『降り積もる思い②=邂逅=』最終回萌え作品⑤ この三年間、俺なりにズッと考え続けてきた。 繰り返し繰り返し何度もな。 時間だけは、ウンザリするほど有ったからな。 そうやって真剣に考えてるとな。 かごめに出会ってからの事が、走馬灯みたいに次から次へと思い出されてくるんだ。 本当に目まぐるしいくらい、色々、有ったからな。 どうして骨喰いの井戸が繋がらなくなったのか。 そもそも、何故、俺とかごめは出会ったんだ。 五十年前、俺は桔梗に封印された。 破魔の矢によって御神木に釘付けにされたんだ。 その誰にも破れないはずの封印を、五十年ぶりに破ったのが、かごめだ。 何でも、かごめは、百足上臈(むかでじょうろう)に、無理矢理、骨喰いの井戸に引きずり込まれ、その結果、この時代に引き寄せられたらしい。 あの年増妖怪は、かごめの体内に在った四魂の玉が欲しかったんだろうな。 だが、それにしたって、話が出来すぎてる。 何故、かごめが十五歳の誕生日を迎えた日に、それが起きたんだ。 それまでも、かごめの体内に四魂の玉は有ったんだ。 何も、ワザワザ、十五歳になるまで待つ必要は無かったんじゃねえのか。 その点についても、散々、考えたんが・・・・。 俺には、どう考えても、コレだって答えが思いつかなかった。 だから、こう考える事にした。 きっと、俺には判らない何らかの理由が有って、その日まで、かごめは、守られてきたんだろうってな。 もしかすると、十五歳って年回りが答えなのかも知れねえ。 かごめの時代じゃ、どうか知らねえが、この時代、女の十五歳って云えば、もう子供じゃねえ、立派な大人だ。 大体、男が、十五歳くらいまでに元服するんだ。 女の場合は、もっと早いだろう。 以前、冥加じじいに聞いた話じゃ、都では、貴族の姫は、十二・三歳で裳着(もぎ)とかいう成人の儀式をするんだってよ。 お袋も、それを、やったそうだ。 そして、それが済んだら、即、結婚する場合が多いらしい。 つまり、かごめの場合、大人になったから、今までの守護が解けて、この時代に引き寄せられたって事かもな。 そして、御神木に封印されてた俺を見たんだ。 かごめの奴、俺を見て、まず最初に何をしたと思う? 俺の耳に触って、本物か、どうか確かめたんだとよ。 フン、確かに、この犬耳は、目立つからな。 隠そうったって隠せやしねえ。 そうやって、かごめが、俺の耳を弄(いじ)って遊んでたら、不審人物だって、村人に、とっ捕まったらしいや。 俺が封印されてた森は、禁域になってたそうだからな。 そこで、初めて、かごめは、楓ばばあに会ったんだ。 楓ばばあは、かごめを一目見て、気付いたそうだ。 五十年前に亡くなった姉の桔梗に似てるって。 確かに、かごめは、桔梗と生き写しだからな。 俺も、最初は、間違えた。 尤も、雰囲気は、まるで違うけどな。 その晩、村は、百足上臈に襲われた。 奴の目的は、勿論、かごめの体内に有った四魂の玉だ。 そして、俺も、永遠に解けない筈の封印から目覚めた。 まるで、かごめの出現に呼応するみてえに。 尤も、封印の矢が刺さったままだから、動く事も、ままならない状態だったけどな。 そして、かごめが、百足上臈に追われて逃げて来たんだ。 あの年増妖怪、かごめの横腹を喰い破って、四魂の玉を出しやがった。 あれには、俺も、驚いたぜ。 何故、かごめが、四魂の玉を体内に持ってたのか。 その理由は、後で判ったけどな。 とにかく、百足上臈の奴、四魂の玉を呑み込んで、変化しやがった。 そして、かごめごと俺を絞め殺そうとしたんだ。 助かるには、俺の封印を解くしかねえ。 だから、かごめに、俺を封印してる破魔の矢を抜かせたんだ。 封印さえ解ければ、コッチのもんだからな。 百足上臈ごとき雑魚妖怪、何て事はねえ。 一気に、俺の爪、散魂鉄爪で引き裂いてやったぜ。 ついでに、そのまま、四魂の玉を手に入れようとしたんだ・・・・が。 楓ばばあの奴、余計な事しやがって。 言霊の念珠を俺の首に掛けやがったんだ! おかげで、それ以来、俺は、何度、かごめの「おすわり」を喰らわされた事か。 かごめの居ない、この三年間は、喰らってないけどな。 畜生、今じゃ、それさえも懐かしいぜ。 百足上臈を、やっつけた後、楓ばばあの家で聞かされた驚くべき事実。 かごめが、桔梗の生まれ変わり? 最初は、信じたくなかったが、信じざるを得なかった。 桔梗と生き写しの容貌、神通力、そして、何より、体内に四魂の玉を持っていた事。 その頃、俺は、まだ、桔梗に裏切られたと思い込んでたからな。 だから、桔梗の生まれ変わりのかごめも信用する気になれなかった。 そう思ってたんだが、四魂の玉を狙う性質(たち)の悪い妖怪が、早速、現われやがった。 屍舞烏(しぶがらす)っつってな、三つ目の烏(からす)妖怪だ。 形(なり)が小さいから、人間を襲い、心の臓を喰らう。 そして、胸に巣食って、死体を操って戦うんだ。 そいつが、玉の匂いを嗅ぎつけやがった。 屍舞烏は、早速、野盗の頭目を殺し、そいつに成りすまして、かごめを攫(さら)わせたんだ。 四魂の玉を手に入れる為にな。 かごめは、幸い、無事だったんだが、屍舞烏は、四魂の玉を呑み込んじまった。 その途端、変化して図体が前よりデカクなりやがって、子供を攫(さら)いやがった。 子供は、どうなったかって? 勿論、助かったさ。 かごめが、意地でも助けようとしたからな。 一度は、俺が散魂鉄爪で引き裂いてやったんだが、奴は、四魂の玉を呑み込んでる。 アッという間に、再生し始めちまった。 生憎、俺は飛べないからな。 奴が、飛び去るのを指を咥(くわ)えて見てるしかねえ。 そしたら、飛び去ろうとする屍舞烏を、かごめが、破魔の矢で撃ち抜いたんだ。 それも、屍舞烏だけじゃねえ。 四魂の玉まで撃ち抜きやがって! おかげで、玉は粉々に打ち砕かれ、欠片は、四方八方に飛び散ってしまった。 それが、四魂の玉の欠片捜しの旅の始まりって訳だ。 [3回]PR