『鏡のように=神無(かんな)=』 ※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。 鏡に・・映し出されているのは・・神楽。 あたしの・・妹。 奈落の・・一番最初の・・分身として生を受けた・・あたし。 神楽は・・二番目。 だから・・・妹。 あたしの名は・・・『神無(かんな)』。 あたしは・・・『無』。 『無』だから・・臭いも・・気配も・・妖気さえ・・無いの。 妹の・・神楽は・・『風』。 『風』は・・何者にも・・束縛されない。 自由自在に・・空を飛ぶ・・風。 でも・・奈落の分身に・・自由なんて・・無い。 ああ・・・だから言ったのに・・・神楽。 奈落に・・逆らっちゃ・・いけないって。 触手が・・神楽の身体を・・貫いた。 戻されたばかりの・・・心の臓を避(よ)けて。 注ぎ込まれる・・大量の瘴気。 いくら・・あたし達が奈落の分身でも・・あれじゃ・・・持たない。 濃すぎる瘴気が・・・神楽を蝕(むしば)んでいく。 神楽・・そんなに・・奈落の支配を受けるのが・・嫌だったの。 あたし達は・・奈落の分身なのに。 本体である奈落には・・どうしたって・・逆らえないのに。 奈落の触手を・・断ち切った神楽。 何処へ・・・行くの。 あたしは・・飛べないから・・神楽の側に・・行けない。 こうして鏡で・・見ているだけしか・・出来ない。 神楽は・・花が・・咲き乱れる場所に・・辿り着いた。 とっても・・綺麗な・・所。 もう・・身体が・・崩れかけている。 神楽・・・痛い?苦しい? このまま・・一人ぼっちで・・死んで・・いく・・の。 そしたら・・綺麗な・・白い・・男の人が・・やって来た。 ・・・・あれは? 思い出した・・犬夜叉の・・兄の・・殺生丸。 半妖の・・犬夜叉と・・違って・・完全な妖怪。 以前・・奈落が・・人見の城に・・誘い込んで・・その力を・・取り込もうとまでした・・相手。 その為に・・りんっていう・・あたしよりも・・小さな人間の・・子供を・・神楽に・・攫わせてた。 でも・・結局・・奈落の計画は・・上手くいかなくて・・そのまま城を放棄して・・白霊山に・・籠もったんだった。 神楽の・・・驚いた顔。 そう・・神楽・・殺生丸を・・知ってるんだ。 何を・・・話してるんだろう。 神楽の表情が・・さっきまでと・・違う。 とっても・・辛そうな・・悲しそうな・・感じだったのに。 その男(ひと)を・・見たら・・凄く・・嬉しそうなの。 ああ・・・風に・・舞い散るように・・消えていく。 神楽・・・笑ってた。 ねえ・・・満足だった? 自由に・・・なれた? あれから・・魍魎丸は・・奈落に・・取り込まれたよ。 勿論・・赤子も・・一緒に。 奈落は・・もう一度・・白霊山に・・行って・・人の心を・・取り込んだの。 あの巫女と・・桔梗と・・・闘うために。 四魂の玉は・・もう直ぐ・・完成しそう。 残ってるのは・・琥珀の・・欠片だけ。 さっき・・夢幻の白夜が・・来たの。 奈落の・・・新しい分身。 鏡を・・・開放しろって。 奈落は・・もう・・あたしが・・必要じゃない・・みたい。 鏡を・・開放するってことは・・鏡の・・妖(あやかし)を・・呼び出して・・犬夜叉と・・闘えってこと。 鏡の妖(あやかし)は・・あたしの・・分身みたいな・・もの。 ううん・・・あたし自身・・かな。 だって・・鏡の妖が・・受ける傷は・・そのまま・・あたしの傷に・・なるから。 鉄砕牙の・・妖力を・・奪って・・犬夜叉を・・殺せって。 それが・・出来なければ・・相討ちを・・狙えって。 バシッ!かごめの・・破魔の矢が・・鏡の妖の喉元に。 あたしの・・喉元に・・亀裂が走る。 そのまま・・攻撃を・・仕掛ける。 鉄砕牙から・・奪った・・金剛槍破。 この地上で・・最も硬い・・金剛石の槍を・・降らせる。 でも・・狙った・・相手には・・全然・・当たってない。 そうか・・鉄砕牙の・・結界が・・働いてるんだ。 犬夜叉の・・顔が・・変わった。 目が・・赤い。 頬には・・妖線が・・一筋。 牙が・・見える。 爪も・・長くなってる。 妖怪化・・したんだ。 もう一度・・金剛槍破。 金剛石の槍を・・掻い潜って・・犬夜叉が・・鏡の妖の左肩を・・斬り付けた。 ピシッ・・ピシピシ・・・あたしの左肩に・・大きなひび割れが。 奈落が・・命じる。 竜鱗の鉄砕牙を・・出せって。 それで・・犬夜叉の・・妖穴を斬れって。 鏡の妖に・・腕を・・振り上げさせた。 その隙を・・衝(つ)いて・・犬夜叉が・・頭部を・・深く斬り付けた。 右目が・・破壊された。 ・・・見えない。 鏡の妖が・・受けた損傷は・・そのまま・・あたしが受けるって・・犬夜叉達が・・気付いた。 これが奈落なら・・直ぐにも・・あたしを攻撃するはず。 ほんの少しも・・・ためらわないで。 現に・・今・・側にいる・・夢幻の白夜だって・・そう言ってる。 なのに・・かごめも・・犬夜叉も・・あたしに・・闘いを止めろって・・言うの。 ・・・どうして? あたしは・・・奈落の分身。 犬夜叉達の・・・敵なのに。 残った左目で・・尚も・・攻撃再開。 両手で・・何かを掴むように・・かざす。 この技は・・空中に鏡を・・映すもの。 鏡の妖の・・腹部の鏡を・・反射させて・・敵を攻撃するの。 でも・・その分・・はね返された攻撃は・・そのまま・・あたしに戻ってくる。 犬夜叉が・・鉄砕牙の結界で・・攻撃を防いだ。 ピシ・・ピシッ! ピシ・・ピシ・・ピシッ! 胸に・・・亀裂が走る。 犬夜叉の・・鉄砕牙にも・・ヒビが。 もうすぐ・・折れそう。 あたしも・・壊れそう。 それでも・・奈落が・・手を緩めるなって・・言ってる。 かごめが・・空中の鏡を・・撃つって・・叫んでる。 手を交差させて・・空中の鏡の穴を・・消す。 スッ・・右手を・・切るように動かす。 風の傷を・・犬夜叉に放つ。 でも・・鉄砕牙の結界が・・働いてる。 犬夜叉には・・効かない。 ギシギシ・・・鉄砕牙が軋(きし)んでる。 犬夜叉が・・鏡の妖の持つ鉄砕牙を・・斬ろうとしてる。 そうなったら・・鉄砕牙の妖力が・・戻ってしまう。 駄目・・そうはさせない。 犬夜叉の一撃を・・左手で受けて・・鏡の鉄砕牙を・・庇(かば)う。 パキ・・・折れた・・あたしの右手。 まだ・・犬夜叉達は・・あたしを殺す気が・・ないの? 夢幻の白夜も・・・呆れてる。 闘いは・・・続いてる。 又・・犬夜叉が・・鏡の鉄砕牙を・・狙ってる。 スッ・・・今度は・・右肩で刀を庇う。 パリ・・・右腕ごと・・肩から折れた。 それでも・・・庇いきれなかった。 鏡の鉄砕牙を・・本物の鉄砕牙が・・斬った。 ドン! ゴォ———・・・バチバチ・・・逆流する妖気。 シュ———・・・犬夜叉の鉄砕牙に・・・妖力が戻っていく。 刀身のヒビも・・・消えてる。 鏡の鉄砕牙は・・・消えた。 もう・・あたしには・・闘う術がない。 奈落が・・あたしに・・最後の命令を下した。 犬夜叉達を・・・道連れにしろって。 だから・・側に・・近付いたの。 それなのに・・犬夜叉も・・かごめも・・あたしを・・殺そうとしない。 かごめが・・・言うの。 あたしは・・もう自由だって。 自由・・・あたしが? あんなに・・神楽が憧れた・・自由? でも・・もう遅い。 奈落が・・あたしを・・壊そうとしてる。 ビシビシ・・・ビシッ! 神無の全身に大きく亀裂が走る。 同時に神無の分身である鏡の妖にも。 カッ!・・・ガガッ! 砕け散る、神無が、鏡の妖が。 何千、何百の破片となって周囲に飛び散る。 ビシッ・・・小さな、本当に極小の破片が、かごめの右目に刺さった。 その小さな鏡の破片が、かごめに、奈落が持っている四魂の玉を見せる。 真っ黒な四魂の玉の中心に輝く一点の光。 (光が奈落を殺す・・・) かごめ・・・受け取って。 あたしの・・・心。 最後の・・・言葉を。 了 2009.12/26.(土).完成 [7回]PR