『降り積もる思い⑦=七宝=』最終回萌え作品⑤ 肉の塊りみてえな能面の化け物を退治して、四魂の欠片は三つになった。 テストとかが終わったかごめが、コッチに戻ってきたんで、早速、四魂の欠片捜しの旅に出たんだったっけ。 確か、あん時だよな。 七宝に初めて会ったのは。 ズッと歩き詰めだったんで、腹が減ってきた。 んじゃ、食い物を捜してくるか。 そう思ってたら、かごめが、リュックとか云う布袋から、妙な物を取り出した。 カップラーメンとか云うアッチの世界の食い物なんだと。 そして、お湯を沸かして、その器に注いで待つ事、三分。 三分??? 三分て、どんくらい待つんだ? この三分とかいう時間の計り方も、俺には良く判らねえ。 だが、とにかく、かごめがアッチから持ってきたキッチンスケールとかいう訳の判んねえ代物がピピピピ・・・と鳴って知らせるんだ。 蓋を開けてみたら、オオッ、何か美味そうな匂いがするぞ。 渡された箸を二つに割って、食ってみたら、これが美味いんだ! 俺がセッセと食ってるのに、かごめは食おうとしない。 何でだ? 訊いてみたら、こんな処で食べる気がしねえとよ。 こんな処って戦場跡って事か。 そういや、アチコチ、野ざらしになった骸骨どもが、ゴロゴロしてるな。 こういう場所には、お決まりの死骸を漁るカラスどももギャアギャア喚いてやがる。 今は、戦乱の世だからな、こんなの、チットモ珍しくねえぞ。 そん時だったよな。 急に辺りが暗くなって。 チロチロした火が、次第に大きくなってった。 それを見て、冥加じじいが、狐火だって教えてくれたんだが。 最初のおどろおどろしい雰囲気から、どんな妖怪が、現れるのかと思えば・・・。 間抜けな顔の大玉が空中に浮かんでんだ。 アレで、どう驚けってんだ。 虚仮脅(こけおど)しも良いところだぜ。 そんな間抜けな分際で四魂の欠片を寄越せだぁ! 横っ面を思いっきり引っ叩(ぱた)いてやったぜ。 そしたら、プシュ~~~と萎(しぼ)んで本性を現しやがった。 それが、七宝だった。 見るからにコロッとして狐と云うよりはタヌキに見えたっけ。 今でも、形(なり)は小せえが、あの頃は、妖術もヘボかったな。 この頃じゃ、妖術の腕の方は上がってるようだが。 女ってのは、何で、ああも『可愛い』に弱いんだよ。 かごめの奴、七宝のコロコロした感じに騙されやがって。 四魂の欠片を持ってトンズラしようとしたんだが、あの化け方の拙(まず)さ。 誰が見たってバレバレだぜ。 髑髏に化けて逃げようとした七宝に、今度は、拳固(げんこ)をお見舞いだ。 でっかいタンコブをこしらえた七宝に、とにかく、事情を聞いてみた。 アイツ、親父の仇を討ちたかったらしい。 七宝の親父は、四魂の欠片を持ってたんだが、雷獣兄弟に倒され、欠片を奪われたんだそうだ。 何でも、そいつら、欠片を持ってる妖怪を倒して回ってるんだとさ。 冥加じじいも小耳に挟んだ事があるらしい。 飛天・満天とか云うしょうもない乱暴者なんだとよ。 つまり、そいつらを倒せば、一気に四魂の欠片が何個も取れるって訳だぜ。 俄然、俺は、やる気になったぜ。 そしたら、七宝の奴、半妖の俺が、雷獣兄弟に敵うはずが無いと抜かしやがってな。 ホホォ~~良い根性してるじゃねえか。 この俺に、面と向かって半妖と云って無事に済んだ奴は居ないんだぜ。 バキ!バキバキバキ! 今度は、拳固を四連発、お見舞いしてやったぜ。 ケッ、てんで弱い癖にデカイ口きいてんじゃねえ! 痛い目を見て、ようやく口の利き方が判ったらしい。 ペコペコ謝るから許してやったら・・・・。 あん畜生、札を使った地蔵縛りの術で、俺を動けなくしやがった。 その上、かごめから四魂の欠片を奪って逃げやがって。 冥加じじいじゃ体が小さ過ぎて札が剥がせねえ。 俺達が四苦八苦してる処に七宝が戻って来た。 ンッ? かごめは、どうした? 確か、おめえを追ってった筈だが。 七宝の奴、えらくデカイ態度で助けてやっても良いが、殴るなだとよ。 どうでも良いから、早く札を剥がしやがれ。 ヨシッ、自由になった。 まずは、思う存分、七宝を殴って、それから、四魂の欠片はっと。 七宝を逆さにしてブンブン振ったら、出てきた、出てきた。 良かった、無事だ。 そしたら、七宝の奴、かごめが、雷獣兄弟に攫(さら)われたと抜かしやがるじゃねえか。 どうやら、かごめを置いて、てめえだけ逃げてきたらしい。 ソコんところを突っ込んでやったら、あんにゃろう、逆切れしやがって・・・。 【おまえの女】なんだからサッサと助けに行け!なんぞと。 マア、あの頃は、まだ、かごめの事を、そんな風に自覚してなかったからな。 今だったら、何をさて置いても駆けつけるだろうがな。 素直に云う事を聞いてやるのも癪だから、チッと意地悪してやったのさ。 七宝に土下座しろってな。 真剣にかごめを助けたいのなら、それ位、出来るだろう。 フ~~ン、本気のようだ。 それから、かごめの自転車とかいうケッタイな代物を担ぎ、七宝を道案内に、雷獣兄弟の住む山に向かったんだよな。 道々、七宝から、雷獣兄弟の事を聞いてたんだが。 冥加じじいが、気になる事を云い出しやがった。 雷獣兄弟は、良い女を攫ったら、即刻、喰っちまうってな。 始めの内は、大丈夫だろうと思ってたんだが・・・・。 冥加じじいと七宝が揃って心配するもんだから、コッチまで、ドンドン不安になってきちまって・・・・。 俺が癇癪起こした時だぜ。 次の瞬間、雷撃が襲ってきた。 見上げれば、頭上に、雷獣兄弟の兄の方、飛天が、ふんぞり返ってやがる。 フ・・・ン、まず防具は、胸当てに肩当て、籠手(こて)、両脚に飛炎の滑車。 武器はアレか、稲妻の形の刃が付いた槍。 雷撃刃とか云ってたな。 やけにデコの広い奴だったぜ。 額に、四魂の欠片を三つも仕込んでやがる。 長髪を三つ編みにして垂らしてやがったな。 かごめは何処だ??? アア、居た、居た。 ヨシッ、とりあえず無事だな。 弟の満天の操る黒雲に乗ってた。 満天の方は、四魂の欠片を二つ、額に仕込んでる。 それにしても、雷獣兄弟って聞いたんだが、満天は、全然、兄貴の飛天と似てないじゃねえか。 えらく不細工だな。 本当に兄弟か? 見た処、かごめが無事なのは良かったんだが・・・・。 兄貴の飛天が吐いた次の台詞に、俺は、頭に来たぜ。 惚れた女を助けたかったら四魂の欠片を渡せだぁ? フッ、あの頃は俺も、まだ青かった。 かごめに惚れてるなんて死んでも認めなかっただろうな。 とにかく、ソコん処は置いといて。 それからは、飛天と俺の一騎打ちになったんだ。 雷撃刃と鉄砕牙の真っ向勝負。 飛天と俺の力は、ほぼ互角だが、アイツは飛べるんだよな。 その点が、若干、俺には不利だったぜ。 それに、かごめが、満天に摑まってるしな。 ゲエッ、かごめ、何してるんだ!? 口から雷撃を吐こうとした満天を黒雲から落としたのは良いんだが・・・・。 黒雲自体、満天の妖術で作り出された物だからな。 満天が居なくなりゃ。当然、掻き消えちまう。 助けに行こうにも、コッチは、一瞬も気が抜けない飛天が相手だ。 暫く、自力で頑張れ! 幸い、かごめの奴、自分が落っことした満天の上に落ちた。 満天はデブだし妖怪だからな。 あの程度で死ぬ訳がねえ。 怒り心頭の満天、かごめに襲い掛かったんだが、七宝の狐妖術、つぶし独楽(ごま)に助けられた。 それは、良かったんだが・・・・。 あれで、満天の最後の前髪が無くなっちまったんだ。 あのデブ妖怪、前髪を物凄~~く大事にしてたんだよな。 これで、アイツは、デブの上にハゲになっちまった訳だ。 もう完全に頭に来た満天の奴。 所構わず、雷撃を吐きまくって危ないの何の。 それでも、かごめと七宝は、アイツらなりに知恵を絞って、満天を、やっつけようとしたんだが。 元々の力に差が有りすぎる。 遂に、かごめが、満天に摑まっちまった。 あのハゲ、かごめの首を絞めて縊(くび)り殺す積りだ。 クッ、かごめの事が気になって、俺も、飛天の一撃を貰っちまった。 その上、雷撃刃のショックで鉄砕牙を手離しちまったんだ。 七宝も、必死に、かごめを助けようとするんだが、如何せん、どうにも非力だ。 それでも、七宝なりに、満天の喉元に喰らいついてたぜ。 満天に頭を鷲摑みにされ、頭の骨を砕かれそうになりながらもな。 気絶してまでも離さなかったんだ。 大した根性だぜ、七宝。 こうなりゃ、かごめ達を助ける方が先だ! 飛刃血爪で、飛天の気を散らし、鉄砕牙を掴むや否や、目的の方向に思いっきり投げつけた。 俺の狙いは、はなっから、飛天じゃねえ! ハゲデブの満天だ! 狙い過(あやま)たず、鉄砕牙は、満天の胸元に突き刺さった。 ヨシッ、仕留めた。 かごめと七宝も、何とか無事のようだ。 飛天の奴、流石に弟の満天を殺されたのは堪えたらしい。 だが、その後の行動がエグイ! エグ過ぎるぜ! 死んだ弟の心臓を引きずり出して喰っちまったんだ! 冥加じじいが云うにゃ、妖力を喰ってるんだそうだ。 しかし、それにしたって、見てて気持ち良いとはお世辞にも云えねえ。 ハッ、気を取られてる場合じゃねえ。 飛天が雷撃刃を撃ってきた。 雷撃刃の威力が、さっきまでとは格段に違う。 弟の妖力を取り込んだってのは本当らしいな。 かごめに七宝を連れて出切るだけ遠くへ逃げるように指示したのは良いんだが・・・。 来る! もう一度、雷撃刃が! クソッ、鉄砕牙が無い。 避(よ)けきれねえ! そん時、冥加が、教えてくれたんだ。 鉄砕牙の鞘を使えって。 他に手もねえ。 仕方ねえ、試すっきゃねえぜ。 オオッ、威力の増した雷撃刃を受けてるのに、何ともねえ。 こいつは使えるぜ! 鞘で雷撃刃を防ぎつつ、飛天の懐に飛び込めば、奴をブッ倒せる! そう思ったんだが、クソッ、アイツは飛べるんだった。 躱(かわ)された上に、背後から、一撃、貰っちまった。 畜生、こいつが、チョロチョロ、飛び回るのを止められれば。 グッ、またも一撃、喰らっちまった。 追い込まれた! そう思った時、かごめが、破魔の矢で、飛天の左脚の飛炎の滑車を破壊してくれたんだ。 体勢を崩した飛天の雷撃刃を左手で掴み、地上に引き摺り下ろす。 雷撃が来るが、構っちゃいられねえ。 エエイ、鞘を持ってると肝心の右手が使えねえ。 邪魔だ! 渾身の一撃を飛天に喰らわす。 思い知ったか、このデコ助が! 片方の滑車を壊した以上、もう、思うようには飛べない。 面(つら)を殴られて頭に来たのか、飛天の奴、白く見える程、発熱し始めた。 一層、迫力の増した雷撃刃を、鞘で受け止めるが。 ゲッ、鞘に皹(ひび)が! こもままじゃ、やられる! 何とか、鉄砕牙を・・・・。 状況を見て取った七宝が、鉄砕牙を取りに走る。 かごめも、七宝の後を追う。 それを見ていた飛天。 不味い! 飛天の奴、口から雷撃を吐こうとしてやがる! 満天の妖力を取り込んだせいで、弟の技まで物にしてやがる。 俺が叫んだと同時に、雷撃が、七宝とかごめを襲う。 カッ・・・ボンッ ジュッ、ゴォ~~~~ 炎に呑まれる七宝とかごめ。 よくも、よくも、かごめを・・・・七宝を・・・・ 許さねえっ!!! 今にも鞘が割れそうだ。 だが、そんな事より、コイツをやっつける方が先だ。 この性悪の雷獣を仕留める方がな。 再度、雷撃刃が襲ってきた。 グッ、鞘が、折れる! その時、確かに鞘の鼓動を感じた。 ドクン! ゴッ・・・ギャン 鉄砕牙が飛んで来た! 鞘が呼んだんだ。 バシッ、右手に掴んだ鉄砕牙を、そのまま、飛天に向かい振り下ろした。 雷撃刃の柄ごと、四魂の欠片が埋め込まれた飛天の頭部を袈裟懸けにした。 やった・・・・。 でも、かごめと七宝は・・・・。 声が・・・・。 振り返って見れば、炎の中にかごめと七宝が。 冥加が云うには、二人の魂だとさ。 最後の別れを云う為に出てきたんだと。 あん時は、かごめを引き留めたい一心で止めたんだけどな。 何が、魂だ! 最後の別れだ! 冥加の阿呆! デタラメ云いやがって! 実際には、ありゃ、七宝の親父の狐火だったんだぜ。 かごめも七宝も、狐火に守られて無事だった。 畜生、心配して損したぜ。 [0回]PR