのだろう。
殺生丸の動きが先程までとは、まるで違う。
全く迷いがない。
まっしぐらに突き進んでいく。
そんな殺生丸の行く手を阻む何本もの触手。
そのまま爪で強行突破しようとする殺生丸。
だが、思いの外(ほか)、邪気が強まっているらしい。
触手に触れた殺生丸の爪が焼け爛(ただ)れている。
殺生丸が己(おの)が妖気を高めた。
再度、爪で触手を攻撃する殺生丸。
今度は難なく触手を破壊した。
尚も小娘を捜して先を急ぐ。
 


※『愚息行状観察日記(25)=御母堂さま=』に続く
 

拍手[4回]

PR