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『満月夜話④』最終回萌え作品③

「まあ、ともかく、御兄弟それぞれに、相応しい相手を見つけられて何よりじゃ。」

「ン~~~犬夜叉は、かごめと、ひっついて目出度し目出度しなんだろうが、殺生丸の方は、もうチッと待たにゃならんだろうな。りんは、年頃っつうには、まだ少し早いぜ。」

「何、人間の成長は早い。もう数年の辛抱じゃ。お館様が、初めて犬夜叉様の母君、十六夜様に出会われた時も、十六夜様は、まだ裳着(もぎ)も済ませてない幼子じゃった。」

「ダア~~ッ、んじゃ何か、冥加。殺生丸の“幼女好み”は、親譲りだってぇのか?」

「刀々斎、人(妖)聞きの悪い。『源氏趣味』と云わんかい。」

「ケッ、言葉を飾ったって中身は一緒だろうが。」

「そうかも知れんが、そう云ってしまっては身も蓋もない。」

「知るか!んでもって、殺生丸の奴、りんが成長するまで、セッセと人里に通って人間の男どもに牽制と威嚇をかまし続けるんか?ハア~~ご苦労なこった。昔の奴だったら、死んでも、そんな真似はせんかっただろうに。冥加、おめえの言い種じゃねえが、本当に変われば変わるもんだよなあ。」

「刀々斎さま・・冥加さま・・俺・・以前・・姉上に・・会いに村へ・・行った事が・・有るんです。その時・・りんが・・村の悪餓鬼ども・・に困らされてて・・助けようとしたら・・・・殺生丸さまが・・イキナリ現れて・・そいつらを・・睨み付け・・て追い払った・・んで・・す。」

「クゥ~~~ッ、殺生丸の奴、りんが心配で心配で堪らんのだな。あいつが、そんなに過保護だとは知らんかったぞ!」

「犬夜叉様も、かごめには、てんで弱いからのう。かごめが、涙のひとつでも流してみい。もうオロオロと慌てまくって。御兄弟揃って、自分の女には、からっきし弱いんじゃな。」

「本当に似た者同士の馬鹿兄弟だぜ。」

言いたい放題の話の合間にパチッと火の子が飛ぶ。
春とは云え、まだ夜は冷える。
焚き火に新しい薪がくべられた。
衰えかけていた火勢が勢いを取り戻す。
ミュ~~、猫又が、可愛らしい声で鳴き、琥珀の膝に乗ってきた。
そのまま心地良さげに膝の上に収まり、ゴロゴロと喉を鳴らし、眠り始めた。

「琥珀、キララ、珊瑚から借りてきたんか?」

「ハイ・・刀々斎さま・・・姉上が・・修行の旅に出る・・と云ったら・・一緒に・・連れて行くように・・と。」

「そうだな、珊瑚は、当分、あの村に法師と腰を据えるだろうしな。そうそう、どうだ、新しい鎖鎌の調子は?」

手元に置いた見るからに怖ろしげな形状の代物を、琥珀が、軽々と持ち上げて見せる。
これは、つい先頃、刀々斎に注文して作ってもらった琥珀の新しい武器である。
ジャラッ・・・鎌に付けられた鎖が鳴る。
以前の鎖鎌に比べ、何倍も大きい。
その分、殺傷能力も、重みも増している。

「そうですね・・・まだ・・少し・・使い慣れ・・・てませんが・・段々・・と手に馴染んで・・きました。」

「そうか、そいつは良かった。それにしても、琥珀よ。考えてみれば、おめえも随分、数奇(すうき)な運命だよな。」

「・・・数奇(すうき)?」

「だってよ、考えてもみろ。おめえは、一度、死んでるんだぜ。それを、奈落が、四魂の欠片を使って、おめえの命を今生(こんじょう)に繋ぎ止めた。謂わば、生きた死人だった。それが、桔梗の光によって、完全に生き返った訳なんだからな。」

「ハイ・・まさか・・・桔梗さまが・・俺の・・命を救って・・くれるとは思って・・ませんでした。俺の欠片は・・奈落の浄化・・に使う筈・・でしたから。」

「桔梗だけじゃねえ。おめえ、奈落の分身の神楽にも助けられただろう。それに、りんと殺生丸には確か二度も命を助けられてるんだったな。それを考えたら命を粗末にするんじゃねえぞ。」

「ハイ・・俺・・・以前は・・奈落を・・討ち果たせた・・ら・・何時・・死んでも良い・・・なんて思って・・ました。でも・・桔梗さま・・の光が・・俺を・・救って・・くれました。神楽も・・俺の事・・なんて・・放っておけば・・・良かったのに・・魍魎丸から・・庇って・・逃して・・くれたんです。それだけじゃない・・奈落に・・操られていたとは・・云え・・りんを・・殺そうとした・・俺を・・殺生丸さま・・は逃して・・くれたんです。夢幻の白夜に・・襲われた時も・・そうでした。瘴気の・・蛇に噛まれ・・そのまま・・だったら・・死んでた・・筈の・・俺を・・助けて・・くれたんです。桔梗さまも・・神楽も・・今は・・もう居ない・・けど・・あの二人に・・受けた恩・・それに・・りんと殺生丸さま・・に受けた・・御恩は・・生涯・・忘れま・・せん。」

「その気持ちを忘れない限り、お前は、道を誤る事はないじゃろう。それにしても、琥珀の話を聞いて改めて思ったんじゃが、殺生丸様の変わり様は本当に凄い。以前のあの方を知る者には、到底、信じられん話だろうな。」

冥加が、感慨深げに頷(うなず)く。

「それに・・俺だけ・・じゃないんで・・す。姉上も・・奈落との・・最後の戦い・・の時・・仕方が無かった・・とは云え・・りんを・・殺そうと・・したんです。夢幻の・・白夜の・・幻に騙され・・て・・・・。俺達・・退治屋・・姉弟は・・何度・・殺生丸さま・・に殺されたって・・可笑しくない・・事を・・してきたんで・・す。あの方に・・とって・・・何よりも・・誰よりも・・大事な・・りんを・・殺そうと・・したんです・・から。なのに・・俺達は・・今も・・許されて・・生きている。」

「そんな事が有ったんか。良く殺生丸に殺されずに済んだな、珊瑚。そうか・・・だから、爆砕牙も現れたんだな。奴の慈悲心が本物だから。」」

何時も惚(とぼ)けた顔の刀々斎が、真顔で考え込む。

                        2008.8/4.(月).公開◆◆


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